All Tomorrow’s Parties:appendix

たっぷり満喫した今回のATPでしたが、その素敵なエピローグを飾ってくれた余談の番外編話を:

月曜の朝、ブリストル空港に向かう友人の車に乗せてもらい、ロンドン:パディントンに向かう列車が出発するトーントン(Taunton)駅へ向かう。とはいえ今回はフェス帰り族が密集する午前中のピーク時を避け午後の便を選んだので、それまでの待ち時間、ランチを兼ねてトーントンをちょっと探索することにした。

っていうか、メインの目的はこのサマセットの街にあるレコード屋さん:Blackcat Recordsに行くことである。以前行った時も、店構えは小さいながらもインディ〜アナログを中心にしっかりした品揃えを敷いていて、その努力ぶりには感心させられたもの。というわけで、うろ覚えの記憶を頼りにシャレー•メイト達とメイン•ストリートを歩き始めたのだが…見つからない。チャリティ•ショップをチェックしつつ、「確かこの通りだったよね??」「周りのお店とか、雰囲気は間違ってないと思うが…」としどろもどろ歩いていたが、しびれを切らした友人のひとりが携帯でチェックしてくれたところ、以前の店舗があった場所からちょっと通りの先に移転していたのだった。やれやれ、スマートフォン様々ですな。

さっき「店構えは小さい」と書いたけれど、新店舗(以前はチャリティ•ショップとして使われていたそう)はぐっと広くなっており、気持ちよくレコード•ラックの間を回遊できるサイズだ。新譜CDはポップ新作からインディ〜アングラまで、音楽専門誌で取り上げられているような作品はだいたい網羅(ライアン•フランチェスコーニの日本盤があったのにはびっくり!)。古典を中心に、廉価のバック•カタログも取り揃えている。
もっとも、自分が感心させられたのはアナログ。主な新譜/最近のリイシュー•アナログはもちろん、中古レコードはかなりの枚数ストックされております。価格設定も良心的/足下に置かれているクレートまで掘り始めたらキリがない&昼食を食いっぱぐれるので全員自制したけれど、もっと時間のある時に、じっくり腰を据えて全部チェックしたかったな〜。同行知人のひとりはサン•ラのコーナーにあった「Enlightenment」収録の「Jazz In Silhouette」(再発)を購入、自分は7インチ2枚に判型が変わったYeti#12をゲットであります。

Blackcat records店内

しかし、レジでお会計の際に、店内に入ってからずっと頭の中につきまとっていた「このお店の雰囲気、なんかちょっと違うぞ??」の疑問に合点がいったのだった――店員が女性だったんですね。
いやまあ別に、この手の専門系レコード屋で女性がカウンターの向こうにいたってのは、これが初の経験ではないですよ。ラフトレの女性店員陣にはナイスな人が多いし、カーディフの素敵なレコード屋さん:Spillersも、自分が行った時は三人娘がフロントだった。が、「そのエリアに一軒しかない」系の非チェーンのインディなレコード屋、特に英地方都市のそれは、店員/店長はまず95%が男性だったりする(日本におけるこの比率は分かりませんけども、おそらくこれは、世界的に共通する傾向じゃないか?と思います)。このBlackcatも、この日不在だった店長さんは男性だそうです。
しかし、「ATPに行ったの?」と訊ねられ、この女性店員さんと「いいお店ですね」等々少し話したついでに「女性店員は珍しいと思った」と話すと、「ほんとそうよね〜!」と笑顔が返ってきた。しかし、彼女いわく「でも、今日はびっくりしてるの。ってのも、あなた達と同じATP帰りのお客さんが何人もお店に来てくれてるんだけど、若い女の子が多くて、しかも彼女達はアナログを買っていく。うちでは滅多にない話」とのことで、吹き出してしまった。

売り手もそうだけど、買い手に関しても、ことレコード店というのは中年のマニア、DJ、あるいは眼鏡+ヒゲの若者、やや気難しそうな顔つき(若干anti social入った手合いに出くわすのも、珍しくない)…といった種族が大半を占める。そんな彼らの一途な情熱、そしてCrate diggerとしての探究心がレコード店カルチャーの根底を支えているといっても過言ではないわけですが、女性にとってそのシーンは、(自分のような自他共に認めるギークで、女性としての繊細な神経をどこかに置いてきた人間でもない限り)ちょっぴり腰が引ける/敷居の高い状況だったりもすると思う。
ってのも、何人かの男性を一カ所に集めると(会社でも、パブでも、どこでもいいんですが)自然に生まれてくる「競争/闘争心」のオーラ、これが言うまでもなくレコード店では激化するわけです。その、目に見えないマッチョな雰囲気がうっとうしくなり、しまいには疲れてしまうって女性は少なくないのでは? この日のBlackcatは女性店員さんの存在が場の空気を和らげていたし(砂場の暴れん坊達、あるいは保育室でおもちゃを取り合うガキ達ををなだめる幼稚園の保母さん、とでもいうか?)、レコード屋に行くとついつい自分も陥りがちな「マッチョなモードに飲み込まれてしまう」ってこともなく、心穏やかに、落ち着いて買い物ができて嬉しかったです。
たとえすごい作品を扱っているお店でも、店長/店員が無愛想で話しかけづらく、質問してもにべもない答えが返ってきたりすると、どんなに欲しいレコードでも、「この人達から買いたくない!」と棚に戻してしまうもの。そういう、いわゆる音楽やレコードにめっちゃ詳しく、ゆえに買い手を威圧し値踏みするタイプの店員(まあ、「その程度しか自慢することがない人なのね、彼は」と考えれば、一種可哀想もでありますが…)は、これからも生まれ続けるだろう。そんな中で、女性店員がこんな風にちょっとずつ、男性優位の一角にオルタナの新風を吹き込んでくれるのは歓迎なのであります――それはまあ、同性を応援したいって気持ちも若干働いているのかもしれないし、こうして書く「女性の効果」も、実はマイナスイオンみたいなもんかもしれません(笑)。しかし、自分にとってはレコード店でレコードを買うのはエモーショナルかつ特別な行為=スーパーで野菜や肉だのを買うのとは訳が違うので、その場が気持ちよいのに越したことはないわけです。

この女性店員さんに教えてもらった近くのパブで腹ごしらえし、そろそろ駅に戻りますか…と通りを戻っていったところ、こんな素敵な看板が!

既に飲んでたけど、これは入らずにいられんばい!と行った先はThe Plough Innという名のこぢんまりしたパブでした。カウンター近くはスツール席が中心、決して広くはない(奥にもうちょっとスペースがあったようだが、今回は時間がないのでフロント•ルームのみ)。が、やんわり室内を暖める暖炉の前にはとてもお行儀がよく人懐っこいパブ犬がくつろいでいて、白髪の老人が数人、窓から差し込む初春の日差しを避けるようにひっそり静かにビールのグラスを傾けている。レゲエ/ダブ•ミュージックがBGMにゆるゆる流れる店内に、プラズマ•スクリーンTVのないパブのありがたさを改めて感じます(フットボール目当ての客寄せのために、大画面テレビはどこものしてます)。看板に偽り無し、のチルまくりのナイスさです。
せっかくサマセットにいるんだから…と自分は地元産サイダーを飲んだんだけど、リンゴの風味とクセがちゃんと残る深くまろやかな味わいは、イギリスで一般的に好まれるシャープで酸味がきついそれ(アルコール分が高い割には、炭酸飲料みたいなんだよなぁ)よりもむしろノルマンディー産のサイダーに近く、美味しかった。ああ、このままダラダラと暖炉の前で飲んでいたい…と感じずにいられなかったが、残念ながら列車の時刻が迫ってきたので、次回もまた来ることを誓ってパブを出ました。このブログを読んでくださってる人々の中に「いつかATPに行くぞ!」と思っている方もいるかもしれませんが、ぜひ、その機会が実現した際にはトーントンのこの素敵な2軒に立ち寄ってあげてくださいね。きっと、あのかわいいパブ犬が歓迎してくれるはずです。

また会おうね!パブ犬ちゃん

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Mariko Sakamoto について

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