Il Sogno Del Marinaio@The Lexington/26Feb2013

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Il sogno del marinaio……と唐突に言われても聞き慣れないバンド名(イタリア語で「the sailor’s dream=船乗りの夢」の意味だそうです)かもしれませんが、正体はパンク〜オルタナティヴ界の伝説的ベース•プレイヤーにして音楽を共通言語に世界を旅し続けるマイク•ワットと、ふたりのイタリア人即興/前衛プレイヤー:ステファノ•ピリーア(G)アンドレア•ベルフィ(Ds)によるコラボレーション•ユニット。2005年のThe Secondmenイタリア•ツアーの際にマイクと知己を得て交流を深めていったステファノが友人であるソロ•ミュージシャンのアンドレアと新プロジェクトを企画、マイクを誘って2009年にトリオとして伊ツアーを決行したのが誕生のきっかけだったらしい。
そのツアー中に短期間でレコーディングした楽曲をまとめたIl Sogno Del Marinaioとしてのファースト•アルバム「La Busta Gialla(ネット翻訳サービスによれば「黄色い封筒」の意味)」発売を記念して行われた欧州ツアーの一環が、このロンドン公演だった。たまたまこの日はイギー•アンド•ザ•ストゥージズのスタジオ新作「Ready To Die」――〝この名義では「Raw Power」以来=40年ぶり!〟(2007年の「Weirdness」はThe Stoogesとして発表)と話題だが、4年前のジェームズ•ウィリアムスン電撃復帰以降ツアーもガンガン行っていた彼らなので新作登場は時間の問題=それほど「青天の霹靂」でもないと思うんだけど――の3月リリースが発表されたタイミングでもあり、マイク好きの集いとも言えたこの晩に一種の祝賀ムードを添えていたと思う。

マイク•ワットを生で拝むのは、ジェフ•マンガムが仕切ったATPでのMinutemen Duo以来なのでほぼ1年ぶりだ。グランジ調のチェック柄シャツを着込んだ若い連中も目につくが、最前列を固める白髪の年配客もかなりの数。マジック•バンドなんかもそうだけど、クセのある音楽ファンがどこからともなく集まってくる感じなのは面白い(また、なにげに女性客が多いのも興味深い)。
オープニング•アクトが撤収したところで、運び込まれたのは見慣れないギター•アンプ群や銅鑼/カウベルを含むユニークなドラムのセット•アップだ。ふむふむマイクもステファノもフェンダーだな……等と眺めているうちに3人はさくさくとサウンド•チェックを済ませ、そのままこれといった前置きもなくライヴに突入。気負いのない感じがライフ=音楽なミュージシャンらしくてナイスです。作品はまだ聴いていなかったのでどんな音楽が飛び出すのか見当もつかなかったが、ジャズ/ファンク/ロックをフュージョンしじっくり煮詰めたジャムという基本ラインは変わらない。
キャリアも認知度も含め、「主役はマイク」な雰囲気はどうしても漂っていた(お客目線の多くは彼が立つステージ右サイドにほぼ釘付け)。しかしマレットとスティックを柔軟に使い分けつつバスドラを屈強にドライヴさせるアンドレアといい、ジャズマスターをシェイクさせヴァイオリンの弓でこすりトレモロをうにょうにょさせエフェクターを滑らせと様々な技を繰り出すステファノといい、豊かな表現力とエモーショナルな演奏は聴いている側も自然にヒート•アップさせられるもの。
厚手のフランネル•シャツ姿&胸元に輝く錨のネックレスが素敵だったマイクはすぐに汗だくになっていたが、目を細め、口を大きく開けた遊んでいる時の子供を思わせる屈託ない表情&感極まったプレイぶりはイタリアの若衆との精神面での絆〜感応を感じさせて余りある。ライヴの途中で第4ボタンが外れてしまい中年腹が思いっきり見えていたが、マイクはまったく気づかず/意に介さず最後までそのまま演奏し続けていた。こういうある種アニマルで(同時に)ストイックなジャズ奏者のノリは、きっとRHCPのフリーも学んだんでしょうね。リスペクト。

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「今夜はラウドでいいね〜!」との気持ち良さそうなMCも漏れたように、ハコ(および会場付きのライヴ•エンジニア)の音響との相性が良かった点、そしてオーディエンスがバンドをありのままに受け止めていた点(ファッションだのトレンドに乗っかっただけのバブリーなバカ客に苛立たされなかったのは、ロンドンでは珍しい)も3者のガチンコぶりを盛り上げていたと思う。
その三角形なインタラクションだけでも高揚するわけだが、音楽そのものも3人がそれぞれにアイデアを出し合って……というコラボな性格が伺えるものだった。シャッフルする複雑な変拍子インスト/イタリア語のポエトリー調/フォークなコーラス•ワークが意表をつくヴォーカル曲(メンバーの誰も歌は上手くないが、音楽にはフィットしているので関係なし)/マイクらしいインパクトのあるイントロ×ダイナミックな構成で引っ張るトラック等々、フリー•フォームな曲群は実に多彩。お互いのグルーヴやキューを同時的にチェックしつつも、各プレイヤーの直感に導かれて本道から逸れた路地にも瞬時になだれ込める、インプロのスリルもたっぷり味わいました。
とはいえトータルで自分が感じたのは、意外にも「これは古典的なパワー•トリオの現代的な解釈かな?」という印象だった。ミニットメンを筆頭に、時に満身創痍な状況にあっても果敢に多方向に流動し続けるマイク•ワットの音楽宇宙――80Sパンク/アヴァンギャルドを軸としつつ、オルタナ、グランジ、日本のミュージシャンとの交流、オペラ構想他――は、今後どこに向かうか誰にも分からないくらい神出鬼没。でもこの人の感覚は常に「前」に向いていると思っていたし、今回の彼のライヴに接していてパワー•トリオの原点=ジミ•ヘンドリックスあるいはクリームを思い浮かべたのは自分としては初めてで、そこはすごく面白かった。
もちろんジミやクリームのようにばっつりブルージィというわけではない。が、音の選び方や質感が古式ゆかしいし、ほぼ3〜4分台にまとまった曲のコンパクトさ&ポップさも昔っぽさを増長させる。それは英米とは異なるロック時間軸に属するイタリア人ミュージシャンの感覚も加わった結果なのかもしれないし、この顔合わせでしか生まれない一時的なものなのだろうとは思う。しかしマイクがこういうストレートにトラディショナルなスタイルをやるのは新鮮だったし、かといって過去をなぞるだけではなく、ロック•トリオの絶えない美と可能性とを豪快に広げようとしていたのは痛快だった。

トリオはやっぱ絵になりますね

トリオはやっぱ絵になりますね

10〜12曲=正味1時間のショウだったが、一音一音•プレイヤーの思考回路がはっきり聞こえる/見える濃縮された内容にオーディエンスは歓喜。止まらない拍手の中すぐに3人が戻って来て始まったアンコール、このベース•ラインは……「Fun House」だ〜〜〜!!!っつーわけでバンドのサーヴィスぶりに場内はまたも沸き返り、♪callin’ from The-Fun-Hous-sssssのコーラスを大合唱。サックスなしの低カロリーなヴァージョンとはいえ、いつまでも聴いていられるプライマルなリフの波動、溶岩のごとく熱く重いビート、ギターのネックで乱打されるカウベルと、ストゥージズ•スピリットにあふれたフリーキーかつ妖艶なブルース/ジャズ•ジャムに酔いしれました。
終演後たくさんのファンに囲まれ談笑しているマイク&Co.に敬礼を送り、会場を後にした。誰が共演相手でも/音楽性が何であっても/会場が大きかろうが小さかろうが/ベース一本でどこにでも飛び込むマイク•ワットのオープンな姿勢と学び続けようとするポジティヴさには、毎回元気をもらってるのだと思う。ちなみに、筆マメでも知られるマイクが本人のウェブサイトにこの欧州ツアー日記をアップしているので(サン•ペドロ調の中に「フラテロ(伊:兄弟の意味)」とか「バカ」とか「リラックマ」とかイタリア語だの日本語だのがちゃんぽんされてて笑える&楽しい!それ以外の過去のツアー日記エントリーも、エコノなツアー•ライフの実情が描かれて面白いですよ〜)、興味のある方はそちらもどうぞ。マイクはイギー仕事で再び忙しくなるだろうが、ステファノ&アンドレアの2名は近々デイヴィッド•グラブスとのコラボ•ツアーを行う予定になってます。バストロっぽいライヴになる……な〜んてことは、もちろんないんだろうけどね、たぶん。

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Mariko Sakamoto について

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