Weary of Rock T:2―ロックT無常

冬が長引いた上にジメジメ雨の多かった2013年前半ロンドンですが、ここしばらく日中の気温も上昇してきて、曖昧な春から初夏にやっと脱してくれた気配です。先日Michael Hurleyを観にCafé Otoに行った際も、ビーサン族や半袖人を多数見かけたくらい。
ライヴはマイケル爺の飄々たる語り口と自然体のチャーム、侘びに満ちたギター•プレイが相変わらず素晴らしく、立ち見びっちりなソールド•アウトの場内も魅了されていた。けれどこの会場は空調がないので熱気がすごく、汗っかきの自分はショウの後半で外気を吸いにいったん外に出るしかなかった……。でも大好きな「Tea」と「Portland Water」は聴けたので満足です。

そうしたちょっとした「不便」があってもこのユニークなライヴ•スペース(今のロンドンでベストな会場だと思う)が音楽ファンに支持され続けるのは、センスのいいブッキングはもちろんのこと、あの晩のようなアコースティック•ショウの邪魔になることもある空調システムの騒音を廃し、音楽とパフォーマーとライヴ•サウンドとを尊重する姿勢が共感を呼んでいるからだろう。
同行した60歳近い知人(=スプリングスティーン•マニア)も「このヴェニューは気持ちいいね。お客もとても礼儀正しい」と喜んでいたけれど、日本とは異なりライヴが「酒飲み&社交のBGM」にもなりがちなロンドンにおいて「ありそうでなかった」ニッチを掘り下げているOtoは頼もしい存在。そのマイペースかつエッジーな魅力に前回のレジデンス•ショウで目覚めたのでしょうか、サーストン•ムーア(どうも、現在東ロンドンに住んでいるらしいです……先日スピタルフィールズのレコード•フェアでも見かけたんだけど、ソニック•ユースのフレキシ•シングルを買っていたのが可笑しかった)が会場奥でのんびりライヴを鑑賞している姿も目撃しました。

で、サーストンの素敵にくたびれたブレトン流縞Tシャツ姿を見ているうちに思い出したのが本サイトの「ロックTシャツコラム」だった。履歴をチェックしたところ、わーお、2011年9月の第1回ポスト以来止まっている。思いつきで連載風に始めたものの後が続かない、我ながらいい加減&レイジー=おなじみな始まりだったわけだが、Tシャツ話を冬に持ち出すのも野暮である。
というわけで半袖の季節が始まったところで、今回から久々にロックT話を再開しようと思います。第1回ポストで「堆積したもろもろに別れを告げて整理する」という能書きを垂れていた自分だが、そこから2年近く経っていよいよモノを残す空間が無くなってきたのでこれを区切りに(ささやかなマイ)ロックTコレクションにさよならしていこうと思います。

――と書いたものの、今回の掲載アイテムはいずれも「日常的に着ている」系なのですぐにグッバイすることはなさそうです。ハハハ!

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その①は、フレイミング•リップス。これは「Embryonic」リリース期=2009年英ツアー会場で買ったマーチTシャツで、ウェイン先生の達者なイラストと「No one is ever really powerless」のフレーズが気に入っております。

リップスのライヴは恐らくどのバンドよりも多く観てきたが、彼らのマーチャンは買いたいとは思っても基本的に派手な天然色/カラフルなので着る勇気が出ない=なかなか手を出しにくいので、実はほとんど持っていない。しかしこのTシャツは抑えたグレイの色味も悪くないし、プリントの色落ち具合もヴィンテージっぽくてナイス。日用着としても活躍している珍しい例である。
最新作「The Terror」は極めて繊細な音の詰まった作品だけど、アルバム•ジャケットは麗しい虹メタリックなので新作マーチャンもそのノリかな? そういや彼らに関しては、自分がバンドTを買い始めたもっとも初期(93年頃)に購入したバンドTシャツがある。それも撮影しようと思って今回箪笥を引っくり返したけれど、見当たらない。うーむ、どこにあるのだろう?
そちらはカーキ•グリーンに極彩色のプリントというこれまた非常に着にくいアイテムなのだけど、とにかく色合いよりも何よりもプリント染料が石油/タール系の頑固なそれらしく、何度洗濯してもその道路工事じみた臭いが一向に落ちてくれないのでほとんど着ることがなかった。今どきのロックTにそんな野蛮な作りのものはないだろうけど、気の利かないサイズ(Mですら日本人にはデカい)といい無骨なデザインといい、90年代USロック•マーチャンのグランジー&ロラパルーザーな空気が漂っていて懐かしくもある。
一方でこの時期のイギリスのインディ•バンドTはレトロ=60〜70年代学生調のデザイン(襟と袖ぐりをパイピングしてあったり、レタリングがそれっぽかったり)が人気という印象で、セカンド•サマー•オブ•ラヴ〜マッドチェスター期のぶかぶか/単純なロゴT/スポーティーなノリから徐々にストリート化していったと言えそうだ。

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その②はビーチ•ハウスのマーチャン。「Teen Dream」の頃のアイテムで、これは80年代ノリのポップなデザインといいナイスなカラーリングといい申し分なしで、一目惚れでした。バンド名のみのシンプルなデザインとはいえ、BEACH HOUSEという名前そのものが必ずしもバンドに限定されない一般的で曖昧なフレーズなので成り立っておりますな。

しかし自分的にもっともグッとくるひねりは、ロゴに乗っかったサングラスのイメージだ。こういうカラー•フレームのサングラスが実際いつから発売されたのかは知らないけど、自分の中では80年代=ニュー•ウェーヴ•ポップとなぜか直結している。
もちろんサングラスはもっと遥かに以前からロック•アイコン達に愛されており(例:ロイ•オービソン、ジョン•レノン、ルー•リード、ジョーイ•ラモーンetc)、80年代限定アイテムではない。でも、パンクやポスト•パンクを経てシンセや電子音楽が一般に浸透した80年代の全体的なテクノロジー&前進嗜好を背景にした、心の窓とも言われる目を覆い隠すことでロボット化する一種の「プラスティック感覚」は過去のそれよりも印象深かったりする。
統計をとったことはないけども、パンク以前の70年代ビッグ•アクト――アメリカだとSSW系のナチュラル派、イギリスだと長髪のプログレ&ハード•ロックがそれに当たりますか――の中で、オフではなくオンの状態でもサングラス姿が目印になってるロック•スターというのはあまり多くないと思う。たとえば当時のジョニ•ミッチェルやブルース•スプリングスティーン、ボウイやジミー•ペイジのサングラス姿を、自分はとっさには思い浮かべられない(昨今は別の話ですよ……お年を召して、目尻の皺や目の衰え=イメージを気遣ってサングラスを着用というケースは外人には多いので)。

今やファッションの定番アクセサリーとなったサングラスなので、あーだこーだ言うのもアホかもしれない。しかしこのTシャツにあしらわれたレイバン型のサングラスは、80年代中期のファッションやカルチャーを一部の人間の中に呼び戻すアクセントではないかと思う。そんな風にして思い浮かぶのは、まず映画「Less Than Zero」のロバート•ダウニー•ジュニアが演じたジュリアン。原作本のニヒルな闇にはほど遠いハリウッド型解釈とはいえ、80年代ヤッピー文化をセルロイドに刻んだという意味ではナイスな1本だと思う。
しかしピンク色のフレーム&「ティーン•ドリーム」という言葉から連想を続けると……やっぱ出てくるのはジョン•ヒューズ映画ですよね。「The Breakfast Club」も好きだけど、ここでの決め手は「Pretty In Pink」。というわけで、ノスタルジーにしばし浸らせてください〜と言い訳してOMDのクリップ。

……テーマ•ソングという意味ではサイケデリック•ファーズのタイトル曲も非常に好きなんですが、ビデオがリチャード•バトラー重視のナルシな内容になっていて映画の場面が少ないので、OMDにさせていただきました。
とはいえこうして見返したところ、ダッキー役のジョン•クライヤーが愛用しているサングラスはレイバンではなくジョン•レノン型の丸眼鏡。勝手に思い込み&思い違いしていたのね(トホホ)。しかし彼の崩したテディ•ボーイ•ファッション――ストレイ•キャッツ流のネオ•ロカビリーなノリ(ループ•タイ、ラバー•ソウル他)――は、これまた懐かしくて泣けますね〜。
しかしもっとも泣けるのは、モリー•リングウォルドのかわいさだ。この時期のアメリカ映画を今見返すと「ほほえましくも時代臭を拭いがたい」というケースは多かったりする(70年代以前の映画なら自分とはまったく無縁の別世界=過去と切り捨てられるけど、80年代はリアルタイマーなので)。とはいえ彼女がJH映画のミューズとして体現した無垢な健康さとコケットリーとの絶妙なアメリカン•ブレンドは、以後(アドリアンヌ•シェリーを除き)なかなか他の女優さんに見出せないでいます。

サングラス話でもうひとつ思いついたところを書くと、80年代ポップの双璧女王:シンディ•ローパーとマドンナも忘れがたい。シンディに関しては、「Girls Just Wanna Have Fun」のビデオ•クリップ中盤でニューヨークのサッシーな女の子達が繰り広げる粋なサングラス競演シークエンスも実にアメリカのティーンっぽくて大好きですが、あえてこちらのビデオ――純粋なポップ•ソングという意味で、たぶん自分がもっとも好きなマドンナ曲のひとつです――を。

カウントだと2:02で登場するマドンナのサングラス姿、これまたかわいいですな〜〜。最近のマドンナは筋肉隆々のアマゾネスで整形&フィットネス狂の近寄りがたさがあるけど、このファースト期から「True Blue」、「Who’s That Girl」にかけての彼女の音楽&ビデオは自分的にはポップ•エヴァーグリーン。モンローやシンディ•クロフォードがキャラの一部にしたbeauty mark=口元のほくろを彼女が除去し、エアブラシ時代に屈したとも言える90年代初頭を大まかな境にして、自分にとっては魅力が失せたと言えるかも? 
やや太めかもしれないし、顔も平たいかもしれない。でも、グローバルな観衆を相手に普遍的=言い換えれば無国籍なイメージや子供から大人まで理解できるメッセージ:記号を繰り出す現在と異なり、この時期の彼女のストーリーにはまだ「ニューヨークのダウンタウンにやって来たスターを夢見る女の子」という人間くささとローカル性がある。
巨大なポップ•スターの存在意義というのは「世界のすみずみまで制覇」にあるとも言えるし、その野望達成の過程でツルツルに非人間化しヒューマンな側面が薄れていくのは宿命でもある。なので最近のマドンナ――ひいては彼女のキャリア曲線を追っていると言えるビヨンセ、ケイティ•ペリー、レディ•ガガ、リアーナら――をディスるつもりはないものの、キャリア初期の彼女達のまだ「隙が残ってる」感じは自分には好感が持てる。

ビーチ•ハウスからすっかり話が逸れましたが、このTシャツと彼らのエモーショナルなサウンドから連想される「アメリカンなティーン•ドリーム」というのは、自分にとっては80年代に繫がっていくらしい。そのティーンエイジャー達はビヴァリー•ヒルズの放蕩子女から郊外在住の高校生まで様々なわけだけど、宅配ピザを注文したりドレスアップしてパーティに繰り出すといった光景そのものが、日本の片隅に暮らす自分には「夢」だったわけです。

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その③は、ドイツ発のマルチメディア•アヴァン•アート集団チックス•オン•スピードのTシャツ。
ピーチズ、ル•ティグラらとも交流のあるエレクトロクラッシュ•グループとして世に出た印象が強いけれど、パフォーマンス•アートやファッション•コラボなどゲリラ的&ジャンルフリーなクロスオーバーぶりでも知られる彼女達。このTシャツもライヴ会場ではなくて、お店(たぶんUrban Outfitters)で買ったんじゃないかと思う。

記憶があやふやなのでタグを調べたところ、オーストラリア発のサーフ•ブランドInsightとCOSとのコラボTでした。普通のマーチャンに較べ生地も薄めで柔らか&(個人的にはとて〜〜も重要な)襟もとのルーズさ&袖も脇の下でスティッチしてあったりして、自然に「袖をまくった」感が生まれるデザインになっている――とはいえこういう小細工は実はあまり好きじゃないので(たとえば重ね着っぽく見せるために胸元に縫い付けられた布とか、あらかじめロールアップされたシャツとか、貧乏くさくて苦手)買った後に気づいて切開しようとしたのは覚えている。でもミシンで縫われているので、下手にいじってほつれると面倒なのでそのまま着用に至っている。
しかしこのTシャツを選んだ動機は、ぶっちゃけ音楽云々よりも(いや、COSのアルバムは好きですけどね)プリントの馬のイラストの勝利。動物モチーフはここしばらく人気で「トライしたい」と食指を動かされていたものの、小さめのパターン柄やリスやペンギンや犬猫だと可愛過ぎて年甲斐もないし、かといってインパクトの大きい単体(オオカミとかシロクマとかトラのリアル目なイラスト)を着る勇気もないぞ……と思案していたところにこのTに出くわした。
馬なら動物キャラとして甘過ぎないし、かといって絵柄もいわゆるステートメントでもないカジュアルなもので、自分にはこれくらいの中庸な温度がちょうどいい。中庸と書くとファッションの興奮やときめきが欠如していてつまらなく響くかもしれないけど、ファッションで大胆に冒険する年代でもなし、年齢を重ねるにつれ「服に着られることのない=己を知る/分をわきまえる」がポイントになっていくのだな〜と感じた1枚でもある。

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Mariko Sakamoto について

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Weary of Rock T:2―ロックT無常 への2件のフィードバック

  1. natsumi inami より:

    すごく素敵なリップスのTシャツですね。いっぱい着てる感じが、たまりません!
    秋に日本にリップスが来るの、たのしみがまた増えました。。。Tシャツ、いいのあるかな。と^^。

    • Mariko Sakamoto より:

      natsumi inamiさま:コメントありがとうございます。Tシャツはナイスに着古した感じがポイントだと思います。
      リップス10月の日本は楽しみですね。ちょうど今日リップスのロンドン公演(本当は先週月曜だったんですが、
      ウェインが風邪で倒れて延期になった公演の振替です!)に行くので、最新マーチャン状況もチェックしてきます。
      ちなみに、ご存知かと思いますがリップスTシャツ•デザイン•コンテスト
      行われているのでチェックしてみてください。ではお元気で。

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