My Favourites-2011 edition

●●●Favourite records 2011●●●

いつもポストが迷宮のようにぐねぐね長いので、今回はトウィッター風の簡潔な「一口レヴュー」にトライしてみようかと‥‥トウィッターやったことないですが。

その前に前口上:
今年も色んな音楽がリリースされ、多くの新人がデビューし、様々な音に出会うことができた。メニーサンクス。けれど、選択肢やアウトレットの増加に比例して自分の趣味•興味が広がってもいいはずなのに、現実は案外そうでもない気がする。むしろ、自分のもともと好きなタイプの音楽/構えずとも「入ってくる」音に強く反応=ルーツに逆行する傾向に振れている、という。
耳が老化した証拠だろうし、リスナーとして保守化しているのかな‥‥と不安にもなる(2012年はとりあえず「マジー•スター再結成とダーティ•スリーの久々の新作が楽しみ」なんて考えてるのも、我ながら古いっすよねえ〜)。が、あくせくとトレンドやニュー•ハイプに飛びつくよりも――そのオン•タイムなスリルは、それはそれで楽しいものですが――、繰り返し聴けて長く付き合える作品との出会いを丁寧に言祝ぎたい、というのが昨今の率直な心情でもある。

ランキングはもともと得意ではないので基本はアルファベット順のリストで、最初にあげる3枚以外は、それぞれ異なる魅力と引きがあって甲乙つけがたい好作品群。計37枚、「ベスト40あるいは50」といった具合に切りのいい数になっていないのはみっともないが、それは聴いた新作の数=分母が決して大きくないからなので悪しからず。未聴の過去の作品にもまだいくらでも発見の余地がある脇の甘いリスナーなので、新作にばかりかまけてはいられない、ということで。
ともあれ。トップにあげた3枚は、自分にとっての今年のダントツ作品にして、これからもえんえんと立ち戻り、聴き返すレコードになると信じている(去年のこの3枚に当たるのがギル•スコット—ヘロン、ビーチ•ハウス、 ジョアンナ•ニューサム。次点はスフィアン•スティーヴンス、スワンズ、フライング•ロータス、 エイヴィ•バッファロー 、ヒア•ウィー•ゴー•マジック、イェーセイヤー、 ヴァンパイア•ウィークエンド)。ケイト•ブッシュ、ポール•サイモンやトム•ウェイツら、高い評価を集めているベテラン達の作品を聴く余裕がなかったのは、心残りでもある。

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PJ Harvey/Let England Shake(Island)
年頭リリースながら多くの英メディアが年間ベストに選出、胸を撫で下ろした。彼らもまんざら腐ってないらしい。戦争を多彩なアングルと話法を援用して描いているが、大局的には繰り返される人災と悠久な自然の対比が残る。「英国」に限定されない普遍性を音楽と言葉の双方で達成した名作。

Bill Callahan/Apocalypse(Drag City)
近年のビルの作品はいずれもビタースウィートな生の機微にふれる名人芸の域に達しているけれど、本作の枯淡な味わいは格別。しみる1枚とは、まさにこのアルバムだろう。「Letters To Emma Bowlcut」も抜群。

Gillian Welch/The Harrow&The Harvest(Acony)
久しぶりに帰還した天才による、待った甲斐のある力作。ストイックな音数にかかわらず、音楽として孕む豊かさと完成度は他の追随を許さない。「もっと!」とねだりたくもなるが、時間をかけて一滴一滴落ちてきた音楽をこうして待つのもまた喜びなのだ‥‥と感じさせる1枚。

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Ryan Adams/Ashes and Fire(Pax Am)
多作なこの人の「名曲」は色んな作品にちらばり気味でもあるのだが、シンガー•ソングライターとしての原点を再確認するごとき本「カムバック」作は、フォーカスの絞れた楽曲揃い。洗練されたバックのスタイリングと秀逸なレコーディングにもうならされる。

Arbouretum/The Gathering(Thrill Jockey)
米産ながら、70年代英プログレ〜ヘヴィ•サイケ(たとえばサバス、ホークウィンド、クリムゾン、ロキシー)のキモをがっちり掴んでいる素晴らしいバンド。1枚の世界の中に聴き手がずっぽり埋没できる、古典的な作りのレコードでもある。

Atlas Sound/Parallax(4AD)
「さ迷える少年」の夢想をたどるごときファジィで流動的な音作りの中に、この人のどうしようもなくリリカルではかないメロディが絶え間なく浮かんでは消える。

Battles/Gloss Drop(Warp)
タイヨンダイ脱退の大波を乗り越え、アヴァン•プログレ•ポップの雄としての立場を固めた力作。ハンデもなんのその、ユーモアと攻めの空気に満ちていたライヴの良さも、ポイント高し。

Bill Wells and Aidan Moffat/Everything’s Getting Older(Chemikal Underground)
名コラボレーターであるビル•ウェルズが、街角の吟遊詩人:エイダン•モファットと組んだ1枚。エイダンの味出しな声が言葉に生命と詩情とを吹き込み、ビルが画家のようにその情景を淡い水彩の音で描き出す。あつらえたような小津安二郎を思わせるスコッツ•タッグは、いつかまた実現してほしいと祈らずにいられない。

Bon Iver/S.T.(4AD)
腰の重いグラミーに2作目で認知されてしまったボンちゃん(カニエ作用?)。美しく内に閉じた前作に対し、本作は窓を開けて今の風や動きを取り込んでいる。量産コピー•浪費されかねない(テレビ•ドラマとか、使いたがりそう)ほど個性と磁力が強い声なので、その力だけに依らず音楽面で刷新を図ったのは正解。

Anna Calvi/S.T.(Domino)
トータルな流れという意味では突っ込みどころもある作品ながら(人によってはそのギャップが魅力でもあるだろう)、ネオ•ノワールやゴス•パワー•バラッド(なのにボニー•タイラーにならない「品」があります)といった玄人好きする世界に果敢に飛び込み、彼女色に染めてみせる才気は大いに買う。

Mikal Cronin/S.T.(Trouble In Mind)
さらっと聴いただけではフリーキーにかっ飛んだネオ•ガレージなんだけど(③はモロにJAMC)、サーフ、サイケのアクセント等々、ポップな快に満ちたフックをあちこちに仕込むクレバーさがなんともご機嫌な人。仲良しバディのタイ•セガール、ジョン•ドワイヤー先生などSFガレージ族もむんむん参加。

Crystal Stilts/In Love With Oblivion(Slumberland)
オーソドックスな構成のギター•バンドという意味では、今もっとも好きな人達。本セカンドも、へなちょこでモノクロームに無愛想なVUチルドレンとしての面目躍如。最新EPではブルー•オーキッズの隠れ名曲をカヴァーするなど、「分かってる」センスの良さはお墨付き。

Destroyer/Kaputt(Merge)
ニュー•ポルノグラファーズの一員として知られる人だが、ソロ名義:デストロイヤーの方が長い。近いところではツイン•シャドウ、カーントなど、ここ数年続いている「80年代FMメロウ•ポップ(エレで欧州寄り)」リヴァイヴァル•トレンドの到達点と言える作品かもしれない。

Dragging An Ox Through Water/The Tropic of Phenomenon(Sweet Dreams)
昨年リリースながら、聴いたのは今年なので強引に(SDの福田さん、ありがとうございます)。ジャッキー•オー•マザーファッカーにも参加しているブライアン•マムフォードのソロは、宅録ポップの美と不思議でいっぱい。こんな音を出している人は他にいない&パッケージも素晴らしいので、見かけたらぜひ。

Earth/Angels of Darkness,Demons of Light 1(Southern Lord)
瞑想系ミニマル•ミュージックとシアトルのドゥームな感性の連携を感じさせる1枚‥‥と書くと何やら仰々しいが、彼らの作品中でも入りやすい内容じゃないかと感じる、才人カール•ブラウ参加も嬉しい1枚。来年発表予定の続編にも期待が募る。

●Fleet Foxes/Helplessness Blues(Sub Pop)
ボン•イヴァーと並ぶ「難しいセカンド」だったと思うが、バンドの本質と良心を損なうことなく、スケールの大きいサウンド•スケープをみごと実現。着実なネクスト•ステップだと思う。

Fucked Up/David Comes To Life(Matador)
ハスカー•ドゥ「Zen Arcade」以来のハードコア•パンク•オペラとも言えるし、70年代末〜80年代初頭のイギリスに設定されたコンセプトにザ•フーを思い起こしもする。とはいえ、このバンドの「パンク」に限定されない旺盛な消化力、ストーリーへの愛、音楽的好奇心が結実した見事な作品。熱いぜ!

Gang Gang Dance/Eye Contact(4AD)
過去の作品群と比較しても、格段に「抜けた」感がある。しかし、文句なしに酩酊させられるオープニングを経て、アーティな人達ならではの中盤のモタつきだけが残念。そこをいかに解消してくれるかが、次の課題かも。

Hiss Golden Messenger/Poor Moon(Paradise of Bachelors)
カントリー/ブルーグラス/フォークの伝統と良さとを、麗しく「今」に再解釈し次代へつなげていく伝道師M.C.テイラー。ルーツ音楽に興味を抱く若いファンが、手始めの教科書として聴いてくれたらいいなあと思う。

Hype Williams/Untitled(Carnivals)
ヒプナゴギッグ系ではワンオートリックス•ポイント•ネヴァーの「Returnal」に続き、ここ最近で一番ハマった作品。レトロとフューチャーの間に蜃気楼のようにたゆたう、不思議な空間を生み出す音だと思う。

Pat Jordache/Future Songs(Constallation)
80年代UKのどっかで似た声を聴いたことがあると長らく気になっているこの人の声、いまだ特定できない(苛)。ケヴィン•ローランドの抑揚をかすかに想起させるその声、ハイライフでプラスティックな音作りに素晴らしくマッチ。「モダン•ポップ」を今年強く感じさせてくれた1枚(追記:チューンヤーズのメリルとも交流のある人でした)

Low/C’mon(Sub Pop)
リリース期よりも、むしろクリスマスや年末=冬の情景にぴったりなホーリーな音‥‥というか、このバンドはもうクリスマス•レコードも出してますね。音楽ユニットとしての総合力が再び高まっているのも、心強い限りです。

John Maus/We Must Become The Pitiless Censors of Ourselves(Upset The Rhythm)
アリエル•ピンクのマブダチ。ジョン•カーペンターばりにチープなシンセ音とドラマチック&エピックな楽曲の混交は、サイボーグ•ディスコとでも言うべきねじれた次元にトリップさせてくれる。

Thurston Moore/Demolished Thoughts(Matador)
ソニック•ユ―スの今後はさておき――サーストンのもっとも「裸」なアコースティック•アルバムで、スピリチュアルなモチーフが多いのもその内省的な印象を強めている。まんま放り投げても美しい楽曲集だが、ベックが「Sea Change」そのものなルミナスでラッシュなプロデュースで好サポート。

Panda Bear/Tomboy(Pawtracks)
聴いているうちに音がささやき、うごめき、飛び回り、光を反射しうねる様が目に浮かぶような、マジカルなミクロコスム。テレくささを克服し(?)、ヴォーカルに真摯な情感が宿る瞬間がたまりません。

Peaking Lights/936(Not Not Fun)
ウィスコンシンを拠点とする夫婦デュオによる、ウォーペイント系なダビーで煙たく、トランシーな音像がなんとも素敵。エレクトリックでサイケ寄りなビーチ•ハウスと言えるかも?

Josh T. Pearson/Last of The Country Gentlemen(Mute)
バチあたりロッカーズ:リフト•トゥ•エクスペリエンスを経て、ジョッシュTが描き出したジャーニーマンの憂愁。ひなびたニック•ケイヴとも言えるが、本作の長い尺に付き合うだけの集中力を維持させる、サウンド面/トーンの変化に乏しいのだけは残念。

Real Estate/Days(Domino)
フィーリーズとフェルトという、マイ大好き!な連中のエッセンス〜青い硬さを備えたバンド。ゆえに、あっけなく陥落。

The Skull Defekts/Peer Amid(Thrill Jockey)
スウェーデンのオルタナ番とも称されるこの硬派なバンド、元ラングフィッシュのダニエル•ヒッグスとの顔合わせも納得。古さを否めないサウンドながら、ツボをついたプロダクションでびっちり聴かせる。

The Strokes/Angles(RCA)
紆余曲折を経ての新作完成にまずほっとしたが、前2作におけるトライアルを消化した、真の意味での進化が結実していて溜飲が下がった。地味に愛されるカルトな存在になることをキャリア初期に想定していたという、このバンドのマニアックで因習にとらわれない本性がよく出ている。

Tune-Yards/Whokill(4AD)
激DIYな前作を経て、スタジオ•レコーディングのツヤをまとったセカンド。しかし、アフリカとアメリカをつなぐメリルの民族学的な視点、才気走ったミクスチャー志向は相変わらず奔放で、個性的なポップ•クリエイターとしてますます目が離せない存在に。

Unknown Mortal Orchestra/S.T.(True Panther Sounds)
先述のパット•ジョーダーシュと並び、今年もっとも「ヤられた!」ご機嫌なモダン•ポップ•レコード。エレファント6ばりにやんちゃでメロディックなチャームを、サニー&サーフ&ロボット•ファンクな音作りで軽やかに味付け。聴くだけで気が晴れる。

Kurt Vile/Smoke Ring For My Halo(Matador)
The War on Drugs/Slave Ambient(Secretly Canadian)
この2枚はフィリー•セットで。アメリカン•ロック/ブルー•カラーな男気をインディ音響系センシビリティで濾過したTWODは、前作のトム•ペティ味から音のレンジを更に広げていて◎。元メンバーであるカート•ヴァイルは、ディラン〜初期ボウイなボヘミアン•フォーク•メロディで泣かせる。

White Hills/H-p1(Thrill Jockey)
ウッデン•シップス、ブラック•エンジェルズなどスペース•ロックは今年も好調だったけど、インダストリアルなヘヴィネスで蹂躙するこのアルバムは頭ひとつ抜けた感。次作はロリ•モシマンと組むとか。にしても、近年のスリル•ジョッキーの割り切りぶりというか、大胆なリリースには目を見張らされる。

Wilco/The Whole Love(dBpm)
音楽集団としての充実があるからこそ可能な自由や実験はそのままに、「Summer Teeth」期を彷彿させるハッピーとサッドが入り混じるポップから心がむき出しのフォークまで、ソング•ブックの趣きが強い1枚。⑫のような曲は、今のこのバンドにしか作れない曲だろう。

Wild Beasts/Smother(Domino)
昨今の英バンドの多くが「手に負えない」と避けている(というか存在に気づいてもいない)、女性的な観察眼とエレガントな閨房描写を会得した、あっぱれに大人なバンド。過去の露骨な役者ノリを排した洗練サウンドも含め、トーク•トーク「Spirit of Eden」のようにカルト•クラシック化していくアート•ロック作だと思う。

●●●Best Live●●●

●Animal Collective/Coachella Festival(April)
●Sufjan Stevens/Royal Festival Hall(May)
●Ryan Adams/Union Chapel(October)
●Gillian Welch/Hammersmith Apollo(November)

*偶然ながら、「久々/復活」がキーワードになるライヴが多かった。休息&充電はミュージシャンにも大事みたいです。にしてもギリアンのライヴ初体験は、軽くショックを受けたくらいすごかった。死ぬ前に、一度は観ていただきたいパフォーマー。

●●●Reissues●●●

CAN/Tago Mago—40th Anniversary Edition(Mute)
Jim Ford/Harlan County(Light in the Attic)
Jean-Claude Vannier/Electro Rapide(Finders Keepers)

*カンは、続くオクラ缶こと「Ege Bamyashi」に並ぶ、一家に一枚の絶品な名盤。ボーナス•ディスクのライヴ(72年)も、48分の名曲三連打とルーズ•フィットな生グルーヴで期待を裏切られなかった。にしても、このタイトルは日本語の「タマゴ」から来ているのだろうか?と考え込まされた。ニック•ロウも惚れたジム•フォードは、スワンプ〜カントリー•ソウル名盤(69年)のアナログ再発。JCヴァニエは未発表〜レア•インスト集なので「再発」ではないけど、60年代末〜70年代のヴィンテージ•ヴァニエ•サウンドが堪能できます。

それでは、皆様に穏やかな新年を祈りつつ。Happy good music hunting&discovories in 2012.

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Mariko Sakamoto について

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