TV round up(Lilyhammer/The Thick of It/Homeland)

先日も書いたように、秋が深まり冬の足音を感じる昨今はおこもりエンタメ=テレビやDVD鑑賞〜読書に向かいがち。ライヴももちろん行きたいけど、寒いとどうも出かけるのが億劫になるし(年寄りの悪い傾向ですな)、最近はますますチケット代がバカにならなくなってきた、というのもある。

たとえばストーンズの11月=50周年記念ショウ@英O2(アメリカでは12月)なんて、最低価格は100ポンド近く〜最高額は(手数料他も含めれば)400ポンドとか。わーお。「いや、100ポンドちょっとで生ストーンズを拝めるだけでもお得でしょ!!」と感じる人もきっと多いんだろうけど、想像するに、最安値の100ポンド級のチケットはおそらく大アリーナの奥の奥の席だろう。双眼鏡が必要かと。
個人的には、別にこのショウに自発的に「行きたい」とは思わない。ので、自分にとっての死活問題ではない。5年ぶり〜しかもアニバーサリー•イヤーを記す特別な興行でもあるし、チケット代が破格なのも仕方ないだろう。とはいえ、不況まっただなかの現在のイギリスで100ポンド以上を躊躇なく一夜のために支払えるのは中流以上の裕福な年寄り(とその子供&孫)だけだろうし、そう考えればこのショウ、基本的にストーンズとその同世代人達が対象ということ。「昨今のロンドンはチケット代がバカにならない」という状況を語る意味では、あまりいい例ではないかもしれない。

また、コンサートにどれだけ払うか=アーティストやバンドへの思い入れというのは人それぞれ/自由市場においては個人の自由なわけで、400ポンド以上払ってでも、飛行機代やロンドン滞在費他を含めてでも海外からはるばる馳せ参じるファンがいても不自然とは思わない。
しかし、「年に2、3度のイベント」としてではなく、もっと日常的に音楽とライヴ•ミュージックに関わりたいと思う人間にとって、3桁のチケット代というのは……フェス以外にはあり得ない話。っていうか、太っ腹でも自分には一公演30〜40ポンドのレベルが上限だし、インディ•バンドのギグが30ポンド以上だともー仰天。バカバカしくて行く気がずーんと萎えてしまう。
アクトが大物になるにつれて会場のサイズが大きくなり、そのぶん公演日程が減るのは経済的/興行的な観点から考えてもごく自然な成り行き(例:複数都市で5公演やるのと1都市2公演とで収益がほぼ同じなら、2公演の方がアーティストにとっては確実に割がいい&楽。CDの売り上げが落ち込む一方の状況で、ライヴの価値が釣り上がる傾向にあるのは過去数年のトレンドなので当然の話でもある)。広い会場で観るのに意義のあるパフォーマンスもあるので全否定はしないものの、スポーツ•イベント他も行われる大型の多目的施設は基本的にライヴ音楽向けではないので、その手の会場でいい音は期待できない。チケット代も高くなるし、ステージとの距離も広がり、日程&地理的なオプションも限定され……と、ファンにとってはあまりありがたくない。

というわけで、早めに面白いアクトを見つけて、まだ彼らがアンダーグラウンドなうちに=そこそこ容易に観れるうちに生を観ておくのは個人的にはポイントだったりする。そのままアングラに留まる人もいるので(笑)それはそれで賭けだろうけど、考え方としては、自分の持ち札(ここではチケット代に当たる)を細かく色んなアクトに振り分けるか、あるいは一括で大物アクトにドカンと投資するか、ということ。もちろんどっちがいいとか悪いという話ではない。ただ、大物は自分ひとりが貢献しなくたって他の人達からのサポートでちゃんと成り立つもの。対して、駆け出しの連中やアングラ勢は小さな会場で四苦八苦して採算とるのがやっと……というケースも多く、たとえ単価は小さくとも観客=我々の貢献が活動にヴァイタルに反映される可能性は高い。
メディアのハイプや話題にのせられ、「これは観ないと!」「こりゃすごそうだ」と感じるのは、それはそれで熱病に浮かされるようで楽しい。が、そこでチケット予約に即リーチする前に一瞬止まり、興行の全体的なクオリティ(アーティスト•パワーのタイミング、音楽と会場/音響の相性、観客のサイズetc)を冷静に熟考しジャッジしてみるのもいいかもしれません。

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ライヴはもちろん新作映画をあまり観ていないのは我ながら寂しいが、そのぶんテレビは結構充実しているこの時期。今フォローしているのは、ノルウェーを舞台にしたコメディ•ドラマ「Lilyhammer」、モダンな政治風刺劇の至宝「The Thick of It」の第4シリーズ、アメリカ産のCIAコンスピラシー•サスペンス•ドラマ「Homeland」のシーズン2あたり。

「Lilyhammer」はノルウェー発のドラマ(アメリカでは映画のネット配信会社Netflixが配給)だが、主役を張るのはEストリート•バンドの〝リトル•スティーヴン〟ことスティーヴン•ヴァン•ザント。彼が演ずるフランクはニューヨーク生まれの筋金入りのイタリア系ギャングスターという設定で、このキャラは言うまでもなく「The Sopranos」でスティーヴン•ヴァン•ザントが演じたシルヴィオ•ダンテへのオマージュになってもいるのがひねり。マフィアがらみの抗争に巻き込まれてニューヨークから脱出したフランクが、「第二の人生」を送るべく1994年冬季オリンピック開催地として知られるノルウェーのスモール•タウン:リレハンメル(正確な綴りはLillehammer)に到着するところから話は始まる。
その唐突さはもちろん、「澄んだ空気と新雪と金髪ギャルを求めて」この地に根を下ろそうと目論むフランクは、ヨーロッパ/アメリカ、村コミュニティ/大都会をはじめとする数々のカルチャー•ギャップに出くわす。シュールですらある「水(リレハンメル)と油(フランク)」ぶりは笑いを誘うが、一見善良で安穏とした地リレハンメルにおいても変わらないのは人間の本性(=友情、恋愛、金、セックス他)。そのメカニズムをあの手この手で巧みに利用し時に搾取しながら、フランクが移民ステイタスからナイト•クラブの経営者として、また有力者としてのしあがっていく様は痛快そのもの。
物語はアンチ•ヒーローの流れ者を主役にしたカウボーイ映画のバリエ―ションとも言えるし、その意味ではとてもアメリカ的ではある。しかし、そこに北ヨーロッパ人の独特なストイックさと間、米シットコムにつきもものオーバーな笑いとは真逆のドライなユーモアが混じることで面白いハイブリッドが生まれている。そのノリはアキ•カウリスマキ映画にも一脈通じるところがあるし(古典的なアメリカン•ロックンロールへの憧憬がドラマのアクセントに使われているところもその印象を強める)、ちょっと前の作品になるけど、アイスランド産のブリリアントなコメディ•ドラマ「The Night Shift」も思い浮かんだ。以下の映像は、その「The Night Shift」の続編である「The Day Shift」からのクリップ(英語字幕ですみません)。ビョーク様のカメオ出演に、同作の人気ぶりがうかがえます。

リトル•スティーヴンは俳優としてだけではなくこのドラマのストーリー/脚本およびプロダクションにまで携わる入れ込みようで、たぶん劇中で使用される音楽も彼が選曲していると思う。というわけで、こちらののインタヴュー記事からも「Lilyhammer」シリーズ2への当人の意欲は伝わってくるが、本業=ブルース•スプリングスティーンのツアー•スケジュールがやはり最優先ということで、フランクの冒険は今後どう続くのかな?

「The Thick of It」は、実際に起きた/起きつつあるスキャンダルや政治家の失態/失言〜政策の失敗がストーリーやキャラのモデルになっている政治風刺ドラマであり、それらの背景を知っていた方がより楽しめるのだろうとは思う。しかし、自分のように英政治とその歴史のアウトライン程度しか知らない人間=アウトサイダーにとっても、このドラマはむっちゃ面白い。
その理由のひとつは:まずもって脚本と演技が秀逸なこと。チンケな保身、あるいは野心にからめとられて政治的な駆け引きに右往左往する滑稽なキャラ達(主に各政党の特別顧問/カウンセル)が主筋のディテールを緻密にふくらませ、交錯した彼らの思惑/欲/行き違いがシリーズ全体を通してスキャンダルなりトラブルを雪玉のように膨らませていく様は見事としか言いようがない。役者に関しては、ピーター•キャパルディ、ジェイムス•スミス、ジョアンナ•スキャンロン、レベッカ•フロント、ロジャー•アラムらを筆頭に芸達者な英喜劇役者(ストレートな演技ももちろんやれる人達だが)やコメディアンらが顔を揃えていて、アドリブも含むという話芸と間の取り方の上手さは絶品。メイン•キャストだけではなくちょい役も実に細かく配置されていて、アンサンブル•キャストの素晴らしさという意味で、この作品は「Arrested Development」に匹敵するんじゃないか?と思う。
もうひとつは:限りなく「ありそう」な筋書きを辿りつつ、ドラマの中で「与党」と「野党」の具体的な党名は一切出てこず、それぞれのイデオロギーもはっきりとしない。ドラマのメインの舞台になる内閣機関(Department of Social Affairs and Citizenship:通称DoSAC)は実際には存在せず、扱われるテーマも国際政治云々ではなくドメスティック。ゆえに「The Thick of It」に描かれるシチュエーションや国内における権力争い〜失策の構図はどの政党でも、またどの閣僚や議員にも起こり得ると言えるし、イギリスに限らず他の民主国家の政治屋の行動原理をだぶらせることも可能ということ。
というか、その実在しない省=DoSACそのものが「存在根拠がはっきりしない(=何が仕事なのか曖昧な)省」というわけで、名前はなんだかご大層で立派なのに実態は不明という、この機関の存在〜ひいてはそこで働く人々の根本的な無意味さそのものがギャグでもあるだろう。政治に限らず、大きな組織/システムの中には得てしてこういう「謎の部門」が何かのはずみでエアポケットのように生まれがちなわけで、政治のカリカチュアであるばかりか、現代企業や社会の縮図になっているのも面白い。その意味ではモッキュメンタリー風の撮影スタイルも含め、「The Office」の影響も無視できないだろう。

ともあれ、大胆かつ容赦のない風刺ぶりに毎回舌を巻かされてきたこの名シリーズも、今回がフィナーレになる模様。クリスマス特番といったワン•オフ(既にスピンオフの映画「In The Loop」がありますが)を除くと、今後新シリーズが生まれる可能性は低そうで、ファンとしては悲しい……。しかし、このドラマのメイン•ライターであるアーマンド•イアヌッチは「The Thick of It」における最大の悪役にして歩く毒舌の記念碑、忌まわしきいじめっ子であるスピン•ドクター=マルコム•タッカーが、同時にもっとも愛されるキャラであるという事実に危惧を抱いてもいるよう。
政治家の失態をバカにし、リアリティとモラルの欠如を笑い飛ばすのは庶民に許されるエンタメではある。が、楽ではない仕事を日々こなす公僕やドラマになりにくい地味な仕事を日夜遂行している「社会の礎」と言える政治家達も現実にはちゃんと存在するわけで、彼らのがんばりをシニカルに戯画化された悪役キャラクターが一蹴するという状況は――マルコムの罵詈雑言がいかにバロック調に華麗で謀略が芸術的であっても――ドラマの制作者達にとって本意ではないだろう。その意味で、先週放映されたシリーズ4:エピソード6はシリーズ初のスペシャル拡大枠(=1時間)でマルコムの悪辣さ&偽善ぶりをとっくり暴いてくれていて、本シリーズ中でもベストなエピソードだと思った。
次のエピソード=SE4EP7でさよならになる予定の「The Thick of It」だが、アーマンド•イアヌッチは次なる標的としてソーシャル•メディアやネット会社の風刺を構想している模様。下手したらいまや一国の政治家以上にパワフルで、しかし見えにくいまま人々の日常をコントロールする存在でもある彼らをどう料理してくれるか、とても楽しみであります。

イスラエル産のドラマ「Hatufim (Prisoners of War)」を原作とする「Homeland」は、イスラム主義のテロリストに捕獲され8年間幽閉された後に救出され、「帰還兵ヒーロー」とあがめられるアメリカ海兵隊員:ニコラス•ブロディと、「テロリスト側に寝返った米兵がいる」との内通情報を手がかりに彼を追う女性CIA捜査員:キャリー•マシスンが主人公のサスペンス•ドラマ。シーズン1は好評で、オバマもファンとか。ゴールデン•グローブに続き今年のエミー賞主要部門を抑えたばかりという追い風タイミングに乗る形で、放映中のシーズン2はアメリカ放映時から1週遅れでイギリスでも放映される勢いであります。
しかしあくまで個人的にぶっちゃけさせてもらうと、現行のシーズン2は今のところ前シーズンよりも面白くないと思う……それはたぶん、前シーズンを突き動かしていた「ニコラス•ブロディの謎」という大きなサスペンスの推進力にある程度の決着がついたために、逆に随所にちらばるアラや矛盾が目につくようになったからではないか?と。テレビ=フィクションなんでリアルに徹することを求めてはいないけど、ここに来てプロットの舞台に複雑怪奇な米政治の背景が深く絡んできたことで、「それは都合が良すぎるだろうが〜」と感じずにいられない=安易なプロット処理が増えた気がするのです。

それでもまだこのドラマを観ているのは、キャスティングの威力。主演のふたり=クレア•デインズ(キャリー)とダミアン•ルイス(ブロディ)はどちらも優れた役者なので、テレビ•ドラマの一般的な水準を越えた演技は見応え十分。イギリス人俳優にも関わらずコテコテのアメリカンである海兵隊を演じるダミアン•ルイスは大変だろうとは思うが、「The Wire」でのドミニク•ウェストとイドリス•エルバの前例もあるわけで(「Homeland」には、彼の他にCIA司令官エステス役のデイヴィッド•へアウッド、工作員ローヤ役でズーリーカ•ロビンソンら英国人キャストが案外多い)。そもそも、母国を裏切るアメリカ人という役柄に、アメリカ人俳優が挑むわけにはいかないのでしょうね。そんな時に、都合のいいのがイギリス人俳優なわけです。
それ以上に賞賛を浴びているのがクレア•デインズなわけだが、うーむ……「双極性障害という時限爆弾を抱えた女性捜査官」の複雑な役回りをがっちりこなしているとは思うけど、最新シーズンでは障害にぶつかり苦悩する描写がちと過剰で、削げた頬&目玉グリグリで常にテンパりまくった演技が観ていて痛くなってきたというのも正直なところ。
常軌を逸したひらめきと「食いついたら離れない」執着を見せる(サイコすれすれな)女性捜査官というのは「The Killing」のサラ•ルンドという秀逸な例もあるので、クレア•デインズがもう少し「賞を意識した」演技ではなく、キャリーの内面的な葛藤を感じさせるニュアンスの塑像に力を入れてくれることを希望するわけです。でも、この主役ふたりの顔立ちや髪型がそれぞれちょっとだけグウィネス•パルトローとクリス•マーティンを彷彿させるところがあるので、両者のからみにいちいち失笑してしまうのも自分にとってのこのドラマの倒錯した楽しみ方だったりするのだが。

しかし、個人的にこのドラマの最大のポイントは、キャリーの唯一の理解者にして恩師的存在であるソール•ベレンソン役=マンディ•パティンキンが観れるところ。あまり有名な俳優ではないと思うが、彼がシーンになにげなく加える重みと渋さ•複雑なトーンは時にカッ飛び過ぎではと感じる面もある「Homeland」のいいアンカーになっていて、万が一この重要キャラがドラマから消えたら、たぶん自分はこの作品をフォローするのをやめるだろうと思います。

というわけで、テレビねたに続きアナザーおこもりエンタメ=本の話も……と思っていたが、かなり長くなったので今回はここまで。
テレビに関しては、クリスマスを機に(友達からさんざん勧められているのにまだ観ていない)「Breaking Bad」のDVDボックスを購入してまとめて観ようかと思っているし、その前=11月には「イギリス版Mad Men」とも称される「The Hour」のシリーズ2、そしてお待ちかね!「The Killing」の完結篇:第3シリーズも英オンエアされる予定なので、また何かの形でフォローしようと思います。読書話は、今後のポストに回します。
しかししばしのお別れの前に、若き日のマンディ•パティンキンが拝める映画「The Music of Chance」のクリップを。ポール•オースターが原作のこの映画、風変わりな筋ももちろんのこと、マンディの共演相手がジェイムス•スペイダー(しかも、この作品ではタイプキャストを破ってワルを演じていて素敵★)というのも自分的にはかな〜りポイントが高く、パーソナルな偏愛作品のひとつだったりします。

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Mariko Sakamoto について

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