Dispatches:The Great Ticket Scandal(C4)

前ポストの頃にはまだ「さぶい〜冷える〜」なんて話していて、霜の下りる朝もあったりしたけど、ここ数日で一気に春めいてきた。何より日が長くなり始めたのが嬉しい。寒さや暑さといった気温の変動には割と強い方だけど、日光が足りないと20%くらい気分が自動下降するので、午後4時頃には暗くなり始め、朝8時近くになってもまだ暗いイギリスの冬はたまにしんどい。
かといっていわゆるSun worshipper、日焼けや常夏が好きなアウトドア/健康志向の人間ではないけれど、春の陽光を目にし、空気の中に感じるだけでもポジティヴになれる。こうやってネイチャーのサイクルを体で感じ取ることができると、どんなに頭先行な日常を送る現代人でも、自然とのつながりまだ中に残っているんだな…と思う。一種の確認作業でしょうか。

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のんきな天気ネタはここまでにして、今回はちょっとまじめに、イギリスにおけるコンサート•スポーツ他のチケット売買/譲渡の話です。というか、英チャンネル4で放送された報道ドキュメンタリー「Dispatches:The Great Ticket Scandal」がとても面白かったので、それについて。

ライヴやコンサートのチケット。これは、音楽ファンなら常に頭の隅に引っかかっている「ハラハラ問題」のひとつだと思う。好きなアーティスト/バンドを生で観たい、新作が出たところでツアー/ライヴの告知はいつ? チケットの売り出し日は?? どうやったら確実にチケットを手に入れられる???…等々、「ライヴ/フェスを観たい」のシンプルな思いから、実際にそのイベントに足を運ぶまでの過程は結構ストレスフルだったりする。
自分が最初にチケットを買って観に行った、いわゆる「洋楽のコンサート」はプリンスの1986年横浜:パレード•ツアーだった(ステージから「トーキョー、トーキョー!」と叫び続けるプリンスに、お客が「違うんですけど〜」と苦笑いしていたのは今でも記憶に残っている)。そう考えると、ライヴに行くストレスをもう、かれこれ四半世紀も抱えていることになる。
もちろん仕事柄招待やゲストで観れるライヴもある。ので、「メディアに関わってる人間が何を言うか」「コネがあるだろ」と笑われても仕方ない。が、実際がどうかというと、(少なくとも自分の経験上では)「個人として観たいライヴ」と「仕事で観に行くライヴ」との間には相当に大きな隔たりがあって、そのふたつがうま〜い具合に合致するケースは案外少なかったりする。傍目には「インビもらえていいですね」「タダで音源聴けて羨ましい」なのだろうし、たとえばソールド•アウトのコンサートやプレミア•ギグを観れる好待遇に甘えられるだけでもラッキーなのだ…とは重々承知している。が、よっぽどな大物、あるいは認知された人気音楽ライター、大メディアに所属するライターでもない限り、「行きたいライヴはよりどりみどり、聴きたい音楽はなんでも聴ける♪」なんていう素敵な状況は、なかなか生じないと思う。

あとまあ、これは「タダほど高いものはない」が基本コードな自分の疑い深い性分もあるんだろうけど、心理的な借りを作るのがとても苦手。たとえば「ライヴ評を書く」といったギヴ&テイクが前提にある上でインビを受け取るのはまったく苦にならないのだが、単純に「作品が良かったからライヴも観たい」「(プロモに結びつくか保証はできないが)個人ブログにライヴを取り上げたい」といったパーソナルな状況だと、ギヴできない=当然自分でチケットを買うことになる。日本サイドのプロモーションやマーケット動向からズレたイギリスに暮らしていると、余計に個人/音楽ファンとしての興味に差が生じる、というのもあるでしょうけどね。
それでもチケットが発売と同時に完売だとか、どうしても正面突破が難しい!でもこれはマストで観ておきたい!というケースはごく稀にある。が、その場合に引っ張り出す奥の奥の手にしても、インビ(あるいは正規のチケット価格を払っての買い取り)をお願いしても大目に見てもらえる(?)友人レベルの付き合いがある人間のコネのみ。そうしたコネが自分にないライヴの場合は、きっぱり諦めて忘れることにしている。こう書いたからといって別にいい子ぶるつもりはないけども、要するに、自分のようなしがない音楽ライターの場合、チケット•ストレスが減少するってことはないわけです。

んなんわけで、この番組は実感を伴って見ました。「Dispatches」というのは潜入ルポを武器とする暴露ドキュメンタリー•シリーズで、今回の主役はイギリスでは一般的なチケット二次転売ウェブサイト(Secondary Ticketing Website)。これは以前から疑問に感じていた存在だったんだけど、そのからくりにある程度説明がついたし、「やっぱりな…」と同時に驚きの発見もあった。

日本ではまだなじみが薄いかもしれないけど、二次転売サイト(Viagogo、Seatwave、GetMeIn他)というのはこっちでは過去数年でかなり目につくようになってきた会社。その名目は「ファンとファンとの間で、不要なチケット/行けないイベントのチケットを売り買いする場を提供する」というもので、平たく言えばチケット(コンサート、お芝居、人気のスポーツ試合など興行全般)専門のオークション•サイト。たとえ売り切れたチケットであっても、このサイトで探せば希望が見つかるというわけです。
とはいえ、その希望が現実の喜びになるか否かは、買い手の懐次第でもある。人気チケットの場合は正規価格以上のビッドがつく場合がほとんどだし(逆に、当日近くまで売れない不人気チケットは値下げもあるだろうけど)、値段吊り上げの仕組みを利用して、利ざやを稼ごうと考える人間も当然出てくる。番組は、その利ざやが、これら転売サイトを通じていかにシステマティックに追求されているかを検証していく。

純粋に「諸般の事情でイベントに行けなくなり、誰か行きたい人間にチケットを譲りたい/余ってしまったチケットを買い取ってもらいたい」というのは、音楽ファンなら身に覚えのあるジレンマだろう。友達や知人に買い手が見つかればベストだし、会場まで足を運び「チケットありませんか」の札を抱えているファンに売った、なんてケースもあると思う。その意味で、情報を多方向に発信/多方向から受信できるネットが、捨てる神と拾う神とを結びつける、有益な情報交換の場になるのは当然のなりゆきである。
…と、ここまではいいんだけど、大手二次転売サイトの本音はそこにはないらしい。サイトの能書き、あるいは広告では「ファン同士がチケットを譲渡する場を提供する=消費者のリアルなニーズに応えるサービス」を大きく謳っているにも関わらず、サイト2社:ViagogoとSeatwaveに入社した潜入レポーターが隠しカメラやマイクで拾ってきた社内談話や映像を総合すると、基本的に三段階の構造がある模様。
その①は消費者、すなわち一般客。これは先述した「行けないから誰かに売りたい」「余分のチケットを譲る」系の人々に当たる。②はイベントのプロモーターや企業他、抑えたものの売り切れない過剰なチケットを捌こうというケース。最後の③は、「ブローカー」あるいは「プロの売り手」と呼ばれる層で、要は…ダフ屋(イギリスではTouter、アメリカではScalperと呼ばれてます)ですな。この三層のパーセンテージの大まかな内訳は①=20%、②=10%、③=70%で、「ファン同士の」という謳い文句はかなり怪しいのが分かる。

昔ながらの路上のダフ屋というのは、もちろん今でも存在する。イベントに足を運べば、会場外=地下鉄の出口の時点で「今夜のチケット売るよ〜買うよ〜」とおっちゃんお兄ちゃんが声をかけてくる。しかし、「我々の台頭でストリートのダフ屋が減った」と正当性を語り、一見「便利なファン•サービス」を装う転売サイト。が、そこを通じてより大規模なダフ屋行為(路上とネットの比較はなかったけど、マニュアル&現金取引の昔ながらのスタイルより、パソコン&カードのネット取引の方が分は良さそうな気がする)が形と名前を買えて容認されるようになった事実には、目を剥いてしまう。
もちろん、転売サイト側は「プロの売り手」がどんな連中か承知している。だが、ファン、すなわち素人〜個人レベルの細かい取引を通じて転売サイトの懐に落ちるコミッションはたかが知れている訳で、転売サイトの社員達の給料は定期的に多くのチケットを扱うプロの大手顧客からやってくる。Viagogo社員は「プロの売り手は大事にしないと」と語るし、Seatwave社員のひとりに至ってはもと路上ダフ屋だったというから、ほとんどギャグの世界である。

それだけでもゲンナリするけど、追い打ちをかけるのが「転売サイト向けに、人気チケットが割り当てられている」という実情。なんと、プロモーター側からダイレクトで、あらかじめ枠がもうけられているんですね。番組には、実例として、近年のイギリスでのメガ人気なツアー=テイク•ザット、コールドプレイ、ポール•マッカートニーらのチケットを買おうとして買えなかったファンの証言がいくつか出てくる。
発売とほぼ同時に売り切れ、しかし転売サイトには高値のついたチケットが浮上。会場のチケット売り場に徹夜で並んで一番乗りをゲットしたのに、発売開始の時点で最前列は既に消えていて、会場側から「この席は転売サイトが確保している」と言われた…とショックを語るファン。実体験を思い返してみても、ちょっと前にトライしたストーン•ローゼズのマンチェ公演チケット予約は徒労の一言で(ビジーのメッセージ、一向に先に進まぬ予約画面)、その一方でオークション•サイトや転売サイトでは早々とチケットがリスティングされ始め、バカバカしくなってしまった。日常レベルでも、イベントは売り切れているのに、転売サイトが広告を打っているウェブサイトにはオークションへのリンクがバンバン貼られているのも、「なんだかなぁ」という気になる。

昨年のコールドプレイのUKアリーナ•ツアーに関しては、チケット発売開始から数秒で完売→しかし、直後に二次転売サイト(eBayといったオークション•サイトも含め)ではチケットが売り出された事実にファンが激怒し、署名運動にまで発展したという。冗談のような話だが、転売サイトでのチケ最高値はなんと2000ポンド+(約26万円以上)まで上昇。このアリーナ•ツアーの正規チケット価格が(予約手数料込みで)50〜70ポンドだったのを考えても、とんでもない話だと思う。
ちなみに、番組では転売サイトを通じて買った@270ポンドの席がどこだったか?を明かす場面が出てくるんだけど、それこそアリーナ3階席の奥の奥(オペラグラスを使わないとステージが見えないレベル)で、正規価格の5倍以上払う意味は皆無に等しい。

ネット予約の匿名性を活かし、ダフ屋が買い占めて高値で転売する、という構造も影響しているのだろう。10万人近くが予約に殺到するチケット発売日にサイトがクラッシュするのも、物理的に考えれば当然の話。ので、ファンがチケットを買えなかった理由のすべてが転売サイトにあると…は思わない。
しかし、興行主サイド(イギリスにおける大手プロモーター=Live NationやSMJが常習犯らしい)、ひどい時にはマネージメントがあらかじめ転売サイトにチケットを割当て、吊り上げたオークション価格の利潤を転売サイトと分配するというシステム〜慣習がまかり通っている、というのはショッキング。その分配率はプロモーター=9割、転売サイト=1割と転売サイトの取り分そのものは低いものの、そこに1枚ごとの取引処理他の手数料も加えると、ちりも積もればでいい額になる。
こうしたシステムが成り立つのは発行されるチケットの枚数が多いメジャーな人気コンサート、あるいはフェスになるわけだが、昨年のVフェスティヴァルでは転売サイト向けに4500枚が流れたそう。また、2012年のビッグ•コンサート向けの割当ても既にいくつか決まっていて、そのリストによればリアーナ:2000枚、ウェストライフ:3000枚、コールドプレイ:9000枚。総数から考えれば一部とはいえ、ファンの手に順等に渡るべきチケットが割増価格で堂々と売り出されるのは、ひどい話である。

隠し撮りされた転売サイトの社員ですら「不道徳な行為だよね〜」と口をすべらせる場面があったが、彼らの基本戦略は「発売/予約開始日に高値をつける」というもの。買い損ねて途方に暮れるファンのパニック心理をあおり、「とにかくここで買わないと!」と財布のひもをゆるめさせるのが狙い。
また、転売サイト向けの割当て分がない人気チケットの場合は、社員を使っての人海戦術でネット予約するケースもあるという。その証拠として社内に保管された何十枚もの予約用クレジット•カードが映されるのだが、社員や社員の家族など、様々な名義で作られたカードを使って1回の予約で買える最大枚数を抑え、転売する仕組みなのだそうだ。

…とまあ色んな内幕を見させられるうちに、なんてシニカルな世界だろう!と感じずにいられなかった。自由市場主義が幅を効かすイギリスでは、転売そのものは違法行為ではない。中にはれっきとした理由でチケットを額面通りで売りたいというお客もいるし、「金に糸目はつけない」「正規の購入ルートは手間がかかるので、ちょっと高くても転売サイトで買う」というファンもいる。
しかし、その原理に乗じる転売サイトやプロモーター側の言い分は「高額なプレミアム価格を払ってでもイベントに行きたいと考えるお客のニーズに応え、彼らの便宜を図る」あるいは「ダフ屋他に流れてしまう不当な割り増し額を、興行主/アーティスト側に取り返すシステム」というもの。一見なるほど…とも思えるけど、この番組を見れば、転売サイト会社のビジネスとしての意義が価格吊り上げとそこに生まれる利潤の追求であるのは明らか。それを、業界側の「長いものには巻かれろ」な姿勢の現れ、と解釈することもできる。
要するに、「ダフ屋行為を取り締まり、規制するのは政府の役目。しかし政府はこの問題を看過していて状況は変わらない→だったら、そこで少しでも自分達が得をする〝抜け道〟を作ろうよ」という発想である。そこで搾取される/ツケを払わされるのは、法外な値段を支払ってチケットを買う羽目になる、あるいは営利目的の買い取り競争の大波に押し出されてチケットを買いそこねる人々、最終的にはファンということになる。
その構造に、たとえば音源を違法ダウンロードしたファンを「悪者」として摘発•検挙し得意顔になり、根本の問題=人気やトレンドに乗じてバブル銭を稼ぐ/確立されたブランドを維持し企業体を長らえるという、50年近く培われた「楽な」現状維持のシステムを排除できない音楽業界の旧体質そのものと、そこに対する自己批判を回避しようとする姿勢をだぶらせるのは自分だけではないだろう。

その誠意や道徳心に欠けるシニカルさ〜「自分達さえ良ければ他(ここでは「顔の見えない大衆/消費者」になるだろうか)はどうでもいい」という考え方は、こちらの心を大いに萎えさせる。特に、それが自分にとって大事な音楽の世界において行われているのを目の当たりにするのは悲しい話だ。
もちろん、その考え方=サヴァイヴァル原理は資本主義の根本であり、別に今に始まった話ではない。消費者である限り、たとえば音楽以外で考えてみても、原価数100円の衣料品に何千円も払うだとか、重量を水増しして値段を吊り上げた食品、ブランド名で価格バンピングされた商品など、日常茶飯事である。しかし、時代遅れでロマンチックな考え方と嘲笑されても仕方ないけど、音楽あるいはアート(美術、書籍、映画etc)は知的産物=脳や心の動きという、数字に換算しにくい人間文化から生まれたもの…という感覚がまだ残っている自分には、たとえ複製&大量消費の現代においても、そうした表現の賜物が純粋に食品•雑貨•衣料といった「日用品」レベルで扱われ、ただの物量/価格として市場でやりとりされる状況は切ないわけです。

ちなみに、この番組で例として取り上げられていたアーティスト達は、このシステムを関知していない模様。たとえプロモーターがチケットの一部を提供したとしても、跳ね上がった価格で二次市場でやりとりされるチケットのマージンは、そもそも裏ルートなだけにアーティスト側には落ちないようなのだ。
そう考えれば彼らも犠牲者なわけだし、こうした慣習を容認しているプロモーターと手を切ればいいじゃん?とも思う。しかし、グローバルなプロモーターの腕力(チケット処理能力、宣伝力、ノウハウ他)は世界的な人気を誇るアクトのライヴ活動にとって不可欠でもあり、突き詰めれば持ちつ持たれつの依存し合う関係。3年前にボスことブルース•スプリングスティーンが怒りを表明したけど、転売サイトそのものをシャットダウンするまでには至らない。

それを「必要悪だから…」と苦笑いしてやり過ごすことも可能だろう。しかし、元値でのチケット売買を条件にした個人間の譲渡サイト=Scarletmistも存在するように、多くの一般客は「不要になったチケットを買い取ってもらえれば御の字」だと思う(ただ、このサイトは大手転売サイトのように儲け主義ではない=宣伝費がないからだろう、知名度も、扱うチケットの幅も狭いです。過去に①ATPで行けなくなった友達のぶんのチケット②ベイルートの余り券をここを通じて売りましたが、「赤の他人と会ってお金をやりとりする」という点に注意さえすれば、問題なしだろう。もっと多くの人が活用してくれたらいいんですけどね〜)。「ネットのせいでダフ屋行為は進化したし、取り締まりは難しいから」と投げ出して業界ぐるみの転売行為で対抗する前に、たとえばペーパーレス•チケットをもっと普及させるとか、手はある気がする。
ペーパーレスにしても抜け道はあるだろうけど、少なくとも、買った本人がIDあるいは購入に使ったクレジット•カードを持参しないと会場に入れないこのシステムは、チケットを複数買って他人に売り捌く行為は食い止めやすいだろう。それを、たとえば観客3万人レベルの大コンサートでチェックをやるのは大変です…という論もあるかもだが、受付設備や引換所を購入者名義ごとにちゃんと整えれば(海外フェスではアルファベット、たとえば「AからCの名前の人はここに並ぶ」といった具合に、姓名のイニシャルで区分するパターンが多い)、ただ漫然と並ばされるよりはずっといいと思う。
その意味でも、自分がもっとも愛用しているイギリスのチケット販売代理店はWegottickets。大手な人気イベントは扱っていないけど(そういったアクトは、大手チケット•エージェンシーと契約しているのでしょう)、自分の好きなタイプのインディ•バンドや自分達でブッキングを組む会場のチケットはだいたい扱っているし、何より「チケットが届かない!ムキ〜ッ」「チケットなくした!キャーッ」といったトラブルがないのはありがたい。
都合で行けなくなったイベントのチケットを譲りにくい、あるいは忙しい友達のためにチケットを買ったけど自分は行かない場合は面倒…という難点もあったが、近年「購入者の名義を移し替える」システムも追加されたので、便利さは増している。チケットの現物を扱わないので、送料や印刷代はもちろんゼロ、手数料も最低限に抑えられていて、他のエージェントを通して買うより安く済むのは言うまでもない。あと、扱いチケットの残数がリスティングに明記されているのもナイス。Ticketmasterとか、ログインしないと買えるか分からないし、「売り切れ」とはっきり表示してくれない曖昧さにはいつもイライラさせられるもんね〜。

なわけで、比較的歴史の浅いプロモーターや小会場は率先してペーパーレスを導入しているけど、イギリスの現状はまだまだ実物:フィジカルに流通する「チケット」が優勢だと思う。デジタルの音楽ファイルよりもCDあるいはアナログを求める人がまだいるように、チケットそのものに記念品/思い出としての付加価値を見出す人もいるのだろう。この間O2アリーナでライヴを観た時も、再入場禁止のイベントだからか(?)チケットをいったん入場時に取り上げられたのだが、終演後に出口でスタッフが半券を配っていて、多くのお客が我も我もと群がっていたし。
好きなアーティストのライヴに行った、あるいはすごくレアで特別なショウを観れたとか、体験のよすがとしてチケット半券を大事にする気持ちは、いちファンとしてもよく分かる。でも、今時のチケットの多くは代理店の用紙にプリントアウトされた味気ないもので(20年くらい前だと、バンドのロゴをアレンジしたりそれなりにデザインされたチケットもありましたが)、「キープしておきたい」という気持ちがあまり掻き立てられないのも事実。ペーパーレスの合理性に慣れた今となっては、むしろ形に残らない何か=パフォーマンスやその場の熱気、感動を心と頭に刻み込むことが一番大事というスタンスである。

これはちょっと味気ないチケット半券の例

画質悪くて恐縮ですが。実物はゴールド、バンドのイメージもあしらわれてて「とっておく」気にさせる例

フィジカル•チケットの需要は残るだろう。しかし、実物がある限り転売行為、更に悪いと偽造チケット(チケットのプリント用紙が代理店からダフ屋に横流しされていたり、これも根深い問題があるようですけど…)の可能性は残る。それでも紙で発券し続けるというのならチケット•エージェンシーは個人消費者を守るために、よりハイテクなチケットの開発に努力すべきでは? 少なくとも、もともとチケット代が高い大フェスや人気イベントについては、それくらいやってもいいと思う。
と同時に、この「Dispatches」で明かされた弊害や搾取の構図を少しでも減らす能動的なアクションとして、買い手であるファンが「紙チケット」から「ペーパーレス」に頭を切り替え、チケット代理店にその発券オプションを求めていくのもひとつのポイント。そうしたニーズや要求が目に見える形にならない限り、マーケットの構造になかなか変化は訪れないわけで。
しかし、それ以上に難関なのは人間心理だろう。「観たいけど観れない」=「手に入れたいけど手に入らない」何かの魅力というのは、欲の燃料。その欲をコントロールできないと「20万円払ってでもこのチケットを買うのじゃ!」なんてことになり、同時に、転売システムそのものを助成し潤すことになる。
もちろん人ぞれぞれだとは思うし、ひと月分の月給を一夜にはたくだけの価値があるコンサートというのもあるだろう。自分は割と頻繁にライヴに行く方なのでそんな風に大枚はたいたら首が回らなくなるけど、年に数回しかライヴに行かない人にとっては、スペシャルな投資なのは分かる。ただ、高くて入手困難なチケットを手に入れる!というアドレナリンの靄に飲み込まれる前に一歩踏みとどまり、会場はナイスか? 音響はいいか? ツアーのタイミングは? など、そこまでやる価値のあるショウなのかを冷静に見極めるのもありだと思う。群衆心理やブーム〜トレンドに流されると、金メッキのクズですら金塊に見えることはあるから。

ともあれ、今後はアーティスト直のチケット販売も増えてくれればいいと思う。これはある程度固定したファン層を誇るアクトじゃないと難しいのかもしれないが、中間業者が間に入れば入るほど買い手が支払う代価は増え、パフォーマーの取り分だって削られていく。頭のいいアーティストなら、その構図がゆくゆくは彼ら自身のマイナス評価に繫がるのは分かると思う。
アーティスト側がDIYでチケット販売をやるのは、もちろん彼らにとっては負担になる。何千、何万ものチケットを扱うにはインフラも必要だし、「餅は餅屋」で興行サイドやチケット販売はプロにまかせ、素晴らしい演奏&ショウのクリエイションに集中してくれればいいのかもしれない。しかし、アーティストが率先して新たな道を模索し意思表示することで、アンフェアで不透明な習慣の潮流が変わり、旧体質からの改善•脱皮が進むってことはあるんじゃないだろうか。

このトピックについて更に興味のある方は、この番組に関して英フェスティヴァルの主催者がインタヴューを受けているので、参考までに。

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Mariko Sakamoto について

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