Record Store Day 2012

今年のRSDでお世話になったRat Records

開店直後の店内。新着コーナーは「えらいこっちゃ」で、近づけません

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

土曜は年に一度のインディ•レコード店のお祭り:Record Store Dayでした。2007年にアメリカで発足、以降世界各地に飛び火してインターナショナル規模になり、イギリスもかなり盛り上がります。日本はどうですかね?
普段から(新品&中古)レコード店には行く方だし、気に入った新譜はなるべく現物で買うようにしている。ので、個人的には「別にこんな風に年に一度っきりの〝イベント化〟しなくたって、もうちょっとしょちゅうお客がショップに足を伸ばせばいいことじゃないのか?」と感じもする。しかし、そういう考え方は恐らく、古く偏狭で堅物なものなのだろう。

自分のように半分Crate Digger入った、レコードあるいはCD買うのが日常行為…という人間は少数派。普段、わざわざ専門店にまで足を運んでるヒマがないし、ネットやダウンロードで済ましてます〜、という人の方が多いと思う。そうした向きにとっては、インストア•イベントや限定リリースが目白押しなこの日は、大勢のお客に混じってフェス気分でレコード店をはしごしサンプルしてみる、いい機会でもあるのかもしれない。
そういう機会でもないと、インディのレコード店ってのは、お店のノリや店長/スタッフに慣れない人間には、大抵ちょっと敷居が高いもの(たとえばたくさんのメーカーやブランドの集合体であるデパートでは、そのぶん匿名性が高く気軽に買い物できるのに対して、個人経営のブティックやセレクト•ショップは「主張」があり「顔」があるので、そこに抵抗を感じる人もいると思う)。以下の「Record Shop Dude」(激おもろい!)は実在の西ラフトレ店員だそうなんだけど、彼みたいな人がカウンターの向こうに陣取っていたら、繊細な人間はお店に足を踏み入れるのすらビクビクものだろう。

ちなみに、自分が(祝いたいと思う気持ちと同時に)抱えているRSDに対するこうしたややアンビバレントな感慨/疑問に対して、今や英インディ界どころか世界的に注目されるインディの大リーグ組織と化したBeggars Group(4AD、XL、Rough Trade、Matador含む)の親玉:マーティン•ミルズが答えているので、興味のある方はこちらをどーぞ

ともあれ、土曜の朝は久々の快晴(ここんとこロンドンは大気が不安定で、冷えも戻り、突然の雷雨や霰まで降った)。天気に左右されやすい性向も手伝い、「ひねくれたこと言ってないで、今日はやっぱレコード店に行くべ」と思い直したわけです。ドールストンに少し前にオープンしたKristina Records(中古はちょい高ながら、他のロンドンのお店とちょっと違う品揃えのアングルは頼もしい)に、ハイプ•ウィリアムスの新譜買うついでに行くのもいいかな〜、それとも〜…と色々オプションを考えたが、結局地元:南ロンドンの数少ないレコード屋であるRat Recordsに行くことにした。
ここは中古屋なので、DJ Food他のインストア•イベントはあるものの、RSDの目玉とも言える限定リリースは扱わない。そっちにもそれなりに興味はあるのだけど、再びブラー「Fool’s Day」のような騒ぎになるのは分かりきっている&東ラフトレみたく「絵になりやすい」トレンディな旗艦店が一番多く枚数をゲットし売りさばく(→小さなショップや地方のお店には僅かしか流通しない)仕組みなのはマニアも承知していて、朝早くから行列系のすんごい争奪戦になる。そういうビッグな店に行くとただ疲れるだけなので、地味&ローカルに済ませたいなあ〜と。レコードを買うのってそもそも楽しみなわけで、そこに要らぬ気苦労は加えたくないわけです。
それもあるし、去年コーチェラに行ったついでに寄ったAmoebaで、前年•前々年のRSD限定盤がまだ地道に売られていたのに出くわして、「別に焦ることもないやん」と悟ったのも大きかったかな? もちろん、そこにはブラーの7インチはなかった(探してもいなかったけど)。が、自分にとってもっともっと大事なバンドのリリースは売れ残っていたので、結局、「自分個人にとって大切なもの」が何かをわきまえていれば、「大衆にとって大事なもの」に振り回される必要はないってこと。
だって、リップスやビーチ•ハウスのシングルをゲットしよう!といきりたって頑張っていて、ふと、「っていうかさー、自分の隣に立っていて、肘を突き出してきていちいちうざったいこの男は、ケイティ•ペリーのシングル目当てな輩やん」と気づいたら、かな〜り興ざめですよね? あとまあ、自分がいわゆるコンプ系のコレクターではないってのも、幸いかな。音源さえちゃんと聴ければオッケーで、レーベルがどうのとかスリーヴの質が云々、各国版を集めるのじゃ!とか、そこまで徹底したこだわりがない自堕落な人間なので。

なんだか早くも暑苦しくなってきたので、話を戻します。今住んでるエリアからRat Recordsまでは、自転車で30分ほどの距離。一見どうってことないお店なんだけど、根本的にはジャンル•フリーな方針で、ヴァイナルを中心に(中古CDもあり)、レア盤〜ミント盤にあまり固執しすぎない品揃えと良心的な価格設定を武器に、商品の回転が早いのが人気の秘密ではないかと。
要するに、「千載一遇のコレクターや観光客が来店するのを期待して、誰も手を出せない商品を強気で売ろうとする」のではなく(場所柄、観光客はほとんど来ないだろう)、「誰かにどこかでヒットする」であろう作品を手広く扱うスタイル。クラブ、インディ、メタルなど、特化したジャンル専門店に較べて一見ランダムかもしれないけど、お店そのものの寿命という意味では、こっちの方が案外長いのでは?と。ロックが根本にありつつ、南ロンドンのDJにうけるレゲエやクラブ•シングル、12インチも幅広く置いてあるので、「何かめっけものがあるかも」と、入荷日の土曜に通い詰める常連客も多いお店です。

しかし、この日はさすがRSDっていうのか、ちょっと事情が違った。定刻の開店時間は10時半なんだけど、10時の段階で既に10人近くがお店の前に結集している。常連の中には初めて見る顔もちらほら混じっていたが、シャッターが上がった頃までにはその数20人近く。他の有名ショップに較べれば少ないかもしれないが、その全員がいっさんにお宝を求めて「新着入荷中古アナログ」コーナーにダッシュし、営業開始から30分ほどはそのエリアに近づけないほどだったのにはびっくりだった。
その押し合いへし合いの中に割り込むほどガッツのない自分(=根性なし)は、他のコーナーを一通りあさりながら盛り上がりが沈静化するのを待つことにしたが、知人のひとりは既に得意気にワイアーやペイヴメント、クリームのアナログを小脇に抱えている。うーむ。
仕方ないので辛抱強くラックの脇に待機し、やっと「サクサク」の流れに乗ることができた…ものの、自分的に「今これを買いたい」と感じるような作品には出くわさなかった。既にめぼしい商品は他のお客の手に握られてしまった後だったのかもしれないけど、レコード買い、特に中古の場合は、究極的に出会いはその時/場の運なので、「これだ」と感じるものがなければ、次のチャンスを待てばよし:無理に博打買いまでする必要はない。

と思っていたものの、「自分は手ぶら、でも他者は何か買っている」という、バーゲンにも似たシチュエーションになんとなく漂う「何か自分も買わないと!」という根拠のない競争心/焦りは、いつの間にか心の中に忍び込んでいた模様。カウンターの奥に、先日観て素晴らしかったホワイト•ヒルズのライヴ盤が飾ってあるのを発見してしまったのが運の尽きだった…別に、アナログにくっついてくるTシャツに興味はなかったのだが、店員に「これはいい内容のライヴだよー。100枚限定、しかもバンドから直で買い付けたんだ」と説明を受けるうち、ついふらふらと「く、ください」を発してしまった。
通販サイト他なら、同作品の盤だけで20ポンドちょっとで買える。が、このTシャツ(たぶん着ない)がセットなせいで、お値段49ポンド。この日のマイRSD予算がすべて吹っ飛んでしまったではないか。アホや〜。と同時に、自分がますます「50quid man」に近づいている気にもなり、素敵なレコードをゲットした嬉しさと共に若干の苦さが襲ってきたのでした。
50quid man、すなわち「50ポンド男」というのは、月に一度くらいの頻度でレコード店にやって来て、50ポンド前後の範囲で、めぼしい新譜や話題の作品をいちどきにまとめて買っていく手合いを指す。毎週こまめにお店に来るヒマはないけど、MOJOやUNCUTをガイドに「これはチェックしたい」作品をリスト•アップし、一気に「大人買い」するタイプとも言えますかね。「小金にモノを言わせて」な雰囲気で、あまりいいイメージではない形容です。
一方で、こういう独特な罪悪感を抱くのは、「たかがレコード1枚に、50ポンドもはたいてしまった(=それだけあれば、他に色々できるでしょ?)」とちくちく考えずにいられない、おのれの小市民ぶりの現れに過ぎないのかも、とも思う。コレクターの間でン百ポンドの価格で取引されるアナログは世の中にいくらでも存在するんで、たかが50ポンドでびびっている自分に、そもそもレコード買いって向いてないのかも??

などと考えてもいたが、おまけにホーム•メイドのRSDクッキーをもらい、居合わせた知人達とカフェに移動、コーヒーを飲んでレコードや音楽談義に花を咲かせているうち、気も晴れてきた。微々たるものながら、こうして好きなお店に貢献もできたわけだし、めっけもんの中古5、6枚とはいかなくても、家に帰って真っ先に聴きたい音楽は手に入れたわけで。結果オーライっす。その知人のひとりは、「これから午後に西ラフトレに行くぜ」と元気いっぱいだったが、予算マックスな自分はそのまま家に直帰したのでありました(=アゲイン根性なし)。

White Hillsのアナログをゲット。右下に映ってるのが特製「RSDクッキー」(ジンジャー味:美味しかった)

さて、今年のマイRSDのシメは、昨年のRSDオフィシャル映画であり、先頃DVD化されたばかりのドキュメンタリー:「Sound It Out」鑑賞。ヨークとニューキャッスルの間に位置する英北東部の都市ストックトンで、唯一生きながらえている最後の「街のレコード屋さん」Sound It Outの姿を追ったドキュメンタリーであります。

一部にある現行のヴァイナル•ブーム(=デジタル音楽への反動)に乗じ、アナログを主眼とするお店が新たにオープンする傾向もある…ものの、レコード/CDショップ、特に地方のそれは年々閉鎖に追い込まれている、というのがイギリスの基本的な現状だと思う。インディ店に限った話ではなく、HMVといった大手チェーンもスーパー•マーケット、通販、デジタル•ミュージック•ストアに深刻な打撃を受け、今やゲーム、オーディオ•アクセサリー、アパレル、書籍、菓子など、「音楽以外」の商品も売り場面積を多く占めている。
本作の主人公Sound It Outは、こうした時代の波に揉まれ失われつつある、「地方のレコード屋さん」のまさに典型と言える存在だろう。その荒波を必死に食い止めながらお店を守っている店長のトムが「レコードには思い出が宿るんだよ」と語るように、消えゆく何かに対するロマン〜悲劇の感覚は、ややもすれば映画の視界を涙でかすませることになる。
が、この作品はレコード店が象徴する音楽と個人のロマンチックかつパーソナルな結びつきにも光を当てつつ、店長トムとスタッフ、Sound It Outを支える常連客など、それぞれに味のあるカラフルなキャラ達とその生態をあぶり出すことで、全体をほのかなユーモアで包んでいる。浪花節でもなく、またシリアスな糾弾でもシニカルな変化球でもない、いわばトラジコメディ。その話法の人肌なトーンとクリーンな映像感覚は、近年の米インディ映画や「Burn To Shine」シリーズを思わせるものでもある。

ストックトンに行ったことはないけれど、経済不況で痩せたその侘しい光景は、イギリスの多くの地方都市で見受けられる。Sound It Outのカウンターを彩る常連客にしても、ヤング層はいずれも職にあぶれ、それでも音楽が好きでたまならいというタイプだ。その代表としてトラッシーなトランス系ダンス音楽のファン(自分達で音楽も作っているがお金がないので、レコードを何枚も取り置きしている)、そしてスラッシュからクラストまで「うるさいものなら何でも」なメタル•ヘッズが登場するのだが、メタラー二人組は実に性格良さそうで、お店と音楽、ひいては地元ストックトンへの愛情は実にピュア。
にしても、地方に行けば行くほど、メタル/ハード•ロック、あるいはダンス音楽が人気というのは、日本でも同じ傾向じゃないか?と思う。退屈で鬱憤を抱えた若い子にとっては、耳が痛くなる爆音あるいは我を忘れて踊りまくれるガバな高速ビートなど、フィジカルでダイレクトな刺激じゃないと、タフな現実からの逃避にならないのかもしれない。

ロンドンで300回以上ライヴを観たと豪語するステイタス•クォーの熱狂的なファンで、「もう中毒だよ」と言い切る男性。「俺が死んだら、大事に扱ってくれるか分からないから、コレクションは人には遺さない。葬儀屋に訊いたら、レコードを溶かして棺桶を作ってくれる業者がいるそうだから、そこに頼むかも」と語るこの人は、ステイタス•クォーという、まあダサさの権化みたいなバンドのファンである点になんのコンプレックスも抱いていない。その清々しさは、たとえば「これを今聴くのがオシャレ」みたいなノリであっちこっちに浮遊する「自称音楽好き」より、自分には遥かに好感がもてる。
ふらりと店に現れては、古いアルバムの再発やミート•ローフなど、自分の好みに忠実にCDを買っていく気ままな老人。専用の「アナログ•リスニング部屋」を構えるほどヴァイナル好きないわば「上客」で、ストーンズからボーズ•オブ•カナダまで聴くシリアスな(でもとても内気そうな)リスナー青年。盗品とおぼしきターンテーブルを「買い取ってくれないか」と持ち込むうさんくさい連中。唯一の店員であるおとなしそうな若者(かつてはHMV勤務)は、週末になるとゲイ•クラブのDJに…といった具合に、好みも人間性もごたまぜな人々の交差点として、この店が機能している様が浮かび上がる。

彼らに分け隔てなく接し、ダイアー•ストレイツからホワイト•レーベルのクラブ12インチまで問い合わせにはなんでもはきはき、親切に対応し、「店のどこに何があるか、ストックはすべて覚えてる」と話す音楽マニアの店長トム――入荷した新譜はすべて聴くそうです――は、でこぼこな彼ら顧客にとって頼りになる音楽の水先案内人であるのはもちろん、他に持って行く場のない音楽への過度な愛を理解してくれる/シェアできる友でもあるのだろう。
かといって彼とて商売人、チャリティでやっているわけではない。不要になった古いレコードを買い取りで持ち込んだ老カップルに、たとえビートルズでも、傷が多すぎて売れないからと正直に断る。家賃は安い店舗ながら、再開発のあおりで立ち退きの危機を経験したこともあるそうだし、そもそも今の時代にアナログを扱うこと自体がリスキー。ギリギリのところで踏ん張っているのは明らかなわけだが、アナログへの信念、そして音楽好きのハブを守りたいという真摯な思いがにじむ姿は、「天職ですね」という形容を捧げたくもなる。
それはまあ、この店長トムさんが、(専門店オーナーにしては珍しく)気難しく内側がねじれた雰囲気だの近寄りがたい空気皆無のナイスな人柄だから、というのもあるかもしれない。今みたいにレコード店が厳しい時代に、愛想のない店員なんてマイナス要因に他ならないと思うけど、まだまだいるんですよねー、「俺はお前より音楽に詳しいぜ」型の、うざったい輩。

本作の公開でSound It Outに注目が集まり、この愛すべきお店そのものも多少息を吹き返しているらしい。良かったなあ。いつか、ストックトンに足を伸ばす機会があったら、必ず立ち寄りたいと思っております。

もうひとつ、本作は女性監督の映画という意味でも貴重。完全なるインディ映画、しかも観る層が限られる内容だけに資金繰りは大変だったそうだが、寄付他の協力で成り立ったというから、これまたいい話ですね〜。ちなみに「女性」というのは、この映画の隠れたテーマのひとつでもあるだろう。女性というか、その不在ですね。そこは劇中でも疑問が呈されるんだけど、「専門音楽ショップ文化の9割は男性に占められている(売り手も買い手も)」というのは、インストア•イベントのシーンを除くと、このドキュメンタリーの画面に若い女性がほとんど現れない点からも明らかである。
そこで感じるのが、本作に流れるナイス•フィールの背景に、その「女性の欠如」も(多少)作用しているかな?という側面。もちろん、監督のジーニー•フィンリーがその効果をあらかじめ狙った、とまでは思わない。しかし、男性が圧倒的多数を占めるこの不思議に歪んだオタク世界にカメラを持った女性が現れ、誠実な興味を抱いて男達の話に耳を傾けてくれたら? それはたぶん、彼らにとっては喜びなんじゃないかと思う。
事実かどうかは知らないが、よく賢い女友達から注意されるのが、「男は誉めてあげないとダメよ」という説。全員がそうじゃないだろうけども、どうやら男性というのは、常にちやほやされたり「すごい!」と言われないと不満がある生き物みたいなんですね。やっぱある意味、子供なのかもしれん。なわけで、カメラを前に思いを赤裸々に吐露し、プライヴェートな表情を見せる彼らの健気で純な姿を観ているうちに、ついつい「これが男監督相手だったら、ここまで素直になれたのかな?」なんて考えも浮かんだわけです。
ともあれ、イギリスの片隅にあるレコ屋文化のとある現状を切り取り映し出すことで、人間群像、そして日常に息づくカルチャーの記録にもなっているこの作品、ぜひ多くの方に観てもらえたら、と思います。

カテゴリー: film, music | タグ: , , | コメントする

Radiohead目撃記。

……って、自分が観て来たわけでもなんでもないんですけども、現在進行中!のコーチェラ出演の前に、サンノゼ他で行われたいわば前哨戦のレディオヘッド•ギグを、知人が観てきて興奮のあまりレポっているので、そのリンクをこちらに。この知人は過去数年何度もコーチェラ同行してもらってる/お世話になりっぱなしの仲なんですが、今年はどっちも行けずに残念だったね〜。しかしなんでも、今年の1週目は砂漠のフェスにしては実〜に珍しく雨だったみたいですね。コーチェラ、過去に低気圧で曇り=蒸し蒸しってのは体験したけど、実際に雨が降るってのは驚いた。

カテゴリー: music | タグ: | コメントする

All Tomorrow’s Parties:appendix

たっぷり満喫した今回のATPでしたが、その素敵なエピローグを飾ってくれた余談の番外編話を:

月曜の朝、ブリストル空港に向かう友人の車に乗せてもらい、ロンドン:パディントンに向かう列車が出発するトーントン(Taunton)駅へ向かう。とはいえ今回はフェス帰り族が密集する午前中のピーク時を避け午後の便を選んだので、それまでの待ち時間、ランチを兼ねてトーントンをちょっと探索することにした。

っていうか、メインの目的はこのサマセットの街にあるレコード屋さん:Blackcat Recordsに行くことである。以前行った時も、店構えは小さいながらもインディ〜アナログを中心にしっかりした品揃えを敷いていて、その努力ぶりには感心させられたもの。というわけで、うろ覚えの記憶を頼りにシャレー•メイト達とメイン•ストリートを歩き始めたのだが…見つからない。チャリティ•ショップをチェックしつつ、「確かこの通りだったよね??」「周りのお店とか、雰囲気は間違ってないと思うが…」としどろもどろ歩いていたが、しびれを切らした友人のひとりが携帯でチェックしてくれたところ、以前の店舗があった場所からちょっと通りの先に移転していたのだった。やれやれ、スマートフォン様々ですな。

さっき「店構えは小さい」と書いたけれど、新店舗(以前はチャリティ•ショップとして使われていたそう)はぐっと広くなっており、気持ちよくレコード•ラックの間を回遊できるサイズだ。新譜CDはポップ新作からインディ〜アングラまで、音楽専門誌で取り上げられているような作品はだいたい網羅(ライアン•フランチェスコーニの日本盤があったのにはびっくり!)。古典を中心に、廉価のバック•カタログも取り揃えている。
もっとも、自分が感心させられたのはアナログ。主な新譜/最近のリイシュー•アナログはもちろん、中古レコードはかなりの枚数ストックされております。価格設定も良心的/足下に置かれているクレートまで掘り始めたらキリがない&昼食を食いっぱぐれるので全員自制したけれど、もっと時間のある時に、じっくり腰を据えて全部チェックしたかったな〜。同行知人のひとりはサン•ラのコーナーにあった「Enlightenment」収録の「Jazz In Silhouette」(再発)を購入、自分は7インチ2枚に判型が変わったYeti#12をゲットであります。

Blackcat records店内

しかし、レジでお会計の際に、店内に入ってからずっと頭の中につきまとっていた「このお店の雰囲気、なんかちょっと違うぞ??」の疑問に合点がいったのだった――店員が女性だったんですね。
いやまあ別に、この手の専門系レコード屋で女性がカウンターの向こうにいたってのは、これが初の経験ではないですよ。ラフトレの女性店員陣にはナイスな人が多いし、カーディフの素敵なレコード屋さん:Spillersも、自分が行った時は三人娘がフロントだった。が、「そのエリアに一軒しかない」系の非チェーンのインディなレコード屋、特に英地方都市のそれは、店員/店長はまず95%が男性だったりする(日本におけるこの比率は分かりませんけども、おそらくこれは、世界的に共通する傾向じゃないか?と思います)。このBlackcatも、この日不在だった店長さんは男性だそうです。
しかし、「ATPに行ったの?」と訊ねられ、この女性店員さんと「いいお店ですね」等々少し話したついでに「女性店員は珍しいと思った」と話すと、「ほんとそうよね〜!」と笑顔が返ってきた。しかし、彼女いわく「でも、今日はびっくりしてるの。ってのも、あなた達と同じATP帰りのお客さんが何人もお店に来てくれてるんだけど、若い女の子が多くて、しかも彼女達はアナログを買っていく。うちでは滅多にない話」とのことで、吹き出してしまった。

売り手もそうだけど、買い手に関しても、ことレコード店というのは中年のマニア、DJ、あるいは眼鏡+ヒゲの若者、やや気難しそうな顔つき(若干anti social入った手合いに出くわすのも、珍しくない)…といった種族が大半を占める。そんな彼らの一途な情熱、そしてCrate diggerとしての探究心がレコード店カルチャーの根底を支えているといっても過言ではないわけですが、女性にとってそのシーンは、(自分のような自他共に認めるギークで、女性としての繊細な神経をどこかに置いてきた人間でもない限り)ちょっぴり腰が引ける/敷居の高い状況だったりもすると思う。
ってのも、何人かの男性を一カ所に集めると(会社でも、パブでも、どこでもいいんですが)自然に生まれてくる「競争/闘争心」のオーラ、これが言うまでもなくレコード店では激化するわけです。その、目に見えないマッチョな雰囲気がうっとうしくなり、しまいには疲れてしまうって女性は少なくないのでは? この日のBlackcatは女性店員さんの存在が場の空気を和らげていたし(砂場の暴れん坊達、あるいは保育室でおもちゃを取り合うガキ達ををなだめる幼稚園の保母さん、とでもいうか?)、レコード屋に行くとついつい自分も陥りがちな「マッチョなモードに飲み込まれてしまう」ってこともなく、心穏やかに、落ち着いて買い物ができて嬉しかったです。
たとえすごい作品を扱っているお店でも、店長/店員が無愛想で話しかけづらく、質問してもにべもない答えが返ってきたりすると、どんなに欲しいレコードでも、「この人達から買いたくない!」と棚に戻してしまうもの。そういう、いわゆる音楽やレコードにめっちゃ詳しく、ゆえに買い手を威圧し値踏みするタイプの店員(まあ、「その程度しか自慢することがない人なのね、彼は」と考えれば、一種可哀想もでありますが…)は、これからも生まれ続けるだろう。そんな中で、女性店員がこんな風にちょっとずつ、男性優位の一角にオルタナの新風を吹き込んでくれるのは歓迎なのであります――それはまあ、同性を応援したいって気持ちも若干働いているのかもしれないし、こうして書く「女性の効果」も、実はマイナスイオンみたいなもんかもしれません(笑)。しかし、自分にとってはレコード店でレコードを買うのはエモーショナルかつ特別な行為=スーパーで野菜や肉だのを買うのとは訳が違うので、その場が気持ちよいのに越したことはないわけです。

この女性店員さんに教えてもらった近くのパブで腹ごしらえし、そろそろ駅に戻りますか…と通りを戻っていったところ、こんな素敵な看板が!

既に飲んでたけど、これは入らずにいられんばい!と行った先はThe Plough Innという名のこぢんまりしたパブでした。カウンター近くはスツール席が中心、決して広くはない(奥にもうちょっとスペースがあったようだが、今回は時間がないのでフロント•ルームのみ)。が、やんわり室内を暖める暖炉の前にはとてもお行儀がよく人懐っこいパブ犬がくつろいでいて、白髪の老人が数人、窓から差し込む初春の日差しを避けるようにひっそり静かにビールのグラスを傾けている。レゲエ/ダブ•ミュージックがBGMにゆるゆる流れる店内に、プラズマ•スクリーンTVのないパブのありがたさを改めて感じます(フットボール目当ての客寄せのために、大画面テレビはどこものしてます)。看板に偽り無し、のチルまくりのナイスさです。
せっかくサマセットにいるんだから…と自分は地元産サイダーを飲んだんだけど、リンゴの風味とクセがちゃんと残る深くまろやかな味わいは、イギリスで一般的に好まれるシャープで酸味がきついそれ(アルコール分が高い割には、炭酸飲料みたいなんだよなぁ)よりもむしろノルマンディー産のサイダーに近く、美味しかった。ああ、このままダラダラと暖炉の前で飲んでいたい…と感じずにいられなかったが、残念ながら列車の時刻が迫ってきたので、次回もまた来ることを誓ってパブを出ました。このブログを読んでくださってる人々の中に「いつかATPに行くぞ!」と思っている方もいるかもしれませんが、ぜひ、その機会が実現した際にはトーントンのこの素敵な2軒に立ち寄ってあげてくださいね。きっと、あのかわいいパブ犬が歓迎してくれるはずです。

また会おうね!パブ犬ちゃん

カテゴリー: music | タグ: , | コメントする

All Tomorrow’s Parties curated by Jeff Mangum@Butlins,Minehead/9-11March:Day3

異形の衆、The Magic Band

この日もっとも愛されたSun Ra Arkestra

唯一無二の泣き虫パンク•ロッカー:Sebadoh

E6ミーツSun Raのスペシャル•ジャム。不明瞭ですが、写真の一番手前で背中を見せてるのがジェフ•マンガム本人です。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

最終日の一番手は、A.C.M.E.(American Contemporary Music Ensemble)。20〜21世紀現代音楽の演奏を主眼とするNY拠点のアンサンブルで、柔軟な感性でクラシック好きからアングラ/インディ•ファンにまで幅広くリーチ。これまでに、グリズリー•ベア、マトモス、ハウシュカといった面々とのコラボ経験があるという。
弦楽四重奏編成の今回のパフォーマンス、メインは英国人コンポーザー/音楽家ギャヴィン•ブライアーズの「Jesus’ Blood Never Failed Me Yet」再演だった。トム•ウェイツ絡みでなんとなく記憶に残っていたものの、ライヴ演奏を体験するのはもちろん初めて。針飛びする蓄音機のようにえんえんループされる「Jesus’ blood never failed me…」のフレーズ(ロンドンの街路にいた浮浪者の声を拾ったもの)を軸に、ストリングス•カルテットが徐々に音を添える展開はさしずめミニマルとフォークロアの出会いと言ったところ。ジュリアン•コースター(The Music Tapes)がミュージカル•ソーで参加し、あのスプーキーな音色が不思議で美しいトワイライト•ゾーンを醸し出したのも良かったです。

続いてポップ•クイズ。今回のチーム:シャレー•メイトは音楽オタクが多いので「イケるかも?」とにらんでいたが、第一ラウンドの質問が非常に難しく、しかも参加チームも多かった=競争率高し。「1位になれないんなら意味無し、切り上げてライヴに行こうぜ〜」と序盤はブーたれ気味だったやる気のないチーム•メイトを、ビールを買ってなだめすかし…しているうちに、見事勝ちました!!これで二冠達成っす!
もちろん全員の知恵袋の貢献があっての勝利だけど、今回は頼りにしていた他のシャレー•メイトが案外駄目だった。お前ら、普段「レディオヘッド大好き〜!」とかさんざん言ってる割に、イントロ•クイズでトム•ヨークのソロ曲とレディオヘッド曲を聞き分けられないのはいかんでしょう(怒)。役立たず! (と、心の中で張り手)。ともあれ、ピクチャー•ラウンド、すなわち「写真を見て、それが誰かを当てる(肝心のスターの顔は塗りつぶされていて判読不可能)」では自分がかなり得点を稼いだと自負しております。たまたま、この質問の元ネタとして多く使われていた「ロック•スターとその両親(主に60〜70年代)」ってテーマのLIFEの写真家の本を、最近英タブロイド紙Daily Mail(=イギリスでいちばん低俗かつ右寄りな、最悪なタブロイドです)のサイトで見かけたのがラッキーだったんだけどね…フランク•ザッパの両親とか、やっぱ気になって眺めちゃいますよね?
昔からヴィジュアル•アイデンティフィケーションには強いのだが(これは、耳への刺激よりも目の情報に頼る傾向の強い日本人の習性も大きく作用している気がしますが)、他のチーム•メイトの男性3人がこのラウンドでズタボロだったのを思い起こすに、女性の方が細部に目は効くのか?と。以下が実録:

自分「この写真の女性スターは誰だろう?」
メイト「横にいる母親を見ろよ。鼻とか、イタリア系の顔じゃん。マドンナだ、マドンナッ!」
自分「…うーん…マドンナの写真は色々見てきたけども、これは記憶にないな」
メイト「マドンナだってばー」
自分「いや、マドンナは、そもそも腕のこの位置にタトゥーないよ!」
メイト「俺はマドンナに賭けるな。お前が間違ってたら、一生後悔させてやる」
自分「イタリア系なら、ガガちゃんだと思う。両親の服装が、どう考えても80年代じゃないし…第一、マドンナは父親と仲が悪いから、こういう〝父母娘仲良し写真〟って、白黒の子供時代じゃないとあり得ないでしょ。ガガだ!」

正解はガガちゃんでした。ケイティ•ペリーすらオレが当てたぞ。イェイ!つーわけで、くだらない女性週刊誌系のゴシップ誌だのセレブ写真を眺めてうつつを抜かす女性を「ミーハーだな」とバカにする男性も多いとは思いますが、たま〜にこうして役立つこともあるので、彼女達を責めないでくださいね。トップのメイン賞品は、次回12月のATP(=ザ•ナショナルがキュレーション)の4人部屋チケット!他にも音楽/アート本、CD他をいただきまして、ほくほくです。
なんだかんだで終了予定時刻を上回り(こういう仕切りの緩さはイギリスでは当然。少なくとも、どの進行もハナから30分プラスで考えればいいのに〜と、時間を守るのが得意な日本人としてはよく思います)、クイズに使われた会場:Crazy Horseに続いて出演するLost In The Treesの開演が遅れてしまい、会場の外にはうじゃうじゃと入り待ちの長蛇の列ができていた。申し訳ない気分でこそこそと外に出たのだが、賞品のポスターだのCDを両腕に抱えて外に出て来た我々に、その列の中から「クイズ勝ったんだね? おめでとう!」と声をかけてハイ•ファイヴしに寄ってきてくれた人々がいて、そのあたたかさにはジーンときました。

音楽に戻り、まずはキャプテン•ビーフハートの意思を継ぎ、その音楽を称えるThe Magic Band。去年暮れのロンドン公演は熱演の一言で、その素晴らしい印象がまだ記憶に新しいせいもあっただろうが、今回はちょっと物足りなかったというのが本音。ステージのセット•アップがスムーズではなかったのか、メンバーが苛立ちの表情を交わすなど開演後もしばしちぐはぐで、ジャズとブルースが溶け合うカオスの中からにょきにょき音の枝葉が伸びる、あのスリリングな切れ味と絶妙なバランスが聞こえてこない。
徐々に熱が上昇していくのがこうしたパフォーマンスの常なので、もうちょっと留まってじっくり観れば良かったのだろうが、他にいくつか観たいショウが重なっていたので切り上げざるを得なかった。とはいえ本当に演奏が上手い人達なので、機会があったらぜひ生で真価を体験してほしい。アメリカのジャム/即興好きロック•バンドの原点と言えると思う。

エレファント6の次男坊(?)とも言えるノイジーでサイケデリックなポッパー:The Olivia Tremor Controlは、大所帯ながらハーフ•ジャパニーズばりに爛漫にぶっとばすガレージ•ロックンロール•コンボぶり、そしてメロディックなチャームが実にご機嫌だった。決してスマートでもクールでもない(っていうかでこぼこ…)、しかし各々のオタッキーなセンスが活き活きとハーモナイズしシンクロするハッピーな音楽集団という意味で、彼らもまたE6スピリットの象徴だと思う。
「Jumping Fences」はほんと必殺のスウィートさだったし、ビル•ドス&ウィル•カレン=ハートのフロント•メン2人を見ていて、この人達はE6のビートルズだったのかぁ〜、と改めて。オーラスは名曲「The Opera House」で、サイケな爆音が怒濤の勢いで広がり、UFOクラブ時代のピンク•フロイドもかくや?のかっこよさだった。レコーディング音源での凝った音作りとリリシズムも大好きだけど、ライヴのはじけっぷりもOTCの大きな魅力のひとつっすね。

センター•ステージで、恐らくこの晩もっともオーディエンスを集めたのはSun Ra Arkestraだったと思う。もうじき88歳(!)というサックス奏者:マーシャル•アレンの指揮のもと、サン•ラの音楽/哲学/思想/音楽宇宙を現代に伝える彼ら。3年前のロンドン:Café Otoでのレジデンス•ショウが評判をよび(以降、ほぼ毎年同会場でプレイしている)、以来ATPを含む英インディ系フェスにもひっぱりだこと、古株のジャズ•ファンのみならず英欧のヤングな音楽好きに再発見されている観もある。
パフォーマーは総勢10人以上のビッグ•バンド編成で、年配ベテランもいれば中年も、マーシャル•アレンの孫と言っても過言ではない世代=オーケストラの未来を担う若いプレイヤーも含まれる。こんな風にラインナップの年齢層が広い音楽ユニットを観る機会は、それ自体が珍しいだろう。
個性的でアドヴェンチャラスな音楽/ミュージシャンが大好きなATPピープルをまず惹き付けるのが、さながらQuality Streetの箱をひっくり返したごときカラフルなステージ衣装。初めて見た時はほんとびっくりしたものだが、マルディ•グラとクリスマスとエジプト神話とジョージ•クリントンが混じった…としか形容できないこのアーケストラ•コスチューム、見ているだけでも気分がアガりますね〜。

Café Otoで観たショウはアヴァンギャルド〜フリー•ジャズ味が強かったが、今回はスウィング感たっぷりのビッグ•バンド•オーケストラ/ニューオーリンズ•ジャズ風で(守備範囲がとても広いバンドです)、ファンキィなリズム、歌い、踊り、ソロの見せ場で競い合うメンバーの陽気なノリと相まって、観客もどんどんヒートアップ。フェス気分を再び再燃させてくれたと思う。
アフリカンなポリリズムが打ち鳴らされる楽曲は実にコズミック&ヒプノティックな上昇感で、いやー、まじに彼らが宇宙からの使者に見えましたよ。しかしグルーヴィな偉容だけではなく、繊細に寄せては返す音が重なり、織りなす美、ギターの目もくらむ速弾き、エイドリアン•ブリューばり(?)のクレイジーな動物系ノイズなどなど、軽々と変容する柔軟さ&細部への目配りもばっちり堪能。GSYBE!キュレートのNightmare Before Christmas(2010)でオーディエンスをかっさらってくれたバルカン•ポップの雄:Boban&Markoでの盛り上がりに匹敵する、何も考えず楽しめる/近くに立っている人達を笑顔を交わし踊りたくなる、そんなライヴだった。
アーケストラの面々もオーディエンスの熱さに感動したようで、いっぱいの笑顔と感謝の言葉が場内に響いた。またも喝采。フィナーレはメンバー紹介を兼ねたインスト•ジャムで、ミニマルな演奏が続く中ひとり、またひとり…と挨拶し短いソロを披露、ステージを後にする。オーラスに控えるのはもちろん御大マーシャル•アレン(白髪ととんがり帽の姿は、さながら魔術師マーリン+ムーンドッグ?)だったが、紹介に続きステージ前方に歩み寄り、いきなりウィンド•シンセの即興独奏でパウパウぶいぶい言わせた奔放さと力強さに場内も再び発熱! 繰り返すけど、88歳でこれってのは尋常じゃないですよ。オーネット•コールマンもそうだけど、菜食主義はなんだかんだいって長寿なクリエイティヴィティの秘密なのか?

新作「Love At The Bottom Of The Sea」をリリースしたばかりのThe Magnetic Fieldsは、実はATP初登板だったりする。そもそもあまりツアーを多くやらない人達なので(筆者もこれまで2回しか観たことがないっす)、同行英知人のほとんども今回が初体験。その最新作は、かつての彼らのトレード•マークとも言えるMF流エレ•ポップ/ポケット•シンフォニーな音に久々に戻った…ということだが、ライヴの編成はステファン•メリット&クローディア•ゴンスンのおなじみ「かしましコンビ」に、アコギ、チェロ、ウクレレ/ヴォーカルと室内楽団の趣き。これはステファンの耳の持病(大きな音に過剰に反応し、耳の中で反響が起こる)のせいもあると思うが、ライヴの音量もぐっと抑えられており、周囲の雑音がどうしたって混ざってくるセンター•ステージの広い空間は、ミスマッチ感が否めなかった。バンドの格から言ってもここしかないとはいえ、前回観た時のようにクラシック向けのホール/シアターというのがベストだろう。
しかし、「69 Love Songs」の「A Chicken With Its Head Cut Off」からスタートしたセットは、たとえば夏の美しい宵に美味しいワインを傾ける時のような、あるいは瀟洒なプチフールを買って来てひとりきりで味わうような(うう、我ながら陳腐な形容だ:汗)、憂き世をふと忘れさせてくれる典雅で贅沢なメロディをひもといていった。「Come Back From San Francisco」に早くも心の中に降る涙に傘をさすことになったし、チェロのふくよかな響き、ステファンの物憂いバリトン/女性陣の涼やかな歌声、ピアノの刻むステップ…と、長年培われた細やかなアンサンブルとその磨き抜かれた完成度は、決して派手でもセンセーショナルでもないけれど、1曲ごとにため息が漏れる。

ひなびたウクレレでこんこんと聴かせるカントリー調の曲、シャーリィの童女のごとく無垢な歌いっぷりなど、随所に「ふふっ」と微笑みが湧くユーモアも随所に埋め込まれている。けれど、ステファン•メリットが描き出すビター•スウィートでデカダン、時に驚くほど赤裸々で辛辣、悲愴な歌詞の痛烈さと優美なメロとのギャップ/多層性は、さながらとげを隠したバラのよう。中盤のハイライト「Drive On,Driver」〜「My Husband’s Pie’d A Terre」はソングライティングの質とアレンジの妙が合致して素晴らしかったし、「69」から名曲中の名曲「The Book Of Love」「Grand Canyon」(ライヴならではのジェントルな音が絶品)と続き、再びゴーゴーの涙と鼻水の大洪水である。
とはいえ、ライヴの終わりの方で「もう二度とフェスはプレイしたくない」と言い放ってATP客の心に冷水をぶっかけてくれたように、ステファン•メリットという人の思考回路はなかなか難しいようだ(その、一部に名高い難儀さは、こちらの記事でも伺えます)。あの発言は、彼の耳のコンディションを承知していて、拍手も控えめで静かに聴く…というのが(暗黙の)了解であるMFファンだけを相手にする、というわけにはいかないフェスという状況と、MFというユニットのライヴにおける相性の悪さをジョークまじりに漏らした、ってことなんだろう。
が、それをああいう風にぶっきらぼうに言い切ると、背後の事情を測りかねる人々の中には、「せっかくこっちが演奏に感動し、拍手で応えてるのになんだよぉ!」と誤解も生じてしまう…。しかし、そこで四方が丸く収まるように当たり障りのないコメントをする=反応を気にして自己規制するのではなく、思ったことはそのまま口にしてしまう、ステファンの辛辣さ/強さはなかなかまぶしい。それは、「気に入らないなら、ここに留まる必要はないよ(=自分で決めなさい)」という客観的な姿勢であり、長い目で見れば、アーティストにとってもファンにとっても、いちばん正しいあり方だと思うのだ。
自分は、留まります。というのも、音楽家が毎度毎度素晴らしい作品を作るってケースは実に少ないし、たとえある作品が好きでも、他の作品は苦手…ってことは、ままある。だから、そのバンドなりアーティストを追うのは「義務」ではないのだけども、えてして、ファン心理というのは「(何があっても)見捨てないのがファンのつとめ!」みたく作用してしまう。もしかしたら、中には、その心理を(意図せず)利用する音楽家もいるんじゃないかと思う。それに較べたら、ステファンのように「来る者は拒まず、去る者は追わず」という根本をはっきり示してくれる人の方が、遥かに誠実じゃないか?と思うのだ……という面はさておき、自分は彼の紡ぎだす、デリケートな恋愛の綾=心理に内包される裏腹な思い(残酷さや憎しみも含む)を面倒がらずに描き出す、その優しさが好き。なので、たとえ「お前はクズだ」と罵倒されても、MFを愛でる思いに変わりはないんです。マゾ体質なのかしら?? 

ジェフ•マンガムをもう一度観て(初日よりも、個人的にはいい出来!と思いました)、この晩のライヴ篇のトリであるSebadohに待機。昨年のロンドンのショウに行った友達も「良かったよ〜」と言っていたので、とても楽しみだった。彼らを観たのは、確か「The Sebadoh」が出た時期の東京公演以来だから、かれこれ10+α年ぶりってことになりますか。うっひゃあ! 激しく老化を実感する瞬間です。
昔から「ジェイよりもルー」派ってのはもちろんだが、今回はミニットメン•デュオ時のマイク•ワットのMCのせいで03年:ATP@ロサンジェルスを思い出してしまい、あの時エリオット•スミス•トリビュートをやってくれたルーへの深い感謝の思いがぶり返してしまったため、このステージへの思い入れは炎上状態。が、ことセバドーに関しては、実はジェイソンの隠れファンだったりもします(若い頃のジェフ•トゥイーディーにちょい似なので)…ごめんねルー。なんでジェイソン側=ステージ向かって右側に歩を進めたのだが、男客の層がみっちりで突破が難しかった。くそ〜っ。
ともあれ。今回のツアーは「Bakesale」および「Harmacy」=90年代半ばが中心のセットで、「Harmacy」好きの自分にはたまらない!わけですが、深夜近い出番にも関わらずルーは満面ニコニコ&ジェイソンもお客を前に素直に嬉しそうで、いいライヴになりそう!な予感がひしひし。1曲目から「Too Pure」、そして2曲目で早くも!来ました〜〜〜っ!「On Fire」と続き、膝がガクガクです。メロディックかつジェントルでありながら、その下に流れるおさえられた切迫感がたまりません。はうー。

ウィーザー•クルーズに出たばっかで楽しかったけど、お客さんの中に誰かあのクルーズに行った人いる?」という話もMCに取り混ぜつつ、セットはほぼノンストップで畳み掛ける。演奏はばっちりタイトだ。「Skull」など、ルー曲の美しさを堪能させてくれる場面も良かったけど、ザクザクしたギターが冴えるパワー•ポップ調「Rebound」、ジェイソン曲でのハードコア•パンク(ハスカー•ドゥか?とすら思う火炎ブラスターだいっ!)…と、硬軟のバランスも抜群。ギター•チューニングの合間に「スクラッチ•アシッドにJSBXと、今回のATPはマッチョだよな…それに較べて、当時の俺たちは女々しかったよなぁ」等々笑えるMCをルーがカマしていたけど、セバドーの素敵さというのは、なけなしの男っぽさで粗く削りつつ、その奥に潜む切なさ/悲しさもちゃんと歌えていたところであり、グランジ〜オルタナ世代のエッセンスを体現していたとこなんだな、と思った。新作もレコーディング予定らしいですよ。イェイ!
で、この晩のセバドーに関して、「いやー、だけども俺は〝Gimme Indie Rock〟を聴きたかったんだけどねぇ」とかなんとか、知ったかぶり&うなずき顔でブーたれていた知人がいたのだが、そういう「気の利いた一言(quip)」を言うため=自己満足のためだけにライヴに来るようなこの手の輩――はっきり言って、今40代の男性には、掃いて捨てるほどいますな――には、思わず「じゃかーしいわ、引っ込んでろ!」と言いたくなった。
彼がこの晩SUB POPロゴのTシャツをわざわざ着込んで、さりげなくアピールしていたのも自分のシャクに触ったかも…いやまあ、ほんとにセバドーとサブ•ポッパーが好きなのかもしれませんよ?? が、たかがTシャツごときでバンド/シーンへの忠誠心を表明しようとする、その浅さは傍目にはすぐに底が割れますよ〜っていう事実に、いい年こいた大人=齢40過ぎても気づかない無邪気さ(悪く言えば無神経さ)が、自分には疎ましいのですね(ちょっと前に、Black FlagのTシャツを着ている男が急増してムカついたのにも似てる)。
この人は5月のIBYMにも行きたがっているんだけど、その時にはきっと、サブポップTではなくスレイヤーのTシャツを着て会場に向かうのでしょうね…そうやって、バンドTシャツを日や気分によって着替えるのと同じように、この人にとっての音楽ってのは、結局のところ、彼自身の(ひもじい)アイデンティティを語る「道具」にしか過ぎないのではないか?と。

ちなみに日本人でもひとり、こういうphonyなノリの男性が思い当たるので、これはおそらく国の違い云々ではなくて、世代の話なんだろうな。わー、怖い。わー、不快。こういう大人はなるべく避けましょうね、みなさん!!――ともあれ。この秋にはセバドーの来日公演/ツアーも決まってますので(詳細情報はこちらね!)、ばっつりと汗•涙•鼻水まみれで盛り上がってくだされ。すごく楽しいショウになるのは、100%保証。
はあ、これで終わりだわ〜…と脱力していたところに、同行知人達から携帯テキスト着信。「REDSステージで、スペシャルなコラボが急遽これから行われるみたい」!つーわけで急ぎ駆けつけたところ、サン•ラのメンバーとエレファント6勢による、急ごしらえ=即興のライヴ•ジャムがむんむん展開しておりましたよ。もちろん、演奏されたのはフェス初日にエレファント6ホリデー•サプライズが披露してくれてご機嫌だったサン•ラの「Enlightenment」のカヴァーです。
シンプルなリフが淡々と練る中、それぞれの楽器(サックス、ギター、チューバ、アコーディオン、トランペット、ヴァイオリン、ドラム…なんでもあり)を手にしたプレイヤー達が好き勝手に出たり入ったりする、ブリリアントにカオティックな光景。それはまるで、「最後の晩餐」に、ディランの「The Basement Tapes」のジャケット写真の面々が乱入したようだった。その、摩訶不思議なコミューン的情景を見聞きしているうち…そして、たまたま自分の目の前に立って、そのごったまぜに美しい光景をぼーっと眺めていたジェフ•マンガムの後ろ姿を見ているうちに、改めてATPというフェスそのものの魅力に思いが至りもした。

気心の知れた仲間達と過ごす週末は、それだけでも楽しいもの。しかし、そこに自分の本当に好きな音楽や映像がガンガン流れていて、しかも、同じくそれらの音楽を愛しサポートする人々が集まった場というのは、参加した個人個人の意識しないところで、見えないパワー(…まあ、その表現が大げさなら、一種の磁場と言ってもいいけど)を産むようなのだ。
ATPは過去に何度も体験してきたけど、場を共有するオーディエンスがフレンドリーで親切で、そのおかげで気持ちよくライヴを観れた…という意味では、今ATPは自分の中でもかなり上位に位置する。パフォーマンスの素晴らしさももちろん重要なんだけど、基本的には烏合の衆である観客達が「We are in this together」をシェアする、その感覚は、フェスという一時的なコミュニティのマジックに他ならない。そういう「場」がどんどん減っている現代社会において、こうした良いフェスというのは、やっぱり存続してほしいものなのです。

その継続/存続という意味で、次回=12月のATPをザ•ナショナルがキュレートするというのは、自分にはとても納得がいく。いや、ぶっちゃけ、マイ知人の大半の間では、このキュレーターは「なんでナショナルが?!?」と不評だったりもします。これは別にザ•ナショナルが悪い云々ではなくて、ATPのこれまでのノリには、どうもいまいちそぐわないくらい、イギリスにおいて彼らは「メインストリーム」と目されるバンドだからでせう。しかし、このジェフ•マンガムATP、ものすご〜〜〜〜く……いい意味でも悪い意味でも、非っ常に「90年代」な香りの強いラインナップだったわけで。若手やベテランも混じってはいたけど、エレファント6勢を筆頭に、90年代インディ〜オルタナの再評価って雰囲気は確かにあったと思う(それは、近年叫ばれている「90年代ブーム」ともシンクロしているわけですが)。
そう考えるに、次回はもうちょっと「今」で、00年代はもちろんのこと2010年代やブルックリン勢にも明るく人脈/コネも多い、ザ•ナショナルみたいな人達を呼び込むのは、流れとして適当ではないのか?と感じるわけです。80年代や90年代は確実にオ―ルド•ファンを呼び寄せるけど、それに頼っていると、フェスとしてはいずれ袋小路に陥っていく。その意味で、比較的若手バンドをキュレーションに抜擢し新たな血を取り入れるのは、ATPにとっても大事だと思うのです。
とはいえ、今回のフェス•プログラムにバリー•ホーガンが寄せた「挨拶」によれば、ジェフが本来提出した出演者のWish Listに含まれていたものの実現しなかったアクトには、Daniel Johnston、Caroliner Rainbow、そして…The Feeliesが含まれていたそう。さすがジェフ!! しかし、そんな引きがあっても、やはりフィーリーズはNY/NJ近郊以外ではライヴやらないみたいですね。やっぱ、自分からアメリカに行くしかないのか(トホホ〜)。でもまた観たいぞフィーリーズ&ヨーロッパ人にもぜひ彼らのライヴを体験してほしいので、バリー&ATP側には、引き続きしつこく交渉打診/説得工作を継続してもらいたいところ。あ、Mergeということならついでにもう一組、East River Pipeもぜひ。これはフィーリーズ以上に引っ張りだすのは難しいだろうが(たぶん無理)、一度でいいから生で拝んでみたい人です。

カテゴリー: music | タグ: , , , , | コメントする

All Tomorrow’s Parties curated by Jeff Mangum@Butlins,Minehead/9-11March:Day2

感涙、Boredoms

極北の美を織りなしたEarth

Scratch Acidの火傷上等!なモロトフ•パンク

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

夜更かししたにも拘らず、7時過ぎには起床。いったん目が覚めると二度寝ができない質なので、少し待ってコーヒー•ランで外に出る。今回は、コーヒー用のドリッパー&フィルターを持参し忘れたので(シャレーによってはフレンチプレスのコーヒー•メーカーがキッチン備え付けであるんだけど、今回のシャレーは古いからかキッチン設備はしょぼめ。まあ、フレンチプレスは好きじゃないからいいんだけど)、毎朝コーヒー買いに出かけることになった。朝最低3杯は飲むカフェ中には、たとえフェスの場であってもコーヒー確保はかなり重要。イギリスだといまだに、たま〜にインスタントを「コーヒー」と称して出す店もあるので。
とりあえず「どこか開いていないか…コーヒー…」とよろよろした足取りでメイン会場施設に向かったところ、新たにSoho Coffeeというチェーン•カフェがオープンしていて、そこは健気に朝早くから開店していて助かった。一応フェアトレードで、味も悪くない。かつWiFiが使えるのでなにげに朝から客が集まっていたが(でも、基本的にはスタバ系のカフェなのに、サラダ•バーがあるのはかなり珍しいと思う)、この日はサンドイッチを買ってるマターナ•ロバーツとセブ•ロチフォード、日曜朝はマグネティック•フィールズのステファン•メリットが不機嫌そうにコーヒーを飲んでいる姿を目撃できて嬉しかった。スカイライト•パヴィリオンにあるので、コーヒー好きはこちらに直行ください。

コーヒー飲んで落ち着いたところで、シャレー•メイトと共にマインヘッドの街探索に繰り出す。何度も来ているので観光ではないけど、街中のチャリティ•ショップや好きなアンティーク店を周り、シメに昼食としてフィッシュ&チップスを食べようって話。残念ながらチャリティ•ショップに中古レコ収穫はなかったが、アンティーク…ってか、たぶんこの街唯一の古物ジャンク•ショップ(=古銭•切手•食器/陶器•カメラ•古雑誌•絵画•楽器などなんで扱う)は、眺めているだけでも楽しい妙な品物がゴロゴロしていて立ち寄らずにいられない。
そこでJ.E.Cirlot著「A Dictionary of Symbols」のハード•カヴァー古本を購入することにしたところで、ATPで毎回行われるポップ•クイズの司会者:Lord Sinclaireにばったり遭遇。いつもスーツ姿+撫で付けた髪型でダッパーなこの人はバーミンガム出身:ブラック気味なユーモアと共にクイズを進行する口調が楽しいんだけど、これまでも何度かチャリティ•ショップやレコ屋で出くわしてきた、アナログ好きな趣味人。挨拶もそこそこに「で、何か残ってる?」と聞かれたのには笑ってしまった。偶然だろうけど、この店のこの日のレコード•コーナーにはモンティ•パイソンのレコード(サントラ含む)が4、5枚はあって、すごい高確率だった。この店をジェフ•マンガムが訪れたら喜びそうだな…と感じずにいられなかった。
土曜のライヴは午後1時からスタートなので、大急ぎでお気に入りのフィッシュ&チップスの店に向かう。Bampton Street Fish Barって名前で、海辺からはちょっと引っ込んだエリアにあるので見つけにくいかもしれない。しかし、注文を受けてから魚を揚げる、昔ながらの英国調フィッシュ•バーのノリと新鮮な味〜リーズナブルな価格は、多少歩いても行く価値ありかと。住所他はこちらです:7B Bampton Street, Minehead, TA24 5TR/ Tel 01643 702968

無事に腹も膨れたところで会場に急いで戻り、元ニュートラル•ミルク•ホテルのメンバーであるジェレミー•バーンズ率いるA Hawk And A Hacksaw。ベイルートとの共演でもおなじみの彼らだが、今回はセルゲイ•パラジャーノフの映画「Shadows of Forgotten Ancestors(火の馬)」上映にライヴ•スコアを付けるという乙な趣向だ。バルカン•フォークの影響濃い音楽集団だけに、志向&顔合わせはばっちり。ゆえに午後1時という比較的早いスタートにも拘らず場内は混雑、入場規制も軽く敷かれるほどだった。ヴァイオリン、パーカッション、アコーディオン…と郷愁をそそる響きが美しかったけれど、残念なことにステージが低い会場なため人々の頭でスクリーンがまったく見えず、15分ほどで切り上げた。みんなが床に座って観てくれたらなあ。
Boredomsは、今回ドラマー5人+ギタリスト14人という大編成。ステージ中央にドラム•キットが円陣を組み、後方にギタ―•オーケストラ、EYEのカスタマイズ打楽器(ギター•ネックが何本も突き出た、巨大なグロッケンシュピールみたいな形状)という配置で、1時間半というパフォーマンスの尺も含め、かなりの偉容である。オーディエンスも「何が始まるのか?」と目を丸くして見守っている感じだ。内容は、今ATPでスクラッチ•アシッドと1、2位を争うベスト。別に競争じゃないけど、同行知人の多くも同じ意見だった。

イントロは「いつの間にか演奏が始まっていた」というほど穏やかなもので、シンバルの擦過音、ミニマルなギター•ノートが少しずつ寄せ返し満ちていく。EYEはコンダクターといったところで、腕の上げ下げ他、全身を使って音の流れ•隆起をみごとにコントロール。彼はもちろん、全パフォーマーの集中力は会場の空気にまで伝染するようで、つい握りこぶしになってしまう。
ビルド•アップがピークに達したところで、シャーマニックな咆哮やチャントを発するEYEの磁場を中心にビッグなコードが不協和音の渦となって突き上げ、ドラムもワイルドに火の手をあげる。その容赦ない猛々しさを全身で浴びるうち、ほぼ1年前の東北地方太平洋沖地震、そして津波の凄惨なニュース映像を思い出さずにいられなかった。
そんなことを感じたのは、自分が日本人ゆえ=思い過ごしかもしれない。終演後に英知人達にそのアナロジーを語ったところ、「ああ、もう1年になるんだっけ…」というノリで、彼らにとって実感はないようだった。しかし、このタイミングをボアダムズが無視するとは考えにくいし、あの30分近いコンポジション――タイトルは知らないけれど――の生み出した音のカタストロフィとエモーショナルなコーダは、ただの偶然ではないと思う(彼らは翌日もパフォーマンスを行ったが、そこでは1分間の黙祷が捧げられた)。
吸い込まれるように聴き入っていたオーディエンスが感動の大喝采で応える中、2曲目は一転:ボーズ•オブ•カナダを思わせるエレクトロなサウンド•スケープからスタート。踊れるビートに移行していき、バトルズ最新作を思わせるアブストラクトなアヴァン•ダンスの輪が広がった。あっぱれな振れ幅! 

ライヴ後も会場の外でしばし同行者達と「素晴らしかった」と語り合うほどだったが、隣でたばこを吸っていたアメリカ人のお兄ちゃんが混じって来たのでちょっと雑談。酔い過ぎで(まだ午後4時なんですけど:汗)ろれつが回ってないのが相当におかしかったが、ポートランド出身とのこと。ニュートラル•ミルク•ホテルへのアメリカ人の思い入れをああして目の当たりにしたのは個人的には初めてだったし(彼いわく、「アメリカ人であることのバカらしさをジェフ•マンガムは知り尽くしている」)、ニルヴァーナとシアトルがいかに素晴らしかったか!同じく北太平洋エリア人としていかに誇りに思っているか!という話を力説してくれたのも興味深かった。
そんなこんなでThe Apples In Stereoを見逃してしまったが、お次はJoanna Newsom。毎回はずれなし、ほんとソリッドなライヴ•パフォーマーなんだけど、今回はハープとグランド•ピアノを往復しながらのソロ演奏。彼女のコントロール&コマンドがよりくっきり響いてくる。もっかの最新作「Have One On Me」を軸にするセットだったが、ラグタイム風なメロディと物語を丁寧に紡ぐ語り部としての彼女の姿に、ふとランディ•ニューマンを思い出したりも。今ごろ気づいたのだが、ピアノの響きというのはハープにとても似ていますな。
知人達に「クラウト•ロックぽいから観よう」と誘われ、Yamantaka/Sonic Titansを観戦。バックグラウンドはまったく知らなかったが、カナダ発のマルチ•メディア/アート•コレクティヴ(→フェス•プログラムの受け売り)だそうで、日本や中国などアジア系メンバーも混ざっている。オーディエンスの受けは悪くなかった(ボアダムズのEYEも観てました)…んだけど、自分の耳にはかなり昔の日本のヴィジュアル系〜プログレ寄りのハード•ロックとアジアン•ポップの間の子のように響き、う〜っく、聴いていられなかった(そういう味が、今や巡り巡って「イン」なのでしょうか??)。メンバーのメイクがデーモン小暮あるいは大槻ケンヂっぽかったのも、まじめに聴いてられなかった要因かもしれない。にしても、クラウト•ロックの「ク」の字もなし。知人達も早々に切り上げ、「レコーディング音源と全然違った」としょぼくれていた(笑)。

気を取り直し、センター•ステージでLowに待機。最新作「C’mon」でバンドとしてのパワーがまた戻ってきた感もあり(長くやってるバンド/アクトだと、「波」のサイクルはどうしたって生じるもの)、しかしロンドンでのショウはしばらく逃していたので楽しみにしていた――んだけど、期待を遥かに上回る演奏に、ため息連発&釘付けになってしまった。
「Nothing But Heart」からスタートした演奏は、彼らのストイックさ/ミニマリズムが発する独特なテンションでたちまち場内を染め変える。ゆったりしたテンポ、時に俳句ばりな歌詞、抑制されたメロディの動き。一般的なポップ/ロックのアプローチとは異なるが、余計なものがないぶん、彼らのショウでは「ナイフを刺せるかも?」と感じるくらい静けさや空間が具体的に迫ってくる。かすかな動きにも身震いが走る。その穏やかな重みとエモーションの浸透は、たとえば無音で降りしきる豪雪に包まれる、あるいはスロー•モーション撮影された花火を無音で見る感覚に近い。この晩の演奏にファースト•アルバムのシンプリシティを思わせるものがあったのも、その感を増したかもしれない。
じわじわ温度を上げるアランとミミの声の重なり合いに聞き惚れたところで、ロバート•プラントにもカヴァーされた名曲「Monkey」がキック•イン。グルーヴィなドラムと、それまでためていたエネルギーを解き放つごとくコーラス部のダイナミズムは圧巻。セットの就寝となった最新作「C’mon」からの「Nightingale」はただただ美しかったし、続く「Violent Past」の一転:軋むギター•サウンドから立ち上る不気味で不穏な雰囲気に、美と恐れは感情を動かすという意味で同質なのだ…と改めて感じた。(これまた)名曲「Sunflower」のエピックで荘厳な調べはハイライトで、つい涙がこぼれてしまった。
久々に観たので、余計にロウの音楽力が心にズバン!と入ってきたってのもあったのかな? ともあれ、やっぱりこのバンドを好きでいて良かった…と心の底から感じる、そういうライヴだった。一緒に観ていた友人はロウを何度も観てきた人だが、その彼も(「このバンドはいつもライヴが秀逸だけど」と認めた上で)「今夜はちょっとすごかった」と嬉しそうだった。

最新作「Angels Of Darkness,Demons Of Light1&2」も素晴らしかったミニマル•ドゥームの至宝Earthは、ディラン•カールソン(石像を思わせる峻厳な顔立ちを拝むだけで改まった心持ちになる)&アドリアンヌ•デイヴィスのコンビにカール•ブラウ(B)、ロリー•ゴールドストン(チェロ)が加わっての4人編成。低音域ヘヴィでひたすら重く沈み込んでいくサウンドがドォー…ンと耳を震わせ、身体全体を引っ張りながら残響していく。眠気と格闘している時の、腕や脚は重力に抵抗してもがいているのに、精神は半ば無意識の領域にある、あの状態に似ている。しかし旋回と上昇の螺旋構成のギター•リフが絡むことで、闇の中にもほのかな明かりが感じられるのは泣けた〜。
チェロの悲愴な響きも含め、各サウンドが精緻なコントラスト/エモーションのレイヤーを積み上げていく長尺のセグメントも良かったが、「Tallahassee」ではメタリックなリフがうなりを上げ、かつての彼らを彷彿させてくれた。ラストは「The Bees Made Honey in the Lion’s Skull」で、プリミティヴに打ち下ろされるドラム、ルミナスなギターのトーンはシカゴ音響派のそれにも通じる瞑想的な美しさ。しかし、音響派にはない雄大なソロの存在が、ロック的な昂りをもたらしている。
満点…と言いたいところだけど、音が小さすぎたのは切なかった&あまりにもったいなく感じた(周りで最初から最後までライヴも観ずにくっちゃべってた連中、その無神経さにはらわたが煮えくり返った)。敢えて音量抑え気味なライヴPA設定だったのかもしれないけど、このバンドのサウンドは閉じた空間で、爆音で聴きたい性質のもの。サウンド•スケープの広大さを堪能するためにも、次回はぜひ、センター•ステージでお願いしま〜〜す。

USハードコア好きがわさわさと馳せ参じた伝説のバンド:Scratch Acidは、いやはやすごかった! ジーザス•リザードもATPで観た&素晴らしかったけど、エモさとタフネスという意味ではこのSAのショウの方が確実に上だったと思う(同行知人達も、口々にベスト•アクトにあげておりました)。
深夜にも拘らずぎっちり詰めかけたオーディエンスをデイヴィッド•ヤウがぐっとねめつけ、ド頭からフガジ直系の屈強なリズム•セクション(「タイトなバンド」は色々観てきたが、このリズム隊の鉄板さは最上級)がグロリアスにうねり出し、鎖を切って飛び出した狂犬のごとくヤウの声が噛み付く。知人いわく「ヤウの前ではイギーすらおとなしく見える」。なるほど、仰る通りですっ。

2曲目で早くも半裸になったヤウに向け、オーディエンスも揺れ、モッシュし、水だのビールだの、なんらかの液体を頭上にスプラッシュして応戦。デトロイト•ロックも真っ青のジャングル•ガレージ•ビートに煽られて(?)ますます憑依状態のヤウ、早くもダイヴだ! ここらへんでもうフロア前方は身の危険を感じるほどだったので、後退っす。男ファンの盛り上がりはものすごくて、この音は彼らの中の蛮性を呼び覚まさずにいられないようですな。しかし、ステージを離れると実はジェントルマンなヤウ(今回観ていて、実はマーク•E•スミスにちょっと似なのに気づいたのは新発見)、MCで「今日のボアダムズは、自分がこれまで観たライヴの中でもベスト」と感動を明かすなど、音楽人としての熱い情も垣間みせてくれた。
ただラウドでワイルド&クレイジー一辺倒ではなく、バットホール•サーファーズにも通じるサイケデリックなフリーク•ノイズ、インダストリアル•ロックの前触れだったかも?とも感じずにいられなかった冷徹なビート•メイクなど、このバンドならではのユニークな個性/混じり方もしっかり受け取った。全開バーストで突っ走ったびっちりの1時間、ノンストップな音の往復ビンタあるいは千本ノック?な猛攻だったが、このレアな機会を祝福するファンの熱狂的なアンコールに応え、ダイナミックな新曲で爽快にフィナーレ。伝説がなぜ伝説たるか、その本領を存分に味わった。

シャレー•メイト達は「まだこれから!」と元気いっぱい、秘教テクノ/エレクトロニカ•デュオDemdike Stare、そしてヒプノゴギッグの名手Oneohtrix Point Never…と連戦を続けたが、早起き鳥の自分はもう限界。ひとり宿舎に撤退し、インドネシア諸島の秘境を巡る、10年かかりの民族文化TVドキュメンタリー「Ring Of Fire」を観ながら眠りこけてしまった…が、このドキュメンタリーすんごく面白いので、DVDで改めて観るつもりっす。

カテゴリー: book, film, music | タグ: , , , , , | コメントする

Dirty Projectors:The gun has no trigger

ATPの残りのレポを…と思いつつ、その間にダーティ•プロジェクターズの新曲(たぶん、新作アルバムからのティーザー)が
公開されたのでお知らせ。バンドのメーリング•リストに登録してる方なら、もうご存知と思いますが。
こちらの公式サイトのトップ•ページで試聴できるので、
興味がある方はぜひ。ギター、たぶん使ってないですねこの曲。1回聴いた時はデモか?と思ったくらい
アレンジはシンプル。ヴォーカルがこんなにはっきり聞こえるのも、またメロディがオ―ソドックスなのも驚きです。
にしても、サイトにアップされたイメージ(=グレイの石板?に解読不可能な文字が羅列されたもの)はなんともクリプティック。
どこかの誰かがこの暗号を解読してくれることを祈りましょう。

カテゴリー: music | タグ: | コメントする

All Tomorrow’s Parties curated by Jeff Mangum@Butlins,Minehead/9-11March:Day1

いらっしゃいませ!フォト•コラージュのタンバリン娘がお出迎えです

Elephant 6 Holiday Surpriseのナイスなフィナーレ

ご機嫌でしたHalf Japanese

Thurston Moore。左端が筆者を悩ませた「えっジム•オルーク?」

Minutemen Duo=無敵

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

昨年10月、約1ヶ月半後に予定されていたジェフ•マンガムのキュレーションによるATPが3月に延期になったと知った時は、ついつい「FFS!」とブーたれてしまった。ATPは誠意のあるプロモーターとしてリスペクトしているし、そんな彼らにとってもあの延期決定は楽な決断じゃなかっただろう。けど、ATP史上初の椿事であるのはもちろん、これくらい大規模なイベントの延期そのものがなかなかない話でもあり、まじにおったまげ村〜。最寄駅:トーントン行きの電車を予約しようとしていた直前のアナウンスだったので、ほんとぎりぎりセーフ(電車チケは払い戻し不可能なので)。ロンドン版I’ll Be Your Mirrorのスレイヤーと並ぶマイ目玉:ガイデッド•バイ•ヴォイシズもキャンセルになったし、いや代打のアフガン•ウィッグスもいいんですけどねえ…という感じで、「黒星やん」なモヤモヤが生じてしまったのは事実である。が。

すまなかったATP!やっぱあんたら素晴らしいフェスだ!

…と、マンガムATP終了後に心底思った&平謝り。それくらい楽しく、充実していて、雰囲気も最高。延期決定当初もっとも不安だった出演者の顔ぶれも、目当てのアクトはほぼキープ/変更にしてもマグネティック•フィールズ他が追加されたことで、自分にとっては吉。というわけで、ATPに対する愛と忠誠心がリニューアルされる内容になったのは意外でもあり、喜ばしくもあった。英版は自分にとってこれが18回目(12月のNBCも含めて)の参加だったが、その中でも歴代ベスト5に入る経験だった、と付け加えておきましょう。
※このポストを書いているうちに、奇しくも4月開催予定だった日本版IBYM延期のアナウンスが。楽しみにしていた方はさぞがっかりしているだろうが、上記のように「延期の結果内容が向上」って可能性もあるので、落ち着いて今後の展開を待ってもらえればと思います。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

今回の道程は、パディントン駅から電車で2時間半弱→会場の最寄駅トーントンへ→スコットランドからはるばる来襲〜ブリストル空港に入った友達にレンタカーで拾ってもらい会場に直行というコース。シャレー(宿舎)をシェアする残るもうひとりの友人は、一緒に行こうと誘ったにも拘らず「俺はマイカーでロンドンから飛ばすんで〜」と豪語していた…が、案の定、金曜午後のロンドン渋滞に巻き込まれ、我々より到着は3時間近く遅れていた。ちなみに我々が乗った電車は実に乗客の7割近くがATP客という「Festival Express」状態で(笑)、ジンのボトルとトニック持参のアメリカ娘が早くも車内で同行者と酒盛りを繰り広げる光景も見受けられた。

受付で友達がチェックインを済ませるのを待っていたところ、「マリコ、来い!」と呼び入れられる。なんじゃ?と思ったら、受付の壁に「Machine-wrapped,with butter」の見慣れたフレーズを綴ったプリントアウトが貼られているではないか! 友人達とハイ•ファイヴして爆笑の嵐だった…と書いても、このブログをマメにチェックしてくださている実に奇特な方以外には「なんのこっちゃ?」な話だと思うのでいちおう説明すると、この奇妙なフレーズはこちらのポストで取り上げた、エリック•アイドルのポスト•パイソン企画「Rutland Weekend Television」でももっとも有名、かつ人気のスケッチ「Gibberish(ちんぷんかんぷんな会話)」がオリジン。エリック先生の超絶舌芸はもちろん、ヘンリー•ウルフのもっともらしい受け答えも最高なこのフレーズ、一時期音楽好きな友達との間で大流行したこともあり、偶然とはいえおかしかった。
ちなみにジェフ•マンガムはパイソン•マニアなようで、宿舎のテレビで見れるATPTV(キュレーターとATPがセレクトした映画/ドキュメンタリー他が金曜から月曜朝まで常時放映されている)もパイソンてんこもり、Flying Circusから始まりラストはLife of Brianでありました。

まずはセンター•ステージ:フェス開幕を告げるElephant 6 Holiday Surpriseからスタート。ホリデー•リゾート施設で開催されるフェスにもってこいの名称の彼らはエレファント6および関連バンドのメンバーから成る流動的な音楽コレクティヴで、かつてはエレファント6オーケストラと名乗ってもいた。それぞれの楽曲を、その場に居合わせたラインナップでプレイする…というゆるい構成で、飛び入りもあり。オリヴィア•トレマー•コントロール、エルフ•パワーの面々を中心にした今回の顔ぶれからは、懐かしやジャービルズ、サーキュレートリー•システムなどのトラックが披露された。
男女10人以上が入り交じり、ステージには普通のロック楽器(ドラム•ベース•エレキ)からチェロ、フルート、バンジョー、チューバ、サックス他の管楽器、ミュージカル•ソーまで所狭しと詰め込まれ、さながらカオティックな音楽ジャンク•ショップの楽しさというか、混浴銭湯というか…しかし抜群だったのが、フィナーレのサン•ラの「Enlightenment」カヴァーのロング•ジャム。演奏を続けるプレイヤー達が二手に分かれてステージ両端からフロアに降りていき、観客の中を行進しながら会場の中央で再び合流、会場外にまで進み続ける…という展開にオーディエンスも大盛り上がりで、一緒に練り歩きシンプルなリフをハミングする者もちらほら。
ニュートラル•ミルク•ホテルの「The Fool」を思わせる曲であるのはもちろん、ニューオーリンズの伝統的な葬列パレード、あるいはカーニヴァルにも似たその行進の光景は、同時に、ATPの基本である「ファンとミュージシャンによる音楽の祭典」というコミュニティ•スピリットをバチーンと胸に焼き付けてくれた。その連帯感があるからこそ、ATPは特別だし気持ちいい。オープニングにふさわしい、とても素敵なパフォーマンスだったと思う。

60年代のグリニッジ•ヴィレッジ時代から活動を続けるパフォーマンス•アーティスト:Charlemagne Palestineは白髪の好々爺。ぬいぐるみやおもちゃでごてごて取り囲んだ、いわば「祭壇」の中央にグランド•ピアノ他を据えて演奏する姿はエキセントリックだが、和音中心のミニマルなプレイは厳かですらあり、アウトサイダー•ミュージック(タイニー•ティムとか)と前衛の間をいく存在と言えそうだ。お客が集中するであろうと思い、そのままセンター•ステージに居残ってJeff Mangumに待機。ATPにしては珍しく「写真撮影/ビデオ撮影は厳禁(見つけたらつまみ出します!)」の張り紙が出ている。

フル•アルバムはたったの2枚、しかしセカンド「In The Aeroplane Over The Sea」が一部に熱狂的なカルト人気(筆者の友達に、あの作品を「90年代のベスト•アルバム」と言い切る人もひとりいるほど)を誇るバンド:ニュートラル•ミルク•ホテル。その中心人物であり、近年まで隠遁者めいた存在だったジェフは、モダン•インディ界の伝説のひとりだろう。登場を待つ場内の空気も張りつめているが、かつてのディラン〜ドノヴァンを思わせる帽子から長髪がのぞくジェフがアコギ4本に囲まれたスツールに着席、1曲目=必殺な「Two Headed Boy Pt.2」が終わるや、堰を切ったように喝采が広がった。独特なやや鼻にかかった声と節回しはまぎれもなくジェフであり、ライヴ音源「Live at Jittery Joe’s」とさして変わらないのはある意味驚異的でもある。続く「Holland,1945」で早くも合唱のさざなみが沸き立ち、「Song Against Sex」の軽快なカッティングとグルーヴがキックインするや、(神妙に遠慮がちに、しかし歓喜せずにいられなかった)。立て板に水とでも言うべきジェフの字余り気味な歌いっぷりに、だんだんエンジンがかかってきた感じだ。
「Gardenhead/Leave Me Alone」もこれまたラムシャックルなノリが素晴らしかったし、ザ•ミュージック•テープスのジュリアン•コースターがミュージカル•ソーで共演、ほのかなペーソスの味を添えていたのはナイス(ちなみにジュリアンは他のアクトのショウにも顔を出し、週末中八面六臂の活躍ぶりだった)。「The King Of Carrot Flowers」ではマジに大合唱で、NMH人気の高さを改めて見せつけられた。以前もどこかで書いたことがあるけど、この作品のリリース当時もたまたまロンドンに暮らしていて、そのあまりに地味なリアクションとエレファント6人気の低さには驚かされたもの(日本ではアップルズ•イン•ステレオの「Fun Trick Noisemaker」、オリヴィア•トレマー•コントロール「Dusk At Cubist Castle」が話題〜エレファント6にも脚光が当たっていたので、そのギャップがショックだった、というのもあるかもしれない)。しかしそこから10余年、着実に地下水脈のごとくファンのネットワークを広げていたカルト•ヒーロー達(ジェフだけではなく、E6連全員へのトリビュートでしょうこのATPは)がこうしてきちんとペイバックを受ける光景を見守るうち、思わす涙腺がゆるんでしまった。
しかし、いちばん泣かされたのは「Oh Comely」。地味かもしれないけど素晴らしい曲だし、ジェフのシド•バレット〜英ウィアード•フォーク(ドノヴァン、インクレディブル•ストリング•バンドetc)味がばっちり伝わるパフォーマンスには、ほんとしびれたっす。オーラスはE6勢8人が加わっての「Two Headed Boy」〜「The Fool」で、バルカン•フォーク調の盛り上がりで締めくくってくれた。

いつもに較べ金曜に人気パフォーマンスが集中した感もある今回、自分にとってのこの晩の締め:マイク•ワット&ジョージ•ハーリー(ミニットメン•デュオ)が終わる午前2時までびっちり詰まっている&かなりの長丁場なので、食料&ドリンク買い出しのため近所のスーパーに一瞬抜け出すことにする。ジョアンナ•ニューサムはもちろん観たかったけども、彼女は明日の2回目のパフォーマンスで目撃することにしよう。
その前に、Matana Roberts&Seb Rochfordのコラボを鑑賞。マターナはシカゴ生まれのジャズ/インプロ•サキソフォン奏者で、以前もATPで素晴らしいショウを見せてくれた人。セブはポーラー•ベア/アコースティック•レディランド他で知られる多方面から引っぱりだこの腕の立つジャズ•ドラマーで、クリスマス•ツリーを思わせるジューフロ(Jew Flo)も最高。アフリカンな緻密なビートが静かに刻まれ、そのバックドロップにマターナがモーダル&ミニマルなサックスを点描していく様は、まるでそこだけ60年代のジャズ•クラブにワープしたかのようだった。

会場=バトリンズのそばには歩いて10分ほどの距離にでかいス―パーマーケット:テスコが横たわっているのだが、昨年その隣にもうひとつの大手チェーン:モリソンズもできた。ので、今回はものは試しとモリソンズにトライしてみたのだが、いやー、やっぱ最悪だわ。イギリスにおける大衆的なスーパーの格というのは、「中流っぽさ」でジャッジすれば①センズベリー②テスコ③モリソンズの順になるのだが(ウェイトローズとマークス&スペンサーは中の上くらい)、モリソンズは…安いとはいえどの食品もいちいち不味そうに見え、デリのピザひとつ買うのも躊躇するほど。もしもATPで自炊をしたいと思われる方は、調達はテスコの方がまだマシ&チョイスも豊富ですぜ。とはいえ、閉店時間間近のイギリスの片田舎のモリソンズの通路で、グループ•ドゥーエのメンバーが(派手なステージ衣装のまま)うろうろしながらジュースなどを買い出ししているシュールな光景に出くわしたのは楽しかったけども。

会場に戻り、The Fall。作品もどんどん出るし、ライヴもよくやっているのでわざわざここで観る必要もないっちゃない…のだが、マーク•E•スミスはやはり拝まないと気が済まない。彼らをATPで観るのはこれで3回目だと思うが、音響が悪く、むやみにでかいだけの大スペース:パヴィリオン•ステージ(今回も使われてなかった。たぶん、今後ここが使用される可能性は少ないだろう)で映像まで使っての大規模なショウだった前回に較べ、このバンドのガリガリに硬質なガレージ•サウンドが堪能できる今回のセンター•ステージは大正解! モーターヘッドばりに鉄板で熾烈なスピード狂ロックンロールが炸裂し(ソニックスのカヴァーもご機嫌や)、伊達に30年以上やってないなぁ〜と。現在の核であるマーク&エレーナの極北夫婦コンビも素晴らしいが、「The Real New Fall LP」以来、マークの解き放つ濁流に屈しないタフなドラム•ベース•ギター勢をバックに据えているのもナイスである。にしても、演奏中も片時も肩から離れないエレーナのハンドバッグには、いったい何が入っているのだろう??と、非常に気になった。マークがステージ上で急に発作か何か起こした時の応急処置/処方箋だったりして…?

レッズに移動し、Half Japanese。フォールに負けず劣らずのこれまたベテラン:デイヴィッド&ジャド•フェア兄弟を軸として始まったこのユニット、たとえばジョナサン•リッチマンがパワー•ポップを演ってるというか、朴訥で天真爛漫な驚きと音楽に対するピュアな興奮•喜びを維持しながら今も活動を続けていて、ほんと素晴らしい。この晩のパフォーマンスもご機嫌で、勢いよくバーストするノリのいいメロディとジャドのプレイに難なくついていくバンドのタイトさ(=SSTバンドを思わせるものがあった:素敵)は、深夜も近づき酒気が支配しつつある会場に爽快なバースト感をもたらしてくれた。酔い&眠気に負けてはいられませんね!
というわけで、Thurston Moore。構成はサーストン+ドラムス+ギタリスト+ヴァイオリン奏者で、最新ソロ「Demolished Thoughts」での、それこそモーリス•ディーバンクを彷彿させる端整なギター•プレイを聞かせてくれるのか…と思いきや、インスト•ジャムから始まったセット前半は「See Through Play/Mate」、「Queen Bee And Her Pals」など「Psychic Hearts」中心で、ソニック•ユースとはひと味違うサイケでノイジーなパッセージを堪能した。
しかし、それ以上に気になったのがサイド•ギタリスト…若い頃のジム•オルークに瓜二つのプレイヤーで、いやまじに最初は「わおジム付き!」と勘違いしたほど。4月の日本版IBYMキュレーターでもあることだし、ここらで打ち合わせも兼ねて来英したのか?等々思いめぐらせてしまうほどだったが、どう見てもルックスは00年代のジムのそれだし、「他人? それとも??」と音楽そっちのけでえんえん考えこんでしまった。とんだライヴの邪魔者である。しかし、今ATPを手伝っていた知人の友達が彼のアテンド役だったそうで、その人によれば「ジム•オルークに見えるけどジムじゃないよ」とのこと。翌朝、コーヒーを買いにサイトをうろついていたところこのギタリスト氏が宿舎の外で雑談している姿に出くわし、改めてさりげなく観察したらやっぱりジムではなかったのを確認。まぼろしのジムだったっつーことで。

1時になり、いよいよお待ちかね〜Mike Watt&Geroge Hurleyによるデュオ版ミニットメンです。制服と化した感もあるチェック柄シャツのマイク•ワット、すっかり白髪のジョージ•ハーレイが喝采の中登場、Dブーンへの言葉に(自分も含め)年配客中心のフロアがガオォーと盛り上がったところでムチのようにしなるファンク•ベースが一閃、ジョージの突貫ビートと組んず解れずのジャム•バトル開始とあいなった。プレイしてる時が一番楽しいんだろうなあマイク•ワット…と思わず頬がゆるんでしまう笑顔いっぱいのプレイ、ジョージとの呼吸の合い方にいたっては芸術品の域。ほぼノンストップでびっちり1時間というスタミナもリスペクトだし、何より「パンク版キャプテン•ビーフハート」とでも言うべきミニットメンの複雑で入り組んだ楽曲に思いっきり酔わされた。
友人達はジョンスペを観に行ってしまったが、ひとり宿舎に戻り、ATPTVでスタン•ブラッケージの名作「Dog Star Man」を久々に鑑賞。そのままがんばって起きていて、サン•ラ映画「Space Is The Place」を観るのじゃ…と思っていたのだが、ソファで眠ってしまっていた。

カテゴリー: hall of dudes, music | タグ: , , , , | コメントする