Here We Go Magic@Sebright Arms/5May2012

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GWを飾ったゴールデン•ギグの第2弾は、新作サード「A Different Ship」のリリース記念!ってことで、ロンドンに来てくれたHere We Go Magicのショウでした〜。このポストの前に取り上げたセイディーズとは音楽性もキャラもまったくもって違うバンド……なんだけど、①素晴らしいドラマーがいる②最後は前列の女性客達が踊りまくりのグレイトなヴァイブが生まれた、この2点は両者に共通。もちろんライヴには色んな見所があるわけだけど、ご機嫌なグルーヴがあること、そして女の子達が我を忘れて踊り出すこと、それは自分にとってもっともポイントの高いライヴ体験要素なので。

にしても、この晩のヒア•ウィ•ゴー•マジックは完璧だった。これまで3回観たことがあり、そのいずれも「めっちゃいいバンド」と感じさせる/満面の笑みを浮かべざるを得ないショウだったとはいえ、4人編成にスリム•ダウンしての今回は別格。音や声の層を緻密に重ねた酩酊もののサウンド•スケープ、そしてメロディという最大の魅力はそのままに、ロック•バンドとして筋肉をソリッドに鍛えグルーヴを確立したというか。とてもフィットなバンドに成長している。フィナーレのダイナミックなジャム、ルーク•テンプルのアテ振り含め(そういうキャラの人じゃないと思ってたんでびっくりしたが……)、「一皮むけた」の内容だったと思う。

会場のSebright Armsは割と最近オープンしたパブ•ヴェニューで、今回が初体験。飽和した感のあるホクストン/ショーディッチ圏を越え、ドールストンやベスナル•グリーンにまで拡大している東ロンドンの現ライヴ•ミュージック•シーンを象徴する会場のひとつだろう。というわけで、「うわー、ヒップスターの巣窟に違いない」と戦々恐々だったのだが、土曜の夜の酔客でスーパー賑わっている1階(バーのドリンク•セレクションは悪くない)の騒音を抜けライヴ会場である2階に入ると、そこは別世界。天井が低い黒塗りの部屋に、多少の圧迫感は否めない。しかし防音はしっかりしていて1階のノイズは遮断されているし、キャパ100人ちょっとのこぢんまりしたスペースは、靴底に張り付く床、汗や熱気を吸い込んだ壁など、古典的なイギリスのパブ•ヴェニューの雰囲気をたたえている。打ちっぱなしのコンクリ•スペースとかクラブ風な会場、アート•ギャラリーのりの会場と色々あるが、やっぱ、基本的にはこういう気取りのない会場が好きである。
オープニングは、イタリア発ニューヨーク経由、マウロ•リミッディ率いるエレクトリック•ロマンサー:Porcelain Raft。実質ソロ•ユニットなのだが、ライヴはデュオ編成。グラム•ロックのモダンな解釈とも言える楽曲、ちょっとブレット•アンダーソンを彷彿させるエモなヴォーカルなど、引きつけられる場面は何度もあった……んだけど、PAのバランスが最悪=シンセや打ち込み他のエレクトロ•サウンドが常時キンキンにマックスで奥行きのないライヴ•サウンドは、耳が痛くなるほど。デュオゆえにコントラストの幅が狭いという限界があるのは分かるが、だからってとにかく音量をあげればいいってもんでもないでしょう。せっかくの音楽が台無しであります&ライヴ•パフォーマーとしてはまだ課題がある人達だな、との印象。

こんなPAでヒア•ウィ•ゴー•マジックを聴かされるのは苦痛じゃ〜〜!と不安にもなったが、彼らのライヴはギターの細部も低音もヴォーカルもちゃんと楽しめる立派なものだった。たぶん、ポーセリアン•ラフトは自分達のライヴ•エンジニアを調達できなかっただけなのだろう(前座バンドの悲しさですな)。何せ、ルーク•テンプルがイン•イヤー•モニターを使っていたのには驚かされたし。もしかしたら難聴他への配慮なのかもしれないけど、あの規模の小会場であの手のモニターを使うミュージシャンを観たのは、自分は初めてである。
キーボードが両端を囲うセッティングは、狭いステージを余計に小さく見せている。赤ワインのボトルとカップを手にベース/キーボードのジェニファー(いつもミニ•スカートにブーツ姿で、なにげにクールなロック•チックですなあ。キム•ゴードンと赤毛期のニコが混じったイメージです)が颯爽と現れ、彼女が女王様っぽく差し出した白い手に残る男連3人がキスし、握手と笑顔を交わすライヴ前のプチ•リチュアルはあまりにスウィートかつ素敵で、その光景を目の当たりにした(仲の良さにアテられた?)場内から思わず「はあ〜っ」「ほう〜」と(羨望まじりの)ため息&微笑の合唱が漏れるほど。こういう、バンドの「ナチュラルな和」と、それを幸せな気分で見守るファンの図というのは、自分にとってHWGMのあり方がダーティ•プロジェクターズのそれとだぶる要因でもある。

新作「A Different Ship」は、(バンドのファンである)ナイジェル•ゴドリッチがプロデュースとミキシングを担当したことで注目度もぐーんとアップ〜彼らにとってのブレイクスルー作になると思う。もっとも、「ナイジェル効果」はセレブ•クリエイターの威光ばかりではなく、作品そのもののプロダクション•ヴァリュー/クオリティ•アップにもしっかり反映されている(録音&音質の良さは、言うまでもありません。讃岐うどん食ってるばかりじゃなく、ちゃんと働いてますねナイジェル:偉い)。
基本的には前作「Pigeons」延長線上にあり、あのアルバムの優れた部分=〝Hibernation〟、〝Collector〟、〝Casual〟、〝F.F.A.P.〟あたりに集約される、多層なアレンジとリズム/リフの構築美およびメロディックな浮遊感を伸ばしている。最大の変化は「歌」としての魅力を前面に押し出した点だろう。ルークのヴォーカルが音の編み目の中にスティッチされるのではなく、マスキュリンなトーンなど、新鮮な表情も聞き取れる――そのクリアな視界に、かつてのアブストラクトで中性的な魅力を恋しく感じる向きもいるかもしれない。しかし、(特にファーストに顕著な)風に吹かれてどこまでも飛んでいってしまう羽根のような奔放さ、オチのないファジイさが麗しいと同時に仇にもなり、1枚のアルバムとしてのまとまりに欠ける面があったのも確か。
その意味でナイジェルという「外部の目」の介入は、バンドの中にトータルなバランスや押し引きの案配、フロウなど、これまでとは異なる興味を生み出すことになったんじゃないか?と思う。このアルバムがマジに捨て曲なし、最初から最後まで集中力の糸が切れることなく聴ける満足度が高い内容になっているのは、実質9曲に絞り込むことで楽曲•パフォーマンスの双方を研ぎすまし、凝縮した結果だろう。「1枚を通じて経験する旅」というこの作品のトーンはひとつの成長だと思うし、それを単に「以前このバンドにあった実験性、チャレンジ精神が薄れた」と批判するのは、了見が狭い話じゃないかと自分は思います。

その新たな方向性と目的意識は、ライヴにもポジティヴな輝きを与えていた。ギターのマイケルとベースのジェニファーがキーボードを兼任し(しかもマイケルのペダルはすんごい数だった)、1曲目からルークが複雑な生ループ使いを披露と、彼らのポリフォニックなサウンドを生で再現する時の大変さは伺える。しかし、痩せっぽちなのに実は豪腕で頼りになる=このバンドの宝と言えるドラムのピーター•へイルを筆頭に、演奏中も終始笑顔が絶えない4人――全員がコーラスを担当というのも、この結束ぶりの秘密かもしれないが――の闊達なインタラクションは、「自分達は何か素晴らしいことをやっている」という自覚と興奮を共有したプレイヤーならではのものだった。
軽いウォームアップとも言えるオープニングに続き、2曲目〝Hard To Be Close〟で、じわじわと火勢が上がり始める。エレガントなスウィングに乗って積み重ねられていく音とリズム、メランコリックでありながらベタつきのないメロディが流砂のようにさらさら心を満たしていく、これはHWGMの独壇場ポップですな。そのまま新作からのティーザー•シングル〝Make Up Your Mind〟のヒプノティック•ビートとコード•チェンジの妙が生み出す、スリリングかつオーロラのごとく色を変える軽やかなトリップに滑り込んでいき、オーディエンスも「もーたまらんっ」とばかりに揺れ始める。腕組みして見守る男性ファンを尻目に、屈託なく踊っているのはガールズ。イェイ!

その陶酔なノリがピークに達したのは前半のハイライト(になるのは当然、な名曲)〝Hibernation〟だったが、それ以上に自分にとって強烈だったのは〝I Believe In Action〟のスタジオ54〜ドナ•サマーを思わせるクールかつセンシュアルで無限大なダウンタウン•ディスコ•グルーヴの気持ち良さ(このキーボード•リフ、ほんとクセになる!)、〝Miracle Of Mary〟が醸し出したフィーリーズ〜ヨ•ラ•テンゴばりのミニマルで枯れた絶品な情趣。自分にとっての、そのふたつの表情を矛盾なく内包していたバンド=トーキング•ヘッズを思い起こさずにいられなかったし、今のHWGMには米東海岸ロックの粋が集まっているということ……なのかもしれない(ということは、ナイジェル•ゴドリッチは彼らにとってのブライアン•イーノなのか??)。
そうした「アート•ロックの知的なひらめき」に魅せられっぱなしというのは、過去のライヴでも味わった彼らの基本トーンではある。が、ディテールへのこだわりだけではなく、今回はキーもアレンジも変えて生まれ変わった〝Collector〟、〝How Do I Know〟を始めとするアンセミックでスケールの大きい「ロック」なパフォーマンス〜ダイナミックなインスト•ジャムといった見せ場も生まれていた。煽りもなしでフロアに自然に湧き起こった手拍子やかけ声が雄弁に物語っていたように、HWGMのポテンシャルは広がっている。
「インドア•ポップ」という印象の強い彼らだが、この晩の演奏は、時に大ホールや野外のフィールドがイメージされる(だからといって、彼らをそういうシチュエーションで観たいってわけではないのだけど)ワイドなもの。これまで、どちらかというと職人っぽく慎重な佇まいだったルーク•テンプルにしても、ちょっとした手振り身振りを織り込むことで楽曲のエモーション/歌詞の世界を増幅させようとしていた。それはたぶん、このバンドが一歩前に踏み出し、オーディエンスとの相互交流をエンジョイし始めたってことじゃないかと思う。

猛烈なアンコール求む!の喝采&歓声に応え、バンドはすぐにステージに復活。うち1曲は新作の中でも個人的にフェイヴァリットの〝Over The Ocean〟で、場内の熱で汗だくになっていた身体が、ルミナスな燐光ギターとそこはかとない放埒さの霧に包まれるのは最高に気持ちよかった。オーラスは、4人が全身使って一丸となっての壮大なジャム(たぶん〝A Different Ship〟だったと思う)が残響する、これまた雰囲気たっぷりのナイスな展開でした。
終演後、マーチャン台で新作アナログをゲット。通常盤も販売されていたけど、カラー•ヴァイナルの文字につられ、(3ポンド高いので、そのぶんこの夜はビール一杯で我慢の子)限定盤の方を購入してしまった……オーディオ•ファンなら大概「カラー•ヴァイナルは音質で劣る」と避けるものだが、好きなんですよね〜、色付きヴァイナル。どうもハードコアなマニアに徹しきれない、ミーハーな音楽好き体質の甘さが自分には残っているようである。やや後悔。しかし、帰宅後レコードを取り出し、ターンテーブルに載せ、くるくる回るターコイズ•ブルーの溝から立ち上る美しい音に耳を傾けていたら、幸せな気分を挽回できました。
ともあれ。6月のHostess Club Weekenderでの来日は何がなんでも見逃さないでもらいたいところ。たぶん、ぶっ飛ばされる人達続出!のライヴになると思いますよ。

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Mariko Sakamoto について

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