Jack White@Brixton Academy/21June2012

:::::::::All live photos courtesy of Jo McCaughley(http://jackwhiteiii.com/live-photos/):::::::::::

指折り数えて待ってましたよ〜、ジャックのライヴ。ロンドンでは既にアルバム発売記念ギグが2ヶ月前に行われていたのだけど、それはあえなく逃したので今回こそは!ととても楽しみだったわけです。

オープニング•アクトは、Third Manからシングルも出しているスウェーデン発の美姉妹カントリー•フォーク•デュオThe First Aid Kit……というわけで、これは見逃せない!と早めに会場に向かう(でも、マーチャンでジャックのツアー限定7インチはしっかりゲットしました)。彼女達が今年頭に発表したセカンド•アルバム「The Lion’s Roar」は、ブライト•アイズでおなじみの名手マイク•モーギスがプロデュースを担当。澄んだハーモニーと北欧勢らしい素直で愛くるしい、しかし達者なメロディが麗しいユニットです。同じく姉妹だとザ•ピアーシズ、音楽的に近いところではスモーク•フェアリーズなど、頼もしい女の子達が続々登場しているのは嬉しい限り。

それぞれ黒とターコイズ•ブルーのお揃いのメキシカン•ドレスに身を包んだ姿がなんともキュートな、ヨハンナ(姉/キーボード)、クララ(妹/ギター/メイン•ヴォーカル)のふたりが登場。「大好きなシンガー•ソングライター」と彼女達もリスペクトしている、70年代のエミルー•ハリスを思わせるヒバリのような歌声と若さいっぱいのパフォーマンスに、30〜40代(およびそれ以上)が中心を占めるオヤジ/オバハン系オーディエンスの反応も、さながら「かわいい娘の姿を見守る保護者」のノリで実にあたたかい。
バックにドラムスを伴っただけのコンパクトで潔いトリオ編成が、しかし大会場ブリクストン•アカデミーのだだっ広いステージの中央にぽつねんと浮かび上がる様が、ちょっと心細げに見えたのも確か。しかもジャック待ちのお客が相手=ロケンロー好きも多くひしめくシチュエーションが若干プレッシャーでもあったのか、時に熱演が気負い過ぎになり、デリケートな楽曲のニュアンスや情感のディテールが損なわれることになったのは切ない。
それぞれ19歳、22歳とパフォーマーとしては若く、アウトロのジャムで両者美しいロング•ヘアを振り乱してのヘッド•バンギング付きのプレイは、メタルやグランジが根底にある北欧のロック•チックらしく熱かった……けども、大会場向けに強引にアンプリファイされたサウンドは時にトータルなバランスを欠くもの。キーボードのホワイト•ノイズと声を張り上げてのヴォーカル(高く澄んだ美声なんだけど、度を越すとクランベリーズのドロレスになってしまう:ギャー!)が一緒くたになると、ちょっとトゥーマッチである。
今回は前座だったし、ライヴ•パフォーマーとしてはまだ発展途上の人達だろうから、あまり辛く点をつけたくはない。けど、彼女達の最大の武器である「歌の良さ」を届けることを重要視するなら、音の大きさや勢いで圧するよりも、(一見地味でも)細部に気を配る方がいいと思う。その意味で、音楽的に先輩であり、ロケンローとフォークのバランスが素晴らしいジェニー•ルイスから学ぶところは大きいのでは?? ともあれ、もしもこのバンドをライヴで観る機会があるとしたら、①音響のいい②アコースティックの響きが堪能できる会場で観ることをおすすめ。と書きつつ、次のアルバムでロック化が急進してハートみたくなったら、それはそれで面白いなという気も。

ファースト•エイド•キットの演奏時には布をかけて隠されていた楽器群が姿を表し、ジャックの出番に向け、例の黒スーツ&黒ソフト帽姿(そして今回はパウダー•ブルーのネクタイです)のスタッフ連はセッティングの最終チェックに余念がない。開演予定時刻10分前にその黒子スタッフのひとりがマイクに歩み寄り、「ライヴ中の写真撮影は、デジカメもカメラフォンも含めお控えください」の口上をぶつ(入場時のチケット•チェックの際にも同じことを言われた)。せっかくリアルタイムで同じ空間を共有してるんだから、写真を撮るのに夢中になるよりもその瞬間を満喫しましょうよ、という話である。モダン•テクノロジー嫌いで知られるジャックらしい。
確かに、写真はおろか最初から最後まで微動だにせずムービー撮ってるようなファンもごく普通なイギリスでは、そういう連中がライヴの雰囲気を壊すことも多々(……って、ブログ小僧でしょっちゅうライヴ写真撮ってる自分が書くと偽善的だが、①フラッシュは極力使わない②シャッター音はサインレント③使えそうな写真がゲットできたら即切り上げる&後ろに引っ込むことにしてます)。ゆえにそのMCには大喝采が注がれたし、それでもiPhoneでこっそり撮影するようなしぶとい輩にしても、自分の立っていた周囲でも2人くらいしか見かけなかった。ちなみに、この「撮影禁止令」がすんなり受け入れられたのは、オフィシャル•カメラマンが撮ったナイスなライヴ写真をショウの公式サイトにアップ→この晩の記念/よすがを残したい人は好きにDLしてください、との太っ腹な提案があったからだろう。別にそこまでしなくたっていいのに、ファン優先のジャックらしいですな。というわけで、今回のポストはプロの美写真です!

ステージはシンプルな設営で、両脇に大きなライトのやぐら(一番上に、白く塗られた巨大なサーチ•ライトがそれぞれ据えられている)、バンドの後方に吊られた大きな白幕にライト•ブルーの照明が注がれるだけ。BGMが途切れるたびに「いよいよか?」とうねる場内を2、3回じらしたところで、闇を縫ってメンバーが登場&ポジションにつく。彼らの繰り出すノイズの厚い雲を突っ切って、「Miserlou」を思わせるダーティなエレキがぐわ〜んと迫ってきましたっ!というエントランスから急転直下、「Black Math」のタフなストンプ•ジャムを叩き付ける展開はかっこよすぎ。足下に置かれたフット•ライトがあおる形で、後方の白い幕にジャックの巨大なシルエットが浮かび上がる演出も憎い。
のっけからのホワイト•ストライプス曲に歓喜し、むんむんにはじけまくりなお客が飛び跳ねるせいで、ジャックのご本尊は人垣を縫ってちらちら覗ける程度。しかし黒い長袖トップに白黒の縦縞スラックスのいでたちは、相変わらずのセンスである。今回のツアーは全員女性のピーコックス(孔雀)、および全員男性のロス•バザードス(buzzardは猛禽類のノスリ)の2バンドを使い分けるなんとも贅沢な形式も話題だが、この晩はバザードス。オートラックスのカーラが素足のドラムを務めるピーコックスで観たい……という思いもあったんだけど、バザードスには元マーズ•ヴォルタのアイキー•オーウェンスが控えているのでそっちも甲乙付けがたく捨てがたい。
そのアイキーとドラムのダルー•ジョーンズは――フィドル/ペダル•スティールのファッツ•カプリン他、メンバー全員ごっつ達者なバンドなんだけど――バザードスの爆発力を支えるダブル大黒柱だろう。ステージ向かって左端にダルー、右端にアイキーが陣取る配置(それこそ阿吽の金剛力士像?)もその印象を強めるのだろうが、壁のような両者の音の間をジャックがギター1本で軽快にバウンスし、好き放題に暴れる様は観ていてなんとも気持ちいい。アイキーのジャズからポップ〜エレピにピアノとなんでもありなワザも素晴らしいが、もともとヒップホップ畑の出でビート•メイカーでもあるダルーの複雑さとフリー•スタイルを乗りこなす柔軟さには最初から最後までもっとも感銘を受けた。もともとドラマー志向で人一倍ビートやグルーヴに敏感な、ジャックならではの人選かもしれない。

2曲目でアルバムのオープニング=「Missing Pieces」のスリリングなイントロが飛び出したところで、以降「Blunderbuss」曲が続きいよいよ本編開始っす。エネルギッシュにチャージするジャックはもちろん、盤で聴く以上に低音が効いたロックなモードにオーディエンスも揺れまくり。音源とは異なる縁取りやアレンジはライヴならではの醍醐味だ。とはいえ、まだ演奏集団としては日が浅いだけに「1+1=2」な面もあり、ブレイク•ダウンのタイミングが若干ズレるなど、冒頭はリズムとの噛み合いに甘さも見えましたが。
後方の白幕がストンと落ち、縦長の幕3本=ジャックの記章(Ⅲ)が姿を現す。「Weep Themselves〜」と「Hypocritical」はピアノが冴える曲で、特に前者はジャック版ツェッペリンという趣きのエピックなギター•リフ&ソロが最高に泣かせる。中年客主流とはいえ若いファンもたくさん混じる場内、彼らにとってはこれはまさしく「ギター•ヒーローのリアル•タイムな降臨」だろう。
続いてこの晩最初のサイド•プロジェクト曲=ラカンターズの「Top Yourself」は、ニルソンの「Coconut」を思わせるシンプルさ、キーボード&ペダル•スティールのファンキィな味付けがいい。他にもデンジャー•マウス&ダニエル•ルッピとのコラボ作から「Two Against One」、デッド•ウェザー「I Cut Like A Buffalo」、「White Blood Cells」と「Elephant」からのWSシングル曲まで、ジャックの過去10年+の音と振れ幅を駆け足で総ざらえするごとき趣きはナイス! ソロだけではなく他のアルバム曲も短期間でマスターしてみせたバンドには喝采するしかないし、(これまでも何度か書いてきたけれど)この人が触れた音楽にはすべて焼き印のように「ジャック•ホワイト印」が否応なく押されてしまうわけで、だったらこういう風に共演相手やバンド•メンバーに遠慮せず、「オレの音楽」と正面切ってたっぷりプレイしてくれる方が自分は嬉しい。ほんと、みんな知ってますから。あなたが主役なのは。

とはいえこの晩最初の一体感あふれる盛り上がりを仕掛けたのは「Hotel Yorba」で、場内は一気に大合唱&笑顔。西部劇映画のサルーン•バー付きのバンドを思わせる乱痴気でブギウギ調のアレンジは、新鮮かつ楽しさでいっぱいだった。そのノリを維持したままジャックがピアノに移動しての「Trash Tongue〜」は、ソウルフルに聴かせる歌とホンキィ•トンク味に「ならず者」「山羊の頭」頃のストーンズが浮かぶほど。デッド•ウェザー以上の骨太なエネルギーと重さで吠える「〜Buffalo」、シンプルな演奏を手拍子と大合唱でオーディエンスがあたたかく守り立てた「We’re Going To〜」とバンドの息も合ってきたところで、個人的なハイライトの「On And On And On」、そして「Poor Boy」。
「Blunderbuss」というアルバムそのものが非常に好きなので、過去の名曲よりもむしろそっちを聴きたい……というのもあったし、この2曲で見事に鳴らしきったカントリー•ソウルのスウィングとアメリカ南部のイメージは、黒人音楽と白人音楽が混ざり合うかの地の肥沃さへのオマージュになっていた。ダブル•ベースとペダル•スティールの音色も、特筆ものの美しさだ。そこから一転:約1時間の本編ラストはめっちゃ濃くとことん重く引き延ばされたタールのようなブルース•ジャム「Ball And Biscuit」で、音に感電したごとくステージをのたうち弾きまくるジャックのぶっちぎりな勢いに負けじとメンバーも思いっきりダーティに獰猛に食いつてくる。

まさにロックンロールの特大花火!というわけでお客の熱狂もピーク。アンコールの歓声と鳴り止まない手拍子(「Seven Nation Army」を歌ってる連中もいました)の中、バンドが復活。こういう場面では大概メイン•パーソンは一番最後に出て来るものなんだけど、ジャック本人が先頭を切って登場する張り切った感じもナイスだね。ジャグ•バンドがスラッシュ•メタルをやってるようなプチ•ジャムから、待ってました〜!「Sixteen Saltines」。アイキーのうにょうにょしたキーボード、荒れ狂うフィドル、ファルセット……と、この名曲の根本的なヘンさが、ライヴでますます増殖しているのも最高である。
落雷を思わせる爆音のイントロから、おおっ!マジですか?とつい拳を握ってしまったこのリフとプリミティヴなビートは「The Hardest Button〜」じゃないですか! 場内全体が、巨大なタテ乗り集団に一変した。ジャックがピアノに移動し、「Thank you!」「How ya doin?」以外でこの晩初めてのまともなMCとなったメンバー紹介。いずれもダンディで腕の立つ各人に文句無しの熱い喝采が注がれたところで、「Blunderbuss」最終曲の「Take Me With You〜」(こうやって、ショウに起承転結をもたせるところもジャックらしくていいなあ)。この曲はアルバム中白眉のトラックのひとつだが、異なるふたつの曲をひとつに繋げたごときドラマチックな構成は音とダイナミズムのエレクトリックな交感が冴えるライヴ•ジャムにはぴったりで(もちろんプレイヤー達の音楽反射神経が前提でしょうが)、堂々たるフィナーレを飾ってくれた。
今更自分が述べるまでもなく、昔からジャックは一級のライヴ•パフォーマー。彼のギター&歌だけでも、そんじょそこらのプロ•バンドがいくつか束になってもかなわないくらいのカリスマがある。そのパワーをフロント•マンとして久々に目の当たりにできるのは大いなる喜びだが、今回のソロ•ショウは、ジャックのこれまでの音楽的変遷•成長を総括する――とりわけ、今や観ることのかなわないWSのレガシーに新たな血流を流すという点は重要だろう――リッチな内容である共に、彼自身の現在地と音楽的なアンテナのありかを余すところなく見せるべく、実に周到に組み立てられている。昔からのファンにはもちろん、最近ハマったクチの若いファンにもぜひ、このアメリカ音楽界の誇る若き国宝の国宝たる所以を生で体験してもらえたら、と思う。

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Jack White@Brixton Academy/21June2012 への2件のフィードバック

  1. col より:

    はじめまして
    すごい臨場感つたわります
    Hotel Yorba生で聴いてみたいなー
    日本だとFiji Rockに行くしかないのか、、ライブハウスで演奏して欲しいです

    • Mariko Sakamoto より:

      colさま:コメントありがとうございます。WS名曲をプレイしてくれてるのはほんと嬉しいです。単独公演@日本も、実現すればいいですね〜

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