Endless Boogie@Corsica Studios/22April2013

EB1

しょぼい写真ですみません〜(混み込みで前に行けなかった)。右がロック司祭:トップ•ダラー氏です。

しょぼい写真ですみません〜(混み込みで前に行けなかった)。右がロック司祭:トップ•ダラー氏です。

一部の間で「ニューヨーク•ロックの秘宝」とも称されるオールド•スクールなバンド:Endless Boogie。3年ぶりの新作「Long Island」リリースに伴うこのロンドン単独公演は、サイケデリックなブルース•ジャムという堅固な基盤を守りつつ彼らが着実に変化•成長しているのを感じさせるナイスな内容だった。

オールド•スクールと書いたのは、ジョン•リー•フッカーのアルバム•タイトルからいただいたというバンド名も含め、60〜70年代に両足ばっつり踏みしめたその音楽性だけの話ではない。バンドの看板とも言えるシンガー/ギタリスト:トップ•ダラー(ことポール•メイジャー)はジョニー•ラモーンが禅ヒッピーと化したごとき(?)インパクトの強いルックスの御仁だが、既に60を越えているらしい。バンドの始まりは1997年とのことで、その時点から数えても既に彼は40台半ばだったわけで、遅咲きも遅咲きのフロント•マンと言えるだろう。メンバー4人の年齢を全て足すと169歳以上とのことなので、他の3人も決して若くなさそうだ。

しかし、得てして巷にまかりとおる年齢差別が通用しないのがアンダーグラウンド•ロックの面白さ。特にエンドレス•ブギーのようにブルース&ジャムという「ある道」を究めるのが目的の趣味的なバンドの場合――こちらのインタヴュー記事によればEBの始まりは週イチの仲間内のジャムだったそうで、2001年にスティーヴ•マルクマスに乞われて前座出演するまで人前でプレイしたことはなかったらしい――年輪と智慧とは大きな武器になる。
ここで「趣味的」と書いたのは、何もアマチュアの手遊びというネガなニュアンスではない。ディープな趣味を誇る音楽好きがいいレコード作り(売れるレコード作り、とは限らない)に長けているように、EBの作品はどれもよく作られている。またトップ•ダラーは以前コレクター向けのファンジンを作っていたという筋金入りのレコード•ディーラーで、彼とバンドの共同創設者にしてチーフ•ソングライターであるザ•ガヴァナー(G/AKAジョゼフ•エクロウ)の誇るレコード/音楽知識は他のミュージシャン達(デイヴィッド•パホ、いまやEBの準メンバーであり新作の共同プロデューサーでもあるマット•スウィーニーといった曲者がその一例)からもリスペクトされるほどすごいという。
その片鱗はちょっと前のMOJOマガジン(=ディラン表紙の「100 Greatest Music Films Ever!」特集号)の素敵な連載「Mind Blowers!」(ミュージシャンが知る人ぞ知るカルトなアルバムを紹介するコーナーで、最新号はメルヴィンズのバズ•バズボーンが選者)にトップ•ダラーが寄稿したコラムからも伺えたが、これが筆者もまったく知らない名前/作品ばかりだったのには「うぉー」とうならされた。

上には上がいるってことだし、ミュージシャンが音楽マニアで詳しいのはある意味当たり前の話ではある。しかしこの人のアングラ〜バチ当たり•ロックへの献身ぶりはジュリアン•コープのそれに匹敵しそうだわと感服させられたし、ややカルトなバンドやアーティスト名、気の利いた作家名やハイブロウな映画を影響や引用に持ち出すことで(結果的には)自らのセンスの良さを誇示したがっているのが割れる「お子さん」レベルなミュージシャンとは訳が違う。
だって、たとえばコルトレーンやルー•リードといった誰にでも通じる「クール」な名前を持ち出すならともかく、トップ•ダラーのチョイスはStonewall、Justyn Rees、Arcesiaなど多くの人間には意味不明なアングラ記号ばかり。そこにあるのはそれらのアーティスト/作品に対する彼の純粋な愛情と驚異の念であり、レコードという記録=音源に宿る無限の不思議に魅せられた者のパッションであり、自身をかっこよく見せようという意志はまったく感じられない。
その、自らを売り込む意識の欠如――ひいてはこのバンドをメインストリームに浮上させようとかヒットを飛ばそうという意志もまずもってなく、ただ自分達の好きな時に好きなようにビールを飲みながら気持ちよくジャムりたいだけ、という彼らはキャリアとしてではなく道楽として音楽を追求し続ける愛好者達の潔さを放っている。インディ•アクトすらビジネスマン化せざるを得ない今の時代、そのシンプルさは新鮮に映る。ちょっと前に「90年代リヴァイヴァル」ということでグランジっぽいギター•サウンドを鳴らすバンドが増えたが、EBの方がよっぽどスラッカーを地でいく存在じゃないだろうか。

ゆえにばきばきツアーする手合いではないものの、前作「Full House Head」がメディア各所で賞賛されたこともありエンドレス•ブギーという名のカルト信者は少しずつ増加している。この晩もしっかりソールド•アウトだったが、95%男性客という状況(イコール背の高いギグでもあり、写真撮るのもひと苦労)に加えDJはストゥージズを爆音で鳴らしながら自らノリノリでヘッドバングしており……と、まあデートで恋人を誘って観に来るような雰囲気のギグではないのは確かだった(笑)。

トップ•ダラーのアイコニックなシルエットとギブソンがステージに浮かぶや場内を満たしたギークスの愛がせり上がり、それを受けて新作の秀逸なオープニング•トラック「The Savageist」がキック•オフする。EBのオフィシャル•アルバムはいずれもアナログだと2枚組なので驚きはしないが、このジャムからして20分近いヘヴィ級。「Fun House」あるいはキム•フォウリーの傑作「Bubblegum」を思わせるニヒルなグルーヴ&リフの絡みが引き出す強力なトランスにはもう……全身で埋もれるしかない。そこに乗る咆哮に近いヴォーカルも含め、根源的で野生、かつピュアな磁力がわき上がる。音やスタイルこそ違え、エンドレスな円環リズムに絶え間なく身体を動かされるEB体験はアフリカ音楽やジャズ、クラウト•ロックやある種のエレクトロニック•ミュージックを聴くのに近かったりする。
と同時にサイケデリア〜スペース•ロックとの共通項も多く、実際ライヴの間にホークウィンドや初期ピンク•フロイド、アモン•デュールⅡ、最近で言えばブラック•エンジェルズあるいはウッデン•シップスのライヴが脳裏にフラッシュバックしもした。しかしEBのユニークさは、エフェクトやシンセの醸すコズミックである意味うさん臭いヒッピー志向ではなく、オーガニックなリフと馬力にモノを言わせるところにある。ロックがヘヴィ化しプログレやハード•ロックに変容していった60年代後半〜70年代前半のサウンド(アイアン•バタフライ、キャンド•ヒート、スプーキー•トゥース、ハンブル•パイ、グラウンドホッグスなど)やフリーキーなブルース•シンガーを思わせる、取りつく島のない攻撃性と無骨さとでも言おうか。
平たく言えば「男ロック」ということになるかもしれない。しかし彼らのしたたかなグルーヴに揺られていると、箱から取り出したぬるい缶ビールを手に裏庭や河原でラジカセから流れるオールド•ロックをBGMにパーティ(できればたき火やバーベキュー付きで)しているような得も言えぬ解放感が満ちてくるのだ。現実のライヴ会場はうらぶれた南ロンドンの高架下にあるすすけた倉庫だったので飛躍した連想だが、このバンドは世俗やそれにまつわる様々な自意識とは無縁な自由さへの鍵を渡してくれる。頭を空っぽにしてただロック•アウトしたい時には、とにかくもってこいの音だろう。

かくいう自分もひたすらヘッドバングして首が痛い&爆音で耳鳴りがしていたが、セット冒頭とラストとを飾ったロング•ジャムが絶品!なだけではなく、中盤にプレイされた比較的ノーマルな尺(5〜6分台)の曲群もパンチの利いたガレージ•ハード•ロックで拳を突き上げずにいられない痛快さ。ペイヴメントがキュレートした2010年ATPで観た時のライヴはもっとフリー•フォームでドロドロとした印象だったが、実は非常にセンスのいいリフの輪郭(インスト曲「On Cryology」のアウトローなブルース味は最高)をはっきりさせ、楽曲にメリハリを増した最新作「Long Island」が着実に進化を重ねているEBの現時点でのベスト作であることを確認しました。
と同時に、たとえばストゥージズあるいはラモーンズに象徴されるこういう「アメリカン•オリジナル」なバンドが、今も世界のどこかでロックし続けているのを見届けられたのも嬉しい一夜でありました。

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Mariko Sakamoto について

Hi.My name is Mariko.Welcome to my blog,thanks for reading.坂本麻里子と言います。ブログを読んでくれてありがとう。
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Endless Boogie@Corsica Studios/22April2013 への2件のフィードバック

  1. マキ より:

    イヤー驚いた、三日前に偶然このバンドを知り今日レコード届いたんですが、日本でこんなの聴いてるのは俺ぐらいだろうと思ってたらここにもいたよ!そんなに話題のバンドとは知らなかった。たまには気が合うねー。major starsというバンドもその時知りましたがこれも素晴らしいぞ!

    • Mariko Sakamoto より:

      マキ兄:どうも〜。ご無沙汰ですがお変わりないようで何よりです。
      珍しく気が合った…のがエンドレス•ブギーってのも微妙ですけど、ライヴがいい人達なのでいつか
      日本でも観れたらいいですね。あ、ちなみに「話題のバンド」と言ってもこっちでもまだまだカルトなので
      誤解なきよう。このライヴも、売り切れとはいえ集客は200+くらいだったんじゃないかな?
      Major Starsはヴォーカルの好き嫌いが分かれそうですが、面白いので探ってみます(サンクス!)。
      最近の一番のおすすめはKurt Vile「Wakin On A Pretty Daze」。前作も非常に良かったけど、上回ったかもしれない。
      ともあれコメントありがとう&お元気で。

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