The Sadies@The Hydrant,Brighton/3May2012

トラヴィス(左)とショーン(右)

The Notorious Good Brothers!!!

見えにくくてごめんなさい!なダラスのギター。フレット部の真珠貝で「Dallas Good」の象眼細工がきれいなんだけど、結局この晩一度も活躍しなかった…

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日本のゴールデン•ウィークほどではないけど、イギリスもメーデーの周辺はバンク•ホリデイ(一般公休日)があり、軽い連休気分になる。かといってレジャーに繰り出したわけではないが、素晴らしいライヴを立て続けに体験したので、そのお話。第一弾は、カナダの誇るいなせなサイケデリック•パンク•ロカビリー•バンド(なんのこっちゃ?と思われるかもしれませんが、それくらい色んなサウンドの混じったバンドなのです)、ザ•セイディーズ

彼らのライヴを念願かなって初体験したのは、ゴッドスピードのキュレートしたATP:Nightmare Before Christmas(2010年)。その、もっかの最新作「Darker Circles」を引っさげてのショウにはいたく感動させられたし、「次は絶対単独を観よう」と思い続けて……1年半以上経っていたわけです。
別に新作リリース記念でもない、ちょっと奇妙なタイミングとも言えた今回の英ミニ•ツアーは、ロンドン、ブライトン、ブリストルの3カ所を回る内容。単純に考えればロンドンで観る……なのだが、いかんせん会場のジャズ•カフェは自分的にはできれば避けたいヴェニュー。90年代の頃はここもそこそこブッキング良かったんだけど、今はなにやら2階に「ディナー席」まで設けられているそうで、そんな気取った&スカしたノリ(しかも、どうせ出されるディナーは不味い)がセイディーズにそぐわないのは日の目を見るより明らか。
というわけで、思いきって今回はブライトンに繰り出すことになった。ブライトンは、ロンドンから電車で1時間ちょいな距離ということもあり、ロンドンでの会場がNGな時の、自分にとって一番合理的で便利なオプションなのです。The Hydrantは初体験のクラブだったが、ギグ•リスティングを見るに、昨今はパンクやブルース/ロカビリー(=3、4年前に東ロンドンで流行ったノリですね)をメインの売りにしようとしている模様。ブライトンは、ライヴ会場(キャパの規模は大ホールからクラブ、パブ•ヴェニューとピンからキリまでですが)の密集度という意味ではロンドンをしのぐ感もある競争率の高い街なので、差別化を図るべく会場側もがんばっているのだろう。

ブライトンに入ったのは午後6時頃。前座はあるが、メインのセイディーズ登場まで3時間近くつぶさなければならない……というわけで、まずは会場を確認した上で、近隣エリアをぶらついてみることにする。
ブライトンというと、ブライトン駅を出た正面、すなわちビーチに向かう南部はそこそこ探索したことがあるのだが、会場のあるLondon Road周辺は駅の背後=北西部に位置するエリアで、完全に初体験。観光客も多く、一般的には若くリベラル/ボヘミアン/キャス•キッドストン風にファンシーなファミリー気風で知られる街ブライトンだが、この北西部エリアはこれから「開発」されていく余地がまだまだありそう。町並みそのものも観光客が密集し、娯楽飲食観光産業で賑わう海岸部に較べ、かな〜り侘しい&ローカル色が濃い。何よりびっくりしたのが、イギリス国民党をサポートするパブを見かけた点だった。マジすか〜! まあ、そんなエリアだからこそ家賃もやや安く、ニュー•リッチな家族世帯の流入による高級化に脅かされることなく、まだ学生やアーティストが住みつけるんでしょうけどね。

ザ•ハイドラントには1階と2階の2会場あるが、この夜は2階。想像していたよりも広く(たぶん200弱)、しかもセイディーズが出演する頃にはばっちり埋まっていた。ソールド•アウトだったようです。いや、あまりちゃんと宣伝されてないツアーというさびしい印象(前日でも余裕で前売り券を買えました)だったので、お客は入るのかいな?と心配してもいたのだ。が、ブライトンというのはライヴが毎日開催される恵まれた環境&クラブ、バーやパブ•ライフが盛んな街だけに、気負い込んで来るバンド目当ての客だけではなく、当日ふらっとやって来るレイドバックした客も多いのかもしれない。
ベースのショーン、カウボーイ•シャツ姿も素敵なドラムのマイクの後に続き、このバンドの2枚看板:ダラス&トラヴィスのグッド兄弟が登場。案山子のように痩せっぽちのダラスは、もはやトレード•マークと化した感のある伊達の極みなヌーディ•スーツ姿、しかもタイピンにカフス•ボタンまで(!)。今時なかなかお目にかかれないカントリー•ダンディにして、既に軽く汗ばむほど温度が上昇しつつあった暑苦しい場内とのギャップもすごい。トラヴィスはズート•スーツ系のスラウチなスーツ姿で、こちらの50年代ノワールに出てくるピンプ〜チンピラっぽい感じも様になってる。どちらもたいへん背が高い=そもそもスーツが似合う体型ってのも大きいかもしれないが、嗚呼男前。

というミーハー女の戯れ言はここらへんにして:サイケデリックなインストからスタートしたライヴは、計2時間近く一切ゆるみなし!のダイナミックなロックンロール•ショウで会場を揺らしてくれた。このバンドはよくオルタナ•カントリーの括りに入れられがちで、トラヴィスの達者なフィドルを始め、実際カントリーやブルーグラスはセイディーズの話法のひとつではある。しかしこの晩痛感させられたのは、彼らがとびっきりのガレージ•バンドである点。
何より、タフでR&B味の強い北米ガレージの突っ張りはもちろん、英ガレージ•サイケのトリップ感もモノにしているのが最高である(どっちか一方だけというバンドは、たとえばソニックス&ストゥージズ狂なマッドハニーとか、いくらでもいるけど)。何せド頭のインスト曲からしてプリティ•シングスやソフト•マシーンを思わせるカオティックなノイズがぐにぐに交錯する飛びっぷりで、こういうのを生の爆音で聴けるのはもう、至福としかいいようがない。このバンドはピンク•フロイド「天の支配」「ルシファー•サム」をカヴァーしたこともあるんだけど、めっちゃハマるだろうなあ〜。

そこから次々に引き出されていった楽曲は、音楽スタイルやフレイヴァーの幅といいその見事な演奏ぶりといい、このバンドの地力のすごさと吸収力をありありと見せつけるものだった。ベースにあるのはカントリー/アウトロー•カントリーということになるけれど、50〜60年代初期のインスト音楽――たとえばディック•デイルやサーフ•ロック〜モリコーネのサントラにあるモンドなエキゾ味と哀感、ガレージ•パンクのワルな攻撃性、ソウルのヴァイタルなグルーヴ(曲名は知らないのだが、中盤でトラヴィスがリード•ヴォーカルをとった曲はJBやスタックスを思わせるご機嫌なブルース•ソウルだった)。ザ•バーズ(の、特にサード&4枚目。「Darker Circles」は、ジーン•クラークとデイヴィッド•クロスビー好きにはたまらない美メロ曲を収録!)流のメロディ/ハーモニー、サイケデリア、エネルギッシュなブルーグラス……と、ロックンロールの多彩なレガシー/いくつもの潮流にリスペクトを向けつつ、独自のハイブリッドを生み出しているのはあっぱれ。
その雑交ぶりがあるからこそ、パンクでありながらルーツ•ミュージックのコアを持っていた素晴らしいバンド:Xのジョン•ドーとの共演もあったわけである。っていうか、ATPで観た時は1時間弱のコンパクトなセットだったが、あれはセイディーズの振れ幅のほんの一端に過ぎなかったのだな……と今回みしみし思い知らされた。と同時に、ルーツ•ロックといっても「ジジむさくない」、要するに非若年寄でヴァイタリティあふれる音楽をやっているという意味で方向性は近いと言えるブラック•キーズみたいなバンドが、今になってにわかにもてはやされている時勢なわけで。で、彼らがあんなに売れてるんなら、セイディーズだってもっともっと愛されていいはず!と感じずにいられなかった。

しかし、音楽的センスの豊かさと知識に圧倒•魅了されるだけではなく、このバンドはライヴ•ユニットとしてとにかく一級。ハンガーのように微動だにしない頼りになりそうな肩甲骨の下からステディでパワフルなビートをクールな表情で繰り出すマイク、スタンダップ•ベースをしなやかに駆け巡る柔軟な指さばきでその多彩なリズムに応酬するショーンと、リズム隊は理想的。そのふたりが敷く堅固な基盤の上に、エレキ、フィドル(たちまち弦が切れてしまうほどの熱演)、バッキング•コーラスとトラヴィスが大活躍し、ダラスがペダルを自在に操りながらトラッシー/メランコリーと弾き分け歌い分ける。この兄弟ふたりがぴったり身体を寄せ合い、互いのギターを腕を交錯させ饒舌に弾き合う場面は、プレイヤビリティの面でも、エンターテインメントのシアトリカルな盛り上がりという面でも、見せまくり。
キャリアの長さを考えても、各人のテクニック面でのすごさは今更自分ごときが指摘するまでもないのかもしれない。だけど、何よりいったんアクセルを踏んだらノンストップ、レッド•ゾーンのまま直線もカーヴも全速力で突っ走る/突っ走れるこの4人の一体感と噛み合いぶりは、ライヴ•パフォーマンス好きなら誰でも思いっきり上がらずにいられない、そういう感電ものの体験だと思う。ゆえに場内もめちゃホットで、始めはロカビリー•ルック&リーゼントの熱心なアメリカーナ男性ファンが占めていてやや固かったステージ前方も、いつの間にか女性客が寄って来て、踊りまくりのいい感じになった。こういう音楽に、ダンスは不可欠ですからね〜。

メインのセットを終え、「ありがとうブライトン!」の挨拶と共にいったん引っ込んだバンドだった……が、なにせ狭い会場で楽屋に戻るのも人ごみを抜けねばならず、「MORE!」の声援に応え、結局そのまますぐにアンコールに突入。これ以上何を望める?というくらいの熱演だったけど、セイディーズのスタミナはさすがイギリスのバンドとは違うようで、そこから20分近い怒濤のガレージ•パンク〜カヴァーのマラソン•メドレーと相成った。6、7曲含まれていたと思うけど、ガレージ•クラシック「I Can Only Give You Everything」、カウント•ファイヴ「Psychotic Reaction」、ゼム「Baby Please Don’t Go」、そしてシメはスパイナル•タップ「Gimme Some Money」(たぶんイギリス客へのサービス)と、ブルータルに根源的な白人ロックンロールの粋を150%味わわせていただきましたっ!
ライヴの後も感動&興奮でなかなか現実に戻れない、そんな思いを抱かせてくれるイカしたロック•バンドはなかなかいないと(心底)思うし、何より嬉しいのは、セイディーズが歳月と作品を重ねるごとにどんどんソングライター/音楽ユニットとして良くなっていること(特にダラスのヴォーカルは、毎回味を増している)。「Darker Circles」のライナーにも「The Sadies just get better and better」というフレーズが寄せられているけれど、このバンドは――たとえば1枚目で「完璧」を成し遂げ、ゆえにセンセーションあるいは現象と化すバンドとは対照的に――まだ伸びていく。言い換えれば、彼らをキャッチするのは今からでも遅くないのだ。セイディーズが来日する機会は現実的になかなかないだろうとは思うし、高飛車なアドバイスはそもそも苦手ではある。でも、このバンドが現在世界中でアクティヴに活動しているバンドの中でも、ベスト•ライヴ•アクトのひとつであるのは間違いない。ので、もしもカナダあるいはアメリカに行く機会があり、そこでたまたま彼らがツアーしていた、あるいはフェスのラインナップに彼らの名前を見かけたら、迷わず一度は体験してほしいです。少なくとも自分は、これからの彼らの英ツアーは欠かさず観に行くつもり。それくらい、最高に気持ち良くて楽しいライヴをやってくれるバンドだから。

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Mariko Sakamoto について

Hi.My name is Mariko.Welcome to my blog,thanks for reading.坂本麻里子と言います。ブログを読んでくれてありがとう。
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The Sadies@The Hydrant,Brighton/3May2012 への4件のフィードバック

  1. ken より:

    ブログ、はじめて読ませてもらいました。 Here we go magicを検索してて、たまたま読んでみたのですが、ロバートワイアットやジャックホワイトなど、僕も好きなミュージシャンについて書かれていて、面白かったです。また読ませてもらいます。

    • Mariko Sakamoto より:

      kenさま:こちらこそ初めまして。のんびり書いてますので、気が向いた時にまたチェックしてみてくださいませ。コメントありがとうございました。

  2. ken より:

    このセイディーズってバンド知らなかったけど、かっこいいですね^^

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