Weary of Rock T:3―ロックT無常

というわけで、ここのところめちゃ暑いぞロンドン!熱波にあぶられてま〜す!なうだる気分をマーサ&ザ•ヴァンデラス不朽の名曲とラヴィン•スプーンフルの(これまた)不朽な名曲に代弁していただきました。

夏がマジに厳しい日本の都市部に較べればロンドンの夏はマイルドな方ではあるし、湿度も低い。夕刻には風が出て気温が下がるので、「熱帯夜」に悩まされることはまずない。しかし6月末から気温が上昇、7月はほぼ晴天&日中最高気温も連日30℃近い状況にはさすがにノビ気味だったりする。
というのも、イギリスの一般家屋のほとんど(金持ちの家は別でしょうが)には、冷房設備=エアコンというものがまず備わっていない。そもそも、こういうアジア人にとっては「夏らしい暑さ」というのが伝統的に珍しいヨーロッパ圏なので仕方ない。しかしピーク時の夏の暑さ、年々高まっている気が……地球温暖化の影響なのでしょうか?

とはいえ一時的な環境のブレ――夏の暑さは一時的なわけで、それよりも基本的に長い冬期の暖房確保=セントラル•ヒーティングの方が重視される――に合わせてインフラを急に変化させられるほどフレキシブルじゃないのが歴史の長いこの国。エアコン無し住まいの人間にとっては夏の逃げ場でもある公共交通機関(バス、地下鉄、電車)すら時に蒸し風呂と化すし、ローカルなパブやカフェ、コンビニ•レベルのお店(さすがにスーパー•マーケットの多くは冷房を導入していますが)だと、いまだに店の片隅で扇風機がぼんやり眠たそうに回っている程度のアナログぶり。
先日も知人のお伴でストーンズ@ハイド•パークを観に行ったところ、まず自宅からハイド•パークに向かう1時間弱でへばってしまった(笑)。ロンドンの地下鉄車両は日本に較べて狭苦しく、しかも基本的に観光客の多いウェスト•エンド路線だけに車内は混み混み。プラットフォームが近づくたびにちょっと涼しくなる限定冷房(?)のシステムこそあれ、ドアが開いて目的駅に降りた瞬間「おー、脱出できて良かった!」と感じずにいられなかった。
しかしハイド•パークも負けていなくて、ここんとこ連日イベントをやってたせいもあるだろうけど、踏みしだかれた芝生がすっかり藁色に枯れているのはなんとも可哀想。日本からはるばるやって来た同行知人も「暑いっすねー、カリフォルニアみたいですねー」とびっくりしていたほどで、水不足が心配になった。

しかし連日家でじっとしているだけでは汗に溶けるだけなので、暑さ除けも兼ねて「Pacific Rim」鑑賞に足を運んだところ、映画館そのものは弱冷房で快適だったものの、逆に帰りが大変だった。一本電車を逃して30分待ちだったので、じゃあ何か水分補給……とカラカラに乾いた午後の日差しの中何軒かお店を回ったところ、どのお店も回転率に追いついてないようでドリンクが冷えてない(笑)。諦めておとなしく電車を待つことにしたが、これが満員電車のノン冷房。2駅乗るだけだったんで我慢できたけど、終点まで向かうお客の汗ばんだ肌を観ているだけで追加汗がにじむようだった。

ちなみに「Pacific Rim」は大いにエンジョイしました。そもそもギレルモ•デル•トロは大好きな監督なので安心して身を任せて観たわけだけど、今回も期待は裏切られなかった。特撮や怪獣、漫画やアニメに日常的に慣れた日本人としては突っ込みどころがゼロではないし、アクション•シークエンスの処理&ヴィジュアルに顕著なデル•トロ印がさすがに「マンネリ」にもなりつつあるかな〜との感は否めなかった(「Hellboy」シリーズ、特に「Golden Army」を参照されたし)。
あと、恐らく上映時間の制約が大きかったのだろう、メインの登場人物達の背景ストーリー/心理描写が必要最低限に抑えられていてふくらみが足りないのはなんとももったいなかった……けど、それは大局からすれば細かい話。ハリウッド娯楽作という普遍的なフィルターを通した、そもそもニッチなジャンルのモダナイズ/オマージュ/SF文化のマッシュ•アップという根本的な矛盾を背負った作品としては秀逸だと思う。
ガンダム好きとしては(恐らく実現するであろう)「PR」続編においてイェーガーのパイロット達がニュー•タイプに目覚める……なんて展開をつい期待してもしまうわけですが、個人的にひいきな俳優(=ロン•パールマン、イドリス•エルバはもちろんだけど、もっとも嬉しかったのはチャーリー•デイ&バーン•ゴーマンのコンビ!ナイス•キャスティング!)が次々スクリーンに登場するだけでもニコニコ。大画面で浴びるように観たい作品なので、劇場公開中にもう1回観に行きたいもの。

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「暑さ:2013」の文句をダラダラと垂れましたが、こういう状況だと夏のユニフォーム:Tシャツを思い出す→→ロックT話へ……という枕です。二の腕のたるみが気になってなかなか着る勇気の出ないTシャツだけど、さすがにこう暑いとTシャツのお世話にならざるを得ない。あージレンマ。
ちなみにイギリスにおける「二の腕のたるみ」に該当するスラングが、「Bingo wing(=ビンゴの翼)」。これはビンゴというゲームがもっぱらお年寄り/シルヴァー世代の娯楽と認識されている国じゃないとピン!と来ない形容かもしれないけど、要はビンゴで勝った際に両腕を上げて「万歳、上がり〜」の喜びを表現する女性プレイヤー達のプルプル震える二の腕のイメージですな。年齢/性差別の匂いすら漂う非常に残酷なフレーズではあるものの、だからこそ的を射ているっちゃ射ているというか。
ともあれ、今回のロックTは「似非ヴィンテージ商品」。お題はドアーズとイエスで、いずれもアメリカのアパレル•メーカーであるTrunk Ltdの発売したアイテムです。買った時期は、たぶん2004年頃だったかと。わーお、ほぼ10年前ですね。

トランクという会社は、いにしえのロック•コンサートのアート•ワークやアメコミのイメージ商標にお金を払い、高めの素材を使ってプレミアムを付けた上で売るのが看板のブランド。エッジに欠けるセレブ達――しかも、そのコンサートが行われた頃にはまだ生まれてもいなかったであろう世代も含む――が、ピンク•フロイドやスプリングスティーンのツアーTシャツあるいはタンク•トップを着て「ロック調」を気取る姿をゴシップ•メディアで見かけた人はゼロではないと思うけど、そのいくつかにトランクの商品は混じっているはず。
昔から「セレブに衣類•アクセサリーを無料で贈り、身につけてもらうことで宣伝効果を狙う」=いわゆるエンドースメントというのはファッション業界の常套PR手法だったわけだけど、ネットの発達で(A級からZ級まで)有名人のパパラッチ画像/映像が溢れ返るようになった00年代以降は特に、「●△×ちゃんの着ているドレスはどこで買えるのか」「◇※#さんのハンドバッグのメーカーは?」なんて細かい情報も流布するようになっている(もちろん、そのセレブのパブリシスト、あるいはスタイリストがメディアに情報を流しているって面もあるだろう)。歩く広告塔。
このTシャツに出会ったのも、モノホンにファッショニスタな友人――そのハードコアぶりは永遠にリスペクト!です――がネットで見かけた写真を手がかりにもりもりと情報を探り、このメーカーの存在を教えてくれたのがきっかけだった。

ロックTには色々あるけど、いざ実際に古着屋でヴィンテージを探すのはかなり大変だったりする。古着ゆえにまずもってサイズに融通が利かないし、「着古した感じ」どころかマジに生地が擦り切れ気味っていう、「着倒した」ケースもある。たとえ好きなバンドのTシャツに巡り会っても、モノホンの「当時のシャツ」は価格も高めだし、デザインや色はもちろん襟ぐりだの袖の長さ、素材といったディテールがどうもピンと来ない……ってケースも多々。
そういう意味では、昔から「本物」にあまり執着のない性格もあるだろうけど――レコードにしても、盤質が良くてちゃんと聴ければセカンド•プレスでも再発でも気にしない=「初回プレスのオリジナル盤」にはさほどこだわりません――今回紹介するTシャツのような「レプリカ」、あるいはバンドや音楽にヒントを得た「オマージュ」Tシャツは好きだったりする。基盤になるデザインやロゴは過去にあるレトロ趣味なアイテムなわけだけど、自分個人の体型あるいはライフスタイルに合わないモノを無理して着る必要はない。それより今の感性を通して再解釈された過去をエンジョイする方がはるかに楽だろう。

このTシャツは、自分の持っているロックTシャツにおけるそのいい例だと思う。肌ざわりのナイスなコットンは薄過ぎず厚過ぎずのいい加減だし、適度にシェイプされているのでシャツの下に着る等の重ね着も可能。真っ黒ではなくて墨汁をちょっと薄めた軽さのある色にしても、多少あらかじめ洗ってあるのだろう、適度な色落ち感がある。パイピングは好きじゃないけど、控えめなのでまあ許します。60年代、あるいは70年代当時には存在しなかったであるスマートなTシャツなわけだけど、存在しなかった何かを勝手に再編集して作り上げることのできる、色んな意味で現代らしいっちゃ現代らしいアイテムです。

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他にもいくつかオプションがあったにも関わらずイエスとドアーズを選んだのは、イエスについては00年代初頭にたまたま「目覚め」があったゆえ。プログレは若い頃の自分にとっては長らく仮想敵みたいな存在で、一部(クリムゾン、ピンク•フロイドあたり)を除くと真面目に聴くこともなく、そのイメージ=「アカデミックでテクニック重視&もったいぶったコンセプトの重苦しさ/時代性」ゆえに遠ざけていた。偏見ですね。
しかしジョン•フルシアンテ&ヴィンセント•ギャロに触発され、手始めに「イエス•アルバム」、そして「こわれもの」「危機」と聴いてみて、やっと何かがクリック。もちろん仰々しいコンセプトだの大作主義〜クラシック音楽志向にはいまだに抵抗があるものの、随所で追求されている白人ロックなりのファンキィさみたいなものと複雑なアレンジの生み出すカタルシス、そしてプロダクション/演奏におけるテクニカル•レベルの高さ――これが概して高いので、60〜70年代ロック作品には聴くべき点が尽きないわけです――には、ある種目ウロコものの新鮮な感動があった。

Tシャツのモチーフになっているのは79年の米ツアーで、回転ステージを使った大掛かりなセットが話題だったらしい。でもやっぱり主役はロジャー•ディーンの「YES」ロゴですな。とはいえ「危機」以降のイエスはまともに聴いていないし、EL&Pとかジェネシスは挑戦したもののいまだにピンと来ない……ので、自分はそもそもあまりプログレに向いていないのかもしれない(トホホ)。しかしジョン•アンダーソンのソロ「Olias Of Sunhillow」のように昨今のUSインディ•ポップと聴き較べてもあまり遜色のない「摩訶不思議アルバム」もあったりするし、イエスというバンドの中には自分の引っかかるサムシングの種があるようだ。

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ドアーズは昔から好きなバンドなので、リザード•キングに敬意を表してのチョイスです。ジム•モリソンの野性的なセックス•アピールが前面に押し出された分かりやすいデザインには、着るのに若干の抵抗を感じる――けれど、ドアーズの文字通り「顔」なので仕方ないですね。
彼らは一時代を画したバンド=ロック•アイコンであり、特に自分のような浅い人間があれこれ書く必要もないだろう。しかし個人的にこのバンドの素晴らしさは、年齢を重ねるにつれて聴きどころが変化している点にあるんじゃないかと思っている。若い頃は初期作品に夢中だったけど、ここ数年ドアーズ作品の中でもっとも頻繁に聴いているのは、以前は「退屈や」とほったらかし気味だった「モリソン•ホテル」「L.A.ウーマン」だったりする。
その理由には色々あるんだろうけど、そもそも主観的な話なので分析は面倒くさいゆえに放棄している。でも、レコードに付与される「記録/複製」アートの性質は、記録された当時の状況を封印するのはもちろん、同時に過去から未来に向けて送られたタイム•カプセルという意味合いも兼ねていると思う。そのタイム•カプセルは色んな時点で、色んな人の手で開けられるわけだけど、そこに作り手と受け手との間に何らかの繫がり――それは一瞬の共感でもいいし、「この曲は自分の物語だ!」と感じるほどの全体的な把握でもいい――が生まれれば、その作品はアートとしての任務は果たせてるってことになるんだろう。

先に書いたように、ドアーズのオリジナル•アルバム6作を歳月を経ながら回転させ、フェイヴァリットを刻々と変化させつつ今なお聴き続けているのも、それぞれの作品に備わっている「自分が霊感を受ける何がしか」を発見するタイム•カプセル的な持続力が彼らの音楽にあるからじゃないかと思う。もちろん2、3年で色あせる音楽にハマるインスタント&バブリーな喜びというのもあって、それはそれで好きだ。けど、聴き続けることで対象に対するこちらの解釈が変化していく音楽に付き合う喜びというのもある。ドアーズは、自分にとってそんな音楽を作ってくれたバンドのひとつだ。

最後に、先頃世を去ったレイ•マンザレクに合掌。バッハをアレンジしたこの天才的なオルガンのバロック味、エヴァーグリーンです。

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Mariko Sakamoto について

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