Dylan Carlson+Undersmile@The Black Heart/14May2012

Dylan Carlson

Undersmile

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この晩は、シアトル発ドゥーム〜ドローン•メタルの重鎮:Earthの中心人物であるディラン•カールソンのソロ•ショウでした。そのアースの欧州ツアーの終了後にイギリス/スコットランドを廻り、来年リリース予定のソロ作向けのフィールド•レコーディングを行う……という行程の中で、合間を縫ってロンドンでワン•オフのショウをやることになったみたいですね。っていうか、情報に疎い自分はこのショウのことを知らなかったんだけど、たまたま行けなくなった友人がチケットを譲ってくれ、その恩恵にあずかった次第です。Many thanks!

会場は、カムデンにあるThe Black Heartなる名前のパブだった。カムデンは――20年前の自分ならともかく――ほんとにもう観光地化がすごくて、ギグでもない限り今ではとんと足の向かなくなってしまったエリアだったりするけども、この会場は割と最近オープンした模様。ウェブサイトをチェックしてみるに(黒い名前に恥じない)メタル/ゴス/ヴィジュアル〜色白人間系がテーマのパブらしくて、個人的に「ロンドンの原宿じゃないか?」と常々思っている近年のカムデンには、ある意味ふさわしい。そういや、(メタル/ラウド系の)老舗The Underworldも、新装したのか派手に街頭宣伝しておりました。
過去によくうろうろしていたエリアでもあり(でもこの裏路地、当時はそっけなくてオフィス•ビルや銀行の支店しかなかった気がする)、目指す会場はなんなく発見できた。しかし、①このパフォーマンスはディラン•カールソンのソロで、
ザ•ワイアーの記事によればフォーク寄りになりそう、そして②会場そのものも小さく、ギグ告知によれば「販売チケットは限定70枚」というかな〜りインティメイトな内容とみた。だったら焦ることはないだろう!ってことで、会場の目と鼻の先にあるBrew Dog直営のパブで、ライヴの前に一飲みすることになった。

このクラフト(職人)•ビール醸造所はスコットランド発で、ハイネケン、カールスバーグ、フォスターズといった国際規模の大手ビール会によるマス•プロ商品に飽き足らず、ユニークな味わいやローカル色、ビールの種類(やっぱり飲みやすいラガーがもっとも人気ですが、エール、スタウト、ポーター、IPA、小麦ビールなど色々あります)、アルコール度の違いetcで個性を発揮する、いわばインディなビール屋。ゆえに出荷数量も限定されているが、「水のようなビールを浴びるほど飲む」ではなく、「この一杯」に満足感を求めるような人にとっては、こういう醸造所はありがたい存在なわけです。
中でも、ヤング層へのアピールを武器に近年すごい勢いで伸びていて、全英主要都市に直営パブを次々オープン〜大手スーパー•マーケットにも卸し始めているのがこのBrew Dog。ヤング向けなだけに、ヴィジュアル戦略とかパンクなスローガンとか、ちょっと恥ずかしいんだけどね……ともあれ。アルコール度18%(!)のTokyo Aleなんてすごい代物もあるこのパブ(一般的な「ビール」は平均4〜5%。が、このブランドは他に30%以上のビールも作っていて、これはショット•グラスで飲ませてくれる)で、この日はおとなしくペール•エールで済ませた。ここであまり飲み過ぎると、ディラン•カールソンの瞑想的でモノリスなギターにあわせて眠りこけてしまうかもしれないし。

一瞬移動して、会場のブラック•ハートに向かう。1階は通りに面した大きなガラス窓がオープンな感じの、レストラン/カフェを思わせるモダンな作り。もっとこう、闇の中でダークなロックに浸る人々のノリを想定していたので、ちょっと意外ではある。しかし、賑やかな大通りからちょっと外れただけなのに、大型テレビのスポーツ中継だのガストロ•パブの気取りとは無縁な一種の「呑み助の隠れ場所」になっているのはナイス。
肝心のライヴ会場は2階で、この晩のオープニング•アクトに起用されたオックスフォード発のUndersmileがセッティングを始めていた。
ネットでさらった限り「英流ドゥーム•メタル」と形容されているのだが、この夜はスツールありきのアコースティック•セットで、サポートにドラム、そしてベース、ギター/バンジョーの3人がフロントの女性ヴォーカル2人に加わる形だった。この女性シンガーがふたりとも白のベビ―•ドール•ドレスに黒レース、黒髪&赤毛、メイクもアクセサリーもたっぷりな出で立ちで、ケイト•ブッシュ、スージー、オール•アバウト•イヴのジュリアン•リーガン、はたまたストロベリー•スウィッチブレイドを思い出してしまった。こういうイギリスらしいゴス•サブカルチャーの表出、眺めるのは好きである。

女性シンガー達と男性ギタリスト(=若い頃のロジャー•ウォーターズにちょい似なのも、バンドの雰囲気にぴったり)のコーラス•ハーモニーを中心とする楽曲、基本はシンプルなフォーク•マナーである。しかし、思いのほか英国トラッド調にまかり間違うとつきまとう野暮ったさは薄く、ゆったりしたテンポとマイナーなハモりはさながら「ローレル•キャニオンとデス•ヴァレーの邂逅」とでもいうか、むしろアメリカ西海岸のサイケ•フォークが浮かぶのは面白い。特に、黒髪シンガーの声は耳を引くトーンに独特なものがあり、その陰りにちょっとケンドラ•スミスを思い起こしもした。

いよいよ場内もみっちり詰まってきて、ディラン•カールソンの登場。椅子に礼儀正しく座った彼が古いフォーク•ソングのヴァージョンをエレキで独奏するイントロで、たとえば北欧やスコットランドの原野を思わせる荒涼としたトーンにまずもって打たれる。続いて、(セット•リスト/あるいは歌詞?をチェックするためなのでしょう)iPadを手元に置いた美人女性シンガー:テレーザが加わる。ロンドン発:日本人メンバーを核とするノイズ•パンク•バンド=Screaming Tea Partyの元メンバー〜現在はソロでも活躍中のアーティストという彼女だが、情念の火を内に抱えた歌唱はただきれいなだけではない力強さを備えている。
腹の底にズシー……ンと残響するような、あのアースの瞑想的な音圧はもちろんなかった。けれど、フォークやオリジナル曲、また意外にもPJハーヴェイの「The Last Living Rose」カヴァーを含むセットは、ミニマル派現代音楽にも通じる反復/ドローン、ストレッチされたギターの研ぎ澄まされた一音一音が背骨に絶え間なく弱電流を走らせていく感じだ。歌付きというのは実に新鮮だったけれど、マウンテン•ミュージックや古謡のメロディは、アースの音楽にある古くも新しい普遍性〜異教性の醸す重厚さとも、根底でシンクロしている気がした。

狭いパブ会場の後方で五月蝿く/辺り構わずしゃべっている酔客連がいたが、珍しく他のお客から彼らに「静かに!」と注意の声が飛ぶほど、思わず声を失ってしまう深く無駄のない音と声のハーモニー、厳かな空気。しかしディラン•カールソン当人は彫刻を思わせる顔立ちに反しチャーミングな人で(開演前には会場の外でファン達と楽しそうに談笑、終演後は記念写真大会だった)、曲間のMCも「ライヴの後、マーチャンでソロ•カセットを販売しますのでどうぞ……恥も外聞もない自己宣伝でした!」など、軽いユーモアも印象的だ。
オリジナル曲も含めつつ、ラストはこれまたカヴァー。「もっとも好きな曲のひとつ」と紹介された「Reynardine」(アースの最新作『Angels of〜Ⅱ』の収録曲タイトルのインスピレーションでもある)はイギリスの古いバラッドで、フェアポート•コンヴェンションのヴァージョンがおなじみだろうか。そのフェアポートの典雅で幻想的な解釈とはまた異なる、削ぎ落とされた、しかし精確なギター•プレイとエモーショナルなヴォーカルの絡みは、この曲の民話(=若い女性をたぶらかそうとする狐の精と、彼女達への警告)というバックボーンに漂う妖気や土着性を醸していて素晴らしかった。この曲は、現在ディラン•カールソンが取り組んでいる英国/スコットランドの妖精譚〜フォークロア、ジョン•ディー博士(デーモン•アルバーンもオペラの題材に取り上げてますが)への興味等が反映されるというソロ作「Wonders From The House Of Albion」にも収録されるのだろうか……? その進行ぶりはこちらでチェックしていただくとして、音楽という古代から続くマジックを通じ、見える世界と見えない世界を越境し、そのふたつを繋いでいこうとするディラン•カールソンのオーガニックな音宇宙には、インスピレーションを掻き立てられずにいられない。

――と、この文章を書いている間にEarth初の来日公演決定のアナウンスが飛び込んできましたよ!!偶然とはいえナイス•タイミング!! というわけで、スピリチュアルな向こう側の音楽に触れてみたい方は、何がなくとも間違いなく体験ください。公演情報/詳細を以下に。

EARTH Japan tour 2012
with special guest:MAMIFFER

結成から20数年、未だ日本に上陸していない巨匠が遂に来日する。90年代はグランジ世代の異形の王として常識外れのヘヴィ音を鳴らし、盟友ニルヴァーナのみならず後にヘヴィ&ドローン・マスターとして君臨するサン O)))を直接的にインスパイア。2005年以降はアメリカーナに通じるアコースティック・テイストも取り入れた漆黒のサウンドで新たな音の地平を提示するアースが、遂に日本の地を踏む! ディラン・カールソンをはじめメンバー自身も熱望しながら中々実現しなかった来日公演だが、ここまで時間が掛かってしまったことよりも、満を持してツアーが実施される奇跡を素直に喜びたい。
このツアー全公演に帯同するのがマミファー。シアトルを拠点に男女混成編成で活動し、ヘヴィネスを突き抜けた先で新たな音を模索するなど、ヘッドライナーとの共通項が見られる彼らも、アースに影響を受けている。メンバーのアーロン・ターナーはかつて『Earth 2』リリース時の超特大ポスターをハイドラ・ヘッドのオフィスに掲げていたほどのファンでもある。世界で初めて実現するこのカップリング・ツアーで何が体験出来るのか、ぜひ期待していただきたい。

**shows**
9/19(水)東京:新大久保Earthdom
open 18:30 / start 19:30
前売 \4,500 / 当日 \5,000 (ドリンク代別)
問い合わせ: チッタワークス 044-276-8841 / Earthdom 03-3205-4469

9/20(木)大阪:心斎橋Pangea
open 18:00 / start 19:00
前売 \4,500 / 当日 \5,000 (ドリンク代別)
問い合わせ: Pangea 06-4708-0061

9/21(金)愛知:名古屋池下Club Upset w/ ETERNAL ELYSIUM
open 18:00 / start 19:00
前売 \4,500 / 当日 \5,000 (ドリンク代別)
問い合わせ: Upset 052-763-5439

9/22(土)東京:新代田Fever w/ Boris
open 18:00 / start 19:00
前売 \5,000 / 当日 \5,500 (ドリンク代別)
問い合わせ: チッタワークス 044-276-8841 / Fever 03-6304-7899

**ticket**
6/9(土)より下記にて発売開始
東京/新大久保: ぴあ(P:172-224)、ローソン(L:79870)、e+、会場
大阪: ぴあ(P:172-190)、ローソン(L:57674)、e+、会場
名古屋: ぴあ(P:171-989)、ローソン(L:40558)、e+、会場
東京/新代田: ぴあ(P:172-354)、ローソン(L:近日確定)、e+、会場

総合問い合わせ: Daymare Recordings
info@daymarerecordings.com
http://www.daymarerecordings.com

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Mariko Sakamoto について

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