All Tomorrow’s Parties curated by Jeff Mangum@Butlins,Minehead/9-11March:Day2

感涙、Boredoms

極北の美を織りなしたEarth

Scratch Acidの火傷上等!なモロトフ•パンク

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夜更かししたにも拘らず、7時過ぎには起床。いったん目が覚めると二度寝ができない質なので、少し待ってコーヒー•ランで外に出る。今回は、コーヒー用のドリッパー&フィルターを持参し忘れたので(シャレーによってはフレンチプレスのコーヒー•メーカーがキッチン備え付けであるんだけど、今回のシャレーは古いからかキッチン設備はしょぼめ。まあ、フレンチプレスは好きじゃないからいいんだけど)、毎朝コーヒー買いに出かけることになった。朝最低3杯は飲むカフェ中には、たとえフェスの場であってもコーヒー確保はかなり重要。イギリスだといまだに、たま〜にインスタントを「コーヒー」と称して出す店もあるので。
とりあえず「どこか開いていないか…コーヒー…」とよろよろした足取りでメイン会場施設に向かったところ、新たにSoho Coffeeというチェーン•カフェがオープンしていて、そこは健気に朝早くから開店していて助かった。一応フェアトレードで、味も悪くない。かつWiFiが使えるのでなにげに朝から客が集まっていたが(でも、基本的にはスタバ系のカフェなのに、サラダ•バーがあるのはかなり珍しいと思う)、この日はサンドイッチを買ってるマターナ•ロバーツとセブ•ロチフォード、日曜朝はマグネティック•フィールズのステファン•メリットが不機嫌そうにコーヒーを飲んでいる姿を目撃できて嬉しかった。スカイライト•パヴィリオンにあるので、コーヒー好きはこちらに直行ください。

コーヒー飲んで落ち着いたところで、シャレー•メイトと共にマインヘッドの街探索に繰り出す。何度も来ているので観光ではないけど、街中のチャリティ•ショップや好きなアンティーク店を周り、シメに昼食としてフィッシュ&チップスを食べようって話。残念ながらチャリティ•ショップに中古レコ収穫はなかったが、アンティーク…ってか、たぶんこの街唯一の古物ジャンク•ショップ(=古銭•切手•食器/陶器•カメラ•古雑誌•絵画•楽器などなんで扱う)は、眺めているだけでも楽しい妙な品物がゴロゴロしていて立ち寄らずにいられない。
そこでJ.E.Cirlot著「A Dictionary of Symbols」のハード•カヴァー古本を購入することにしたところで、ATPで毎回行われるポップ•クイズの司会者:Lord Sinclaireにばったり遭遇。いつもスーツ姿+撫で付けた髪型でダッパーなこの人はバーミンガム出身:ブラック気味なユーモアと共にクイズを進行する口調が楽しいんだけど、これまでも何度かチャリティ•ショップやレコ屋で出くわしてきた、アナログ好きな趣味人。挨拶もそこそこに「で、何か残ってる?」と聞かれたのには笑ってしまった。偶然だろうけど、この店のこの日のレコード•コーナーにはモンティ•パイソンのレコード(サントラ含む)が4、5枚はあって、すごい高確率だった。この店をジェフ•マンガムが訪れたら喜びそうだな…と感じずにいられなかった。
土曜のライヴは午後1時からスタートなので、大急ぎでお気に入りのフィッシュ&チップスの店に向かう。Bampton Street Fish Barって名前で、海辺からはちょっと引っ込んだエリアにあるので見つけにくいかもしれない。しかし、注文を受けてから魚を揚げる、昔ながらの英国調フィッシュ•バーのノリと新鮮な味〜リーズナブルな価格は、多少歩いても行く価値ありかと。住所他はこちらです:7B Bampton Street, Minehead, TA24 5TR/ Tel 01643 702968

無事に腹も膨れたところで会場に急いで戻り、元ニュートラル•ミルク•ホテルのメンバーであるジェレミー•バーンズ率いるA Hawk And A Hacksaw。ベイルートとの共演でもおなじみの彼らだが、今回はセルゲイ•パラジャーノフの映画「Shadows of Forgotten Ancestors(火の馬)」上映にライヴ•スコアを付けるという乙な趣向だ。バルカン•フォークの影響濃い音楽集団だけに、志向&顔合わせはばっちり。ゆえに午後1時という比較的早いスタートにも拘らず場内は混雑、入場規制も軽く敷かれるほどだった。ヴァイオリン、パーカッション、アコーディオン…と郷愁をそそる響きが美しかったけれど、残念なことにステージが低い会場なため人々の頭でスクリーンがまったく見えず、15分ほどで切り上げた。みんなが床に座って観てくれたらなあ。
Boredomsは、今回ドラマー5人+ギタリスト14人という大編成。ステージ中央にドラム•キットが円陣を組み、後方にギタ―•オーケストラ、EYEのカスタマイズ打楽器(ギター•ネックが何本も突き出た、巨大なグロッケンシュピールみたいな形状)という配置で、1時間半というパフォーマンスの尺も含め、かなりの偉容である。オーディエンスも「何が始まるのか?」と目を丸くして見守っている感じだ。内容は、今ATPでスクラッチ•アシッドと1、2位を争うベスト。別に競争じゃないけど、同行知人の多くも同じ意見だった。

イントロは「いつの間にか演奏が始まっていた」というほど穏やかなもので、シンバルの擦過音、ミニマルなギター•ノートが少しずつ寄せ返し満ちていく。EYEはコンダクターといったところで、腕の上げ下げ他、全身を使って音の流れ•隆起をみごとにコントロール。彼はもちろん、全パフォーマーの集中力は会場の空気にまで伝染するようで、つい握りこぶしになってしまう。
ビルド•アップがピークに達したところで、シャーマニックな咆哮やチャントを発するEYEの磁場を中心にビッグなコードが不協和音の渦となって突き上げ、ドラムもワイルドに火の手をあげる。その容赦ない猛々しさを全身で浴びるうち、ほぼ1年前の東北地方太平洋沖地震、そして津波の凄惨なニュース映像を思い出さずにいられなかった。
そんなことを感じたのは、自分が日本人ゆえ=思い過ごしかもしれない。終演後に英知人達にそのアナロジーを語ったところ、「ああ、もう1年になるんだっけ…」というノリで、彼らにとって実感はないようだった。しかし、このタイミングをボアダムズが無視するとは考えにくいし、あの30分近いコンポジション――タイトルは知らないけれど――の生み出した音のカタストロフィとエモーショナルなコーダは、ただの偶然ではないと思う(彼らは翌日もパフォーマンスを行ったが、そこでは1分間の黙祷が捧げられた)。
吸い込まれるように聴き入っていたオーディエンスが感動の大喝采で応える中、2曲目は一転:ボーズ•オブ•カナダを思わせるエレクトロなサウンド•スケープからスタート。踊れるビートに移行していき、バトルズ最新作を思わせるアブストラクトなアヴァン•ダンスの輪が広がった。あっぱれな振れ幅! 

ライヴ後も会場の外でしばし同行者達と「素晴らしかった」と語り合うほどだったが、隣でたばこを吸っていたアメリカ人のお兄ちゃんが混じって来たのでちょっと雑談。酔い過ぎで(まだ午後4時なんですけど:汗)ろれつが回ってないのが相当におかしかったが、ポートランド出身とのこと。ニュートラル•ミルク•ホテルへのアメリカ人の思い入れをああして目の当たりにしたのは個人的には初めてだったし(彼いわく、「アメリカ人であることのバカらしさをジェフ•マンガムは知り尽くしている」)、ニルヴァーナとシアトルがいかに素晴らしかったか!同じく北太平洋エリア人としていかに誇りに思っているか!という話を力説してくれたのも興味深かった。
そんなこんなでThe Apples In Stereoを見逃してしまったが、お次はJoanna Newsom。毎回はずれなし、ほんとソリッドなライヴ•パフォーマーなんだけど、今回はハープとグランド•ピアノを往復しながらのソロ演奏。彼女のコントロール&コマンドがよりくっきり響いてくる。もっかの最新作「Have One On Me」を軸にするセットだったが、ラグタイム風なメロディと物語を丁寧に紡ぐ語り部としての彼女の姿に、ふとランディ•ニューマンを思い出したりも。今ごろ気づいたのだが、ピアノの響きというのはハープにとても似ていますな。
知人達に「クラウト•ロックぽいから観よう」と誘われ、Yamantaka/Sonic Titansを観戦。バックグラウンドはまったく知らなかったが、カナダ発のマルチ•メディア/アート•コレクティヴ(→フェス•プログラムの受け売り)だそうで、日本や中国などアジア系メンバーも混ざっている。オーディエンスの受けは悪くなかった(ボアダムズのEYEも観てました)…んだけど、自分の耳にはかなり昔の日本のヴィジュアル系〜プログレ寄りのハード•ロックとアジアン•ポップの間の子のように響き、う〜っく、聴いていられなかった(そういう味が、今や巡り巡って「イン」なのでしょうか??)。メンバーのメイクがデーモン小暮あるいは大槻ケンヂっぽかったのも、まじめに聴いてられなかった要因かもしれない。にしても、クラウト•ロックの「ク」の字もなし。知人達も早々に切り上げ、「レコーディング音源と全然違った」としょぼくれていた(笑)。

気を取り直し、センター•ステージでLowに待機。最新作「C’mon」でバンドとしてのパワーがまた戻ってきた感もあり(長くやってるバンド/アクトだと、「波」のサイクルはどうしたって生じるもの)、しかしロンドンでのショウはしばらく逃していたので楽しみにしていた――んだけど、期待を遥かに上回る演奏に、ため息連発&釘付けになってしまった。
「Nothing But Heart」からスタートした演奏は、彼らのストイックさ/ミニマリズムが発する独特なテンションでたちまち場内を染め変える。ゆったりしたテンポ、時に俳句ばりな歌詞、抑制されたメロディの動き。一般的なポップ/ロックのアプローチとは異なるが、余計なものがないぶん、彼らのショウでは「ナイフを刺せるかも?」と感じるくらい静けさや空間が具体的に迫ってくる。かすかな動きにも身震いが走る。その穏やかな重みとエモーションの浸透は、たとえば無音で降りしきる豪雪に包まれる、あるいはスロー•モーション撮影された花火を無音で見る感覚に近い。この晩の演奏にファースト•アルバムのシンプリシティを思わせるものがあったのも、その感を増したかもしれない。
じわじわ温度を上げるアランとミミの声の重なり合いに聞き惚れたところで、ロバート•プラントにもカヴァーされた名曲「Monkey」がキック•イン。グルーヴィなドラムと、それまでためていたエネルギーを解き放つごとくコーラス部のダイナミズムは圧巻。セットの就寝となった最新作「C’mon」からの「Nightingale」はただただ美しかったし、続く「Violent Past」の一転:軋むギター•サウンドから立ち上る不気味で不穏な雰囲気に、美と恐れは感情を動かすという意味で同質なのだ…と改めて感じた。(これまた)名曲「Sunflower」のエピックで荘厳な調べはハイライトで、つい涙がこぼれてしまった。
久々に観たので、余計にロウの音楽力が心にズバン!と入ってきたってのもあったのかな? ともあれ、やっぱりこのバンドを好きでいて良かった…と心の底から感じる、そういうライヴだった。一緒に観ていた友人はロウを何度も観てきた人だが、その彼も(「このバンドはいつもライヴが秀逸だけど」と認めた上で)「今夜はちょっとすごかった」と嬉しそうだった。

最新作「Angels Of Darkness,Demons Of Light1&2」も素晴らしかったミニマル•ドゥームの至宝Earthは、ディラン•カールソン(石像を思わせる峻厳な顔立ちを拝むだけで改まった心持ちになる)&アドリアンヌ•デイヴィスのコンビにカール•ブラウ(B)、ロリー•ゴールドストン(チェロ)が加わっての4人編成。低音域ヘヴィでひたすら重く沈み込んでいくサウンドがドォー…ンと耳を震わせ、身体全体を引っ張りながら残響していく。眠気と格闘している時の、腕や脚は重力に抵抗してもがいているのに、精神は半ば無意識の領域にある、あの状態に似ている。しかし旋回と上昇の螺旋構成のギター•リフが絡むことで、闇の中にもほのかな明かりが感じられるのは泣けた〜。
チェロの悲愴な響きも含め、各サウンドが精緻なコントラスト/エモーションのレイヤーを積み上げていく長尺のセグメントも良かったが、「Tallahassee」ではメタリックなリフがうなりを上げ、かつての彼らを彷彿させてくれた。ラストは「The Bees Made Honey in the Lion’s Skull」で、プリミティヴに打ち下ろされるドラム、ルミナスなギターのトーンはシカゴ音響派のそれにも通じる瞑想的な美しさ。しかし、音響派にはない雄大なソロの存在が、ロック的な昂りをもたらしている。
満点…と言いたいところだけど、音が小さすぎたのは切なかった&あまりにもったいなく感じた(周りで最初から最後までライヴも観ずにくっちゃべってた連中、その無神経さにはらわたが煮えくり返った)。敢えて音量抑え気味なライヴPA設定だったのかもしれないけど、このバンドのサウンドは閉じた空間で、爆音で聴きたい性質のもの。サウンド•スケープの広大さを堪能するためにも、次回はぜひ、センター•ステージでお願いしま〜〜す。

USハードコア好きがわさわさと馳せ参じた伝説のバンド:Scratch Acidは、いやはやすごかった! ジーザス•リザードもATPで観た&素晴らしかったけど、エモさとタフネスという意味ではこのSAのショウの方が確実に上だったと思う(同行知人達も、口々にベスト•アクトにあげておりました)。
深夜にも拘らずぎっちり詰めかけたオーディエンスをデイヴィッド•ヤウがぐっとねめつけ、ド頭からフガジ直系の屈強なリズム•セクション(「タイトなバンド」は色々観てきたが、このリズム隊の鉄板さは最上級)がグロリアスにうねり出し、鎖を切って飛び出した狂犬のごとくヤウの声が噛み付く。知人いわく「ヤウの前ではイギーすらおとなしく見える」。なるほど、仰る通りですっ。

2曲目で早くも半裸になったヤウに向け、オーディエンスも揺れ、モッシュし、水だのビールだの、なんらかの液体を頭上にスプラッシュして応戦。デトロイト•ロックも真っ青のジャングル•ガレージ•ビートに煽られて(?)ますます憑依状態のヤウ、早くもダイヴだ! ここらへんでもうフロア前方は身の危険を感じるほどだったので、後退っす。男ファンの盛り上がりはものすごくて、この音は彼らの中の蛮性を呼び覚まさずにいられないようですな。しかし、ステージを離れると実はジェントルマンなヤウ(今回観ていて、実はマーク•E•スミスにちょっと似なのに気づいたのは新発見)、MCで「今日のボアダムズは、自分がこれまで観たライヴの中でもベスト」と感動を明かすなど、音楽人としての熱い情も垣間みせてくれた。
ただラウドでワイルド&クレイジー一辺倒ではなく、バットホール•サーファーズにも通じるサイケデリックなフリーク•ノイズ、インダストリアル•ロックの前触れだったかも?とも感じずにいられなかった冷徹なビート•メイクなど、このバンドならではのユニークな個性/混じり方もしっかり受け取った。全開バーストで突っ走ったびっちりの1時間、ノンストップな音の往復ビンタあるいは千本ノック?な猛攻だったが、このレアな機会を祝福するファンの熱狂的なアンコールに応え、ダイナミックな新曲で爽快にフィナーレ。伝説がなぜ伝説たるか、その本領を存分に味わった。

シャレー•メイト達は「まだこれから!」と元気いっぱい、秘教テクノ/エレクトロニカ•デュオDemdike Stare、そしてヒプノゴギッグの名手Oneohtrix Point Never…と連戦を続けたが、早起き鳥の自分はもう限界。ひとり宿舎に撤退し、インドネシア諸島の秘境を巡る、10年かかりの民族文化TVドキュメンタリー「Ring Of Fire」を観ながら眠りこけてしまった…が、このドキュメンタリーすんごく面白いので、DVDで改めて観るつもりっす。

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Mariko Sakamoto について

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