TV round up

久々の「TVラウンドアップ」というわけで、テレビ•ドラマとその周辺ネタをドカ〜ッとまとめてご紹介。オンエアはすべて昨年(英)なので妙なタイミングではありますが、「2013 My Favourites」に入れるほどではないし、かといって放ったらかしにするのもなんだかなぁ……と気になっていた作品達です。

海外ドラマの場合は日本に届くまでに時差が生じるケースも多いので、今後の「ドラマ•ハント」の参考になれば幸いでございます&なるべくSpoiler Free=ネタバレ回避でがんばろうと思います。

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●Broadchurch(ITV), The Fall(BBC), Southcliffe(C4)

まずは、UK発のオリジナル•ミステリー3本から。もっとも、人気/視聴率の面では「Broadchurch」がダントツで、こちらは第2シリーズおよびアメリカ版リメイクも決定しているほど。ぐっとカルトな「Southcliff」なんかと一緒くたに紹介するのには無理があるけど、いずれも殺人事件を発端とする人間ドラマであり、スカンジナヴィア産犯罪ドラマ人気の影響が出た内容に一種の「症候群」めいたものを感じた次第――というか、こっちで普通に人気のソープやホーム•ドラマetcにまったく興味がない人間なので、犯罪ものに偏ったセレクションになっているってのもあるだろうけど。

「Broadchurch」はイギリス西部にある架空の海辺の町:ブロードチャーチで起きた11歳の少年殺害という陰惨な事件をめぐる、全8話から成る古典的なフーダニットもの。オリジナル放映時は最終回に向けて「犯人は果たして誰?」とちょっとしたブームが生まれたくらいだった。なんでも出演者•スタッフのほとんども劇中の真犯人を知らされていなかったそうで、メディア各所に細かくパン屑を落としながら宣伝しつつ(=視聴者を最後まで引っ張りつつ)、肝心の秘密保持は厳守!というのがヒット作誕生の秘訣だったようだ。

視聴率はもちろんのこと批評家や各種テレビ賞筋からの評価も高く、「2013年英テレビを代表するドラマのひとつ」とのステータスを獲得しているこの作品ながら、実は自分はまったくといっていいほどピンと来なかった。いやー、評判はもちろんのこと、ストーリーも期待できそうなんで楽しみにしてたんですけどねぇ。ロケに使われたドーセットのジュラシック•コーストの風景はばっちり楽しませてもらったし、これまた北欧なノリを加速させるオーナヴル•アルズナル(Olafur Alnalds)のスコアも悪くなかった……んだけど、ドラマとしては最後までハマりきれなくて、少数派ヴューワーに徹することになったのがやや悲しかった。

しかし「どうせマイノリティの意見や!(=評価に傷はつかない)」とやや開き直ってネガなポイントをあげていくと:

①ITVのダサさ。純粋にこちらの感性の問題なんだろうけど、民放でもっとも人気のある大衆的なITV番組の無難な感覚というのは、やっぱ自分には不向きらしい。今までも、ずっとそうだったけど。
別に大衆性を批判する気はないし(人気があるものの正当性ってものもありますし)、自分が他よりもハイブロウだ〜なんて思い上がってもいやしません。プロダクションそのものは意欲的で映像もがんばってるし、人気俳優を並べたキャストにしても間違いなく「クオリティ•ドラマ」なのは認める――なんだけど、描かれる世界観そのものがあまりに「標準的な地方の(やや右寄りな、閉じた)イギリス家庭像」を中心にした「テレビ•ドラマの範疇」に留まっていて、逆にコスモポリタンなロンドンに暮らす乱雑な外人である自分の目には、やや現実感に欠けるのだ。
もっとも、それは常々「マスコミが集中するロンドンに生きる都会連中ばっかがテレビ•ドラマの中心じゃない」と不満を抱える地方のオーディエンスにはアピールするんだろうし、逆に言えば一般的にはリアリティがある=この大ヒットに繫がったってことなんだろう。けど、そういった地方格差コンプレックスのない――その存在は意識していますが――自分からすると、せっかく面白いキャラがいても彼らの描写がいちいち庶民的なしがらみや行動原理にとらわれているのが歯がゆく、ゆえに全体的に「コンセンサスの元に成り立っている」イメージが残る。その安全感がある限り、どんなに犯罪が凶悪でプロットにひねりが隠されていても、根本的にはスリルが伝わってこない。

②クリシェ。刑事/犯罪ドラマにクリシェ(約束事)はつきものだが、話を面白くするためにそれを引っ張り過ぎると嘘っぽくなるし、リアリズムが基調な現代劇におけるそのバランスは微妙だったりする。しかし、本作に浮上しては消える「うさん臭い容疑者/手がかり」=レッド•へリングの山は多く、しかもそれらの描写がいかにも「思わせぶり」なゆえに「この人、犯人じゃないだろうな」と逆にすぐ見当がついてしまう。その割にそれらの疑惑のオチ(解決)処理がご都合主義だったり無意味に近いのも、不満が残る。
スクープを取ろうとするマスコミの行動が捜査を妨害するってのもクリシェだし、さすがにそうした「煙幕」の手が尽きてきたシリーズ後半にはいわゆる「デウス•エクス•マキナ」(捜査主任が病いに倒れるetc)が引っ張り出されてきて、それも自分には物足りなかった。フーダニットは難しいもんですね。

③演出&テンポ。推理•捜査の進展に並び、この作品のエンジンになっているのがブロードチャーチという町=共同体そのもの。ややノスタルジックで平安そうな町が殺人事件で震撼し、その割れ目の中からそれまで隠されていた「闇」がにじみ出てくる……というのはナイスな着眼点ながら、コミュニティとしての存在感/アイデンティティ、あるいはその最小単位と言えるファミリー•ライフの描き方がどうにも薄く生活感に欠けていて、共感が湧きづらい。
こうした「事件の余波」にも重点を置いた設定は、たとえば「The Killing」第1シリーズのそれに通じるものがある。しかし「The Killing」に説得力があったのは、ある意味警察の捜査以上に犠牲者の家族=ラーセン一家の悲劇をじっくりと描く判断がプロデューサー側にあったから。ゆえにラストの解決に大きなカタルシスが生じるわけだけど、8話という尺で複数のファミリーや家族関係を描き、しかもコミュニティに生きる人々の裏の顔を次々に明かし詰めこんでいった「Broadchurch」は、欲張り過ぎた結果エモーショナルな厚みに欠けるドラマ、と自分には映る。

④キャスト。このドラマのヒットの大きな要因は、主役であるアレック•ハーディ警部&エリー•ミラー巡査を演じたデイヴィッド•テナントとオリヴィア•コールマンの人気にある。ややエキセントリックで影のあるエリート捜査官と、彼をサポートする人間味たっぷりな地元刑事は「新たな名コンビ」と称されているし、どっちも上手い役者でずっと好感を持ってきた俳優なんだけど――タイプキャストされ過ぎちゃったかな〜、との思いが残る。
デイヴィッド•テナントは「ドクター•フー」の先々代ドクターとしてブレイクし、以後も舞台/テレビを中心に大活躍している。このアレック•ミラー役も彼にとっての新たな「当たり役」とされてるけど、基本的にマンガ顔の美形であり、スコッツな彼は声にも特徴があるので演技の幅が限定されてしまうのか、自分には「あー、テナントだなぁ」としか。

彼は2013年に他にも「The Politician’s Husband」(政治家役)、「The Escape Artist」(法廷弁護士役)とシリアスなドラマで主役を演じていて――それはたぶん「ドクター•フー」以降のコミカルなイメージからの逸脱って狙いもあるんだろうけど――いずれも「かっこいいお兄ちゃん」の枠からはみ出していない。それがスター•パワーってことでもあるんだろうけど、思いっきり汚れ役/悪役に挑むとか、あるいはこの人のナチュラルな居場所になりそうなスクリューボール•コメディとか、カメレオンになってくれればいいんだけどなあ。

カメレオンと言えば、オリヴィア•コールマンもライトなコメディ(「Peep Show」、「Twenty Twelve」、他愛のない英ロムコム映画等)からシリアスな人間ドラマ(「Accused」、映画「Iron Lady」)までこなす実に器用な人で、各所から引っ張りだこの今いちばんノってる英女優さんのひとり。でも、それまでの彼女のイメージを打ち破ることになった、俳優:パディ•コンシディーンの初監督力作映画「Tyrannosaur」以降、この人の役回りの多くは「ごく普通の地味な良き母親/妻だけど、(普段我慢しているゆえに)怒らせると怖い」型になってもきている。「Broadchurch」でのエリー役もそのバリエーションだし、先日放映されたロムコム•ドラマ「The 7.39」でもそれは同様。

この人の泣き&怒り狂い演技は確かにリアルで見応えあるんだけど、一歩間違えると「賞演技」であり、また逆に彼女が出演するとその役が絶対に「どこかでキれる/爆発する」のが予期できてしまうわけです。テレビもいいんだけど、そろそろインディ映画か何かに戻ってまったく違うタイプの役にもトライしてもらいたいところ。

この作品には他にもポーリーン•クウォーク、ウィル•メラー、デイヴィッド•ブラッドリー、ヴィッキー•マクルーアといった味もある芸達者な役者が顔を出してるんだけど、いずれも使い切れていなくてもったいない――それはある意味テナント&コールマンにも言えることだし、結局のところ自分にとっての「Broadchurch」は、志しは高いものの、残念ながらその内容が野心にマッチしないドラマだったってことになるのだろう。

ちなみに、放映時期が思いっきり「Broadchurch」とも被っていたBBC産ミステリー•ドラマに「Mayday」というのもあった。これまたロケを中心とするカントリー•サイドの美しい映像や暗いモチーフ、設定(美少女の失踪、女性警察官)のそこここに北欧ドラマからの影響が感じられる1本だったけど、同じような時期にオリジナルの犯罪ドラマが2本放映されるほど、クライムものの人気が底上げされてるんだな〜、との印象を受けた。

とはいえ「Mayday」は5話の単発ドラマで、ストーリーも犯罪の捜査よりもむしろ人間心理&ドラマに焦点が当てられていて、リアルな犯罪ドラマという表層から最終的には超自然な怪談ネタも取り込んでいてびっくり(話としてはかなり無茶苦茶だけど)。ヒントは作品タイトルになっている「メーデー」で、これは「The Wicker Man」で祝われる異教徒の儀式と同じ、ケルト系伝承の名残りであるメーデーの祭りのこと。真面目に観る必要はないとはいえ、「Twin Peaks」みたいに土着性を犯罪ドラマに盛り込む狙いはなかなか面白いし、キャストのひとり=素敵なアイリッシュ俳優のエイダン•ギレン(「The Wire」、「Game of Thrones」、「Love/Hate」、音楽番組「Other Voices」他)が好きなので、彼が眺められるだけでも自分的にはオッケーでした。

アイリッシュと言えば、お隣:北アイルランド制作でベルファストを舞台とする珍しい犯罪ドラマだったのが「The Fall」。この作品の原作者であるアラン•カビットはモダン&リアリズム重視な女性警部ドラマの草分けとも言える「第一容疑者(Prime Suspect)」にも参加したことのある脚本家で、それだけでもポイントは高いのだろう。しかし主役のステラ•ギブソン警視を演ずるのが「The X-File」でおなじみなスター:ジリアン•アンダーソンというのが、やはりこの作品の最大の目玉らしい。

彼女はここのところチャールズ•ディケンズ系時代劇ドラマの定番アクターという印象があって(コルセットの似合う古典的な美貌なので仕方ないですかね)、下手したらヘレナ•ボナム•カーターになっちゃうじゃん……とも思ってたけど、新たな活路を見出しているようです(ちなみに、荒唐無稽なNBC発の最新ハンニバル•レクター/ウィル•グレアムもの翻案ドラマ「Hannibal」でも彼女はレクター博士のセラピスト役でいい味出してます)。

「The Fall」の大筋は、ベルファストで起きた残酷な女性連続殺人事件をきっかけに、その捜査の行き詰まりを打開すべくロンドンから派遣されてきたエリート女性捜査官:ステラ•ギブソンと犯人との心理的な攻防戦を追う……というもの。犯人はすぐに明かされるので、フーダニットではなくて検死/プロファイリング/アリバイ崩し/警察組織内部の複雑な力学etcといった捜査のディテールや人間ドラマの側面がストーリーの中心になっている。

ゆえに謎解きの面白さには欠けるが、カリスマ女優がひとりで堂々とフロントを張る企画はいまだにテレビ/映画界でもなかなか少ないわけで、それだけでも面白いっちゃ面白い。もちろん、ブロンドに高級なシルクのブラウス+タイト•スカートを色っぽく着こなし、お酒もセックスもリベラル、でも仕事の才能は十二人前で若くして警視という人が現実にどれだけ存在するのか?という点には若干疑問が残るわけだけど。

しかし彼女のキャラが、実は犯人のそれと映し鏡になっているのがこのドラマのキモだろう。追うものと追われるものが実は似たもの同士……というのは割とよくあるネタとはいえ、主役2名の関係にリアリズム•オンリーの刑事ドラマとはひと味違うサイコ•スリラーなテンションを加えている。また、ベルファストと言えば北アイルランド問題を扱った映画/ドラマの舞台になりがち――本作でも〝トラブル〟は背景として顔を出しますが――なわけだけど、そこから離れたストーリーが映し出すベルファストという都市そのものの姿はちょっと新鮮だし、街そのものがドラマのダークな雰囲気を増すのに貢献している(夜闇の街頭や雨を効果的に使うのもまた、スカンジ•ドラマ以来定番になっている気がしますが)。

とはいえこの作品、確か放映開始時は「単発ドラマ」との触れ込みだったのに、予想以上の反響に気を良くして(?)放映終了前に第2シリーズの制作がアナウンスされた。そのせいか、最終回=第5話はかな〜り嘘くさい力技で「続く」に寄り切った感じで、満足のいく決着を期待しながら観ていた身としては曖昧な終わり方にズッコケさせられた。
実は元々の企画は5話ずつの前/後編=計10話構成だったけど、評判次第では打ち切りも続投も可能……というオプションつきのプロダクションだったのかもしれないし、今どきのシヴィアなドラマ界ではそうした安全ネットは必須。一方でまあ、わざわざジリアン•アンダーソンを引っぱり出すんだから、シリーズ化は最初から狙いだったんだろうな……とも感じるわけですが。

そういや余談だけど、このドラマで影のあるサイコな役柄を演じて印象的だった俳優:ジェイミー•ドーナンは、本作のオンエアからしばらくしてイギリス発「ママさんポルノ」のベストセラーこと「Fifty Shades of Grey」の映画化で主役に抜擢。顔立ちに品が感じられないのでミーハーな興味は湧かない人だけど、確かにいい身体してるんで(モデル上がりのタレントだから当然っちゃ当然)、英米のやる気いっぱいなおばちゃん達がスクリーンを見つめてヨダレを垂らす光景が今から目に浮かぶようで……怖いです。

お次の「Southcliffe」は、ムーディな映像/キャスティングを筆頭として全編に映画的な感性が光る単発のミニ•シリーズだった。プロットはケントの湿地帯にある架空の町:サウスクリフで起きた無差別銃乱射事件とその波紋を描く……というもので、刑事もの犯罪ドラマではない(事件の謎を追う役は、ここではサウスクリフ出身のジャーナリスト)。しかし暗く救いのない悲劇とその不条理に振り回される人間群像という意味では、これまた北欧ドラマの根本にあるペシミズムに通じるものがある気がした。

しかし本作のスタッフに目をやると、それは必ずしも「北欧トレンド」狙いでもないことが分かる。脚本のトニー•グリソーニはC4の力作「Red Riding」(デイヴィッド•ピースの代表作「ヨークシャー四部作」を翻案したドラマ)で腕を振るった人だし、あれも相当に暗くてヘヴィなドラマだった。また、本作が初のテレビ仕事になる監督のショーン•ダーキンはインディ映画の佳作「Martha Marcy May Marlene」で話題を集めた若手で、ここでも「Martha〜」同様、トラウマや白黒つかない人間心理のあや、日常に潜む恐れ他をデリケートな映像/サウンド/緻密な構成/タイトな演出とで描いている。

俳優陣のクオリティも高くて、メインのショーン•ハリス、ロリー•キニア、シャーリー•ヘンダーソン、エディ•マーサンはいずれもルックスは地味ながら演技は抜群で説得力がある。彼らの抑えた演技は、ドラマに更なる奥行きをもたらしていた。

大体においてストレートで分かりやすい娯楽性が求められるテレビ界で、こういう明解な説明を避け、飲み込みやすい「勧善懲悪」な結論をもたらさない――「犯人逮捕」という意味の解決ではなくて、キャラ達の折り合いの付け方ですが――アーティな作品を作るのは楽ではないと思う(「意味が分からん」「かっこつけ/気取り過ぎ」と批判されるケースも多いので)。しかし「Southcliffe」はテレビ•ドラマの視界を押し広げようとする試みのひとつだったと思うし、異色だからこそ心に確実に残る作品だった。

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●The Returned(Les Revenants)(C4),Top of The Lake(BBC)

続いては、UK発ではなく海外原産のドラマ。テーマも内容もまったく関連のない2作ですが、それぞれに他にない個性と魅力があるのでご紹介。

「The Returned」はフランス:カナル•プリュス制作のファンタジー•スリラーで、「戻された者達」というタイトルの通り、死者が次々に生き返る怪現象をめぐるお話。一部では「ゾンビ•ドラマ」とも形容されてたけど、アメリカのホラー映画調=顔や皮膚が腐ってて腕が抜け落ちるような気持ちの悪い、血に飢えた攻撃型ゾンビはまったく登場しません。あくまでアニエス•ベーのカタログ的にスタイリッシュな死者達であり(しかも美男美女多し!)、フランスらしいっちゃフランスらしいというか。

スタイリッシュと言えば映像も人肌より温度の低いクールなトーンで統一されており、舞台となるダムのある人里離れた村=イタリア/スイスと国境を接するアルプス圏(エヴィアンの産地があるあたりですね)の厳畯な自然景観も含め、独特な世界観を作っている。ダリオ•アルジェントの「Phenomena」を思い出しつつ……あ、そしてオリジナルのテーマ音楽はなんとモグワイ作!非常に美しいトラックで映像にもハマってます&んー、贅沢。イギリスのテレビでも、ありもの音楽をライセンスするだけじゃなく、もっとこうやってモダン•ロック勢と組めばいいのに。

さてさて。生き返った死者達=「Returned」なメイン•キャラのひとり:スクール•バスの事故で亡くなった少女カミーユが、突如帰宅するところから話は始まる。家族はパニックに陥るが、当のカミーユちゃんは事故以後の記憶を喪失しており「死者」との自覚はなし(成長も止まったまま)。ドラマが進展するうち彼女のような生き返りが他にも村に存在することがはっきりしていくが、死期も死因もバラバラ〜互いに知り合いでもない彼らの帰還に一貫性はなさそう。周囲の森に住む動物達やダムにも怪現象が起き始め、そもそもこの村自体がヘン。しかも帰って来た死者連中はどうも不死身らしいとか、どうして?どうやって?何が?とナゾとホラーの座布団がどんどん積み重なっていく。

たとえば捜査官やマスコミ、科学者、医者といった「謎を解く総合的な立場にいる人」が出てこないので(いちおう警察はいるけど、相手が超常現象なのであんま役に立ってない)、生き返った人間達に出会った遺族他がそれぞれ状況に対応する姿から、観ている側が自分なりのロジックを組み立てるしかない。んなわけで放映時はファンが様々な仮説/理由付けを試みていたけど、これといった説明はないままでまずは8話を完走している。

なかなか無茶なドラマなわけだけど、それでもフォローしたのは撮影他のプロダクション値がおしなべて高く、またメイン•キャラ達のバック•ストーリーがいずれも面白いから(各話のタイトルは登場人物達の名前からとられている)。かつ、モダンSFやホラー/ファンタジーの瞬間着火で爆発!型のセンセーショナルな話法とは異なり、「有り体に見せる」よりも雰囲気やニュアンスで「寒気を感じさせる」型の落ち着いた演出〜ゆったりしたペース配分が効いているからだろう(そのぶん、たま〜に出てくるショッキングな場面のインパクトはめちゃ大きい)。

とはいえこの「説明なしの疾走」が可能だったのは、ストーリーとキャラを配置するのがキモである初回シリーズならでは、とも思う。今年オンエア予定の第2シリーズでは、それなりにミステリーも明かさないと観る側から不満の声が上がるんじゃないだろうか。理解を越えたサムシングを相手に、アンサンブル•キャストが様々なエピソードを展開……という構図が「Lost」に似ているとの指摘はあちこちで見かけたけど、これだけ風呂敷を広げたところで、果たしてどうなっていくのかな〜。さすがにその「Lost」みたく6シーズンも引っ張ることはないだろうけど、面白いまま、でも破綻しないでもらいたいところ。

「Top of The Lake」はニュージーランド/英合同プロダクションのオリジナル•ドラマで、ジェーン•カンピオンにとって久々のテレビ•ミニ•シリーズというのも話題を呼んだ。「テレビ黄金時代」が叫ばれる昨今だけど、先述した「Southcliffe」のショーン•ダーキン同様、今後も映画界のクリエイターがテレビ界へとエグゾダスする傾向は増えそうだ。

国際的に知られるアート系映画監督のオリジナル•ストーリーだけにキャスティングもなかなかふるっていて、「Mad Men」でブレイクした演技派エリザベス•モスを主演に、「Lord of The Rings」のファラミアことデイヴィッド•ウェナム、スコットランドの名優ピーター•マラン、そして「友情出演」的にホリー•ハンターら実力派が顔を並べる。彼らの演技合戦だけでも見応え十分だし、経験の浅い子役の良さも含め、監督の演出力を感じずにいられない。

話の大筋はニュージーランドのスモール•タウンから12歳の少女が失踪し、その捜索のため「里帰り」した女性刑事ロビン•グリフィンが過去と対決することになる……というもの。なんで体裁としては刑事ミステリーであり、少女をめぐる謎の解明がストーリーを動かしていくとはいえ、時代が変わっても変わらない弱者搾取の構図を訴える社会派な視点、そしてフェミニズム/性の政治学がレイヤーされるなど、ジェーン•カンピオンらしい骨のある作品になっている。

捜査を通じ変化•成長していくロビンの内面を追いつつ、背景に父系社会と母系社会の対立の図式が置かれているのは面白かった。父系の象徴はピーター•マランをリーダーとする地元のギャング•ファミリーで、対する母系を担うのが入植者は女性オンリーの「パラダイス」なる名のコミューン。男性への依存から逃れ、違う生き方を求め集まった女性達の導師を演じるのがホリー•ハンターなんだけど、話し方やルックスも含め、パティ•スミスに演じさせてたら地でオッケーだっただろうなぁ……と感じる役回りだった。

こういう風に父系/母系を典型化するのは、単純過ぎ?とも映る。しかし両俳優がカリスマたっぷりに演じたこの2役は白黒つけがたい複雑でエゴイスティックな人間性も備えていて、ストレートではない。親と子の因果がめぐるこのドラマにおいて、今の時代のファミリー(血のつながった家族はもちろん、疑似家族も含む)とは?という問いかけは大きいわけだけど、最終的には父系/母系の是非ではなく、むしろそのどちらか一方にだけ偏ることの危険性を子供達への影響を通して描写することで、男女の調和の中にこそ希望がある……というのが、根底のメッセージじゃないかなと思った。

にしても、どちらの作品もロケ地の自然景観の美しさには魅了された。特に「Top of The Lake」が撮影されたニュージーランドの手つかずでフロンティアな風土は――ピーター•ジャクソン作品でおなじみとはいえ――まだ「地」の持つ神秘的な力を残していると感じさせるものだったし、その地に生きる人々の精神に影響を与え、彼らが独特なカルチャーや社会を形成するのも納得できた。単なる背景ではなく、ロケーションもまた「役」だった、ということだろう。

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●Ripper Street:Series 2, Peaky Blinders(BBC)

お次はコスチューム•ドラマ2本。前者は以前に本ブログでも紹介したことのある「ポスト•切り裂きジャック」な時期19世紀末東ロンドンを舞台にした刑事ドラマの第2シリーズ、後者は第一次大戦後のバーミンガムを背景に、実在したというギャング団をモデルにしたオリジナル•ドラマです。

「Ripper Street」はホワイトチャペル:H分署を仕切る主役3人(マシュー•マクファディン、ジェローム•フリン、アダム•ローゼンバーグ)の息がぴったりなのが何よりの魅力だが、準レギュラー•キャストやゲスト陣とのバランスもナイス。ストーリーも当時のロンドンの世相や話題(切り裂きジャックはもちろん、産業革命を背景とする地下鉄や電気といった当時の最先端テクノロジーの登場、実在の人物や人種差別、女性の地位向上といったトピック)を通して現代的なテーマをあぶりだし、かつ人間ドラマも掘り下げるといった具合で、純粋な「ヴィクトリア朝探偵譚」とはひと味違う多面的な作品になっている。

その意味で「プロダクションそのものがノってるなぁ」と好感度の高いドラマなわけです。まあ、誰だって山高帽にステッキ、あるいはコルセット付きのドレスを着て「今は無き」東ロンドンのスラム――切り裂きジャックが霧の中を闊歩したとされる――のセットを歩き回れたら、テーマ•パークにいるみたいで楽しいことだろうけども。

基本的に「1話完結」だった前シリーズに対し、この第2シリーズでは主役:エドムンド•リード警部の宿敵が登場し、この敵の撲滅が全体をゆるく繋ぐテーマになっている。作劇という面では、前•後編に分かれた最終2話ばかりではなく、もうちょっと全話を通してこのキャラと彼の悪漢ぶりを突っ込めばスリルが増したんじゃ?と思う。けど、今回は「悩める男」リード警部以外のキャラ達の秘密や葛藤にももっとフォーカスが当てられている――主演3人を食いかねない存在感のある女性キャラ:ミィアンナ•バーリング演じる娼館のおかみ=ロング•スーザンのエピソードが秀逸――ために、あまりストレッチできなかったのだろう。

ロング•スーザン好きのついでに、ミィアンナ•バーリング(若い頃のデビー•ハリーに似てる!)の現代仕事。

<冒頭から出てきますが、顔が拝めるのはタイム•カウントだと2:15。デビー似ゆえのキャスティングながら、「Twilight」とも「Downton」とも違ってナイス>

なので「十手と岡っ引き」型なアクションやドンパチはやや抑え気味になり、演技やキャラの内面描写の比重が増した今シリーズ。しかし役者の層は厚く、レギュラーに加えて今回はアイルランド出身のナイスな若手:ダミアン•モローニーが参加、またゲスト出演ではジョゼフ•マウル&ポール•ケイ(ジェローム•フリン、前シリーズのイアン•グレンに続く「Game of Thrones」組。本作はBBC Americaでも放映されているので、米受け狙いのキャスティング?)、「Breaking Bad」のゲイル役でもおなじみの名脇役デイヴィッド•コスタバイルと、ドラマを盛り上げてくれました――

――が、残念なことに「Ripper Street」はこの第2シリーズで打ち切りが決定。視聴率の低迷が理由らしいんだけど、アイドル顔のヤングではなく大人な役者を揃えた主演3者のケミストリーが良いだけに、あう〜ん、もったいない。特に今シリーズでは地味めだったジャクソン(アダム•ローゼンバーグ)は今後の活躍を観たかったし、真面目一徹でややうざったいリード警部役をこなすマシュー•マクファディンがコメディもこなしている(「Ambassador」、ウェスト•エンドの舞台「Jeeves&Wooster」)のを最近知って、余計興味が募ってしまう……そういや、マシュー•マクファディンという人は声のいい昔ながらの「役者さん」で、義理•人情にやたらと固い(今やなき)感覚も含めてどこか日本のお侍ドラマっぽさがある「Ripper Street」で彼を見ていると、「この人、『遠山の金さん』とか似合いそうだ」と、ついつい思ってしまう。

というアホな妄想はさておき、バック•ストーリーやキャラ達も、まだたくさんの可能性を秘めているドラマだと思うんだけどなぁ。もっとも、先述したように犯罪/社会/人間ドラマと色々なアイデアを詰め込んだ作品だけに、それが面白いのと同時に、逆に「ストレートなヴィクトリア朝時代劇」を求める視聴者を困惑させることになったのかもしれない。

この打ち切りの報を知った時は、「ダミアン•モローニーがキャストに参加してすぐ『Being Human』も打ち切りになったし、悪いカルマが?」などと冗談半分に思っていたけど、ハマって観ていた「The Hour」も同じ憂き目にあったのを思うと、自分のセンスに何か問題があるのかもしれない……トホホ。

物語の時代設定が(比較的)近いだけに、「Peaky Blinders」のタイトル•ロゴや埃っぽい街路にガス燈のセット/プロダクション〜グレイとくすんだ緑&茶色が基調トーンの映像は「Ripper Street」のそれに通じるものがある。しかし第一次大戦の傷跡がまだ残響する中、無法がはびこる社会……という状況はいやがおうにもニヒルな陰りを添えていて、舞台は1920年代:バーミンガムのスラムながら、善と悪が絡まりあう西部劇――特に「Deadwood」――を思い起こさせるものがある。また、ストーリー•テリングのメインの視点(POV)は犯罪やアイルランド民族運動を排斥しようとする警察ではなくて、犯罪者=ギャング団「ピーキー•ブラインダーズ」と、彼らを率いるシェルビー一家の側にある。

んなわけで、放映前のバズとしてはHBOのヒット作にして時代設定他に共通項のある「Boardwalk Empire」を引き合いに出すってのが多かったし、何より主演に映画界の実力派スター:キリアン•マーフィが乗り出したというのが話題になった。とはいえギャング•ファミリーからブック•メイカーへの成長(合法組織への拡大)という成り上がりの過程もこのシリーズのエンジンのひとつであり、禁酒法時代のプレイヤー達を描いた「Boardwalk」にように華やかではないし、スケールもあそこまで大きくはない。

しかしカリスマティックな権謀算術家でありながら心に傷を抱えるローナーであり、「ロミオとジュリエット」ばりのロマンスに身を投ずる主役:トミー•シェルビーの複雑な人物像をキリアン•マーフィは見事なバランスとニュアンス〜たぐいまれなほお骨とで具現化しているし、他にもサム•ニール演じる主任警部キャンベルの放つ重厚かつダークな彩り、男社会の中で生き延びてきた家母長としてのヘレン•マックロリーの存在感など、質の高い演技が堪能できる。

劇中にニック•ケイヴ&ザ•バッド•シーズやジャック•ホワイトの曲(WS、ラカンターズ)ががんがん使われるのも、最初は「こりゃぁ思い切ったアナクロだな!」と感じたけど(まあ、この挿入歌のセンスもブライアン•ジョーンズタウン•マサカーの曲が主題歌である「Boardwalk」との比較に繫がっているんだろうが)、きれい事では済まない家族関係や人間模様、抗争を時にブルータルに描くこのドラマのブルース性〜人間の「業」の悲しさを強調するのに役立っている。

こちらは第2シリーズ続投が発表されていて、シェルビー家中心の人間ドラマなのか、あるいは組織発展にともなう政治的な策謀が中心になるのか、ストーリーがどう展開していくか興味深い。ちなみに「ピーキー•ブラインダー」の語源は、このギャングの面々が被っていた平帽子のつばにはカミソリが仕込まれていて、喧嘩や戦闘の際に敵方を斬りつける(目を狙う:Blinder)ことで恐れられていた……というものらしい。本作に接するまでその存在すら知らなかったけど、掘り起こせばロンドン以外にも、イギリスには色んなドラマの種子が転がっているようです。

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●Orphan Black(BBC)

最後に紹介するのは、まったく毛色の違うカナダ/アメリカ合作のSFスリラー「Orphan Black」。SFやファンタジー、ホラーといったジャンル作品を専門に扱うカナダのTV局(「Dr.Who」等を輸入放映)制作のオリジナル番組だそうで、テーマは人工授精で生み出されたクローン人間と、その技術を開発した組織をめぐる国際的なコンスピラシーということになる。

というわけで、平たく言えばコミコン•ファン向けな内容であり、実際グラフィック•ノヴェルを読むように一気に観れるし、シリアス一辺倒ではなくコミカルな面もたっぷり用意されている。ストーリーが荒唐無稽なのは言うまでもないし、若者がターゲットの軽いエンタメっちゃエンタメである。

しかし映像/色彩デザインのセンスは「子供騙し」なそれではないし、スマート&ウィットに富んだ台詞回し&キャラやストーリー展開、テンポのいい演出には引き込まれる「サムシング」がある。SFXが炸裂するスーパー•ヒーローorヒロインもの、メカ重視なスペース•オペラ、あるいは怪物話のモダナイズではなく、ごく普通の(孤児で養子に出された)女性を主人公に、彼女が北米のとある現代都市を舞台に機転やカン(そして運)の良さとで危機を切り抜け、自らのアイデンティティの謎に迫っていく……という設定はそれだけでもなかなかユニークだし、なんだかんだで全話観てしまった。

多重な人格/アイデンティティを扱った女性主演のTVシリーズということで、本作のアイデアにジョス•ウィードンの「Dollhouse」が影を落としている、という説はよく目にする(っていうか、日本人から言わせてもらえばこういうのって「キューティーハニー」が元祖ではないでしょうか?)。

しかしこの作品の最大の魅力は、自分にとっては謎解きよりも、むしろ複数のクローン――国籍も生い立ちも異なる、でも中身は同じ女の子――をひとりで演じ分ける主演のカナダ人女優:タチアナ•マズラニーを眺めることだった。ルックス(かつら、メイキャップ、服装他の「変装」)だけではなく英米欧アクセントの違い、立ち居振る舞いといった細かい演技で各キャラを差別化する彼女の七変化ぶりとアクションからコメディまでこなすがんばりは、それだけでも賞賛に値すると思う。

先にも書いたように、基本的にはSFの範疇にあるので「空想にはついていけないよー」と感じる人もいると思う。ゆえに万人受けする作品とは思わないけど、得てして「外宇宙からやってきた不可侵テクノロジー」とか「未来科学が生み出した理論」といった、「よく意味は分からないけど、なんとなく納得させられてしまう」基盤にのっとって話が進むケースが多いこの界隈。
そんな中でヒューマン•クローンという「もしかしたらあり得る」話を軸に、パラレル•ワールド=人間が時に抱く現実逃避のファンタジーである「もしも自分がどこか他の場所に存在して、今の自分よりエキサイティングな/今の自分とはまったく違う生活を送っていたら?」そして「他の自分に出会ってしまったら?」を現実的に描くアプローチは買う。

謎に謎を畳み掛け、エキサイティングな勢いを維持したまま第1シリーズは終了したけど、新シリーズで話がどう転がっていくのか?なにげに楽しみなドラマが、またひとつ増えました。

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というわけで長々あーだこーだ垂れましたが、2014年は既に始まっているわけで。

現在放映中の「The Bridge」SE2、ウェールズ版「Wallander」(?)とでも言いたい力作「Hinterland」、待機中の「Line of Duty」SE2(マーティン•コンプストンとヴィッキー•マクルーア好きな自分には嬉しい刑事もの!)を始め興味深いドラマ、そしてコメディでは最近発見してハマったブライアン•リモンドのカルトなスケッチ「Limmy’s Show!」(めっちゃシュールなスコティッシュ•コメディ。相当に面白い&新しい)、クリス•リリーの名作「We Can Be Heroes」&「Summer Heights High」のスピン•オフ作「Ja’mie:Private School Girl」(豪米では昨年放映済みの作品で、レヴューがあまり良くないので心配。前作「Angry Boys」も、ムラがあって微妙な内容だったし、さしもの天才クリス•リリーもそろそろ体力が尽きて来たのかな……涙)も近々スタート。そこらへんも、いずれまとめてリポートしようと思います。では〜

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Mariko Sakamoto について

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