The Wire Salon:Robert Wyatt@Cafe Oto/12April2012

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うっかり書き忘れていましたが、先月、音楽誌THE WIRE主催のロバート•ワイアット対談に行って来ました。しかも会場はロンドンの音楽好き御用達のCafe Otoで、なんとも素敵な一夜。場内は通常のライヴも真っ青(?)なソールド•アウト&すし詰めで(早めにチケット買って正解だった!)、楽しみにしていたカフェ•オト特製エールも売り切れ御免(涙)。ホット•チップのアレクシス、クラクソンズのジェイムズを見かけたけど、ミュージシャンも観客の中に結構混じっていた気がする。

対談の内容は、ロバート•ワイアットが自らのバック•カタログから6曲をセレクトし、その曲やレコーディングに関する意図•社会的/時代的なバックグラウンド、思い出/エピソードを開陳していく…というもの。70年代(ソフト•マシーンも含めれば60年代)から始まる彼の長いキャリア、そしてワイドかつ広範な音楽的スペクトラムを反映し、この晩セレクトされた楽曲もドルリー•レインのライヴ盤(収録は1974年)から「Cuckooland」、比較的近年の「Comicopera」からと、予想以上に多岐にわたっていた。
その予想というのは、もうちょっと過去の名作に偏るのかな?ということ。しかし、70〜80年代にのみフォーカスすることのないセレクションは、ロバート•ワイアットが今も現役で音楽へのコミットメントと好奇心を抱き、アンテナを動かし続けている=現在進行形なアーティストであるのを実感させられるものでもあった。と同時に、プログレ、ジャズ、ポップ、前衛、ワールド•ミュージック他、変幻自在にクロスオーバーする音楽性の中において常に一貫している彼の声の揺るぎないパワーがあるからこそ、整合性や常識のロジックに捕われない自由でイノセントな音楽的飛翔が可能なのだな、と改めて。

ロバート•ワイアットのその声というのは、自分にとってのベスト•ヴォーカルのひとつだ。声の音域も広く、歌い手としてのテクニックそのものもまずもってすごいのだろう。しかし、何よりもロバート•ワイアットの声とそのプレーンな響きからは、英国的な何かをとても強く感じる。具体的に「これ」と指摘はできないのだけれど、イギリスの風土や歴史、風変わりな国民性、矛盾など、自分がこの国に対して愛着を抱く要素が多く詰まっている気がする(他にもうひとり、これに近い感慨を抱かされるのはピーター•ゲイブリエル)。
この晩のトークの中で、ロバート•ワイアットがイギリスにおけるロックンロール第一世代であり、アメリカのR&Bやブルース、ソウルに触発されたクチである点が出てきたのは興味深かった。もちろんロバート•ワイアットは、たとえばストーンズのようにストレートなスタイルのR&Bをやっているわけではない。しかし、彼のユニークな音楽は、イギリスという国の屈折したプリズムを通して再解釈•表現された、ソウル•ミュージックなんじゃないかと思う。

その場にいるだけでなごまされる佇まいに反して案外とべらんめえな口調、ベビー•ブーマーの理想や社会派の気骨も感じたこの対談、収録映像が既にYoutubeにアップされていたので、以下に。
楽曲を俎上に載せてのトークが一通り終了したところで、最後にオーディエンスからのQ&A篇と相成った。しかし、手を挙げたファンの多くが「ミュージシャンに質問」というよりも、感極まってただただ感謝の念を吐露する状態だったのは――ロバート•ワイアットの美しい音楽に触れこころ揺さぶられた人達の、とても素直な反応じゃないかな、と思った。喝采と歓声に包まれた心温まるフィナーレを経て、人いきれでやや息苦しいほどの場内から、春の青く香しい宵に染まった街路へと下りた。振り返ると、街灯の下に浮かび上がるのは、一足先に外に出て車椅子でひとりぽつねんと煙草をふかすロバート•ワイアットだった。

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Mariko Sakamoto について

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