Kid Congo and The Pink Monkey Birds@The Shacklewell Arms/23March2013

見えにくいですが、左端がキッド•コンゴ先生

見えにくいですが、左端がキッド•コンゴ先生

多くはないけど、傭兵のように色んなバンドやプロジェクトを渡り歩くミュージシャンという種族は存在する。少し前に本ブログでライヴをレヴューしたマイク•ワットもそんなひとりと言えるし、エイドリアン•ブリューなんかも思い浮かぶ。ヴォーカルではあるけれどマーク•ラネガンもある種の「住所不定アーティスト」だろう。
かといってセッション•ミュージシャンともまた違うのは、音楽的な力量や技術だけではなくキャラ=カリスマを備えている点。ソロでも作品をリリースしているとはいえ、俳優で言えば主役/フロント•マンを食いかねない存在感のあるバイ•プレイヤーというポジションが似合う人達とでも言うか。そんな、ある種バンド内のデリケートな均衡を壊しかねない「危険分子」を迎え入れるバンド側も度量が大きくクセのある連中ぞろいなのだけど(ストゥージズ、キング•クリムゾン、QOTSAなど)。
そんなちょっと風変わりな風来坊ミュージシャンの中でも、キッド•コンゴ•パワーズのキャリアはもっとも面白いもののひとつだと思う。仮にバンドが「これまでに参加したメンバーの同窓会」を開いたら、彼のもとにはザ•ガン•クラブ、ザ•クランプス、ザ•バッド•シーズ、ザ•フォールやエンジェルズ•オブ•ライトらから招待状が届くはず。裏街道名バンドのオン•パレードで、その足跡だけでもちょっとしたアングラ•レジェンドと言えるだろう。ちなみにこちらのサイトにキッド•コンゴ•パワーズの回想録が掲載されていますので、彼の歴史に興味のある方はぜひ。ロサンジェルス生まれのメキシコ系アメリカンである彼がティーンエイジ•パンク•ファン(ラモーンズやスクリーマーズのファンジンを作っていたこともある)として目撃•体験した70年代末のシーンなど、とても面白いメモワールになってます。にしても若い頃の彼はYYYズのニックやホラーズのメンバーに似てるなあ……

そのキッド•コンゴ•パワーズが、久々に自らのバンド:Kid Congo&The Pink Monkey Birdsを組織し新たな活動のサイクルに入ったのは2009年。彼のルーツと言えるブルージィなガレージ•パンクに戻った!という点が話題を呼んだ(モダン•ガレージの指定席レーベル=In The Redからの)ファースト「Dracula Boots」に続き「Gorilla Rose」(2011:しかしどのアルバムもタイトルのセンスが最高ですね)、そして最新作「Haunted Head」も近々リリース……というわけで、アルバム発売前のミニ欧州ツアーの一環としてこの晩のロンドン•ギグがブッキングされた。
会場のThe Shacklewell Armsはまだ比較的若いヴェニューながら、ヒップな東ロンドン:ドールストンの地の利と人気プロモーター:Eat Your Own Earsとの連携を活かしてユニークなギグの舞台になっている人気の場所。これまでどうにも行く機会がなかったのだが、やっと体験できました〜。建物は二部構成で、表に当たるパブ•エリアはチューダー様式の高い天井が醸すレトロで校舎を思わせる独特なヴァイブにシャビー•シックな内装(くたびれたソファや古いゲーム機がマスト•アイテム)がいかにも今のロンドンっぽい。
バーの脇にある通路を抜けるとライヴ会場になるのだが、かつてはカリビアン移民向けのダンス•ホールだったという前歴はカラフル&マッドなヘタウマ(ごめん)壁画やビーチ屋台風のバーなどにそのまま残されている。ドラム•キットのポジションはさながらカタコンベだし(笑)かなり別世界な雰囲気だけど、それ専門に建てられたライヴ会場とはまた異なる、こういう建物の以前の用途や佇まいが味になってるパブ•ヴェニューは個人的には好きである(他にはユーストンのSt Aloysius Church、ベスナル•グリーンのWorkingman’s Club、タフネル•パークのThe Boston Armsなど)。
そういえばこのギグのプロモーターは長らくボストン•アームスを拠点にしてきたガレージの老舗:Dirty Water Clubで、お客のノリもひと味違ったね〜。53歳というキッド•コンゴの世代を反映して白髪の年配オーディエンス〜パンク原体験組もかなり混じっているが、若きガレージ•フリークやゴス•キッズも多数。基本的にニッチなジャンルだから当然かもしれないが、半端なインディ•ファンやバズをチェックしにきた業界人が集うライヴとは異なり熱烈なファンの集まるショウというのは盛り上がりも抜群なので楽しいものです。

とはいえプチ•レジェンドなだけに、業界人も見かけた。ATPで顔見知りのクイズ•マスターことロード•シンクレア、音楽ライターも数人、そしてこの手のライヴには必ずと言っていいほど顔を出す(笑)ボビー•ギレスピー&ジェイソン•ピアース(一緒に来たわけではない)。相変わらずファン気質が抜けないところはほほえましく好感が持てますが、ソールド•アウトの場内はものすご〜い人いきれ&汗だくの蒸し蒸しだったので彼らはライヴそのものをあまり観ていなかった模様。終電目指してラスト間近で切り上げたところ、両者がバーで何やらもぞもぞ語り合っている姿を目撃しました。

KCP3

KCP2

肝心のライヴはご機嫌の一言に尽きる。キッド•コンゴは「ガキ」なるあだ名も納得……のとても小柄かつニートな人で、額縁眼鏡にちょびヒゲのルックスはロバート•クラムとジョン•ウォーターズを足して二で割った雰囲気。メンバー全員お揃いのレタード•カーディガン着用というのも実にユーモアが利いている。しかしいったん演奏が始まるとアイヴィー•リーグっぽさは消し飛び、ガリガリのリズム隊に乗ってギター2本(=キッド•コンゴのシンプルながら味のあるギターにリヴァーブで溶けたサーフ/ロックンロール•ギターが絡む)が火を吹く。タイトそのもの!
音のセレクションは硬質なガレージ•パンクと言えるが、ロールするジャングル•エキゾチカなビートやブルースを基盤に色んな音の混じった雑種グルーヴは重さやマッチョな雄叫びを寄せ付けず、いなせなスウィング感も含めてロケット•フロム•ザ•クリプトがロカビリーと格闘技しているようなムード。メンバーのうち2名はテキサス出身とのことで、南部の血が音に活きているようだ。オーディエンスもその即着火!な熱気に応えて思い切り踊りまくっていて、筆者の背後にいた20歳前後の酔っぱらい若者グループ(誕生日祝いも兼ねていて実に楽しげだった)は最初から最後までポゴで大暴れ。ステージ前方はカオティックな乱痴気騒ぎと相成り、後方に引いても身動きがとれないくらいに密集……と、会場の壁も汗と湿気で濡れるようだった。
キッド•コンゴ当人はそのライヴ•ミュージックならでは光景を実に嬉しそうに見守りつつベテラン•パンクらしいクールも維持していて、1曲ごとに「次は最新シングル『Conjure Man』。会場の奥で売ってるから買うように」等々の語りや14歳の頃ハリウッドをヒッチハイクしていてスカイ•サクソン(!)に拾われた逸話を挟む様はキャンプな説教師といったところで、家族にひとりはいる「風変わりな話の面白い遠縁の伯父さん」も思わせる。と同時にジェフリーにラックスにニックと、アイコニックでワン&オンリーな名フロント•マンに間近で接しその魅力/魔力を理解している人だけに、逆にこういうウィットに富んだ落ち着いたステージングになるのかもしれないな、とも。
前2作を中心とするセットだったがジェフリーと言えばガン•クラブのカヴァー(「She’s Like Heroin To Me」、「For The Love Of Ivy」など)も飛び出し、若いオーディエンスが歓声で迎えひときわ盛り上がったのはなんとも嬉しい光景だった。大好きなバンドながらガン•クラブの名を目にする機会は少ないだけに、ヤング勢にもちゃんと聴き継がれているのを実際に体験するのは涙モノ。本人もその成り立ちに貢献したレガシーに敬意を払い継承しつつ、ロックンロール〜パンクの猥雑なエネルギーとアウトサイダー=知的なはみ出し者達の音楽というフリークな本質をえぐる、熱くもシャープなショウだった。この人もまた、アメリカン•オリジナルのひとつと言っていいのではないだろうか?というわけで敬意をこめて、最後にピンク•モンキー•バーズのシングルのプロモ•ビデオをどうぞ。

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Mariko Sakamoto について

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