Visiting Pretty Green

先だって、リアム・ギャラガーが立ち上げたメンズ・ファッション・ブランド、Pretty Greenのカーナビー店に行ってきた(日本でも買えるみたいですね)。いまどきのタレント商売にありがちな「人気ショップ○△★とのコラボ」「名前と顔を貸しただけの香水」みたいんじゃなく、店まで出すのは半端ない話だなと思ったし、リアム様本人も開店前には直々にスポークス・パーソン/イメージ・キャラとしてメディア取材をこなしていて(まあ、なんだかんだで話題の中心は洋服ではなく、分派したオアシス話に流れていたけども・・・)、かなり乗り気な模様。価格設定も半端じゃない上にレディース店ではないので基本的に自分とは無縁だが、ミーハーとして、店に(一度は)行ってみよう、と思っていた。そこにカモネギなタイミングで知人(=ポール・ウェラー好き)が観光来英!ご飯&ショッピングのついでに、彼女を伴いPG初詣でと相成った。

カーナビーという立地は、スウィンギン・ロンドンの面影が残るのはもちろん、Fred Perry、スニーカー・ショップ他、プレッピー寄りなスポーツ・カジュアルの店が居並ぶシチュエーション(大昔の話になるが、Lonsdaleのえんじのパーカを求めて、はるばるここまで来たもんでした・・・)も含めてぴったりだろう。リアムの本拠地である北ロンドン=カムデンはもはや巨大過ぎるし、西ロンドンはデーモン・アルバーンが生息しているので、この選択は納得、である。目と鼻の先にLibertyもあり、観光客向け買い物エリアとして賑わうこの一帯でも、もっとも幅を利かせる目抜き通り:本家Carnaby StreetにPGはある。

内装は白基調で、BGMはもちろんモッズ~ノーザン・ソウル。ローレンス・ワトソン(=ポール・ウェラーとの長いコラボでもおなじみの写真家)が撮った、いかにも!にグロッシーでキメキメなリアムのポスターがそこかしこにディスプレーされていて、「プクク」と笑ってしまった。しかし、一番笑わされたのは店員。ビートルズ初期のジョン・レノンが被っていたような(それそのものは、ボブ・ディランへのトリビュートなんだけど)帽子にシャギーな長髪、ボタン・ダウンのシャツ・・・と、オアシス・ファンをスカウトしてきたごときルックスで統一されていて、悶絶モノである。まあ、「店子もブランド/イメージの一部」という方針は正しいし、同行女性も「わー、あの子かわいいっ!」と目の保養として喜んでいたので商売効果はあるんだろうが、コンセプトが分かりやす過ぎな店というのは、つい笑ってしまうものですね。
そのコンセプトは商品にも一貫していて、扱う品物はTシャツ、ポロ・シャツ、トラッドなニット、コート&パーカといったベーシックなトップ系アイテムが基本。しかしTシャツですら微妙に高くて、その上「ここにロゴはいらないよね!」とか、細かいところで小うるさい女ふたりは逡巡しまくり。でも、せめて何か一品は買わせよう・・・と思っていたので(女同士で買い物に行くと、必ず「同行の相手に何かゲットさせよう」という〝買い物アドバイザー意識〟がムクムクと頭をもたげるのは、自分だけでしょうか?)、セール・コーナーのある地階へ移動。
例の帽子を始め、アクセサリー系も置いてあって少しはリーズナブルか・・・と思ったが、ここでもっとも目を引くのがスクーターのディスプレー。写真を撮っていたら、先述の店子がやって来て、「これ、『さらば青春の光』で使われたスクーターのレプリカなんだよ」と教えてくれた。にっこり返しながらも心の中で「ジミー!」と叫び、しかし買い物となると世界一目が肥えていてシビアな日本人に立ち返り、知人とあーでもない、こーでもないとすったもんだ。Tシャツをひとつ選んだまでは良かったが、もう一品、お世話になってる知人にお土産を買いたい・・・とのことで、迷った挙句、最終的にこの店で一番責任感の薄いアイテム:ポスターが選ばれた。我々の共通の知人であるその男性は、別にオアシス好きでもリアム好きでもないので、完全にイヤミなミヤゲ=イヤゲである。
責任感が薄いというのは、服を始めとする「身に着ける」アイテムは、サイズはもちろん、色/柄、素材のテクスチャー、カッティングなど、満足してもらえる品物を選ぶのがとても難しいから。よっぽど機微を知り尽くした相手でもない限り、まあ、プレゼントしないでおくのが無難だろう(その場では「ありがとう!」と受け取ってもらっても、「好みじゃないから」と翌日eBay直行の運命になっても、文句は言えない)。その意味で、エンブレムやバッジといった気軽に買えるアイテムをもっと増やした方がいいのでは?とも感じたが、根本は「志の高いカジュアル」を目指す店なのだろう。
ともあれ、ご購入時には「開店記念限定品」としてちょいかわいいトート・バッグまでついてきたし、なかなかいい感じ。そのトート、後で高値が付くかもよ!?と店を出てから話していたのだが、当の彼女は「んー、でも、あたしはノエル好きだから、リアムはどうでもいいのよね~。恥ずかしいから、ロゴ隠しておこう!」と剣もほろろ、まったく気にしていないのが実にはっきりしていて、面白かった。

そういえば、筆者も――特にオアシスのファンではないのだが、強いて選べと言われれば――これまでは彼女同様、ノエル派だった。声も顔も冴えないが、結局曲書いてるのは兄貴だし、の冷静なスタンスである。かつ、リアム独特の世界観・行動原理(奇行?)みたいなものは長年筆者の理解の範疇外で、なんというか、共通言語が持てなさそう。その点ではノエルの方がまだロジックが通じるというか、如才なく普通に振舞えるタイプという気がするし、逆に言えば、だからこそリアムの熱狂的なファンは「奴は(常人を超えた)天才!」と言い切るのだろうな、とも考えていた。
しかし、7月に英The Sunday Timesに掲載され、話題を呼んだ(オアシス離散後、もっとも大きな)リアム・ギャラガー単独インタヴュー(ここで記事へのリンクを貼りたいとこですが、The Timesウェブサイトは現在有料購読制なのでサーチ・エンジンにも引っかかりませんね、やっぱ)を読んで、「あ、この人案外まともなこと言ってる」と思ったし、マーク・E.スミス(The Fall)の傑作自伝:「RENEGADE」にチラッと登場するオアシスのくだりを読んだ時に感じた「なるほど!」も甦ってきた。
そのくだり(=ハード・カバー版の第7章、P85)を要約すると、MESはノエル・ギャラガーを本当に好きだと思ったことはないけど、リアムはOK、というスタンス。常に「俺らの弟が」という調子で何もかもリアムのせいにされるのは気の毒だし、ノエルみたいな兄弟は俺は絶対ごめんだ、と言い切った上で、『ビートルズ型の曲を書く以外に、ノエルが何の役に立ってる?リアムがオアシスなんだよ。俺が思うに、ノエルはちょっとリアムに嫉妬してるね――すごくカトリックな話だ』という鋭い見識を持ってくる。しかし一番笑えたのが、その後に出てくる90年代後半アメリカでのエピソード。MESが泊まっていたホテルの一室を訪れたノエルがバスルームに入るのだが、そこに並べてあったMESのシャツがどこのブランドか、ノエルがこっそりチェックしていたんだとか。女がそういうことをやるのは理解できるが、男でそれは・・・みっともないだろう。
まあ、「本質しか見ない」リアリスト=マークの筆にばっさり切られる感じで、「RENEGADE」の中ではほぼ誰もが容赦なくケナされているわけだが(笑)、数少ない評価の対象のひとつとして、彼がリアムを買っているのは面白かった。と同時に、これまで自分にとって「んー、よく分からん」な存在だったリアムの不思議さというのは、マンチェスター(および英北西部)のワーキング・クラス気質/伝統と関わっているのかも、と感じるようになった。「いまさら気づいたの?」と笑われるかもしれないが、イギリスのポップ~大衆音楽を聴く上で(必須ではないけれど)多くのキー、ヒントを与えてくれるこの労働者階級感覚というのは、ホワイト・カラー家庭でのほほんと育った日本人である自分には、把握しにくい。中でも、イギリス人ですら「連中は変わっている」と評するくらいクセの強いマンチェスターの民というのは、最も理解に苦しむ相手のような気がする。
単純に出身地や職種だけで判断できるものではなく、宗教、風土/社会、家族、人種など様々なファクターも関わってくる。そもそも現在のように、多くの英ミュージシャン~バンド・マンが大学卒の学歴くらいは持っているであろうこの時代に、「ワーキング・クラスとポップ」という視点をもつこと自体がナンセンス、という説もあるだろう。それくらいややこしく、かつ掴みどころがなくなってきているコンセプトなのかもしれないが、自分なりの定義/視座みたいなものをそこに持てたら、英ポップを、また別の耳で聞けるんじゃないか・・・と思っている(それは、筆者にとってのもうひとつの〝ん~、分からん〟相手=英フットボール文化にしても、同様かもしれない)。ともあれ、「RENEGADE」はマジに面白い&(筆者的には人間国宝である)MES節炸裂の金言連発な本なので、ザ・フォールやマンチェスター音楽にちょっとでも興味のある人は、一読をお薦めします。

まあ、実際にノエル、リアムの本人にお目にかかったことはないし、今後お目にかかる可能性もないだろうから、本当のところは永遠に分からないとは思う。しかし、人間として興味深いのはノエルよりリアムじゃないか、という気が、最近はしているのだ。

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Mariko Sakamoto について

Hi.My name is Mariko.Welcome to my blog,thanks for reading.坂本麻里子と言います。ブログを読んでくれてありがとう。
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Visiting Pretty Green への2件のフィードバック

  1. tubasa より:

    こんにちは、audio bunnyから来ました!久し振りに行ってみたら終わっていて・・残念だったのですが、新しいブログも面白いです。

    中学生くらいの時にロッキンオンで坂本麻里子さんの『今月の琴線』を読み始めて、それからweezer、bright eyes、elliott smith、sparklehorse・・とどんどんいろんな音楽を好きになっていって・・本当にいろんな特別な音楽を教えてもらったし、坂本さんの文章が大好きです!

    いつか『琴線』の書籍化とかないかなぁと思ってます。。

    更新楽しみにしてます!いつか坂本麻里子生涯ベストアルバム30枚とか読んでみたいです!

    では!

    • Mariko Sakamoto より:

      Tubasaさま:コメントありがとうございます!というか、拝読いただき、本当にありがとう。
      先週は原稿書きに追われなかばゾンビ状態、当ブログ放置状態でしたが更新がんばりますね。
      生涯ベスト、30枚は少なすぎるので(=落とすものが多すぎて辛い)、
      いつか、そうですね100くらいで容赦くださいますか。では、お元気で。

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