The Flaming Lips@The Roundhouse/27May2013

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新作『The Terror』投入後最初のザ•フレイミング•リップス英ツアーだ!久々に観れる!ということでチケットを購入した時点=約半年前から非常に心待ちにしていたこの完売ギグなのだが、始まりからしてちょっとしたドラマ付きだった。

3月のSXSWで新装ライヴもヴェールを脱ぎ、続く米テレビ出演時の映像他もチェックしたりして、いい案配に期待&好奇心が募っていた。しかしライヴ当日(=5月20日)を迎えて「そろそろ家を出るか」と準備していた時に「今夜のショウは延期になりました」の緊急メールがチケット代理店ウェブサイトから到着。会場は北西ロンドンのカムデンで、自分の暮らす南東ロンドンからは最低でも1時間の遠さ。急いで家を出なくて良かったわいと思いつつ(いまだ旧式携帯を使ってるんで、外出先からメールをチェックできないのだ:トホホ)、ウェインに何か起きたのか?と不安にも襲われた。
そのウェインへの懸念というのは、「The Terror」リリース前後に登場したもろもろのインタヴュー/報道に根を張っている。熱心なファンの方なら既にご存知だろうが、それらの報道から察するに、壮絶に悲しく美しい新作はミシェルとの別離が背景になっていた模様。自分の中でミシェル&ウェインというのはキム&サーストンと並ぶ「米オルタナ界のプレミアおしどりカップル」であり、そのプライヴェートとクリエイティヴ•ライフをがっちり繋ぐ稀な絆を維持してほしかった……というのが本心だったりする。

もちろんカップルの内情には第三者がおいそれと立ち入れない複雑な事情があるもので、外部から安易に推し量ることはできない。しかし1989年から始まるミシェルのウェインおよびリップスへの献身ぶりを思うと、彼女が去ったという事実は自分にとってある意味メンバーがひとり減ったに等しいショックだった。
それだけならまだしもあまり信じたくないゴシップも見かけたし、ぶっ飛んだ感性で知られる人なので奇行も看過されがちとはいえ、ここ2、3年のウェインの動向や振る舞いにはどこかタガの外れたような危うさを感じていた。いわゆる「中年の危機」を迎えているのかな?というフシもあるにせよ、それだけではない、何かもっと大きな不安のシグナルが発されているような……。
そんなところにライヴ延期のニュース(自分のこれまでのリップス•ライヴ体験では初!のアクシデント)が飛び込んでびびらされたわけだけど、キャンセルの理由はウェインの急病=風邪だった。
鼻血まじりの鼻水写真を本人がトウィートしていたくらい症状はひどかったようだが、翌日のロンドン公演2日目は予定通りにゴーして続くツアー日程も消化、BBC6ミュージックの「結成30周年記念スタジオ•ライヴ」特番も無事オンエアされ(と言っても鼻声で番組中も咳とくしゃみを頻発していて痛々しかったが)、この日のショウも速やかに1週間後に振替と相成った。心配だの不安だのはマイ取り越し苦労に過ぎなかったわけでほっとしたけど、ウェイン、ますます痩せているのでもうちょっと食べてください。

振替公演はイギリスの公休日に当たり、晴天にも恵まれたので早めに並ぶのが無難と勇んでカムデンに向かったところ、入場待ちの行列は予想していたよりも短かい。今回の欧州ツアー英日程はロンドン&ブライトンとコンパクトだったので、英各地からはるばる駆けつけようとしていたファンはチケットを払い戻しするしかなかったのだろう(でも、この晩も座席エリアに若干空きはあったもののスタンディングは完売だったと思う)。
前座はテキサス:オースティン出身の6人組というBlack Booksで、キーボード2台の厚みとリヴァーブでどっぷり泣き泣きのギター、ダイナミック&ワイドなドラムで聴かせる力のある連中だった。ジャズを経てロックに移行したという背景に(同じくテキサス発)ミッドレイクが思い浮かぶテクニシャンながら、フォーク味よりもエモ〜90年代英バンド(初期レディオヘッド、ザ•ヴァーヴあたり)を思わせるスケール感のあるサウンドは最近あまり耳にしないだけになかなか新鮮だった。

しかしオープニング•アクト出演の時点で既にステージにそびえ、ライヴ中も否応なく目を引いたのが今回からウェインが使っている銀色のお立ち台。

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仕込みに必死なクルー達

仕込みに必死なクルー達

ピラミッドの側面にシルヴァーのお椀を重ねたごとき美しくも異形なこのお立ち台にクルー達が電球を仕込んだ何十本ものチューブを巻き付け、更にステージ前方に並べられた銀のお椀にもその触手を絡めていく。恐らく(これまでの他のステージ装置の多くと同様)これらもウェイン工房で作られたDIY小道具なのだろうが、設営の細かいマニュアル作業ぶりには頭が下がる。
にしてもここ数年のオレンジあるいは白を基調とするポップなステージ•デザインとは異なるメタリック&有機的なヴィジュアルに「うぉぉ、いよいよ新たなリップスに会える!」と、セッティングを眺めているだけで興奮がふつふつわき上がってしまう。イメージとしては(ウェインの火星人コートも含め)「Christmas On Mars」が真っ先に浮かぶのはもちろん、H•R•ギーガーもちょい思わせるSF調。映画「The Fifth Element」の以下の名場面を思い起こしもした。

あるいは、このスタジオ•セットのノリですね。

ステージ両脇を占めるにぎやかな着ぐるみのファン&コスプレ集団は姿を消し、ウェインの衣装もシックなスーツからスペース•ブルーのコートに変更、例の「宇宙泡」のワンダフル&ダイナミックなエントランスも今回はない。しかし「Yoshimi」期ツアーから登場した「宇宙泡」は既に10歳であり、まるっきりコピられるようにもなった(↓以下のビデオ参照)ので、元祖であるリップスとしてはここらでいったん引退させて新次元のアイデアに挑戦するいいタイミングなのかもしれない。大人です。

というわけでライヴ開始前からステージの面妖さに気圧され気味だったが、肝心のショウはそれ以上の衝撃&新たな刺激をガンガンもたらす圧巻の内容だった。MC(なぜかスペイン語)の短い前口上に導かれ、ものすごい量のスモークを泳ぐようにしてメンバーが登場。目の下にグリッターなメイクを施したウェインは、奔放な巻き毛も含めマーク•ボランの現代版か。お立ち台のせいで視界が遮られ残念ながらマイケル&クリフはまったく見えないが、ステちゃんとデレクのお揃いボーダーTシャツ姿はばっちり。うーむ、次に観る時は①前方で観る日と②引きでステージ&バンド全体像を満喫する日、の2公演制覇がマストかもしれん。

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キック•オフはやはりこれでしょう!納得!!な最新作の1曲目「Look…The Sun Is Rising」から。お立ち台に上がったウェインが赤ちゃんの人形を胸に抱きながら開口一番ヨーコ•オノばりの奇声を発し、スティーヴンのギターが重い電ノコのリフで空間をザクザク切り刻んでいく。クリフの落雷ドラムに合わせ赤と青の照明が交互にフラッシュする場内はさながら天然の3D眼鏡状態(?)で、サイキックな音と光のブリザードに感覚が圧される。「Embryonic」期ツアーでも足下を掬う不穏な混沌は現出していたが、今回はよりシャープな危機感を伴ってはらわたに響いてくる感じ。
ある種の獰猛さと全身が総毛立つようなテンション、そして音源を生に移し替えるライヴ•ユニットとしての見事な手腕(PAも秀逸)だけでも、彼らがニュー•アルバムで再び新たな次元に突入したことを実感させられる息をのむオープニング。しかし続くタイトル•トラック「The Terror」で、不安がマックスに達し恐れに転じる展開は早くも序盤のハイライトだった。
荘厳に降り注ぐシンセと吹き上げるスモーク/逆光とが白熱するミドルの演奏は圧巻で、そのただ中ですがるように人形を抱きしめ佇むウェインの姿はフリードリヒの描く旅人のごとくとても孤独でもろく、悲しく映る。飛び交うカラスの大群を思わせる場内に舞い狂う黒い紙吹雪も、曲の放つ悲しみと喪失感に葬列のような痛みを添えていた。
リップスが絵になるライヴ•バンドであることは重々承知しているつもりだが、このサウンド/ヴィジョン/エモーションの合体は全身で体験する映画だった――と、筆で書くのはたやすい。とはいえそれをこうしてライヴ•パフォーマンスのドラマとして具現化するのは並大抵のことではない。ウェインの心と目とのシンクロには喝采を送るしかなかった。

そのウェインのヴィジュアル念力はLEDスクリーンはもちろん可動式ライト他も援用してのパワフルなライト•ショウを造り出していて、強烈なストロボ効果で女性客のひとりが(おそらく)てんかん発作を起こしライヴが一時中断するほどだった。しかし目だけではなく、心/耳の連結を仕切るマジカルな音楽的キー•パーソン:スティーヴンがいるのがリップスの強み。
喉を痛めていたためだろう、ウェインのヴォーカルが常以上にすり切れていてあわや不発?な「The W.A.N.D.」もエッジを増したリアレンジ&スティーヴンのギター•ワークで持ちかえしたし、「プレイするのは1996年以来」とのコメントに続いた「Unconsciously Screamin」と「Moth In The Incubator」のオールド•ファンは歓喜するしかない2曲も、ロナルド&スティーヴンの黄金タッグを彷彿させるバーストな出来(クリフのドラミングも痺れる!)。「Jesus Shootin’ Heroin!」(いいねー)「Be My Head!」(いぃぃぃねー)と観客からリクエストのかけ声が飛び交う光景も、非常に泣けました。
リップス作品にはどれも愛着があり、「The Soft Bulletin」以降のシンフォニックな重奏ポップやエレクトロ、スペース•ロックはいずれも素晴らしいと心底思っている。しかし90年代の彼らが放っていた、(とりわけ「Transmissions」と「Clouds Taste…」に顕著な)ツェッペリンとボウイが火星のガレージで強引に結合したようなギター•ロックンロールの野生はやはり唯一無二。その牙のDNAは、今もスティーヴンの中に引き継がれている。

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最新作からのトラックや古い曲がメインになった前半を折り返したのは「Race For The Prize」で、スロー•テンポの噛み締めるヴォーカルに寄り添ってお客がこの晩最初のシンガロングを開始。一体感をじわじわ煽るウェインの掌中に場内が吸い込まれるぅ――と思った瞬間堰を切ったように本演奏になだれこみ、背景に虹の橋がかかる光景は鮮やかだった。もっと長くプレイしてほしかったディープ&プリミティヴなコズミック•ジャム「Butterfly…」は個人的にライヴ後半の中核だったが、はまりすぎ!なボウイのアンセム「Heroes」でリフト•アップ。この曲のJimmy Fallon出演時の演奏はひどかったけど、今回はちゃんと聴けるヴァージョンになっていてほっと一安心であります。
この陰/陽〜ヘヴィ/ライトというコントラストは、ドリルン•ベースばりの重低音が効いていた「Turning Violent」と大団円「Do You Realize??」まで繰り返された。新作は1枚としての完結度が高い作品であり、ライヴの前には「アルバム1枚丸々演奏+後半は人気曲という構成がベターではないか」と考えてもいた。しかし壮絶なライト•ショウ(目の弱い方はサングラス着用もありかもしれません)と音の響(狂)宴はノンストップだと神経に負担が大きくもあり――「Your Lust」とか、ぜひ生で聴きたかったけどプレイされず残念な曲もあったものの――慎重にセレクトされた楽曲を合間に挟むことでガス抜きするスタイルのこのショウは正解のバランスだった。
アンコール1曲目「Silver Trembling Hands」の凶暴なソニック•アタックで観客を呆然とさせたところに、返す刀でエピックなパワー•バラッドと化した「All We Have Is Now」が癒す。そのリップスらしい強いメッセージを胸に刻ませてもらったところで、最終曲「Always There…」で再びブィーンとアクセルがかかる。ウェインの熱唱とバンドの全開の演奏が、皮膚を振動させる音の上昇気流を生み出す。その迫力にあんぐり口を開けているうちに再びスモークと黒い紙吹雪が視界を遮り、フィニッシュではあれあれ、いつの間にかウェインが消えていた――もちろんお立ち台から降りたってだけの話なんだけど、ドラマチックなショウにジャストな終わり方なので、いっそのことイリュージョニスとか何かを雇って本当に「消える」仕掛けをやってほしいくらいである。

「The Terror」は素晴らしい作品なので、音楽そのものに不安は抱いていなかった。しかしあの作品のぶっ飛びぶりをライヴに持ち来らすには、ある意味彼らが過去10年のショウで培ってきた蓄積を振り払う必要があったと思う。
その10年がバンドのファン•ベースを過去最大に広げた歳月でもあるのを考えれば、リスクは大きい。だがほぼ完全にステージングを刷新、新旧取り混ぜてバラエティ&フレッシュさを増した選曲で聴かせたこのショウは、彼らの一貫した機動力が変化〜克己への飽くなき挑戦であることを告げていた。
そんな風に結成30年を迎えるバンドは決して多くないし、それだけでも脱帽。だが何より、「リップスのファンで良かった」と心の底から誇りに思える、そういうライヴを今回も見事にやりおおせてくれた点に深く感謝している。3年ぶりになる必見!の10月のジャパン•ツアーまでにはショウももっとこなれているだろうし、少なくとも「Race For The Prize」と「Do You Realize??」の2曲はウェインの熱意に応えてビッグに合唱できるように、ライヴに行かれる方は今から練習してくださいませ〜というわけで、最後にセット•リストを。

1.Look…The Sun Is Rising
2.The Terror
3.The W.A.N.D.
4.Unconsciously Screamin
5.Try To Explain
6.Race For The Prize
7.Moth In The Incubator
8.Butterfly,How long It Takes To Die
9.Heroes
10.Turning Violent
11.Do You Realize??
Encore
12.Silver Trembling Hands
13.All We Have Is Now
14.Always There…In Our Hearts

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Mariko Sakamoto について

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