Arcade Fire(AKA The Reflektors)@The Roundhouse/12Nov2013

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アメリカ各所に続き、ロンドンでもラウンドハウスにて2夜連続開催されたアーケード•ファイアの新作「Reflektor」リリース記念ライヴ。言うまでもなくチケットは即完で「こりゃ観れないだろうな〜」と思っていたけれど、新作取材に関わった縁もあり、ありがたや!レコード•レーベル経由で2日目のライヴ招待枠が舞い込みました(涙)。

アーケード•ファイア人気はここイギリスでも大変高い。ので、色々考えた挙げ句にドア•オープンのちょっと後に会場に到着することに決定。オープニング•アクト無しのショウなので、「メイン•アクトの出る9時頃まで入場せず、時間をつぶす」手合いは少ない=熱狂的なファン達が早いうちからフロアを占領しているだろうし、のんびり構えているとノッポさんファン達に視界を遮られてロクに見えない……という悲惨な結果になりかねないので。

にしても、会場のあるカムデンに着いて色んな意味でガクゼンとさせられた。開場時間そのものが押した上に、自分が入場待ちの列に参加した時点でまだちょっとずつしかお客を入れていなかったこともあり(ネット予約したファンのIDチェックに入り口でやや時間を食っていたのもあるだろうが)、ものすごい長さの行列が形成されているではないか!

その長さ――このエリアに実際に行ったことのある人にしかピンとこない話だろうが――といえば、実にラウンドハウスの背後の丘の上に横たわる巨大なスーパーマーケット:モリソンズの駐車場にまでリーチしかねない勢い。うひゃー。直線距離にしたらどれくいなのかいな? ラウンドハウスから、カムデン•ロックの高架下までは余裕で届いたと思う。
感覚としては、フジ•ロックの入場ゲートから(トイレを越えて)グリーン•ステージに達するくらいの距離にずらーっと行列ができていたっていうか。由緒正しいヴェニューとして人気なラウンドハウスでの「お披露目ギグ」には色々行って来たけども、こんなに長い入場待ちの行列を体験するのは自分にとっては初めてだった。アーケード人気、恐るべし。

場内の様子。フェイス•ペイントでパーティ気分を盛り上げましょう。

場内の様子。フェイス•ペイントでパーティ気分を盛り上げましょう。

場内の一角ではマリアッチ•バンドが陽気に演奏

場内の一角ではマリアッチ•バンドが陽気に演奏

行列の最後尾を求めて人ごみを通過する間に更に驚かされたのがオーディエンスのドレス•アップぶりだった。このライヴそのものが「Fancy Dress Ball(仮装舞踏会)」をテーマにしていて、観客にコスチューム着用を促していたので不思議はない(強制ではないので、自分のように普段着で来場するのも可能)。しかし、「ハロウィーン後〜クリスマス前」という絶好のタイミングもあり、通常のライヴでは見かけない佇まいのお客を多数目撃した。

これからカクテル•パーティに向かう……といった雰囲気の蝶ネクタイ+タキシード姿の若者の集団と毛皮のストールにドレス姿で着飾った女性達、仮面や羽根をあしらった頭飾りで歩き回るファン、アニマル•ワンジーに包まれたコドモ大人等々。晩秋のロンドンの街中で、夏フェスでは珍しくない賑やかな光景が眼前に繰り広げられるのはそれだけでもシュールだ。しかしいちばん「偉い!」と思わされたのは、恐らく手作りと思われるミラーボール•スーツを着て歩きながら、拍手を浴びていたカップル。以下のビデオでそのスーツ(1分52秒)の原型をご確認くださいまし。

ダンス•ビートやシャイニーなディスコ•サウンド=パーティの要素を多く組み入れた「Reflektor」のムードを反映し、お客も開演前からノリノリというか。基本的にシリアスでアーティなバンドであるアーケード•ファイアのギグには常にどこかしらかしこまったムードがあったわけだけど、バンド側がこうしてゲートを開けたことで、基本的にシャイでインディなファン達も日常の自分達のオルター•エゴを解放することができたようだ(でも、筆者の近くにいた巨大なぼんぼりのついたニット帽を被って「ウォーリーをさがせ!」仮装をキメていたある男性客は、背後のお客の視界を遮って大いに顰蹙を買っていました……ドレス•アップの際はマナーもお忘れなく)。
そのお祭りムードにふさわしく、会場内も特別に飾り付けされていた。壁は銀ラメのリボンで覆われ、子供向けイベントで人気のフェイス•ペイントを施してくれるメーキャップ•チームもうろうろ。2階の窓には「ARCADE FIRE」と刻まれたネオン•サインがバーのように灯り、その一角ではマリアッチ•バンドがヒューマン•リーグの「Don’t You Want Me」のカヴァー他を披露……と、一足先にクリスマス•パーティにワープ!です。

さて場内に入ると、こちらも二階席にはリボンがいくつもあしらわれ、頭上に配置されたミラー•ボールを揺らすように(?)DJがサウンド•システムから爆音でロック/パンク/レゲエ/ラヴァーズ•ロックのセレクションを鳴らしている。追悼ムードの濃いルー•リード「Vicious」にはひときわ大きい歓声が上がったし、クラッシュの「Guns Of Brixton」他も受けていた。後にウィンのMCで判明したのだが、この前あおりDJは御大ドン•レッツでした。ロンドンならでの、粋なはからいですな〜。

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開演前のステージは幕で完全に遮断されていて、その幕には「The Reflektors」のロゴが染め抜かれている。あくまで「アーケード•ファイアではなくザ•リフレクターズとしてのライヴ」ってことなんだろうし、先述した観客達のドレス•アップぶりからも感じたように、新作のテーマにはオルター•エゴ、あるいは現代人が多かれ少なかれ実践している多重人格――別にシリアスな病症という話ではなく、たとえばオンラインやソーシャル•メディアで別の人格や匿名アヴァターを使っているって人は珍しくないだろう――があるようだ。そう思うと、いっそアルバム•タイトルを今風に「RFLKTR」にすれば良かったのでは?なんて思いも浮かぶ。いや、それじゃプライマル•スクリームに近過ぎか。

ともあれ、その「アナザー•ライフ」(=ここではザ•リフレクターズという、アーケード•ファイアの「今まであまり表に出てこなかった顔」)を、バンドはこの晩がんばって体現していた。マイケル•セラ(スペイン語上手い!)、ジェームズ•フランコ、ザック•ガリフィアナキスらのカメオ出演も楽しかった「Here Comes The Night Time」のビデオを観てびっくりさせられた人もいただろうけど、ユーモアとFUNがこの晩の命題ということ。
「Neon Bible」、「The Suburbs」期ツアーの重層的なパフォーマンス〜コンセプチュアルなしがらみを自らうっちゃったとも言えるし、基本的に真面目な人達がこういう「おバカ」を敢えてやることの大変さ/苦労を考えれば、この選択はそれだけでも評価に値すると思う。特に気難しいタイプとされるウィンには、大いなるブレイクスルーが必要だっただろう。

1時間30分弱のセットは「Reflektor」から9曲という内容で、オープニングはアルバムのファースト•シングル「Reflektor」。ドクドクと脈打つダンス•グルーヴが会場いっぱいに広がり、パーカッションやギターの細やかなディテールもきっちり再現されていて見事。両腕を上げて踊らずにいられないハウス調なピアノの美しいクライマックス、もっと無限大に引っ張ってくれても良かった――という思いは、その後も何度か感じた。
たとえば続く「Flash Bulb Eyes」のディープ&コズミックなダブ•ビートはそれだけでもご飯3杯はイケる気持ち良さで背骨に響いてきたし(そこからスティール•ドラムのソロで「Neighborhood#3 Power Out」にリレーする展開もナイス)、「Billie Jean」っぽいベース•ラインがセクシーに蛇行する「We Exist」など、実にダンサブル。昔の12インチ•シングルにはよくあった「Extended Version」(DJ向けのミックスで、主にオケやビートを延長したもの)、思わずプリーズ!と心の中で叫んでしまった。

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しかし新作アルバムのショウケースという意味合いも大きいこのギグで、長いジャムに耽るわけにはいかないのだろう。よりロック〜フォーク色の強い、言い換えればこれまでのアーケード•ファイア調を残した曲群:「Joan Of Arc」や「You Already Know」が比較的多く並んだ中盤は、オーディエンスを安心させる緩衝材的な役割を果たしていた気がする。
その中でも秀逸だったのは「Normal Person」で、バンドのエネルギーとフックに観客も大盛り上がり=早くもアンセム化している(にしてもこの曲、デイヴィッド•バーンの左寄りなポップ•センスを見事に受け継いでますな)。続いて畳み掛けたのはこの晩のDJ=ドン•レッツに捧げられた「I’m So Bored With The USA」のスラッシュなカヴァー(1976年に、クラッシュもこの会場でこの曲をプレイしてます)で、拳をあげてアジるウィンを旗頭にポゴりたいオーディエンスがはじけるはじける。

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バンドの硬さがほぐれ、オーディエンスのノリもいい感じにあたたまった後半でもっとも盛り上がったのは、アルバム中屈指の2名曲=「Afterlife」と「Here Comes The Night Time」。前者はクールなサンバのリズムで内側から熱を上げていき、エピックなサビ•コーラスでの一体感は最高。ミラーボールの乱反射をまとってエクスタティックな表情で踊る場内の光景にパラダイス•ガラージもよもや……と感じて涙腺がゆるんだし、この曲は2013年の「Temptation」なのかもしれない(ジェームズ•マーフィーのニュー•オーダー愛の賜賜物でしょうか??)。
アンコール前のフィナーレを飾った後者ではビデオにも登場する巨大なハリボテのお面が出現し、動/静のコントラストを自在に操るバンドと共にスウィングする観客の頭上に「夜会」の締めくくりにふさわしく紙吹雪が舞い飛んだ。

アンコールでは人気曲「Sprawl Ⅱ(Mountains Beyond Mountains)」で合唱が生まれ、オーラスは「Reflektor」の最後のトラック「Supersymmetry」で穏やかな幕引きとなった。このギグで強く感じたのは、「Reflektor」はライヴでこそ映えるアルバムだということ。もちろん毎回プロデュースの質が高い彼らだけに、自宅リスニングにもまったく問題はない。しかしフロア/ステージ双方向のエネルギーの交換が曲のスケールをアップさせていた「Afterlife」など、全身で聴くことで真価が分かる気がする。

とはいえ来年からがっつり始まるワールド•ツアーに向けての一連のウォームアップ•ギグという機能を果たしていたこの晩の彼らには、やはりまだ「方向は分かっているけど、そこにどうチャネリングしていけばいいかは確信していない」という試運転な模索の痕跡も感じられた。
エルヴィスを思わせるウィンのラメ•スーツを筆頭に、残るメンバーもウォー•ペイントを思わせるメイクにヌーディ•スーツっぽいエキセントリックな衣装と、ヴィジュアルのインパクトはなかなか。また、メイン•メンバーの他にハイチ人パーカッショニストを始めとするサポート人員が複数加わった大所帯のステージは、それだけでも壮観だった。多岐にわたる新作アルバムの音世界をライヴで再現するには彼らの助力が必須……ということだし、その混交ぶりに「Stop Making Sense」期トーキング•ヘッズを思い起こしもする(そういや2005年に初めて彼らに取材した際も、メンバーは「Stop Making〜」を自分達のパフォーマンスの影響源のひとつにあげていたっけ)。

とはいえ、音楽とコンセプトの再現を最優先させ、いわゆる正規メンバーとツアー•ミュージシャン/シンガーの間にある垣根〜エゴを払いのけたトーキング•ヘッズに較べ、この晩のアーケード•ファイアのステージングはそこまでドラスティックではなかった。
もちろん「Stop Making〜」は極めてシアトリカルなパフォーマンス3晩分の映像から編集された作品であり、完成度の高さを較べるのは無理な話だろう。だがディスコ•パーティの酩酊、あるいはカーニヴァルの肉感的な喧騒を生み出そうとするなら、これまでの彼らのタテノリな奔放さ――ステージ上を走り回るメンバー等――だけではなく、もっと流動的で自然発生的なパフォーマー同士のインタラクションやジャムがあっても良かったと思う。

――と注文が多くなってしまったが、「頭」からより「身体」へのシフト•チェンジは今後のライヴで実験を重ねながら変化•発展していくことだろうから心配はしていない。たまたまセットからオミットされただけかもしれないが、この晩はアーケード•ファイアのライヴでもっとも盛り上がる定番中の定番曲「Rebellion(Lies)」が披露されなかった。しかしそこに欠落感を抱くことはなかったし、バンドが新たなフェーズに踏み出したのを印象づける、いいライヴだったと思う。

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Mariko Sakamoto について

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