Unknown Mortal Orchestra@The Lexington,5July/2011

Unknown Mortal Orchestra

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このライヴは、ポートランド経由ニュージーランド発:Unknown Mortal Orchestraの初ロンドン・ヘッドライン・ショウだった――と知ったような顔で書いてますが、YMOならぬUMOのことは、「スライ・ストーンとフレーミング・リップスのジャムか?」とのライヴ告知新聞記事を読みかじるまで、まったく知らなかった。デビュー・アルバム「Unknown Mortal Orchestra」も、英リリース前タイミングのこと。なんで試聴音源はネットをあさるしかなかったのだが、スカスカにローファイですっとぼけた、しかしその奥に隠れたポップ・メロディは超ご機嫌に達者で、速攻チケットを予約したのでした。

ニュージーランドと言えば、たとえばお隣オーストラリアに較べて数は決して多くないけども、ひいきなバンドはちょこちょこいる。スプリット・エンズ~フィン兄弟の数多のプロジェクトはもちろん、ザ・クリーン、ザ・チルズ、クリス・ノックスといったフライング・ナン勢。ギャラクシー500~ルナ~ディーン&ブリッタのディーン・ウェアハムも、生まれはニュージーランド:ウェリントンですね。
その名門フライング・ナンは今年11月にレーベル設立30周年を迎えるが、なんのことはない、調べたらUMOもフライング・ナン絡みでありました。前身にあたるパンク~シットゲイズ(No Ageあたりを指す形容みたいです)・バンド=The Mint Chicksが解散、その核だったニールソン兄弟のひとりであるルーバンが、別メンバーと共にポートランドで昨年始めたプロジェクトがUMOとのこと。パンクの「パ」の字もない、ファジィにほつれたサイケデリック・サウンドなのでこの前歴には驚くが、DIYな打ち込みポップの合間に時たま暴れ出すノイジー・ギターなど、なるほど形跡は残ってる。恐らく、ガレージ・パンクな本業の傍らで、パーソナルな趣味として続けてきたホーム・レコーディングの実験が発展した成果が、このUMOなのだろう。

会場は、キングス・クロス駅とエンジェル駅の中間に位置するThe Lexington。以前はClockwerksという名称だったが、要はパブである。ライヴ・ヴェニューは階段上がって2階。キングス・クロス界隈で、(ホール・サイズのScalaを除き)老舗な会場と言えばWater Ratsなわけだけど、雰囲気は古典的なロック・ヴェニュー(=こぼれたドリンクで常にかすかにベタッとしている床とか)のそれで好きとはいえ、縦長で平坦なフロアは、背の低い自分のような日本人オーディエンスにはちょっときつい。対してレキシントンは、横に長めのフロア設計&一段上がったところにギャラリー(早めに行けばベンチに座って観れます)とバーがあり、そのバーの酒セレクションも悪くないので、ここでのライヴはブーブー言わずに楽しんでいる。

初上陸にも拘らず場内は9割方埋まっていて、密かに注目度が高いのだな・・・と感心。マーチャンでCDをチェックしたところ、アルバムのリリース元はガールズでおなじみ:True Panther Soundsなので、ブロガーの間ではバズっているのだろう(アメリカではFat Possumがリリース)。たとえば初期のベックのようにローファイなサンプリングが基本のサウンドだけに、ライヴはどうなのかな?と思っていたところ、バンドはトリオ編成だった。ベース君とギター君のフロント2名はTシャツ+トラッカー帽姿なところが、飾りっ気ゼロで好感度高し。アメリカ国外でのショウは今回が初めてだそうで、ルーバンの「ニュージーランドから来ました~」の照れくさそうな挨拶の中に、メンバーの興奮が透けて伝わってくる。
1曲目はぽこぽことファンキィにバウンスするべース・ラインが抜群な「Strangers Are Strange」。キンキンの高音をリヴァーブでくるんだギター・サウンドは、センスがいい上に弾けてる!上手いってのとも違うけど、個性がしっかりあります。そこにエフェクトで増幅されたリード・ヴォーカル&コーラス・ハーモニーの層が加わり、なるほど~、たった3人でもミニミニ・ローファイ・オーケストラなわけです。あどけなくて素朴、てのひらの淡雪のようにすぐ溶けてしまいそうな儚さを備えたメロディは、エレファント6勢やグリフ・リースの歌にも通じる味だ。たまりません。

このオープニングだけでもあっさりヤられてしまったのだが――近いところとして「ワイルドなアヴァンギャルド味を抑えたテューン-ヤーズ」との念が浮かんだけども、ほんと、このバンドのサウンドは他に比較がパッと浮かばない=ゆえに好きです――2曲目ではグルーヴに乗ってメタルにかきむしられるギター(この人、昔はメタルっ子あがりのパンク・シュレッダーだったんじゃないかしら?)がランダムにバーストし、ライヴ・バンドとしての醍醐味も充分。続いたのはアルバムのオープニング・トラック「Ffunny Ffrends」で、さすがにオーディエンスの反応もひときわ大きい。ギター・リフのサーフなエコーとファルセット・ヴォイス、寄せては返す波のようなゆるやかなビートと、どこかトロピカルな雰囲気の漂う絶品なポップ曲にほんわかのんびりと揺られる。
一転、パンチとフックの効いたガレージ・チューン「How Can You Luv Me」では英ポスト・パンクな表情も浮かび、ルーバン君が再びどしゃめしゃに弾きまくる。こういう風に計算せずにソフトとハードがごっちゃになる感じ、90年代のインディ・ミュージックっぽいなと思う。名曲「Thought Ballunes」で広がったえもいわれぬ浮遊感、80年代中期プリンスを髣髴させるポップ・ファンクのスウィートネスも最高だった。

プレイされたのは8曲で、イコール現時点での持ち札すべて=ファースト・アルバムをほぼ全曲演奏したことになる。ゆえに30分程度のかなり短いショウではあったけれど(ショウケースと呼んでもいい)、一見なんてことはない佇まいから繰り出される音楽はどれもクレバーかつユニーク。それに触れるのは驚きに近い喜びだったし、新鮮なポップ・アイデアと無邪気なプレイに、最初から最後までニンマリ笑顔を浮かべずにいられなかった。こういうバンドもまだいるんですね。
手作りなサウンドをこのまま維持していくのか、あるいは今後の作品ではバンドとスタジオに入ってニートにまとめていくのか、それは分からない。どちらにせよ、南半球からやってきた原石がこの晩見せてくれたいくつもの小さな輝きは、金メッキされた石ころ達の中でも、すっくと立つはずだ。

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Mariko Sakamoto について

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