週刊琴線(11月12日号)

今週の琴線
The Brak Show(Adult Swim)
The Trip(BBC2)
Getting On(BBC4)
Sweet Dreams/Issue#4,Autumn2010
Classic Rock Magazine/Issue 152,Nov2010
NYLON
Parables(Ryan Francesconi)

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強風と雨の多い、荒れ模様の天気だった今週。うー秋だ・・・と体感させられていたところに、やはり来たか!フラットのボイラーが壊れた(涙)。暖房(セントラル・ヒーティング)と温水双方をひとつのボイラーが司るコンビ型なので、一気に落ち込む。
もともとボロいボイラーで、去年も修理してもらった。しかし、少し前からちょこちょこと暖房を使い始めた途端、過剰労働に音を上げたのか(?)温度調節機能がおかしくなり、不調に陥ってしまった。騙し騙し使っていたところ、月曜朝に温水を使おうとスウィッチを入れたら、それこそ爆竹を鳴らすみたく「ポン!」と軽い破裂音が。恐る恐る覗き込むと、前面パネルの後ろから一筋、煙が立ち昇っていた。

煙、これは決定的だろう。何かが焼けちゃったんだから。しぶしぶ去年と同じ修理工に来てもらうことにしたが、多くの人間が暖房を使い始める秋口はこうした故障・修理仕事がひっきりなしで、彼らは引く手あまた。火曜夜にやっと来てもらえて、ショートしてお陀仏になった回路を取り替えないとダメだろう、との結論に。そのパーツをセンターに注文して取り寄せ、修理に来れるのは早くても土曜と言われ、またもがっくり。温水欲しい。寒くて、夜間の仕事が長く続けられないのも痛い。
とはいえ、予定より早くパーツが届き、近所での仕事がひとつ急遽キャンセルになったから行けるよとのことで、修理工のジェイ君が金曜に再びやって来てくれた時は助かった・・・回路は無残に焦げていて、少し前にサージがあったので、それの影響かも?などと話し合う。パーツを取り替えたら無事動き出し、やった!のハイ・ファイヴである。

ジェイ君は27歳のアフリカ系の若者で、音楽好き。ヒップホップやジャズを追っていて、仕事の合間に彼が先日観に行ったMFドゥームの話、ベイビー・フォードらの話で盛り上がる。日本のソイル&ピンプ・セッションズのことも知っていて、彼らの作品は何枚か持っていたので(昔、英ツアーでお手伝いしたことがあります)、お礼も兼ねて、彼らのCDを1枚あげたらすごく喜んでくれた。
ボイラー他の修理工は一種の季節労働者で、夏の間はやはり超ヒマらしい。なんで、秋冬にガンガン仕事して、夏季はホリデーに充てることが多いらしく、今年はマイアミと香港に行ったんだとか。うらやましいぜ!しかし「次は日本に遊びに行きたいから、今金を貯めてる」とのことで、さすが機械工さんなだけに、日本のハイテックで、しかしトラッドという側面に多いに興味をそそられるんだとか。「それに、日本人ってものすごく音楽好きでマニアじゃん?イギリス人アクトなのに日本でしか作品が出てないとか、何年か経ってやっとイギリスで発売されるとか、こっちはわざわざ逆輸入盤を買うしかない、なんてこともあるんだよ」。なるほどね。

基本的にひとり仕事の自宅労働者、一日中誰とも話すことがないなんてザラ、という生活だからか、ボイラー工のジェイ君はもちろん、「働く人々」を観察したり話を聞くのは、いつも面白い。先々週も、家の脇の大木群の伸び過ぎた枝がご近所の庭に日陰を作っている・・・とのクレームを受け、ツリー・ドクターが連日、3日間ほど来ていた。我がフラットは線路沿いに立っているのだが、その大木群はフェンスの向こう=鉄道会社の敷地から伸びていて、彼らの管轄。ご近所さんの庭からはアクセスできないとのことで、うちのゲートから入れてあげることになった。
毎朝8時スタートという仕事開始の早さにも驚いたけど、3人組のチーム・ワークは見ていて楽しかった。最高30メートルくらいの高さまで登り、ひとりがチェーンソーや鉈で枝を払い、幹を切っていく。チェーンソーも5種類くらい持ってきていて、地上で刃物類の受け渡しやコードを管理し、足場をきれいにするアシスタントがひとり。もうひとりが責任者&参謀で、どの枝をどのタイミングで切るか、どの高さまで切るか、どうロープをかけるか等々、実際に樹と環境を見ながら、指示を出している。なんとなく、ミリタリーな雰囲気すらある。

素人考えでは「ばっさり根元から切っちゃえば?」なのだが、15分おきに列車が通過する線路脇ということもあり、方向を間違ってうっかり大木が倒れたり転がり落ちるのは、やはり不味いらしい。また、線路脇の樹木は騒音防止の役目も果たしているから、むやみやたらと切り倒すわけにはいかず、住宅街に向かって伸びている枝を払い、かつ成長の妨げにならないようにするのがポイントだそう。
細めの枝はばさばさ切り落としてるが、一抱えはありそうな枝の場合は、まずその枝をロープで縛り、そのロープを近くの他の枝を滑車のように引っ掛けて、切ったところで地上の人間がそろそろとロープを放していき、下に降りてくる仕組みである。

コーヒーを淹れてあげたついでに観察していると、ハシゴは一切使わず、手足だけで器用に木登りしている。感心しながらよく眺めてみると、靴の脇にフックが仕込まれていて、それを足がかりにしてよじ登っているのだった。しかし、そうやって樹木の表面についた傷から病気が侵入してしまうから、あまり引っかき傷はつけないようにしているんだそう。人間みたいですなあ、樹も。
とはいえ、うち1本は間引きの運命に。ジャガイモの切り口みたいに白く眩しい切り株に、青い「樹毒」をスプレーされて作業完了、である。チームの上司という人が何回かチェックも兼ねて現場に来ていたのだが、彼は来るたびに手ごろなサイズの枝を何抱えも持ち帰っていた。乾燥させて、暖炉の薪として使うんだとか。それ以外の枝や幹は、チェーンソーで小さく刻まれ、そのまま根元に残されていた。いずれ腐り、肥料になっていく。

クリスマス以外は休みなしの1年中仕事で、たとえば冬のさなかで雪が降っていても、大雨の日でも、問題のある樹があれば、すぐにアテンドしなくちゃいけないらしい。中には、列車のダイヤの乱れに繋がる樹木もあるという。チェーンソーの騒音&振動はすごいし、もちろん様々な事故や危険も伴うわけで、楽な仕事ではない。でも、男の人というのはある意味プライマルな生き物で、何かを切り刻むとか、割るとか、廃棄物を壊すとか、燃やすとか投げ捨てるといった、肉体仕事=フィジカルな行為に快感を覚えるもの。とりあえず、チェーンソーを振るってるだけでもストレス解消にはなるだろう。
と同時に、この作業には無軌道な破壊ではなく、「いかに効果的に樹を切るか」というストラテジック&ロジカルな思考=攻撃戦略も関わってくるので、うーん、色んな意味で、男性向きな職業かもしれませんね、ツリー・ドクター。一番古い樹の切り株をチェックしたところ、樹齢は約50年とのこと。スウィンギング・シックスティーズも見守ってきたのか、この樹は・・・と思うと、ちょっと愛着が湧いた。毎朝寒さが募る中、すっかり裸にされた彼らの姿を窓から眺めるたび、ちょっとかわいそうにもなるこの頃である。

思いっきりドメスティックな話に終始しているが、取り上げるほどのトピックもないので仕方ない。今週はライヴにも行かなかったし、ボイラー修理の件もあって待機したりと、家に留まりがち。もともと活発&社交的な人間ではないとはいえ、モグラ並みにこもった生活ぶりは不健康である。インタヴュー仕事を請け、そのテープ起こしでデスクに張り付いていた、というのもその傾向に拍車をかけた。
テープ起こし作業の辛さは、(当たり前だが)その間は音楽を聴けないことである。今回は1本なのですぐ終わったけど、たまに2本くらい仕事が集中し、数日ぶっ続けで起こすこともある。そんな時はだんだんとストレス&締め切りへの焦りがたまってきて、もしかしたら自分の顔が「シャイニング」のジャック・ニコルソンみたいな形相になってるんじゃないか?と不安になる時もある。

「ジムにでも加入して、身体を動かせばストレスも消えるわよ~」と知人からは正論をぶたれるのだが、アスレティックな行為全般が昔から苦手で、「ジム」というアイデアそのものに何の興味も湧かない。友達の多くから、ジムのメンバーになったものの、忙しくて結局通わなくなった・・・という話を何度を聞かされているのも、良くないかもしれない。入会費の無駄なのはもちろん、モチベーションが続かず怠惰な自分の性分を考えるに、ジム用のキットだのを色々買ってはみても、部屋の隅の無用の長物と化すのが関の山だろう。このままバーバ・パパになっていくのかもしれない。
そんな、半ば開き直りな状態になったところで、発散も兼ねてのリクリエーションは①何も考えずに楽しめるハリウッド娯楽映画、あるいは②他愛なく笑えるコメディを観るに限る。間違っても、ベルイマンとかロバート・アルトマン、アントニオーニとか、「作家作品」に手を伸ばしてはいけない。いっそうヘヴィな精神状態になるのはもちろん、連鎖反応的に彼らの他の作品や同時代の監督の作品も観たくなり、フィルム・マラソンが始まってしまったりもする。

しかもまずいことに、最近はDVDボックス・セットという便利な代物があり、テレビ・ドラマの全話完遂とか同じ監督作品5作連続鑑賞とか、すごく簡単にやれる。中毒性が高いこのマラソン経験の最初は、名作「Six Feet Under」のDVDを友達に貸してもらった頃(=6年前)。第1話から完全にのめりこみ、ジャンキーのように残りを次々と借りることになった。もともとテレビ放映時にリアルタイムで見てないから仕方ないのだが、DVD化を待って一気にまとめて観るのは、それはそれで楽しい。
同じHBO産では、「The Wire」も、マジにノンストップで連夜で全エピソードを観倒して、目の下に隈ができるくらいハマりまくった。っていうか、あの作品は途中で止められないよね~~・・・なんて考えていて、思い出したのがデイヴィッド・リンチのカルト名作「Twin Peaks」。
あの作品も、本放送はともかく、基本的には①ミスター・ドーナツかどっかでドーナツを1ダース買いこみ(チェリー・パイも、もちろんOKですよ!)、②コーヒーをたっぷりと沸かし、友達みんなでリビングに集合し、レンタルのVHSビデオで数話まとめて観る、というのが当時のセレモニーだった。そう考えれば、20年くらい前から、自分はあまり進化してないかも・・・つーか、この元祖は、最初に「モンティ・パイソン:空飛ぶサーカス(吹き替え版)」をレンタルでぶっ通しで観た頃だろう。親にバカにされるので、彼らが寝静まった後に、深夜こっそりひとりで鑑賞。にしても、近所のレンタル屋に全巻揃ってたのは、すごくラッキーだったなぁ、と今でも思う。

三つ子の魂ではないが、先月も、買ったばかりのマリオ・バーヴァのボックス「The Mario Bava Collection Vol.1」を、我慢できずに2日間で見倒してしまった。収録5枚のうち「The Mask of Satan」、「Black Sabbath」の2本は以前観たことがあり、「良さを見返す」という感じだったのだが(バーバラ・スティールは、本当に綺麗でしたねぇ~嗚呼・・・)、残る3本も面白かった。
特に、想像以上にモダンだった「Kill,Baby…Kill!」、そしてジャッロの教科書とも言える「THE GIRL WHO KNEW TOO MUCH」が最高。後者は、筆者の偏愛対象のひとり=ダリオ・アルジェントへの影響がモロで、「元ネタはこれか!」と笑わずにいられなかった。ゴブリンの名テーマ・ソングをフィーチャーした「TENEBRE」で脇役だったジョン・サクソン(「燃えよドラゴン」でおなじみですね)が主演というのも、実にツボだった。

しかし、60年代のホラー作風に的を絞った内容のボックスということもあり、逆に彼の他の作品=「The Bay of Blood」(=スプラッタの古典)も「Planet of Vampire」(=「エイリアン」に影響を与えた?とも評されるSFスリラー)も、そして「Danger:Diabolik」(=キッチュなユーロ・アクション・コメディ)も観たくなってしまい、連鎖反応でアルジェント傑作群も観たくなり、困りもの・・・。とりあえず、最近ちゃんとDVD化されたばかりだった「Modesty Blaise」で、お茶を濁しました。
「Modesty Blaise」(邦題「唇からナイフ」)は、ほんと愛すべき映画。この作品とかベルモンドの「カトマンズの男」は、自分は一生好きだろう。♪モデスティ~~!のテーマ・ソングは痺れるし、超好きな女優(=モニカ・ビッティ)と超好きな男優(=テレンス・スタンプ&ダーク・ボガード)という顔ぶれも抜群。紙っぺら並みに薄いストーリーを、ポップなヴィジュアルとギャグで(強引に)引っ張ってみせるところも最高です。ジョゼフ・ロージーはこれまた好きな監督だが、文芸調アート映画のイメージで知られる彼が、こんなオフ・ビートでキャンプな珍作を当時=60年代の空気/ノリに乗って作ってしまった、そんな「隙」がたまらない。

話が逸れたが、ハリウッド大作では特に観たいものも思いつかなかったので、コメディに癒しを求めた最初の結果が、「The Brak Show」DVD。アメリカのドープな大人向けアニメ制作会社:Adult Swimの作品である。日本だと「エッチ」に解釈されがちな「大人向け」だが、そういう意味でのアダルトではありません。子供ではなく、ゲーム&ハッパに夢中な大学寮生や若いヒップスターなど、ヒマな若者が観てるイメージですな。
アダルト・スウィムがどれくらい日本で認知されてるのかは知らないが、自分は「Aqua Teen Hunger Force」でハマり、「Harvey Birdman」、「Metalocalypse」、「Squidbillies」など、英ケーブル経由DVD化の恩恵にあずかり、結構観ている。「Brak Show」は人気番組「Space Ghost Coast Coast」の宇宙猫の悪役キャラ=Brakを主人公にした、スピン・オフ。完全に後追い(本放送は2000年から)ながら、「ATHF」並みにウケました。

スタイルとしては、アメリカの普通のファミリー・ドラマ/シットコムがモデルで、主人公ブラックとその父母、ブラックの友人や隣人がメイン・キャラ。「Cosby Show」や「The Simpsons」の雰囲気である。しかし登場人物はみんなエイリアン、舞台は(どっかの)未来の星。普通じゃない設定の中でありがちな筋書きが演じられることで、シュールなギャグが生まれる。正味15分と1話の尺が短くてテンポがいいし、主人公ブラックが、お約束のギャグとして毎回下手な歌を歌いまくるところもかわいい。

アダルト・スウィムのナイスさは、SFやモンスター、スーパーヒーローといったガキ向けのテーマをパロったり踏襲しつつ(「Harvey Birdman」ではハンナ・バーバラのキャラも何度か登場)、音楽シーンとも関わっている点。Stones Throwと組んでコンピも出していたし、「Brak Show」のラップ・コンテスト・エピソード(=秀逸)でのシー・ロー・グリーン、「ATHF」でのスクーリー・Dやグレン・ダンジグなど、ミュージシャンが声優ゲスト出演することも多々あり。その最たる例が「Metalocalypse」で(これはまあ、作品の主役が架空のブラック・メタル・バンド=Deathklokだから当然なんだが)、これまでにメタリカのメンバー、マイク・パットン他が登場。「The Simpsons」もそうだけど、アメリカって音楽ファンとアニメ・ファンが結構被っているようです。

アダルト・スウィムのもうひとつの傾向が、エピソード数を重ねるにつれて、ストーリーや筋書きが破壊的にシュール、かつちゃらんぽらんになっていく点。人気の高い脇役が一話を乗っ取ったり、死んだキャラが何度も生き返ったり、あるオチひとつのためにすべてのストーリーが動いたり唐突に別の筋が入ってきたり、メタフィジカルというか、ポスト・モダンな展開が増えていく。完全にナンセンスで、「え、これで終わりっすか?」と呆然とさせられる破綻したエピソードとか、平気で作ってしまう。
「Brak Show」も例に漏れず、シーズン2からその傾向が出てきたのはちと残念だった。しかし、アダルト・スウィム作品って、ほとんどどれもがポット・ヘッドの他愛ないジョークやラリった閃きから生まれたようなものじゃないか・・・?と感じるし、そう考えれば、途中から迷走しても仕方ないかな、と許せてしまう。そうでもない限り、「宇宙猫」とか「空飛ぶフライド・ポテト」なんてキャラは、まあ思い浮かばないだろう。

英コメディでは、待望!という感じでTVミニ・シリーズ
「The Trip」の放映がスタートした。監督はマイケル・ウィンターボトム、主演はスティーヴ・クーガンとロブ・ブライドン。ウィンターボトムの「The Cock&Bull Story」でメインを張ったコメディアン/俳優両名が再び顔を合わせる・・・ということで、プチ話題になっております。
タイトル通り、この作品は一種のロード・ムーヴィーであり、バディ・フィルムのバリエーション。スティーヴ・クーガンが新聞社からの依頼を受け、ロブ・ブライドンを相方に湖水地方各地に散らばる名グルメ・レストランを訪れ、メニュー&店をレヴューする・・・という設定は、「Sideways」をちらっと思わせますな。

ひねりは、両役者が自分達自身を「演じて」いる点。これは「Cock&Bull」でも使われた手法で、イコール、現実とフィクション、裏と表とがスレスレに入り混じる「フィクショナル・ドキュメンタリー」とでも言うべき世界になっている。スティーヴ・クーガン演じる「スティーヴ・クーガン」は、英コメディ界からの脱皮を切望し、ハリウッドに進出しようとしているものの、頭打ち感が否めない状況を迎えている中年俳優。しかも、アメリカ人の若いGFに振られたばかりという惨めな設定である。
スティーヴ・クーガンの実像も、部分的にこの状況とだぶる。Alan Partridge諸作で90年代に人気を博したものの、その後は「これ」といったヒットを生み出していない(もっとも、「Saxondale」はもっと評価されていいと思うが)彼は、「24 Hour Party People」以降銀幕にシフトしようとしている。しかし、これまでのところハリウッド・キャリアは中途半端で、「俺はアメリカのアート映画に出たいんだ!」なんて米エージェントと交わす会話も、実に本当っぽい(それでも、第2話でベン・スティラーが友情出演したんだから大したものですが)。アメリカ人GFというのも、彼が(ほんの一瞬)コートニー・ラヴと浮名を流した・・・というゴシップを思い起こさせる。
とはいえ、昨今の彼は自作自演よりも、むしろ自らのプロダクション会社を通じ「The Mighty Boosh」、「Nighty Night」、「Gavin&Stacey」他英コメディの新波に貢献~裏方に回っている節もあるので、「落ち目のお笑い俳優」というのは、誇張された彼のペルソナなのだろう。

対するロブ・ブライドン演ずる「ロブ・ブライドン」は、安定したキャリアを営みつつ、子供が生まれたばかりの幸せなファミリー・マンという設定。ウェールズ人俳優である彼は、ややレトロで人情味たっぷり&愛嬌のある無垢さが持ち味で、「Gavin&Stacey」のブリン叔父が当たり役。その人柄が愛され、ドラマ、トーク・ショウのホスト役他各種番組に引っ張りだこ、上り調子の人である。プライヴェートの円満さはもちろん、英ショウビズ界における今の立ち位置という意味でも、劇中の「スティーヴ・クーガン」とは対照的な存在として描かれる。

とはいえ、実際のところはロブ・ブライドンのブレイクのきっかけを作ったのがスティーヴ・クーガンであり、いわば恩師。そんな両者の付き合いの長さ、相互尊敬、そして気心の知れた間柄を活かして、本作の一部はアドリブで成り立っている。どこまでが脚本でどこからが即興なのかは知りようもないが、毎回冒頭に出てくる車中での音楽ネタ(第1話ではジョイ・ディヴィジョン「Atmosphere」、第2話ではケイト・ブッシュの「Wuthering Heights」と、選曲もナイス)はもちろん、レストランで食事中に交わされる会話は絶妙にナチュラルかつ面白い。出てきた料理に対する一口コメントだとか(「これ、旨いけど、呑み心地が鼻汁みたいじゃない?」他)、何かにつけて始まる有名人の物真似合戦とか、達者な芸人反射神経を備えた両者ならではの丁々発止は最高。撮影する側も、笑いをこらえるのに必死なことだろう。

とはいえ、実在の人物がモデル、舞台になるレストランやホテルは本物、映像はカントリー・サイドのロケ中心・・・と、作品そのもののトーンはさりげなく、テンポもゆるやか。派手なギャグ・シークエンスや芝居は皆無だし、キッチンで立ち働くシェフ達の姿を捉えた場面を除けば、アクションらしいアクションもない。そのせいか、批評家達からは「自己満足」「自分自身を演じて、飲み食いしてるだけ」等々批判も浴びているし、作品の隠しテーマとされる「英北部に対するオマージュ」という点も、あまり感じられない。
しかし、放映済みの2話は作品のペースとスティーヴ&ロブのグルーヴに乗るための、いわばイントロだと思うし、とりあえずふたりの話芸と絶妙なコンビネーション――スティーヴ・クーガンのアクが強くいやみったらしい演技と傲慢キャラ&毒舌を、ロブ・ブライドンが動じずにやんわり受け止め、応酬する――だけでも、筆者は満足である。
とはいえ、どんなに面白くても物真似ネタだけではさすがにマンネリなので、今後のストーリー展開がどうなるかは興味深い。美味な料理に舌鼓を打ち、束の間の現実逃避=The Tripにはしゃぐ姿は、このふたりが中年ではありながら中身は子供、と告げている。しかし、一見ボケ/突っ込まれ役の「いい奴」ロブ・ブライドンの方が実は精神的には大人であり、旅の仕切り役として偉ぶっているスティーヴ・クーガンは、その事実に気づいていない(つーか、目を逸らしてる)。その力関係のリアリティが、そろそろ劇中で顕在していい頃だろう。シリーズは6話完結、最終的には1本の映画にまとめられるらしい。

最近新シリーズが始まった「Getting On」も、病院が舞台の、さりげないペーソス&リアリズム重視な今風英コメディの秀作。病院はドラマやコメディの定番ネタで、比較的記憶に新しいところではチャンネル4の「Green Wing」なんかがあった。しかし、突飛なキャラ(異常者スレスレな人物も含む)の賑やかなアンサンブルやアクションが売り=アメリカン・シットコム型の笑いだった「Green Wing」に較べれば、こちらは日常的。主役である看護婦2人&医師は若くも美人でもなく、エゴや問題、欠点も色々と抱えている、基本的には「普通の人達」。そんな彼女らが病院というストレスフルで肉体的にタフな環境、そして職場の人間関係の機微/組織内の政治といった面倒なバランスをとりながら、「なんとかやっていく」様が描かれる。

仕事場とその内幕というテーマはもちろん、シェイキーな手持ちカメラの使用、各キャラのセコさや自己愛が生む気まず~い笑いなど、「ポストThe Office」型コメディ・ドラマのひとつと言っていい(哀愁シンガー:リチャード・ホウリーの曲が主題歌というのも、「The Office」の「Handbags~」に通じる味だ)。しかし、(末期患者も含む)高齢女性を収容した病棟という設定は、もっと根本的にダークな笑いに繋がる。ベッド不足でたらい回しにされる患者など、笑うに笑えない場面もある。ブツクサ文句を言ったり失敗したりキレたりしながら、それでもがんばって彼女らをケアしている看護婦さん達も、いつか病床に就いてケアされる側になる・・・と思うと、切なくもなる。
とはいえ観ていて滅入ることがないのは、苦労や困難が生じても泣き言を言わず対処し、誰かがやらなければならない仕事をこなしながら日々を乗り切る、彼女達の現実的な逞しさとそれを可能にする誇りへの、リスペクトとエールが感じられるからだろう。「白衣の天使」なんてロマンチックなもんじゃないが、こういう人々のおかげで、世界は回っているのだと思う。「Getting On」は、主演の女性3人(コメディアンのジョー・ブランドも含む。基本的にビッチで辛辣なキャラの人なんだけど、このドラマでは一番シンパシーが抱ける役を抑え気味に演じていて、見直した)が脚本を担当。監督は、「The Thick Of It」のマルコム・タッカー(最・高)役でモダン・アイコンと化した俳優:ピーター・キャパルディ。

残る話題は、マガジン3種。まずは、日本発の素敵なジン
「Sweet Dreams」最新号が届きました!(筆者もちょっとだけお手伝いしたので、「見本誌」ということで、ありがたく頂戴。福田さん、いつもありがとうございます)特集テーマ=「トラベル・イン・マインド/音楽をめぐる冒険」として、ツアーのよもやまを中心に据えた内容で、インタヴュー(マイク・ワット、ジャド・フェア、デンギー・フィーヴァー、スーパーチャンク他)、ツアー日記(テニスコーツ、ザ・ハイ・ラマズ他)、世界を股に(笑)人と土地に出会ってきたミュージシャンやアーティストのコラム、旅の心得・・・などなど、相変わらず隅から隅まで読みどころ満載な内容に頭が下がった。

その特集が抜群なのはもちろん、(これまた大好きなジン)「Yeti」の主宰であるマイク・マクゴニガルとMississippi Recordsのエリック・イサークソン対談=「ポートランドの穴」、プレスポップ・ギャラリー(クリス・ウェアのグラフィック・ノヴェルの傑作「Jimmy Corrigan」シリーズ、日本版完結!)、コミック(特に小田島等さんの「I Heart大阪」は、絵とストーリーの脱力っぷりが最高)、お楽しみな連載等々、うーん、めっちゃ充実。新しいロゴもちょー可愛いし、ニキ・マックルーアの手になる表紙も美しい・・・というわけで、手にとってみたくなる、そして中身もギッシリ詰まって啓発されること必至!の素敵なジンなので、ぜひ、あなたのトートバックに1冊忍ばせてください。
まあ、寄稿した人間がこういうことを書くと「手前味噌な宣伝」と突っ込まれるのかもしれないが、昔雑誌編集をしてきたのはもちろん、子供の頃から雑誌/出版物というメディアそのものが大好きで、その構成、読み物としてのデザイン、企画アイデア、編集のノリ、ページ配置、更にはフォントや紙質、印刷など、割とシビアにジャッジする方だと自認している(そうやって読むクセがついてしまったので、雑誌を読むのはいちいち疲れもするんだけどね)。その上で、「Sweet Dreams」は良い!と素直に感じるので、騙されたと思って、読んでみてください。ちなみに、友達のイギリス人にSDを見せたところ、「・・・これ、すごくきれいな雑誌だね。英語版ないの?読みたい~」と言われました。ごめん、いちいち翻訳する気力は、自分にはないっす。

海外雑誌に目を移すと、今週買ったのは「Classic Rock」と「NYLON」。ネットでおおかたのコンテンツは読めるわけで、もういい加減、雑誌や新聞に有り金を浪費するのはやめよう、やめようと思っているのだが・・・手に取れる印刷物に安心してしまう、旧世代の風習はなかなか自分の中から去ってくれない。収納スペースが足りなくなってきたので、この間雑誌&新聞をかなり処分したのだが、その傍らでデイリー、ウィークリーのペースで積み上がっていく刊行物のスピードに追いつけない。うーむ、自分の脳が、こうした情報をすべてストックできるくらいに有用だといいんだけど、そこまで人間の記憶力を信用してはいないので、ついつい「モノ」にしがみついてしまう次第。

「Classic Rock」は、ここ最近イギリスで部数を伸ばしている音楽雑誌。文字通り「オヤジ・ロック」な内容で、「今っていつ?」と気が遠くなるような表紙(ツェッペリン、ブラック・サバス、AC/DC等)といい、MOJO以上に開き直った「熟年ロック・ファンのための雑誌」である。その雑誌のターゲット層を見極めるのに一番効果的なのは、中身よりもまず、広告だと思う。中身は建前だが、広告は本音。英音楽雑誌について言えば、比較的巻末に押しやられるライヴ告知や多彩なプロダクトの広告が、この基準に当たる。
で、「Classic Rock」広告ページに目を落とすと・・・ライヴ告知:ネルソン、ステイタス・クォー、インエクセスの新コンピ、ジャーニー+フォリナー+スティクスの商業ロック合同ツアー、ロジャー・ウォーターズ、ピーター・フランプトン・・・比較的新しいところにしても、ヘルメットとセラピー?止まりで、イコール、20年くらい前で彼らの時計はストップしている模様。残る広告ページは、バンドTシャツ通販、ギター専門店、音楽コレクション収納用キット(棚、オーディオ製品)、カウボーイ・ブーツ等が占めている。
完全に小金を持ったオヤジ向けなわけだけど、そんな層がひとつの雑誌を支えるだけのパーセンテージを占めているんだから、さすがロック大国イギリス、なんだかんだいってすごい話である。たとえばの話、今人気の若手ロック・バンドが、20、30年後にこういう雑誌を成り立たせられるか?と問われれば、たぶん答えはNO。「アニマル・コレクティヴ、発売20周年に合わせて『メリウェザー』全曲再演」「アーケード・ファイアがオリジナル・メンバーで再結成」なんてツアーは、まあ組まれることはないと思う。

んなわけで、基本はオールド好きにも関わらず、このコテコテにオヤジな雑誌を買ったことはこれまでなかったのだが、今回は①チープ・トリックのアルバム「The Latest」が付録②もひとつおまけにロック・カレンダーが付いてきたので、観察も兼ねて、ご購入と相成った。
チープ・トリックのアルバムは、海外では昨年リリース済みの作品ながら、UKでの公式リリースはこれが初なんだとか。「市価£6.99のアルバムが付いて、雑誌の価格は据え置き£4.99!」という、表紙に舞い飛ぶダイレクトな謳い文句も泣かせます。お得感は、どこを見回しても不況の今、大切だよね。

チープ・トリックのように名前が浸透したクラシック・バンドの場合は、昨今の世界的なCD不況&無料ダウンロードの一般化&新旧入り混じってのリリース過多な状況においては、売り上げ枚数やチャート・ポジション云々にこだわるより、(たとえブランニューな新録作品であっても)いかに効果的に、幅広いリスナーに作品を届けるか、がポイントなのだと思う。コアなCTファンは輸入盤他で既にこの作品を買っているわけで、そっから先にどうリーチするか、がカギになってくる。
すべてのアーティストがそうだ、とは言わない。しかし、一部のアクトにとっては、アルバムはある意味話題作り~プロモ・ツールのひとつでもある、そんな時代と言えるだろうか。それは何も、オヤジ・ロックに限った話ではない。たとえば、「In Rainbows」のリリースが当時どれだけマスコミの話題になったかを思い起こせば、作品がそれに伴う「一大プロモ・キャンペーン」の契機として機能する、という性格は否定できない。もちろん、その性格が作品そのもののクオリティを貶めるものではない。しかし、それくらい、色んな手を尽くさないと、人気バンドであってもうかうかできない時代なのだ。

これまでも、イギリスではプリンスの新作が新聞付録として発表されるとか、かつての名盤、あるいはベテラン・アーティストの新作を1年くらい後に付録で無料・・・という試みがなされていて(ポール・マッカートニー、レイ・デイヴィス)、初の話ではない。しかし、新聞以上に購読層が限定された音楽雑誌というニッチなメディアで、コンピCDやシングルではなく、オリジナル・アルバムがフルでどーん!と付いてきたのは、これが初めてじゃないか、と。バンド側の割り切りも大切だし、そもそも総合音楽誌では難しい離れ業なかもしれない。けれど、ターゲットが明確に絞られたジャンル誌なら、こういう企画はこれからも生まれるかもしれないな、と思った。

もうひとつの付録であるロック・カレンダーは、ありがちな「12ヶ月グラビア集」ではなく、毎月の「クラシック・ロック豆知識(トリヴィア)」はもちろん、「メタラー/ハード・ロッカーの料理レシピ付き」というひねりがナイス。日本だと、銀行とか生保会社のおまけでもらえる、レシピ・カレンダーのロック版になりますでしょうか。
セパルチュラの醤油味シュラスコ、U.D.O.のロースト・ビーフ、シン・リジィのジャンバラヤ等々、やはり写真も茶色っぽくて緑が少ない=肉々しいレシピが多い。一番すごいのが、エレクトリック・ウィザードの山ガラス(Rook)のパイ。ヴィーガンなインディ・キッズは、「キャー!」と逃げ出しそうですね。
ちなみに、このレシピは「Hellbent For Cooking:Heavy Metal Cookbook」(By Annick Giroux)からの抜粋。32カ国、計101組のバンドのレシピがフィーチャーされているそうなので、興味のある方はどうぞ。

忘れちゃいけない、肝心の雑誌そのものの内容は、巻頭表紙=ザ・フーの「Live At Leeds」、スプリングスティーン「Born To Run」制作話(「闇に吠える街」のタイミングなのに、ちょっと不思議)、そして実は一番美味しい!ザ・ムーヴ話。オヤジ雑誌と思いつつ、興味を惹かれる記事が多いのは・・・要は、自分がオバサンだってことですね。やれやれ。

ファッション誌は、①通販カタログ並みに重たい上に②不可能な夢を無責任に植えつける(8頭身の足長モデルが着れば、ボロだって美しく見えるわな~)ので滅多に買わないが、「NYLON」とか「Teen Vogue」はたまに買う。自分の実年齢にはまったくそぐわない雑誌なんだけど、ファッション誌に関しては「実用」「カタログ」という面は完全に度外視しているので、だったらティーン向け雑誌とかアート系(Purple、POP、Another Magazine等)といった、ファンタジーいっぱいの雑誌の方がマシである。
その「NYLON」も、ぶっちゃけたところを言えば、2000年代初期=昔のヴァージョンの方がインディ/カウンターっぽさが強くて好き。ここ数年は低調だし、弟分である「NYLON Guys」の方が遥かに面白い・・・と思ってるけど、「夢見るロック・チックのための雑誌」という基本は、今も守っている。今回買ったのはUK版ではなく、元祖US版。イギリスではどっちも買えるんだけど、扱うブランドとかアーティストが英寄りで面白くないので、自分的にはUS版が好み。

表紙は、一時期マリリン・マンソンのGFだったエヴァン・レイチェル・ウッド。この雑誌の巻頭表紙インタヴューは大抵他愛がない(アンド、ミュージシャンだったら新作アルバムの宣伝、女優だったら新作映画のプロモで終始)ので、写真を眺めるくらいでスルー。しかし、目玉は第二特集=「America The Beautiful」。ポートランド、シスコ、LA、オースティン、ナッシュヴィル、シカゴ、マイアミ、ボストンそしてNYCと、大陸各都市横断ガイドになっている。
こうしたシティ・ガイド/トラヴェラーズ・ガイドは、もちろんネットでも死ぬほど情報収集できる。だけど、ネイティヴのバンド、カルチャー(本屋、レコード店、ギャラリーetc)、おすすめショップ、ナイスなカフェ&食い物・・・と、ツボをつく写真とキュートなレイアウトでまとめられたページを眺めていると、うーん、思いっきり旅心をくすぐられてしまうのです。あー、行きたいなあ、アメリカ。

とまあ、現実は足腰が椅子にがっちりセメダインづけされているので、夢だけで我慢。そんなちょっと寂しい心を癒してくれたのが、10月に日本ツアーを終えたばかりのライアン・フランチェスコーニのギター独奏作「パラブルズ~たとえばなし」。この作品は、先述した「Sweet Dreams」の送付ついでに福田教雄さんが親切にも送ってくれたもので、ちょうどドラッグ・シティからアナログを通販しようとしていたところでもあり、嬉しいプレゼントだった。ダーク・ブルーの折りたたみ式紙パッケージ、封入された写真も美しい、素敵な1枚である。

ライアン・フランチェスコーニは、ジョアンナ・ニューサムのYズ・ストリート・バンドの一員であり、ジョアンナ最新作「Have One On Me」にアレンジャーのひとりとして参加&現行バンドの要員でもある。ギター・インスト作なのだが、ギター1本とは信じがたいほどリッチで詩的な音空間、中世風~バルカン~フォークと縦横する音楽性、それでいて簡潔なアレンジメントは聴かせる。ギター・インスト作品では、筆者はいつもジョン・フェイヒィやタコマ作品を基準にしてしまうのだけど、この人のプレイはジョン・フェイヒィの酔いしれたような流動性/奔放なグルーヴとは異なる、すっきりした理知と精密さとが美しい。夕べや明け方の、我に帰れるひと時にぴったりの音楽ではないだろうか。

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Mariko Sakamoto について

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