The Walkmen @Islington Academy,25Aug2010

もう一ヶ月以上前の話になるが、Fat Possumからの新作「Lisbon」リリースを控えたThe Walkmenのライヴに行ってきた。レディング/リーズ出演の前に、ロンドンで軽くウォーム・アップというところだろう。
そういや今回超ラッキーだったのは、前座がAvi Buffaloだったこと!同じ週に彼らの単独は観ることにしていたけど、この晩のチケットが発売された時点ではサポートはアナウンスされておらず、結果として「一粒で二度美味しい」ライヴになりましたとさ♪そのAviちゃんは、アルバムとはまた違った意味でめっちゃ素晴らしかった――とはいえ、その話は単独公演のポストに譲り、まずはWalkmen。

すぐに「それ」と分かる音作り――エフェクトがきつ~くかかったテンパったギターとくぐもったピアノ/オルガンという独創的な組み合わせが生み出す、ねじれたソウル・ソング――はもちろんだが、このバンドに自分が惹きつけられる理由、それは甘すぎることのない、彼らの根源的な男っぽさだと思う。マッチョさではなくて、内に秘めた純粋&壮大なロマンチシズムを、しかしダラダラと外に垂れ出そうとしない(だって、みっともないじゃん?)、クールな男。実際に恋人にすると、何を考えてるか分からない!と煩悶させられ苦労させらるタイプなので確実に避けるだろうが、5メートルくらい離れた場所から憧れ、愛でるには格好の対象だろう。その意味では、ニック・ケイヴに近い面もあるかもしれない。客層もその印象を裏切らないもので、7割が男客、女性客は若くても20代後半。バンドがデビューした時期にも左右されるとはいえ、基本的に大人向けのバンドなのだろう。
そのエッセンスを、特にライヴの場面で体現しているのが、ヴォーカルのハミルトン・リーサウザー。実際に会見したことはないので、あくまで「ステージでの見え方」に基づく考察だけど、この人は大きい。背が高い。サーストン・ムーアとまではいかないが、ジュリアン・カサブランカスくらいには、オーディエンスを圧倒するだけの肉体的なプレゼンス、そしてそれに見合うパイプを持った人である。バンド・マン、あるいは俳優といった「カリスマ性のある」とされる男の多くが実は案外華奢なおチビさんであることを考えれば、彼が珍しい存在であるのは理解に難くないと思う。
そのハミルトンがプレーンな黒スーツ姿で最後にステージに登場し、ライヴはキック・オフ。彼がギターを爪弾きながらのカントリー・ソウル調な弾き語り「Blue As Your Blood」で肩慣らしを終え、この晩多くプレミアされた「Lisbon」と同じくらいセットを占めた「You&Me」から、名曲「In The New Year」。金属的でニューロティックな響きにエコーが混じるギター・リフをレトロなオルガンが援護する・・・というこのバンドならではのサウンド・スケープが現出し、酩酊感に襲われる。そこにハミルトンの一種酔っ払いを思わせる(もちろん素面で歌っているのだろうが)放埓&ダイナミックなシャウト――アメリカ人なのに、歌いまわしに英北部~アイリッシュのノリがあるのは素敵★――がチャージしていくことで、場の空気はデカダンなガレージ・ソウルに染まっていく。続く新作からの「Angela」はペイヴメントATPでも披露されていた曲だが、今後ファンに愛されるのは確実でしょう!な素晴らしいトラックである。最高。

しかし、ライヴが進むうちに徐々に頭に浮かんできたのが、Walkmenのツメの甘さという点だったのは面白い。ここから先も熟練したアンサンブル&コントラスト、気合の入った演奏で酔わせる楽曲が続いたのだが、彼らの音楽IQの高さと音~ディテールに対するフェティシズム(ライヴでもPAはばっちりだった)は、ある意味敷居が高いのかもしれない、と。このバンドが根本的に好きな筆者のような人間(アホな話だが、ハミルトンの声が聴けるだけでも耳福なのです)にとっては、そうした音楽至上主義型プレゼンテーションも難なく飲み込めるのだろうが、ライヴという場ではその硬派さ=いい意味でのスタイリッシュさが、時にオーディエンスとの一体感を殺ぐものになっていた気がする。
ライヴの終盤に登場した初期曲〝Wake Up〟や〝The Rat〟まで大きな盛り上がりに欠けたのも、(新曲披露のシチュエーションに対する緊張も混じっていたとはいえ)あれらの曲には、オーディエンスが振り向くのを待つのではなく、彼らを掴みに討って出る殺気立ったダイナミズムが備わっているからだろう。もっとわかりやすく色気を出してもいいだろう、ということだし、ニルソンの『Pussycats』カヴァー・アルバムに収録されたご機嫌な〝Many Rivers To Cross〟のような、オフ・ビートである意味ゆるい味をライヴでも自然に出せれば、このバンドはもっと愛されるんじゃないだろうか。
00年代初頭のニューヨーク・モッズ・ガレージ派とされる彼ら、ストロークスやインターポールといった同輩バンドのレベルの認知を得るに至らないまま、ここまで来た感がある。ジョナサン*ファイアー・イーターがストロークスに少なからぬインパクトを与えたことを思えば、ちょっと皮肉かもしれない。もちろん、その時期から10年経った今となっては、逆にそのマイ・ペースなスタンス、そしてハイプに揉まれなかった状況があったからこそ彼ら独自の音を確立することができたとも言えるし、ファンとしては今のままでも充分OK。なんだけど、もっと多くの人に聴いてもらえたら・・・という一抹の思いが常によぎるバンドのひとつが、彼らなので。

The Walkmen MySpace

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Mariko Sakamoto について

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