週刊琴線(1月7日号)

今週の琴線:

Come Fly With Me(BBC)
The Loved One(Dir.Tony Richardson/1965)
BBC Sounds of 2011
HMV

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クリスマスの盛り上がりに較べると、大晦日~年越しが地味なイギリス。クリスマス直後のセールは、徹夜で並ぶ人間もいるほどどこもすごい人だかりだったようだが(新聞でも報じられていた)、そこからバンク・ホリデー(公休日)も何度か入り、どこから休みでどこからONなのかよう分からん・・・と思っているうち、気がつけば、もう通常モードの日々である。とはいえ、仕事はぼちぼち進めつつも、本格的に世の中が動き出していないため(それをいいことに?)、適度にブレイクも挟みつつの週だった。

クリスマスにはテレビ特番が多く組まれるが、毎年の目玉である「Dr.Who」クリスマス・スペシャルやバラエティ、古典ドラマ/シットコムの再放送(「Porridge」、「Father Ted」他)に混じって、BBCが派手に宣伝していたのが「Little Britain」のふたり=マット・ルーカス&デイヴィッド・ウォリアムスによる新コメディ・スケッチ「Come Fly With Me」だった。「LB」の人気ぶり/ヒットを思い起こせば、彼らが久々に送り出すシリーズに期待が高まるのも当然の話だろう(マット・ルーカスは、ティム・バートン版「アリス」でトウィードル・ダム&ディーを演じた役者)。
主な舞台になるのは、ロンドン近郊の飛行場のひとつ=スタンステッド空港。ヒースロー空港の一日と、そこで働くスタッフやキャビン・クルー、旅客の姿を追ったBBC制作のドキュメンタリー番組「Airport」がモデルと言えそうで、架空の格安航空会社FlyLoを中心に、モッキュメンタリー形式のスケッチを組み立てている。

もともとイギリス人はホリデーや旅行が好きだし、ロンドンの空港は欧州各地へのハブとしてもかなりの需要がある。過去20年ほどでRyanairやEasyjetといった低価格航空会社や海外エアラインが参入しエア・フライトが民主化、それに伴う価格競争の激化で、British Airwaysら大手は苦戦を強いられてもいる。
しかし、チケットの価格が下がったしわ寄せというのは、サービスの劣化・合理化による旅客への負担etc、必ず形を変えてどこかに現れるもの。故に様々なトラブルやクレームも増え(たとえばRyanairの社主は、人騒がせな誇大広告やPRスタントで悪名高い)、空港や航空会社の裏事情といったモチーフには、常に関心が寄せられている・・・という背景が、この作品のベースにあると思う。

ルーカス&ウォリアムスの両名は、本作のために計51人の新キャラを作り出したという。中心になるのは、FlyLoのチェックイン・カウンター係:メロディ&キーリー、FlyLo社長オマー・ババ、アイルランド系航空会社Our Lady Airのスチュワード:ファーガル、空港のコーヒー・スタンド従業員プレシャス、「イギリス初」の夫婦パイロット・チーム(夫が不倫したため、妻がパイロットになって付きっきり=四六時中監視している)等。ナレーションを軸に、彼らの日々が次々にスケッチされていく。
この他、入国管理局スタッフ、税関係員、旅客(無料で搭乗させるため、見た目10歳の息子を「2歳」と言い張るトンデモ母親等)、パパラッチ、空港のファストフード店スタッフ他がスケッチされるが、「LB」同様、男も女も2名がほぼ出ずっぱりで演じている。女装や特殊メイク、ファット・スーツ着用のキャラもかなり混じっているので、撮影大変だったでしょうねぇ。

もともと「LB」の大ファンではないし、マット・ルーカスは好きだけど、デイヴィッド・ウォリアムスが生理的に苦手・・・という自分なので、この作品もスルーして良かった。んだけど、日本の友達に「LB」ファンもいることだし、このシリーズの監督=ポール・キングは、愛する「The Mighty Boosh」のスタッフでもある。彼の初監督長編映画「Bunny and The Bull」は素晴らしかったし、一応見てみるべ!と鑑賞したのだが――やっぱり、このふたりのコメディのセンスって、自分にはいまいちなんだな~という感想でした。

何がきついのか?と考えるに、この作品が、いずれも極端に誇張されたイギリスの民のパロディから成り立っているところ(その意味では、これは空港を舞台に移した「LB」なのだ)。もちろん、お笑いというのは、日常の中からヘンさや不条理、矛盾を掬い取り、そこを指摘し笑い飛ばす、という構図がベースでもあるので、パロディすること、それそのものは問題ではない。しかし、引っ掛かったのは、①ヴィジュアル面での誇張のみならず、②キャラのステレオタイプ化が目に余る、という点。
①に関しては、これはもう、ルーカス&ウォリアムスの根っからの変装&女装好きが大きいとも思うのだけど、アラブ系、アフリカン・ブリティッシュ、アジア(インド)系移民、第1話に登場した日本人の追っかけギャル=ナナコ&アスカ等々、見ただけで「ああ」と察しがつく、要するに、グロテスクにデフォルメされた視覚ギャグが多すぎなのだ。イコール子供っぽい。故に、それらのキャラが何をしでかすか、何がネタなのか展開がすぐに読めてしまい、驚きがない(しかも、その読みは大抵当たる)。
それに通じるのが②でもあるんだけど、ビジネスマン=強欲で無茶、アフリカ系=怠惰で何かにつけて仕事を休む、日本の追っかけギャル=マイナーな英セレブのサインをもらうため、はるばるイギリスまで飛んでくる・・・といった調子で、その、描写の底の浅さと低俗さには驚かされる。別に、各キャラを深く追わなくたってOK。ただ、タブロイド新聞=The SunやDaily Mail読者レベルの、きわめて大雑把で時代遅れとすら言える人種/職種/階層/マイノリティに対するステレオタイプと蔑視とが見え透いて、見ていて痛い。マット・ルーカスは物真似が上手い・・・はずなんだけど、日本人キャラが喋る場面では完全にチャイニーズのイントネーションと混同していてガッカリだったし、アジア系キャラのパロディは、アリG(=サシャ・バロン・コーエン)のが遥かに上。

と同時に、イギリスならではのカラフルなキャラや妙さも俎上に上がってはいるので、おあいこじゃん?という見方もあるだろう。不倫した夫への不信でエキセントリックさに加速がかかる妻、ホモ嫌いのスチュワード、英国内線の旅を海外旅行と勘違いして「見聞広めた!」とはしゃぐ空港スタッフ、機内荷物重量オーバーにまつわるやりとり、クレームをつけつつ「Stiff upper lip」で我慢してしまう旅客、差別丸出しの入国審査官、高飛車なファースト・クラスのチーフ・パーサー。しかし、こちらもネタがありがちで新味に欠けるだけに、筋とオチが読めてしまい、笑いはすぐに萎んでいく。

「Come Fly With Me」第1話はクリスマス期番組の視聴率3位を記録したというから、立派なヒットと言える。しかし、「このレベルのギャグとキャラ造形をやっておけば、大衆は笑うだろう」という、どっか舐めたノリは鼻について仕方なかった(ファストフード店従業員のギャグなんて、マット・ルーカスの「赤ちゃん顔&縫いぐるみ体型」の愛らしさをもってしても笑えなかったし、子供ですら「つまんね~」と顔をしかめると思う)。
あとまあ、これらカリカチュアされたキャラを見ていても、ルーカス&ウォリアムスの、戯画の対象に対する愛情や興味がまったく伝わってこないのも自分にはきつい・・・。もちろんゲイ・ネタなど、マット・ルーカスにとっては自爆で自虐なギャグも混じっている。しかし、演者自身が自分達を棚に上げて、「よく分からないけど、こんなもんでしょ」とばかりに弱者やバカやハミ出し者を安易にステレオタイプ化し、おちょくるだけだと、なんとも言えない不快な後味がつきまとう。
もっとも、それは「LB」でも感じたことではある。ただ、「LB」ではキャラの多くが英スケッチ・ネタの伝統のバリエーションでもあり、観察はもっと細かかった。故にキャッチフレーズや定番ギャグがもうちょっと冴えていて、「いるよねー、こういう人」と笑いを誘い、苦味を中和するバランスが取れていたと思うのだ(それでも、「LB」後期には「いじめだ」「女性蔑視」との批判が上がったし、「Come~」についても、既に人種差別他、抗議の声が寄せられている)。

昨今の英コメディはモッキュメンタリー(「The Thick of It」)や日常的なシットコム(「The Office」、「Gavin&Stacey」、「Peep Show」他)、更にはコメディアンの素顔を活かした作品(「The Trip」)・・・とドラマ寄りの傾向が強く、その中で複数キャラでわいわい賑やかなスケッチ・ショウに取り組む、意気そのものは勇気があると思う。良識派が眉をひそめるリスキーな差別ネタやデフォルメも、ある意味、彼らは(昨今の比較的マイルドでデリケートな英コメディの風潮に対抗する形で)敢えてやっているのだろう。
しかし、「LB」からずいぶん時間も経ち、新たなアイデアやギャグのエリアを開拓することもできたはずなのに、発想の根本やキャラのバリエーションは同じ~しかも笑いが劣化しているとなれば――マンネリの結果だろう。ほとんどのキャラをルーカス&ウォリアムスが演じる方針も、正直くどくなってきたしな・・・本人達がノってやっているのは分かるんだけど、女装、ヅラやコスチュームのインパクトって、笑いとしては長く続かないので。

色々書いたが、これはまあ単に、自分がシャレが分からない堅物~ジョークの効かない人間だからかもしれない。なので、あと1、2話はエピソードを見てみるつもりではある。ただ、これまでのところのマイ診断は、「Come~」が「LB」並みのブーム(当時は、アンディ&ルーやヴィッキー・ポラードのキャラクター商品まで販売されました)になることはないだろう、というもの。
ヒット作の次の一手、というのは誰にとってもハードルが高いわけだけど、表層を変えての焼き直しでは、オーディエンスを騙せない。そこは、ルーカス&ウォリアムスの自己ハイプの過信、そしてお茶の間に対する甘えが作用している気がする。そういや、「Come~」のこれまでのところのカメオ出演も、ジェリ・ハリウェルにデイヴィッド・シュウィマーと、かなりお寒い(=有名人のカメオは、その番組のホットさのバロメーターでもある)。時代が変われば、笑いも変わる。

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しかし、60年代に時代を遡っても、笑える作品は今も笑える・・・ということで、グロテスクでブラックな社会風刺喜劇「The Loved One」は楽しんだ。舞台はアメリカで役者もほとんどアメリカ人なんだけど、原作はイヴリン・ウォー、英映画界の名匠トニー・リチャードソンがメガホンを振るい、葬式産業を背景に、「不思議の国:アメリカ」(というか、ロサンジェルス)を描き出していく。
主人公のイギリス人青年が、ハリウッドの映画界で働く叔父を頼り、ロスに降り立つところから話は始まる。ロスに暮らすイギリス人のコミュニティの奇妙さ、映画業界の浮薄さの描写もなかなか面白いし、名手ハスケル・ウェクスラーによる重厚なモノクロ画面も実に美しい。が、故人(Loved One)の葬式のために青年が訪れた、豪華絢爛たる霊園Whispering Gladeがメインの舞台になるあたりから、ストーリーは本格的に転がり始め、諷刺とシュールさを一足飛びでエスカレートさせていく。

この作品を久々に観ようと思ったきっかけは、トム・フォードの「A Single Man」だった。あの作品の原作者であるクリストファー・イシャーウッドは、脚本の初期段階で「The Loved One」に参加していたのだ(ロスに暮らすイギリス人なので、なるほどな人選)。しかし、最終的にスクリプトはテリー・サザーンの手に渡ったそうで、結果「The Loved One」はテリー味の濃い、無茶苦茶毒気の強い作品になっている。

アメリカ人であるテリー・サザーンは、ビートニクから始まり、世界を股にかけるヒップスターとして、60年代カウンター・カルチャーのど真ん中を突っ走った作家/随筆家/シナリオ脚色家。ビートルズ「Sergeant Pepper」のジャケットにも、ちゃっかり写っていたりします。
キューブリック「Dr.Strangelove」で名を上げ、代表作としては翌年のこの「The Loved One」、他に「Casino Royale」や「Candy」、集大成的珍作「The Magic Christian」(「Candy」および「Magic~」は原作もこの人)等に参加。ちなみに、テリー・サザーンがブレイクを掴んだきっかけは、「Dr.Strangelove」撮影中にピーター・セラーズがキューブリックに「The Magic Christian」を読ませ、それでキューブリックがテリーを脚色に招いたからだったとか。その後「Easy Rider」にも手を貸した・・・とされているが、脚本のどこまでテリー・サザーンが噛んだかについては、ピーター・フォンダとの間で揉めたらしい。

他にも色んな作品に関わっているのだが、これら代表作を観ると、モラルが崩壊した現代社会のグロテスクですらある諸相と、それにつれてどうにでも変わってしまう、人間の根本的ないい加減さを不条理&ナンセンスなユーモアを通じて容赦なくえぐる諷刺家=テリー・サザーンの視点が見えてくる。「Candy」(評価は低いらしいが、大好きな作品です)のフリー・ラヴの幻想、「The Magic Christian」が描く資本主義の醜悪。映像表現/スタイルとしてはやや古いかもしれないが、テーマは現代とも通じるものがある――それが先見性なのか、あるいは我々人間の根本が50年経ってもあまり変わっていないからなのか、そこは分かりませんが。

「Candy」は、ムチムチのカマトト聖美少女が無意識のうちに周囲の男性群を魅了・翻弄し、彼らとの邂逅を通じて遂にはヒッピー的な「悟り」を開いていくお話(この美少女キャンディは、「The Loved One」のナイーヴな聖女ミス・サラトジナスのキャラにも一脈通じる)。当然ストーリーは無茶苦茶だけど、キャスティングが最高なので(特にキャンプの極みなリチャード・バートンとマーロン・ブランド!)、機会があったらぜひ。
「The Magic Christian」は、ピーター・セラーズ(大富豪)&リンゴ・スター(その大富豪に養子にされた浮浪孤児)(リンゴは「Candy」にも出演。この人、ほんと演技下手)が怪演を繰り広げる、スケッチ形式の映画。脈絡を一切無視したぶっ飛び加減では他作品をしのぐすごさで、人によっては「自己満足の意味不明作品」と感じるかもしれないが、原作から舞台をイギリスに移し、しかしエッセンスを維持したところはさすが。
それだけに英味も強く(これはセラーズ先生の成せる業?)、イギリスにあまり親しみのない人には分かりにくいギャグのサブテキストもある(例:ラストの糞尿シーンで強欲ぶりを発揮する紳士達の丸高帽は、イギリスの金融業界を牛耳るリッチな商社・銀行マンのシンボル)。ジョン・クリーズ&グレアム・チャップマン=マイ溺愛のパイソン組も顔を出しているが、スパイク・ミリガンはかなり通だろう。とはいえ「金」にまつわる荒唐無稽なサタイアとしては、いまだかなりエクストリーム。映画そのものも好きだけど、この作品はバッドフィンガーが音楽を提供、また、これまた大好き!サンダークラップ・ニューマンの名曲「Something In The Air」もナイスにフィーチャーされているので、それだけでも充分に観る価値ありかと。

もうひとつ感じるのが、60年代後期の映画界も、それなりに「シックスティーズ」「スウィンギング・ロンドン」のムードを取り入れようとしていたのかも・・・という点。音楽に較べ、映画はスタジオ・システムや契約などもあり、関わる人間やプロセスの数がレコード作りよりも半端なく多いので、ツァイトガイストを反映する企画が実現するのには若干時間がかかる。しかし、「Casino」はもちろん、「Candy」も「Magic~」も、ほんとカメオ出演が多い。パーティで会ったスターの誰かに「今撮影してるから、来ない?」みたいなノリで声をかける、あるいは「俺も出させろ」「ノンクレでもいいから私も出たい」みたいな調子なのか?ちゃらんぽらんでいいよね。
国際間のスターの交流が今より自由で柔軟だったような印象を受けるし、同時に、俳優や映画制作者側も60年代の波乱と変化の空気(=ハッパ?)を吸い込んで、ちょっとハメを外していた気が。それが、あの頃のカルト珍作に独特の熱気みたいなもの――一歩間違うと内輪受けなんだけど――をもたらしていると思う。

「The Loved One」も、ジェームズ・コバーン、ジョン・ギールグッド、ロディ・マクドウォール、リベラーチ、ポール・ウィリアムスといった曲者が出演して、相当にいい味を出してます。かつ、この作品は他のテリー・サザーン関連作の中では比較的(あくまで比較的、という話だが)演出がまっとう&ストーリーの飛躍が抑え気味、かつテンポもノーマルな方ので、彼の作品に興味がある人は、ここか「Dr.Strangelove」から入るのもいいかも。何より、アメリカ葬式産業がテーマという意味では、「Six Feet Under」ばりに珍しい作品でもありますし。

この他、気になったネタ。

■BBC Sounds of…poll
150人以上の英音楽ライター/DJ他放送業界人/アーティストから選ばれたパネリスト&識者から「今年のイチオシ新人は?」の意見を募って、毎年1月、英BBCが投票結果=15組のアクトを発表する「BBC Sounds of」。「今年はこのアクトが来る!」ランキングみたいなもんで、この時期の各種メディアで数多く見られる、年間予想ネタの一種ですな。今年はこんな感じ。

1. Jessie J 2. James Blake 3. The Vaccines 4. Jamie Woon 5. Clare Maguire
以下、順位なしのノミネート
Anna Calvi/Daley/Esben & the Witch/Jai Paul/Mona/Nero
The Naked & Famous/Warpaint/Wretch 32/Yuck

2002年から始まり、今年の1位は誰か?と年々各界からの注目を集めるようになり、今や日本の音楽メディアでもそれなりに取り上げられるようになってきたこのリスト。その理由は、2004年のキーン、2006年のコリーヌ・ベイリー・レイ、2007年のミーカ、2008年のアデルと、このリストで首位を獲得したアーティストが実際に軒並みビッグ・セラー・デビューを記録した実績ゆえだろう。
イギリスの業界暦においてはBrits(=英レコ大)、Mercury Prizeなんかに匹敵する注目リストでもあり、音楽ライターの端くれとして一応毎回チェックはしてるんだけど、5位以下のアクト(自分の気になるアクトは、大抵ここに収まってます)はともかく、上位のアーティストはほぼポップ系であり、モノホンな興味は抱いていない。
それに過去2年は、ここで首位を獲得して話題を集め、幸先のいいスタートを切った・・・かに見えたアーティスト(リトル・ブーツ、エリー・グールディング)のセールスがそこまで伸びず、やや拍子抜け。逆にリストから漏れたノー・マーク勢が健闘したりして(ジ・XX、ジャネル・モナエ、タイニー・テンパー等)、このリストの信憑性ってどんなもの?Mercury Prize同様、ここで1位になると、逆に呪縛になる?という思いも。そもそも、今年のリストにウォーペイントとジェイムス・ブレイクが載ってるのって、妙だし。ちなみに、このリストで興味があるのは、Anna Calviちゃんだけっす。

そんな自分の疑念をかなり氷解してくれたのが、英The Gurdianのこの記事だった。詳しくは読んでいただくとして、なるほどね~と思ったのが、①パネリストがメディア人なので、選んだ手前(?)、リストのアーティストを彼らが自分のメディアでも取り上げる=スポットが当たりやすくなる=セールスに繋がる、という構図②パネリストも見当違いな予測を立てて恥を掻きたくないので、他パネリストが選ぶポピュラー(=無難)なアクトを押しがち、の2点。案外と・・・出来レースっぽくないですか?

このリストの制作は毎年11月にスタートするそうで、その時点ではまだアルバムが完成していないとか、ネットで数曲聴けるだけ、なんてレベルのアクトも多い。いくら事情通の業界人であっても、そんな時点で「来年はこれ!」と100%の確信で押すのは難しいのだろう。また、リストを作っていた頃に、たまたまプロモ力の高い会社から売り込みを受けて、「じゃあこのアクトも」なんて、ノリで押しちゃう可能性もゼロではないと思う。なんで、あまり過信せず、「(ファンの声ではなく)業界がプッシュする新人はこんな感じね」と、そこそこクールに接するのがベストなリストなんだと思う。
また、この記事で興味深かったのは、BBC Sounds of~は英国内においていまだある程度の神通力を保っているとはいえ、過去数年でますます細分化~変転の激しさを増した音楽シーン=12ヶ月の見通しなんて立てにくい!(つうか無理)という実情を前に、レーベル側もそこまでこのリストの結果に拘らなくなってきた、という点。新人の売り出しは難しいので、レコード会社としては、どんな露出のきっかけでも、バズでも、咽喉から手が出るほど欲しいもの。なので、このリストは無視できないとはいえ、その結果に右往左往する必要はない、との健全な認知は、業界内にも生まれつつあるみたいです。

「このリストに載れば」「この番組に出れば」「この雑誌に載れば」といった、これまである程度のサクセスをオートマティックに保障してきた方程式/構造は、もはやどこでも通用しなくなりつつある。そんなタフな認識の上に立って、いかに優れたアクトや作品を的確かつ効果的に露出し、その音楽を求めているオーディエンスのもとに確実に届けていけるかがどうかが、今のレーベルの腕の見せ所なのでしょう。と同時に、そのシグナルをばっちりキャッチするアンテナを常に磨いておくのは、我々リスナーの仕事かも。

■HMV
先だってのクリスマス商戦で惨敗したのを主な理由に、HMVが向こう半年の間に、英国内60店舗をクローズすることをアナウンス。ここんとこずっと、HMVが苦戦って話は耳にしていたし、オックスフォード・ストリートの2店舗が1店になった去年、「ああ、来たな~」と感じた。と思いつつ、同じ通りにオックスフォード・サーカスとマーブル・アーチの2店舗構えてること自体、今の時代かなりナンセンス、つーか暢気な話だとは感じる。いくら東京の靖国通り、あるいは公園坂に匹敵するショッピング&繁華街&観光客街だとしても、主力商品であるCDやDVDが売れない今、家賃に維持費に人件費がかさむばかりであろうことは、素人でも察しがつきます。

新聞他の分析報道に目をやると、この縮小の要因は、HMVが通販およびデジタル・マーケットで完全に遅れをとり、そのギャップを埋めることができないまま赤字状況が続いてきた結果、とのこと。もともと小売だから発想転換が難しかったのかもしれないけど、利用者の経験から言わせてもらえば、HMV通販はアマゾンに較べてサービスも品揃えも悪かったので(明らかに在庫にないのに「発送します」の一点張りだったり、商品不着が2回続いたり、まあ色々)、ダウンロードをトライする気にもならない。
それに加えて大きいのが、いわゆる「トップ40」の人気作品=普段滅多にCDを買わないタイプの人達が、流行だから・・・と買うようなヒット・アルバムのセールスを、スーパー・マーケットにごっそり持っていかれた点。どのスーパーにも、DVDコーナーやCDコーナーがあるイギリス。テイク・ザットとかシェリル・コール、カイリーやリアーナの作品を、専門店に行くまでもなく、野菜や卵、トイレット・ペーパーといった日常品を買うついでに買えれば、大衆にとって楽ちんであるのは間違いないわけで。

とはいえ、もともと通販もDLも苦手、お店であれこれブラウズしながら、自分なりのロジックに従って作品を買うのが好きなタイプの人間なので、旗艦店で在庫が豊富なオックスフォード・サーカス店には、ソーホーに行くたび必ず立ち寄っていた・・・んだけど、昨年アナログ・セクションが大幅にカットされたため、一気に足が遠のいた。そのちょっと前までは、このHMVブランチはむしろアナログ・セクションの拡大を図っていたので(7インチとかもちゃんとディスプレーしてたし)、かなりUターンな裏切りである。
その静かな怒り(?)は、マニアやDJといった少数派ながら、アナログ(もともとプレス数が限られているので、最初に行った店で在庫が切れていたら、他の数店を回遊して探すことになる)を求めてこの店に通っていたファンに共通していたようで、次に行った時には更に売り場が縮小。レコードのストックそのものも、バイヤーが惰性でやってるとしか思えん・・・という惨憺たる状況になっていた。
あの店に最後に行ったのは、かれこれ4ヶ月くらい前の話になるが、その頃には、かつてヴァイナルが並んでいたセクションはダサいカジュアル・ウェアのコンセプト・ショップ&バンドTシャツ売り場と化していて、「もう、この店に用はない・・・」と痛感。長く通ってきたお店であり、いいインストア・イベントもあった。スノッブなインディ店に較べれば店員のマナーはむしろ良かったし、チェーンながら愛着はあり、それなりに売り上げに貢献してきた自負はある。が、自分のわずかな居場所をこうしてあっけなく消されてしまった今、もう、ここに通う意義はなさそうだ。

ともあれ、イギリスもいよいよレコード店氷河期の最終局面に達したか、という思いです。2004年頃からイギリスの独立系レコード店がバタバタと倒れていき、ブランド・アイデンティティがあり、特化したキャラ立ちのいい「メッカ的」ショップ(=ロンドンのRough Trade、カーディフのSpillers、マンチェスターのPiccadilly、グラスゴーのMONO等)でもないと、小さなお店は苦戦する、という状況を迎えたのが第一段階だったとすれば、ヴァージン・メガストア、FOPP、そして今やHMV・・・と、00年代が終わったところで、大手も沈むフェーズ:2が始まった、というところか。どうなるのでしょうね?

年が明けて、しかしまだ1枚もレコード買ってないので、そろそろ何か買おうかな・・・と思いつつ、観たい映画が続々迫ってきてます。「King’s Speech」、「Black Swan」、「True Grit」、そして「Submarine」。「The Mighty Boosh」、「IT Crowds」、そしてヴァンパイア・ウィークエンドやラスト・シャドウ・パペッツのPV監督でもおなじみな俳優:リチャード・アイオーデの初長編監督作「Submarine」は、3月公開とのこと。屈折した主役を演じた少年アクター=クレイグ・ロバーツに、演技の参考のためにリチャードが見せた映画が「The Graduate」、「Harold and Maude」、「Taxi Driver」ってんだから、自分にはもうドツボ。首を長くして待とう~~っと!

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Mariko Sakamoto について

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