Merchandise@Yard Party/17Aug2013

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ポップ•ファン向けのVフェスティヴァル、モダンなヒッピー向けのグリーン•マン•フェスティヴァル……と英各地で人気の音楽フェスが盛り上がっていた先週末だったけど、東ロンドン:ハックニー•ウィックでもアート•フェスティヴァル=Hackney WickED Art Festivalが開催され賑わってました。

運河を中心とするこのさびれたエリアは、倉庫やほったらかしの建物が多い、いわば工業地帯。それだけに広いスタジオ•スペースを求めるアーティストやギャラリー、安い住居を求める学生やスクワッターを寄せ集めているようで、トレンディなショーディッチ/ドールストン/ストーク•ニューイントンともちょっと違う、オルタナなロンドンを感じさせる地域になりつつある。
とはいえこのフェス――名前はなんとなく知っていたけど、行ったのは今回が初めてです――も今年で6回目ということで、最寄駅のプラットフォームから見渡したところかなりの数の人々がストリートを徘徊していて、なかなかの人気ぶり。オリンピック•スタジアムも視界に入る場所柄だけに今後もりもり再開発が進むのだろうし、刻一刻と変化する東ロンドンの「今」があります。

フェスの中心ポイントと言えるQueen's Yard。奥に見えるのがバスカー•ステージ。

フェスの中心ポイントと言えるQueen’s Yard。奥に見えるのがバスカー•ステージ。

というわけで、まずは軽くフェス全体をチェックしてみる。無料で体験できるアート•ワークショップや工房、ギャラリー•ツアー、ポップ•アップ•ショップ/バー/マーケット等が中心で、随所にDJイベントやバスカー•ステージ、即興のストリート•ミュージックといった音楽も鳴っている。
もともと普段から人通りが少ない工業地帯なだけに、この週末を歩行者天国として解放したらしい。ポイント各所に警官やセキュリティ、ガイド役のスタッフこそ立っていたものの、基本的に参加者は音や食べ物の匂い、人の群れ/動きにつられて=自分の嗅覚を頼りにあっちこっちフラフラできる仕組み。このユルさとフェス•サイトそのものの広さがいい案配に人ごみを拡散していて、お祭りやフェスにありがちな「混んでて一歩も動け〜〜ん!」な苛立ちが無かったのは実にナイスでした。アメリカのストリート•パーティっぽい。

とはいえ集まるところには人が集まるもので、今回楽しみにしていた東ロンドンの地ビール醸造所:Crate Breweryのバーは激混みだったので諦めました。ビール……というよりも、基本食いしん坊&空腹を抱えた身としてはこのバーの評判のピザを食べたかったんですけど!(怒)

仕方ないのでサイトのあちこちに散らばる屋台飯にすがりつくことになったものの、結果オーライ。①手作りチョリゾのサンドイッチ、②ガーナ料理(スパイシーなイワシのシチュー)のどっちも美味でした。
とはいえ①に関しては、去年初体験した北アフリカ産のソーセージ:マーゲズ(=羊肉のソーセージ)の旨さにもたらされた「ガビーン!」級の衝撃には及ばなかったな〜。しかし自分的に目ウロコものだったのが②で、これまた初体験だったんだけども相当な美味。原料(プランテーンや唐辛子)やスパイス、味付けの原理はカリビアン料理にも相通じるけど、舌に残りがちな甘みを抑え、チリのみずみずしい辛さが広がるのはなんとも爽快だった。
ヴェジタリアン向けのササゲ(=Black Eyed Peas)の煮込みも美味しかったし、ここしばらく凝っているマレーシア料理とアメリカの塩水マリネ法の世界に加え、ちょっと探究してみようかと思います、ガーナ〜西アフリカ料理の世界……って、料理番組の見過ぎか? たぶんそうです。

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グルメ話に脱線してしまいましたが、肝心のライヴねたはこれから。このアート•フェスに連携する形で開催された、Upset The Rhythm主催のミニ•フェス:Yard Partyで最終日に登場したMerchandiseのショウの話です。
ちなみに、イギリスにもマーチャンダイズという名のボルトン出身のデュオがいるんだけど、ここでの話題はフロリダ:タンパを拠点に活動するDIYポスト•パンク〜ゴシック•ロック•バンド。決してお間違いなきよう。
結成は2008年で、既にアルバムやシングルを自主リリース済み。PitchforkやStereogumといった早耳サイトでも話題になっているそうで……ちょうどこの英ツアー向けのプロモーション•インタヴューを見つけたので、彼らのバイオに興味のある方はこちらをチェックしてみてくださいませ

あまりマメに音楽ブログをチェックする人間ではないので、このバンドの名前を知ったのはUpset The Rhythmのイベント告知を通じて。試しに今年春にNight Peopleからリリースされた最新作/5曲入りミニ•アルバム「Totale Nite」を聴いてみたのだが、これがもうキター!って感じの素晴らしい内容(しかもマスタリングはソニック•ブーム先生が担当しています)。
ヴォーカル/ギターのカールソン•コックスの歌唱法ゆえに、このバンドの比較対象として真っ先に上がる名前はザ•スミス/モリッシー。なんだけど、ザ•スミスに留まらずザ•キュアーやジョイ•ディヴィジョン、エコー&ザ•バニーメンら1982〜84年頃の英ポスト•パンク、ゴス/ポジ•パン〜ネオ•サイケのサウンド話法(ダイナミックなベース•ラインを軸に、空間を感じさせるサウンド•スケープを変幻自在なギターが舞い飛ぶ)を見事に消化しエモーショナルな表現に高めていて、しかもこれが完全に自宅録音というから驚かされる。

というわけでこの初の「生マーチャンタイズ」経験を楽しみにしていたわけですが、このミニ•フェスの他の出演バンドも面白かったのでいくつか寸評を。

Silver Fox

Silver Fox

その①:Silver Fox。オール女の子なこのバンドは、はるばるニューカッスルから参戦してくれた。とても若そうな見た目(ベースとギターのふたりは、もしかするとまだ10代?)&シャッグスが黒づくめに赤い口紅というベティ•ペイジ系のファッションをまとったような佇まいは面白くて、どんな音なのかな?と興味をそそられる。
そのシャッグスという第一印象はあまり的外れではなくて、お世辞にも演奏の上手いバンドではない。しかしヴェルヴェット•アンダーグラウンドを想起させる単純なリフを必死に演奏する彼女達の姿はパンク=コードがいくつか弾ければ誰でも音楽を作れる……という原点を思い起こさせたし、「型」を気にせず本能に任せてプレイする姿はこれまた(基本的に男ロジックが幅を利かせるロックにおいては「部外者」な)女の子らしくて好感がもてた。今の段階ではガレージ•バンドな勢いで突っ走っているけれど、ここからレインコーツのように幅広く影響を吸収して、初期衝動だけではないサムシングに届いてほしいものです。

Ex Easter Island Head

Ex-Easter Island Head

その②は、リヴァプール出身というトリオ:Ex-Easter Island Head。Silver Foxとも、あるいはMerchandiseともまったく毛色の違うバンドだったけど、そのイベントとしての振れ幅の広さは自分的には大いに○です。かつ、イギリス国内にはまだまだこういう面白いバンドが待機しているのを確認できてニコニコ。ロンドンばっかじゃないんですよね。

彼らは前衛インスト•アンサンブルで、基本的に全員が打楽器奏者という風変わりな編成。バッキング•トラックを使いつつ、ソリッド•ボディのギター(エレキ&ベース×4本。コーヒー豆の空き缶やチャイム、カウベルも効果的に使われてました)を弾くのではなく打楽器のように叩く、即興も交えてのスリリングなプレイが見物だ。音楽的には、ガムラン•ミュージックの発想が近いと言えるだろう。
しかし3人とも実に演奏が達者な人達で(楽譜も使っていて、たぶん音楽学校に行ったメンバーも含むのだろう)、ギター弦の振動やボディの反響を利用して生み出される緻密なポリリズムをクライマックスへ押し上げていく様は圧巻だった。ドラム/パーカッション奏者もめっちゃ上手かったな。

オーディエンスもその独創的でありながらダイナミズムもばっちり備えた演奏に打たれたようで、アンコールの拍手が鳴り止まない光景は「彼らがトリでも良かったのでは?」と思わせるほど。がしかし、この日の行程スケジュールは元EmeraldsのMark McGuireの出演時間が繰り上がる(お目当てのひとつだったのに……おかげで観そこねました!ブー!!)等ちょっと乱調気味だったこともあり、バンドはそそくさと機材撤収に取りかかったのでした。ぜひ、またライヴを観たい集団です。

Merchandise

Merchandise

マーチャンダイズの出番が近づくや、それまでの場内の雰囲気=「アーティ&前衛なアクトを腕組みしながら楽しむヒップスター達(30代中心)」というノリが変化。この会場=The Yardは半円形のシアターなので座って観ることも可能なんだけど、NME読者系のギャル集団や若い男の子達が前方に詰めかけてきてすっかりライヴ•ハウス状態である。もっとも、このバンドの奏でるロック•ミュージックのポテンシャルは非常に高いし、若い子達がそこに何かを感じて反応しエキサイトしているのを目の当たりにできるのは嬉しい話。

このバンドはデュオ→トリオ→デュオ→現在の4人編成と様々なフェーズ/それに伴う音楽的な変化とを潜ってきたそうだが、核になるのはカーソン•コックス(Vo/G)とデイヴィッド•ヴァサロッティ(G)の2人らしい。両者ともギター•ストラップにバッジを付けているので目を凝らしてみると、カーソン君はデッド•ケネディーズ、デイヴィッド君はスロッビング•グリッスルのロゴ•バッジだった。
先述した最新作「Totale Nite」はメロディックで80年代北部イングランドでネオ•サイケ色の強い作品ながら、彼らはもともとDIYパンク•シーンから出て来ており、その気風はまだしっかり残っているようです。

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ライヴの開始と同時に、背景のスクリーンにサイケデリックな映像(水に落としたインク?とか、ソラリゼーション加工された抽象的なイメージ)が流れ出し、照明の当たらないバンドのシルエットだけが浮かび上がる。オープニングだけの趣向かと思いきやライヴ全編その調子で、まだ若いバンドにしては大胆な演出と言える(そしてカメラ小僧泣かせ。フラッシュ写真だとまったく雰囲気が伝わらない……けど、写真をご覧いただければ分かるようにフラッシュ無しだと露出が低過ぎてわけが分かりませんな:泣)。しかし、心のネガティヴな部分を揺さぶるこのバンドの音楽は視覚に邪魔されず没入したい類いのもの。この「闇の舞踏」的演出は、実は正解だと思う。

エピックな美メロ曲は中盤から登場したが、序盤はハードコア/パンクの出自がモノを言う「Anxiety’s Door」他のタフ&ドライヴ感たっぷりのトラック群でぐいぐい飛ばす。彼らは長らくドラム•マシーンを使っていたそうで、今年のツアーからやっと生ドラマーを加えてライヴをやるようになったらしい。
このドラマー氏(顔立ちから察するに、おそらくメキシコ/ブラジルなど南米人と見た)が豪腕で、硬質なアタック感と重量とを兼ね備えたプレイはお見事! ポスト•パンク流の屈強なベースと相まって、身体を動かさずにいられない根源的にダンサブルなリズム隊を形成している。
しかしそれ以上に舌を巻かされたのがリード•ギターで、リヴァーブ、ディレイ他ペダルを駆使して様々な音の色/テクスチャーをサウンドに添えている。これはよく感じることだけど、アメリカのバンドって基本的にライヴで鍛えられているので、「音源はいいのに、生で見たらがっかり」というケースは少ない。マーチャンダイズにしてもそれは同様で、バンド自身が「自分達が何をやろううとしているのか/何をやっているのか」を(たとえプレゼンの仕方はささくれ立っていても)きちんと把握しているのは頼もしい。
ともあれ、このギタリスト氏は何よりもリフ作りのセンスが抜群で、ウィル•サージェントやデイヴ•フィールディング、ジョニー•マーを思い起こさずにいられなかった……と言ってもセミアコ&ジャングリーなジョニーではなくて、「How Soon Is Now?」が(今の)マーチャンダイズに一番近いかな。

ついでにこれも。

ここまで来たらついでにこれも!

ついついノスタルジアに浸ってしまいました。すみません……。しかしマーチャンダイズにたとえばホラーズのような(影響源は近い)UKバンドとはちょっと違う印象を受けたのは、黒コートの近寄りがたさという「イメージ戦略」はあまりなくて、むしろ観客に積極的にコミットしていく「熱い」姿勢ゆえ。フロント•マンのカーソン君は最前列で踊り狂うギャル•ファンの盛り上がりに素直に喜んでいて、ライヴ中も何度か彼女達の中に乱入して踊るほど。その屈託のなさはアメリカのパンクらしくて好感が持てたし、おとなしく見守りがちなイギリス観客をがんがん煽ろうとする気概はまぶしくもあった。

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中盤のハイライトは10分近い熱演になった「Winter’s Dream」で、このバンドのメランコリックなメロディの遡及力が思い切り爆発&ニュアンス豊かなインスト部にも涙です。鬱屈した情感というのは必ずしも聴いていて気持ちいいものではないけれど、彼らはその複雑なグラデーションを丁寧に音で腑分けしていくのに長けていて、奥行きある表現には引き込まずにいられない説得力がある。嘆きの歌をメソメソ歌うのではなく、張り裂けた胸を誇らしくさらしながら聴き手を包んでいく――こういう雄大なロマンチックさを備えたバンド、今なかなかいないだろう。興奮せずにいられなかった。

現行の4人編成になってからのツアーはまだ日が浅く、またミニ•フェスの一部ゆえ正味30分ほどの短いショウではあった。しかし、マーチャンダイズの魅力は凝縮された形でばっちり伝わったので文句はない。唯一残念だったのは「Totale Nite」で非常に効果的に使われていて、このバンドの感性の豊かさを感じさせるハーモニカとサックス(→コズミック•ジャズ味がたまりません)が登場しなかった点だけど、それはいつかまた観れる機会までのお楽しみにしておこう。もっとも、ポスト•パンクからサイケデリアへと腕を伸ばしてきた彼らだけに、次に観る時にはまた新たな進化を遂げているかもしれないけれど。

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Mariko Sakamoto について

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