My Favourites―2013 Edition

明けましておめでとうございます。というわけで、昨年を振り返る――遅きに失した、とも言いますが――「2013年:マイお気に入り」リストです。その前に、ちょっと雑感を。

個人的には、「自分にとってのこの年はこれ」という決め手になる新作、たとえば2011年のPJハーヴェイ、昨年のサン•アローおよびスコット•ウォーカーに当たるアルバムがぱっと頭に浮かばない年だった。
もっとも、優れた作品は数多くリリースされたので不作の年という印象はない。抜きん出て衝撃的で「これはっっ!」といずまいを正さざるを得ない、そういう作品との出会いが多くなかった、ということだろう。

となるとどれだけ自分の快適ゾーンにジャストミートな音楽か?というのが判断基準になってくる。その意味で冒頭にあげる3枚(パーケイ•コーツ、カート•ヴァイル、ニック•ケイヴ)は、必ずしも音楽的に「新しく」はない=これまでも自分の中にあった感性にアピールする内容ながら、1枚のアルバムとしての完成度〜楽曲のクオリティの高さゆえにこれからも長く聴き続けるだろうと思える。新たなマイ定番ってところでしょうか。

ニック•ケイヴもカート•ヴァイルも既におなじみな存在なので、実質的にニューカマーであるパーケイ•コーツが、今年の自分にとってもっともエキサイティングな新たな出会いだったのかもしれない。
エキサイティングといえば「新世代のハンソン」こと(?)ハイムは相当に期待が高かったんだけど、まとまりに欠けるアルバムだったのはちと残念。逆に伏兵というかダーク•ホースという意味では、ジーズ•ニュー•ピューリタンズの新作が期待を遥かに上回る野心的な出来だったのに感心させられた。

ボウイが沈黙を破り、マイ•ブラッディ•ヴァレンタインが遂に「Loveless」のフォロー•アップ作品をリリース……と、ロック〜オルタナのアイコンが年明け早々にトピックを振りまいた2013年。
久々という意味では他にダフト•パンク、ボーズ•オブ•カナダ、マジー•スターなんかも帰って来てくれたし、いずれも歳月を経ても揺るぎない個性を再確認させてくれたのはなんとも頼もしかった。

しかし、この雑感メモに名前をあげたアクト達すべてになんらかの影響を与えたと言っても過言ではない巨星=ルー•リードの死が、おそらく2013年という年を記憶に刻むことになるのだろう。カニエ•ウェストよりもルー•リードに思いを馳せるのは、後ろ向きで良くないとは思う(実際ルー•リードも、「Yeezus」を激賞していたし)。でも、頭ではなく心に質問すると、自分の回答はやっぱり「ルー•リード」なのだ。

というわけで、肝心のリストです。以下に記載された作品には、米英におけるリリース•タイミングの差ゆえに厳密には2012年後半USリリースの作品も混じっております:が、大目に見ていただければ幸いです。当ブログをチェックいただきありがとう。2014年も、皆さんに素敵な音楽との出会いがたくさんありますように。

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●●●Music●●●

Parquet Courts/Light Up Gold(Dull Tools/What’s Your Rupture?)

テキサス経由〜現在ブルックリンを活動拠点にする、ご機嫌な4人組ギター•バンドの公式なファースト•アルバム。ストロークスのファースト以来=12年ぶりと言っていい、「アメリカからしか出てこない」スキニー&パンキーなギター•ロックンロールの美を凝縮したアルバムだろう。VUを起源に、ジョナサン•リッチマンからフィーリーズ/ヨ•ラ•テンゴに至る系譜を継ぐ貴重な存在。と同時にガイデッド•バイ•ヴォイシズ〜ペイヴメントに通じるDIY/ローファイ感覚やスラッカーなユーモアも備えていて、その独特な持ち味とセンスの良さを今後も維持し続けてくれることを切に願う。

Kurt Vile/Wakin On A Pretty Daze(Matador)

スラッカーと言えば、グランジな長髪を誇るフィラデルフィア発のこの人も忘れるわけにはいきません。前作「Smoke Ring For My Halo」も素晴らしかったけど、本作にたゆたうメロウ&ルミナスなトーンとメロディの美しさは絶品で、これまでのカート•ヴァイル•ミュージックの頂点に位置する内容じゃないか?と思う。たとえばニール•ヤングやルー•リードのように、シンプルなのに聴かせる、真の意味で味のある曲を書ける人。本作に最新EPをカップリングした「Deluxe Daze(Post Haze)」もちょっと前にリリースされたので、まだトライしていない方にはそちらをお勧めです。

Nick Cave And The Bad Seeds/Push The Sky Away(Bad Seed Ltd.)

「回春オヤジ」の懲りない威力を見せつけた(?)グラインダーマン他で忙しかったニック•ケイヴだが、久々に動き出したバッド•シーズは実年齢を反映したイングリッシュでアンニュイなブルース(デルタのそれではありません)をじっくり聴かせる。冬の海辺に立ち、乾いた唇を噛みながら淡々と打ち寄せる波と時間が少しずつ生み出す変化をうっとり眺めるような音楽。「枯れ」をこんな風にエレガントに、かつデリケートで情感豊かな音作りで描けるのはニック•ケイヴだけだろう。ライヴ盤「Live From KCRW」――スタジオ•ライヴなので「Live Seeds」の迫力には欠けるが――も、本作の対を成す内容としてぜひ聴いていただきたいところ。

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(以下、アルファベット順)

Arcade Fire/Reflektor(Sonovox)

デビュー以来、「ニュー•インディの旗頭」として愛されてきたアーケード•ファイア。大好きだけど、そのPCな優等生ぶりが逆に縛りになるんじゃないか……と懸念していたところに、殻を打ち破るやんちゃな本作が登場したのは痛快だった。大作であり、それだけでもインスタントな快感がキモである今の時代、ハンデは大きい。しかし長い音の旅路が苦にならないほど、本作は万華鏡のごとく変化するサウンド/ビート/ムードで様々な世界に聴き手を引き込んでくれる。矛盾した意見かもしれないが、長期的にみればもっともアクセスしやすいアーケード•ファイア作品じゃないかと思う。

Matt Berry/Kill The Wolf(Acid Jazz)

代表的な出演作(カルトなシットコム「Garth Malenghi’s Dark Place」、「The IT Crowd」他)はまず日本にまで届かないだろうけど、声優/俳優として徐々にマニアからの支持を広げているマット•ベリー。とはいえ本人がもっとも誇りにしているのは音楽活動だそうで、「俳優の手遊び」では済まない作品を次々に送り出しているのは立派(歌だけではなく作詞作曲からアレンジ/演奏まで担当と、ほぼ自作自演)。彼の愛する70年代的な要素=フォーク、プログレ、ミュージカルをブレンドし、英ホラー映画の名作「The Wicker Man」が浮かぶゴシック〜ペイガンなトーンやコズミック•ギター、民謡調メロからオーソドックスなポップ•コーラスまで網羅した本作は非常に英国的。90年代のブリットポップに対する、これって「裏ブリットポップ」じゃないだろうか。

おまけに、英米DUDESの顔合わせ!とも言えるミニ•クリップもどうぞ。


マット&ジョシュがパトリック•スウェイジで意気投合する場面が最高っす。

Body/Head/Coming Apart(Matador)

キム•ゴードンとビル•ネイスとのユニット。インプロを軸とする緊張感あふれるアレンジ、非ハーモニー性、ノイズのレイヤー等、ソニック•ユースのDNAはあちこちに残っている。しかし、本作のもっとも強い磁場は時にニコの絶対零度すら思わせるキムのヴォーカルの暗さ〜取り憑かれたようにフリー•スタイルな歌唱にある。女性アーティストの表現には色々あるが、たとえばアグレッシヴにシャウトされるよりも、こういう風に内側からにじみ出てきた本能的な「声」の方が自分にとっては遥かに刺さる。

Bill Callahan/Dream River(Drag City)

「ビルにとってのセクシー•アルバム」との前評判はあながちジョークではなくて、コンガのしなやかなグルーヴや吐息のように耳を撫でるフルート、エレピのジャジィ&ソフト•フォーカスな輪郭など、リラックスした音作りはいつになくセンシュアル。彼の楽曲特有の薄暗い緊張感にはやや欠けるものの、マスターフルなヴォーカルも含め1枚のレコード(=世界)としての完結度は非常に高く、すっぽりその中にはまり込める。仏頂面な歌声で「I’ve got limitations/like Marvin Gaye」と微笑を穏やかに掬い上げ、「All I want to do is make love to you/In the fertile dirt」なんてエロティックな欲望をさらりと歌っても許せてしまう、なんとも憎いハンサムなマザー*ッカー•ポエット(これ、褒め言葉)。レナード•コーエンとの比較もうなずける話です。「Javeline Unlanding」のダブ•ヴァージョンも必聴。

Dirty Beaches/Drifters/Love Is The Devil(Zoo Music)

台湾生まれ、しかしアメリカ、カナダ、ドイツと様々な土地を渡り歩いているコスモポリタンなアーティスト=ダーティ•ビーチズ。ソロのエレクトロ•ユニットとして既に多くのEPやアルバムを投下しているが、バンド編成で制作された「Drifters」は彼の持ち味であるネオンに照らされた都会の夜の情景と、その猥雑さの奥にうごめく危険をロマンと共に浮き彫りにしてみせる。この人は映画に強く影響を受けているそうで、インスピレーションとしてあげているウォン•カーワイ/クリストファー•ドイルの官能が匂い立つ映像は確かに浮かぶ。とはいえこのアルバムはグレッグ•アラキ、ニコラス•ワインディング•レフンの「Only God Forgives」、ひいてはデイヴィッド•リンチに続いていくものだろう。2枚組の本作、「Drifters」のノワール&スリージィなグルーヴがまず耳を惹くとはいえ、インスト作の後者にはじっくりしみてくる味がある。

Endless Boogie/Long Island(No Quarter)

ニューヨーク発の本能全開!なガレージ•ロックンロール•バンド。ストゥージズあるいはグラウンドホッグスあたりのこってりブルージィなジャム(ワウのかけ過ぎ!)が好きな自分にはたまらない1枚です。胃の弱い方にはお勧めしませんが。たとえばQOTSAの風格あふれる新作に「もうちょいばりばりにロックしてほしいなー」と感じた方にもヒットするかと。

The Flaming Lips/The Terror,Peace Sword(Warner Bros.)

コラボレーション、ピンク•フロイド他いにしえのアルバムをカヴァーする企画等、ここのところバラエティに富んだ活動で領域を広げてきたリップス。しかしここでの彼らは核に戻り、孤独、恐れ、挫折、絶望といったヘヴィな感情=内面の闇に向き合っている。本作に「外宇宙からの通信」めいたトーンをもたらす厚い霧のようなエレクトロニック•サウンドの層とエフェクトの数々〜儚いメロディとのバランスも見事にジャッジされているし、アルバムとしての一貫性という意味では近年の彼らのベストだと思う。
「Peace Sword」はリップス•ファミリーとも言える仲良しアクトとのコラボで、映画「Ender’s Game」にインスパイアされたという作品。コズミックなオーケストラル•ポップの第一人者としての面目躍如な1枚になっている。

Chris Forsyth/Solar Motel(Paradise of Bachelors)

ニューヨークを拠点とするギタリストのインスト作品で、収録曲のタイトルも「Solar Motel Ⅰ〜Ⅳ」と実にシンプル。しかし昨今様々な形で試行されているジョン•フェイヒィ型の瞑想ソロ•ギター•スタイリストではなく、ドラム/ベース/鍵盤他のフル•バンドでレコーディングされたこのアルバムはロック•インスト•ジャムのエクスタシーとドラマを臆面なく追求していて新鮮。作品を聴いた後で知った話だけど、リチャード•ロイドに師事を受けたというのも納得だったりする。後述のスティーヴ•ガン同様、ヒス•ゴールデン•メッセンジャーを擁するレーベル:Paradise of Bachelorsから。

Foxygen/We Are The 21st Century Ambassadors of Peace&Magic(Jagjaguwar)

2人組サイケデリック•ポッパーということで「MGMTの二番煎じかいな?」な〜んて邪推も浮かんだが、蓋を開ければそのルーツは90年代、特にエレファント6勢に象徴されるビートルズ/ビーチ•ボーイズへの屈託のない愛情に満ちたガレージ•バンドにあるようだ(アルバム•タイトルからして相当に無邪気だし)。才人リチャード•スウィフトによるプロダクションは綿アメのように甘く掴みどころがなくジャンクな、しかしなんともクセになるフォクシジェンという音の遊園地を好サポート。しかしただ甘いだけではなく、メロディにシルヴァー•ジュウズ〜ペイヴメントばりのビター•スウィート味やグラム•ロックの泣きが放り込まれるのも素敵。

Ezra Furman/Day of The Dog(Bar/None)

これまでエズラ•ファーマン&ザ•ハープーンズ名義で活動してきたというマサチューセッツ発のアクトだが、この作品は新たなバッキング•バンド=Boy-Friendsを率いての第一作になる。フォーク〜ブルース〜ロックンロール=50年代を青写真とするサウンドはベーシックながら、暴れるサックスとしゃにむなカッティング、ダンガリー•シャツのハートブレイクを吐露する青い歌のエネルギーには耳がそばだつ。

Steve Gunn/Time Off(Paradise of Bachelors)

カート•ヴァイルのバンドでも一時期プレイしていたというギタリスト/シンガー。プルマンやザ•シー&ケイクらシカゴ勢に連なる端整なアレンジと典雅なギター•ワークには痺れるし、メランコリックな歌とのバランスもいい。リフ=ひとつの主題をベースにしたミニマルな楽曲がカントリー/ブルースを通過したサイケデリアへと昇華していく、その様には聴くたびため息が出ます。アパラチアン•フォークを現代に鳴らすBlack Twig Pickersとのスプリットも良かったし、今後もアメリカの広大なランドスケープからこの人がどんな音を掘り出していくのか、楽しみで仕方ない。

Haim/Days Are Gone(Polydor)

カリフォルニアから現れたキュートでバブリーで、才能あふれる三姉妹。ジョン•ヒューズ映画から抜け出て来た……と言っても不思議のない健康的なチャームはもちろん、マイアミ•サウンド•マシーン(!)を現代にヒップに翻案したとも言える「Forever」の完璧なポップネス以来ヤられっぱなしだった。そこからアルバムまで待たされたのはタイミングを逸した感もあったが、フリートウッド•マックの名作「Tango In The Night」期のクリスティン•マクヴィー(「Everywhere」を参照のこと)のフェミニンなソングライティングとリンジー•バッキンガムのアクの強いアレンジ感覚〜コーラスの美を完全に自分達の個性として消化しているのは超•好感。1枚通して聴くと楽曲のクオリティにムラがあるのは惜しいが、ファーストなのでとにかく詰め込みたかったのだろうな。

Julia Holter/Loud City Songs(Domino)

前作「Ekstasis」で話題を集めた、カリフォルニア芸術大学出身〜実験エレクトロニカの才媛。エーテルの浮遊を思わせる美しいヴォーカルとコンポジションの緻密さは相変わらずながら、実質ソロ•レコーディングだった過去の作品とは異なり、アコースティックなアンサンブルの導入で広がったサウンドのパレット、そしてたっぷりした音のダイナミクスとは本作に更なる奥行きをもたらしている。デッド•カン•ダンス的なゴシック〜ビザンチンな感覚を越え、彼女独自なサウンドがはっきりしてきた。現代の宗教音楽と呼びたくなる、清らかさに満ちた瞬間には打たれる。

Low/The Invisible Way(Sub Pop)

偶然ですが、ここからの3枚はスローコアな作品(もしくは夢遊病者のための音楽)が続きます。いずれのアクトも90年代から活動していて、自分にとっては「定番」。なので当たり前なチョイスかもしれませんが、やっぱ好きです。
ロウの新作は、ありそうで実はまだ実現していなかったのが意外な:ウィルコのジェフ•トウィーディー(プロデュース)との初顔合わせになった。彼らのオーガニックなサウンドとハーモニーをじっくり捉えた本作は、スティーヴ•アルビニともデイヴ•フリッドマンともまた違う、「素のロウ」のベーシックな魅力を伝える。

Mark Kozelek & Jimmy Lavalle/Perils From The Sea(Caldo Verde)

サン•ディエゴ発のポスト•ロッカー:アルバム•リーフことジミー•ラヴァルと、元RHP/SKMのマーク•コズレクとの初コラボ。マークの歌声とギター•プレイはそれだけでも成り立つ個性を確立しているが(実際、近年はナイロン弦ギターをフィーチャーした弾き語りも多かった)、ジミーの編み上げるアトモスフェリック&繊細なサウンド•スケープとマークのメランコリックな歌との融合は新鮮な喜びをもたらしてくれた。ダンテル〜ポスタル•サーヴィスあたりが好きな人にお勧め。
ジミーの貢献も大いに評価するけれど、フラナリー•オコナーやカーヴァーの短編を思わせるマークのストーリー•テラーとしての手腕――上に貼付けた「Gustavo」と、「1936」、「You Missed My Heart」がその最良の例だと思う――が、自分にとってはやはり何度もこの作品に戻ってくるよすがになっている。マークは今年この他に6枚(!。うち4作はライヴ音源、2作はカヴァー集およびDesertshoreとのコラボ)をリリースしているので、興味のある方はそちらもぜひ追っかけてみてください。

Mazzy Star/Seasons of Your Day(Rhymes of An Hour)

最愛の90年代アイドルのひとつである彼らの「再臨」は、自分にとっては、実はマイ•ブラッディ•ヴァレンタインの新作を聴くよりも怖かった(伝説は、伝説のままでいてくれた方が良かったってケースもあるので)。もっとも、デイヴィッド•ロバックはともかくホープ•サンドヴァルはWarm Inventionsで素晴らしい作品を発表していたわけで、そこまでビビる必要もなかったんだけど。
で、ひとたび聴き始めればまったく異なる時間軸が現出する、彼らのスローで何物にも動じない音楽のマジックは健在だった。しかしリヴァーブたっぷりなロバック印のギターとホープのコケットリーを前面にフィーチャーした、いわゆる「MSクラシック」な楽曲は過去の作品の放つ官能的な燐光の域には達していない。むしろ、スライド•ギターやタンバリン、ハーモニカといった寂れまくりなバッキングでぽつぽつと綴られる秋色のフォーク〜カントリー•ブルース曲群が、この作品のキモだと思っている。

Merchandise/Totale Night(Night People)

まずもってザ•スミス(「How Soon Is Now?」、「Shoplifters of The World Unite」を参照)が浮かんでしまう、しかしフロリダのハードコア•パンク畑出身というユニークなバンド。しかしこの5曲入りEPに泣かずにいられないのは、スミスだけではなくネオ•サイケ〜ポジパンまで含むサウンドの幅はもちろん、今どきのヒップな若手インディ•バンドになかなか見当たらない、エモーションへの埋没=ソウルフルな熱を発する音楽をやっているからだと思う。

John Murry/The Graceless Age(Rubyworks)

ミシシッピ生まれ、ウィリアム•フォークナーの縁戚(と言っても養子縁組が縁の「義理の甥」らしく、血のつながりは無いみたいです)というアイコニックな生い立ちだけでも興味をそそられるジョン•マリー。しかも元ジャンキーとくれば、自分のようにオールド•ファッションなバカ•ロマンチストにはもってこいなシンガーだろう。
なので、逆に英プレスの賞賛に警戒し作品に手を伸ばすのにしばし引いてしまったんだけど――不幸せなシンガーを好きになると、彼らを心配してこっちまで神経がすり減るので――実際に聴いてみて、(トータルなアルバムという意味では甘い部分もあるが)数曲での歌とエモーションの強さにはノックアウトされた。この人の腹から振り絞るような歌声はスプリングスティーンを引き合いに出されているけど、自分の頭に真っ先に浮かんだのはマーク•アイツェルの悲劇的なまでのエモっぷり。その手応えは外れていなくて、本作のプロデュースは元アメリカン•ミュージック•クラブ、そしてマーク•コズレクとも縁の深いティム•ムーニーだった(本作のオリジナル•リリースからほどなくしてティムは世を去った:合掌)。サンフランシスコ(西海岸)のくぐもったニュアンスと、マーク•リンカス(南部生まれ)のゴシック性を結ぶ存在……と期待するのは荷が大きいかな。

My Bloody Valentine/m_b_v(mbv)

再始動から6年、前作からは22年ぶりになるオリジナル•アルバム。これだけギャップが空き、しかも「ロック都市伝説」と化したバンドだけに、唐突なリリースがアナウンスされたところで感じたのは、正直「……何を期待すればいいのか想像もつかない」だった。しかしひとたびレコードに針を落とせば、ケヴィン•シールズにしか生み出せない落下しながら飛翔するような音が感覚をまるごと包み込む。現代のアシュ•ラ•テンペルというか、ポポル•ヴーというか。涅槃。作品の中盤〜後半は90年代後期英インディおよびダンス•サウンドの意匠を組み込んでいて、そう考えると「00年代以降→現在」のMBVが姿を現すのは、次の作品なのかもしれない。

Outfit/Performance(Double Denim)

聖地リヴァプールからやってきた、5人組のデビュー•フル•アルバム。以前にメンバーは鋭角的なネオ•ポスト•パンク系ギター•バンドでプレイしていたそうだが、DJ/サウンド•クリエイターの参加を経てその音楽性をより映像的、かつ広がりのあるものへ発展させていった。自主プロデュースの道を選んだこだわりは本作のきめ細かい作りに反映されているし、テクノ〜エレクトロニカ他UKダンス•ミュージックの話法/グルーヴをバンド•サウンドにブレンドさせる手腕も見事。その凝ったサウンド•スケープに耳が反応しがちだが、ロマンチックで広がりのあるメロディの魅力――古い例で恐縮ですが、ザ•ワイルド•スワンズあたりが放っていた「あざとくない大らかさ」を思い起こしてくださいませ――は、やっぱりこのエリアから出て来たバンドのDNA?とも思う。

Queens of The Stone Age/…Like Clockwork(Matador)

まさに「キターッ」って感じの、ずっしり重量級なQOTSA新作。本作に至るまでの6年の間にジョシュはゼム•クルーキッド•ヴァルチャーズでも活動、レーベル移籍やメンバー•チェンジ他もあった「揺れ」の時期だったが、その波紋が落ち着いたところで腰を据え、QOTSAを2010年代に再定義しようとする気合いに満ちた1枚だと思う。待った甲斐がありました! ファーストや名作「R指定」のダークなすごみが戻ってきたのは嬉しいし、それでいてミッドテンポ〜スローな楽曲でのスケール感はこれまで以上。ご機嫌なカムバック作だ。

These New Puritans/Field of Reeds(Infectious Music)

「葦の原」のタイトルは、本作の基盤を成すサウンド:管楽器のリード、そして人間の喉(クワイア)をイメージさせる。それらはクラシック•アンサンブルを起用した前作「Hidden」から実験的に使われていた要素とはいえ、同作の主役はドラム/パーカッション、そして焦点はモダン•ヒップホップ〜R&Bの解釈にあった。野心と実験精神は買うけど、聴き手がエンジョイできる音楽という成果の伴わない作品……な手応えの残った「Hidden」に対し、本格的にオーケストラと共演、「ネオ•クラシック音楽」の領域へシフトした本作はコンポジションおよびアレンジの良さで耳を魅了する。その多くが旋回するピアノのコードから始まったとおぼしき楽曲は、ビートで横に伸びる継続ではなく、同心円に広がるライヒ型の音の彫像を打ち立てていく。イギリスにおけるポスト•ロックの草分け的存在であるトーク•トーク――本作プロデューサーであるグレアム•サットンの在籍したバーク•サイコシスもまた、「ポスト•ロック」と称されたバンドだった――を思わせるその脳内ディープなイマジネーションは、たとえば近いところではワイルド•ビースツの「Smother」も共有していると思う。
とはいえその志しとクオリティの高さゆえに、逆に本作におけるTNPのメイン•パーソン:ジャック•バーネットの声の弱さが露呈したのは皮肉かもしれない。トーク•トークだけではなく、憂き世の時間やエモーションを超越したロバート•ワイアットの不思議なメロディ/和声感覚のエッセンスもよく捉えているこの作品には感動させられる。しかしジャックの硬く細く不安定でニューロティックな声帯は、ロバート•ワイアットの独特なフラットさをトレースしながら、ロバート爺の声が醸す滋味、あるいはマーク•ホリスの深みに欠ける。声というのは人それぞれが持って生まれた楽器なのでいかんともしがたい。とはいえ、木/金管楽器やストリングス、コーラス、エレクトロ他のアレンジをデリケートに吟味したのが明瞭なこのアルバムにおいて、彼が自身のヴォーカルをシビアにジャッジしなかったのは惜しい。ともあれ、この調子でいけば次の作品は彼らにとっての「Academy in Peril」になるかも??

Vampire Weekend/Modern Vampires of The City(XL)

3枚目ともなるとさすがにこの優等生ポップ•バンドも息切れするか……と思っていたし、メロディ/コード進行/アレンジに過去曲の影がよぎる瞬間は確かにある。しかしこれまででもっとも周到にプロデュースされた「落ち着いた」アルバムにも関わらず、息苦しさではなくエアリーな軽さを維持している。④でのねじれたロカビリーやコーラスのアイデアといったフレッシュな表情がその印象を強めるのだろうが、一方でVWらしいフックにスケール感の加わった②③⑩を聴くと、このアルバムは三部作の最終章/完成形なのかな?と。高音に偏りがちなサウンドは個性であると同時に枷にもなっているので、次作で大胆なシフト•チェンジを望みたいところ。そういえばイギリスでは初のアリーナ•ツアーも成功させた彼らだが、こんなレフトフィールド•ポップがアリーナ会場を埋めるようになった、その事実だけでもひとつの業績かもしれない。

Matthew E. White/Big Inner(Spacebomb/Domino)

米南部ヴァージニア出身というマシュー•E•ホワイトは、インディ•ロック•バンド他でプレイした後にSpacebombなるスタジオ/ヴェニュー/リハーサル•スペース/自主レーベルを設営(Spacebombはそこに集まるミュージシャン集団の名前にもなっている)。そのスタジオ=レーベル=ハウス•バンドなる発想は、モータウンやスタックス、マッスル•ショールズ他の60年代音楽のクラフツマンシップが手本になっているのだろう。おばさんロック好きにはたまらない、「職人」ぶりです。
ともあれ。プロデューサーとして、アレンジャーとして、プレイヤーとしてビッグ•バンドと共に生み出した本格的なリーダー作であるこのアルバムは、ゴスペル、ジャズ、ファンク、カントリー•ソウルをブレンドした芳醇なアメリカン•サウンドを鳴らす。カーティス•メイフィールドとジム•ディッキンソンとラムチョップの出会いと言えばいいのかな、んー、うなります。かといってこの人は「レトロな王道」に固執しているわけではなく、モダン•ヒップホップやR&Bの話法も組み込んでいるのがかっこいい。ボン•イヴェールの成功以降、インディ系シンガー•ソングライターがエレクトロニカやR&Bの可能性を探求する……という例は増えているけれど、この人はトレンドのフォロワーではなく頭ひとつ抜けた個性を早くも打ち立ててみせたと思う。

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●●●Best Live●●●

Steve Reich and The Colin Currie Group@Royal Festival Hall,10November
Parquet Courts@Sebright Arms,21March
Tortoise@All Tomorrow’s Parties/Camber Sands,23November

●●●Reissues●●●

Marcos Valle reissues(Light In The Attic)
ブラジル音楽界の至宝、70年代初期作品4枚の再発。アレンジのセンスは今聴いてもぶっ飛んでます。ジャケットもいちいち最高。

:
Miles Davis Quintet/Live in Europe 1969:The Bootleg Series Vol.2(Columbia/Legacy)
スタジオ音源はいわば「青写真」、ライヴで飛躍するのがマイルス•デイヴィスと彼のミュージシャン達。スリリング。

:
Robbie Basho/Visions of The Country(Gnome Life)
元々はウィンダム•ヒルからのリリースで、うさん臭くなる前のニュー•エイジ•ミュージックの良さを感じさせる美しい1枚。

:
Marianne Faithfull/Broken English Deluxe Edition(Island)
60年代ロンドンのアイコンが80年代に転生。ニュー•ウェイヴ、ディスコなど、NY味たっぷりなプロダクションは(同じくアイランド所属の)グレイス•ジョーンズにも通じる。

:
Shuggie Otis/Inspiration Information+Wings of Love(Shugiterius/Sony)
若きブルース•ギターの天才としても評価されたコンポーザー/マルチ•インストゥルメンタリストのサード。フリー•ソウル人気で00年代初めに再発されて以来のこのリイシュー、75年頃に取り組んでいた未発表音源集「Wings〜」をカップリング。

●●●Film●●●

*General Release*
La Grande Bellezza/Paolo Sorrentino
A Field In England/Ben Wheatley
Only God Forgives/Nicolas Winding Refn
Nebraska/Alexander Payne
Gravity/Alfonso Cuaron

*Music Documentary*
David Bowie:Five Years&Cracked Actor:David Bowie in 1974(BBC)
Beware of Mr. Baker(Jay Bulger)
Sound City(Dave Grohl)

●●●TV●●●

Utopia(C4)
Game of Thrones:Season3 (HBO)
Breaking Bad:Season5/Finale(AMC)
Arrested Development:Season4(Netflix)
Louie:Season1-3(FX)
Toast of London:Series1(C4)

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Mariko Sakamoto について

Hi.My name is Mariko.Welcome to my blog,thanks for reading.坂本麻里子と言います。ブログを読んでくれてありがとう。
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My Favourites―2013 Edition への2件のフィードバック

  1. Искра より:

    Deanの新作のミニアルバムが素晴らしすぎました。。。

    • Mariko Sakamoto より:

      コメントありがとうございます。同感です&特に「Love Is Colder Than Death」が好きです。
      フル•アルバムも3月に登場ってことなので、楽しみに待とうと思います。

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