Beat of My Own Drum:24. Britpop

そのいたましい死から今年で20年……ということで、カートの命日の前後にメディアで数多く組まれた回顧特集やニルヴァーナ関連記事。しかしイギリスでは自国伝統の再確認もお忘れなく!とばかりに、BBCを中心に「ブリットポップ:20周年」という懐かしネタが振りまかれてました。

バンド•ヒストリーならともかく、メディアに命名された「現象」「ムーヴメント」(あるいは美学/世代/音楽的志向になんらかの共通項があるバンド&ファン群)というのは、たとえばパンクやグランジ同様、「いつから始まり、どこで終わったのか」という客観的なラインは引きにくい。ブリットポップにしても、グランジ〜マンチェ〜シューゲイズを押しのけたスウェードのセンセーショナルなデビューやブラーの「Modern Life Is Rubbish」まで遡れば、その種子は1992〜1993年あたりに蒔かれたと考えることができる。

それでも1994年が「ブリットポップ•イヤー」としてアニバーサリーの対象に選ばれたのは、やはりブラー「Parklife」、そしてオアシス「Definitely Maybe」という代名詞的作品&その大ヒットというイベントを生んだアイコニックな年だからだろう。ここから1995年をピーク期に、1997年頃でブームは退潮していった……というのが、まあ大多数のコンセンサスになると思う。

というわけで、アーカイヴ映像を中心とする特番放映(まだ「Top of The Pops」が元気だった時代だけに素材はふんだんにある模様)、そして「(中年の)音楽好き御用達局」として支持されているデジタル•ラジオ局:BBC6ミュージックではデーモン•アルバーンやギャズ•クームスらを迎えたスタジオ•セッションetcに加え、「BBC6’s Favourite Britpop Anthem(BBC6のリスナーが選んだベスト•ブリットポップ•アンセム)」なる企画も登場。メインの番組ホストがスティーヴ•ラマック&ジョー•ワイリーという共にうざったいDJなのでわざわざチューン•インまではしなかったけど、以下に投票結果をBBCウェブサイトから引っ張ってきました。

1. Common People by Pulp
2. Bittersweet Symphony by The Verve
3. Don’t Look Back In Anger by Oasis
4. Wonderwall by Oasis
5. Parklife by Blur
6. Animal Nitrate by Suede
7. Girls & Boys by Blur
8. Slight Return by The Bluetones
9. Disco 2000 by Pulp
10. Girl From Mars by Ash
11. The Bends by Radiohead
12. The Riverboat Song by Ocean Colour Scene
13. Alright by Supergrass
14. Wide Open Space by Mansun
15. Something For The Weekend by The Divine Comedy
16. She Said by Longpigs
17. 12 Reasons Why by My Life Story
18. Going For Gold by Shed 7
19. Trash by Suede
20. Everything Must Go by Manic Street Preachers
21. The Changing Man by Paul Weller
22. Inbetweener by Sleeper
23. Female of The Species by Space
24. Line Up by Elastica
25. Staying Out for the Summer by Dodgy
26. Road Rage by Catatonia
27. Great Things by Echobelly
28. For the Dead by Gene
29. Wake Up Boo! by The Boo Radleys
30. Ladykillers by Lush
31. Drink The Elixir by Salad
32. Fine Time by Cast
33. Stay by 60ft Dolls
34. Daydreamer by Menswear
35. Middle of The Road by Denim
36. From A Window by Northern Uproar
37. Smile by The Supernaturals
38. Violent Man by Marion
39. Afrodisiac by Powder
40. The Greatest Show On Earth by The Strangelove

なんでも3万以上の票を集めた結果だそうですが、どんなに「Best Ever」だの「Ultimate」と銘打ったところで、こういう人気投票はまた10年経って世相が変われば変化するもの。とはいえ今回パルプが1位ってのは、イギリスと日本の感性や認識の違いを感じさせる話だなと思った。あと、ザ•ヴァーヴがオアシスとブラーより上ってのも、①ブリットポップを享受した英世代の多くが現在直面しているほろ苦い現実そして②当時ではなく20年経った現在のパースペクティヴの賜物かな、と(もうひとつ意外で嬉しかったのがブルートーンズのトップ10入り&デニムの35位★)。

と同時に、すっかり忘れていた名前に出くわし、リストを眺めるうちにしばしタイムスリップ!目眩を感じずにいられなかった。今もばりばりの現役、解散後もメンバーがソロで活躍しているバンド、再結成して割と最近ツアーした連中なんかも多く含まれている。とはいえ、ロングピッグス、スペース、マリオンとった名前には懐かしさを覚えずにいられないし、一方でスリーパーがエラスティカより上位(なぬ〜??)だとか、スーパーグラスが案外と順位低いとか、サラダにノーザン•アップロアー、パウダーと、「マジすか(組織票?)」と驚かされる泡沫なアクトも。

泡沫といえばメンズウェアだけど、「ブリットポップ•バブルの象徴」としてこの人達は逆に不可欠なランク•インだろう(それに元メンバーのマット•エヴェリットは現在6ミュージックでDJを担当、サイモン•ホワイトはブロック•パーティの初期マネージャーと、なにげに業界を生き抜いて影響力もあるみたいだし)。

ともあれ、自分にとっての意外なこれらの「ギャップ」もまた、企画に投票するほど熱心で、当時フレッド•ペリーのポロシャツあるいはヤッケ着用、アディダスのガゼルを履いて「cheers!」と乾杯していた=ブリットポップをBGMに青春を謳歌し、生きたイギリス人達の「古き良き時代(=若さ)へのノスタルジー」への思いと、海の向こうで音源だけキャッチしていた=たぶんもうちょい体温が低い&シニカルだった自分との差ってだけのことかもしれませんが。

このリストを見ていて「フムフム」とうなずくと同時に、様々な90年代曲を芋づる式に思い出すことに。というわけで今日はそれらのビデオをいくつか。バンドとしては才能があるのに、この投票企画の「アンセム」という条件(平たく言えばカラオケで盛り上がるビッグな「合唱曲」。ゆえに、楽曲としてはより秀逸な「Wonderwall」が「Don’t Look Back〜」より上位という結果になっている)が制約になってランク•インしなかったであろうアクト、隠れ名曲、そして「白人男性ギター•バンド」というブリットポップのパブリック•イメージ/フォーミュラやサウンド〜ブームのタイミングから少々ズレた連中……色々と混じっております。

念のため断っておくと、間違っても「ブリットポップの王道なチョイス」ではなく、むしろひねった「こんなのもあるでよ〜」に近いです。そもそも「他の人達が作ったリストを読んで、その感想を並べただけ」の怠惰の極みなポストなわけで。しかしこういう機会でもないとわざわざまとめてブリットポップというテーマに触れることもないだろうし、お茶にお菓子のついで、あるいはビールにおつまみタイムのお伴程度に、「懐かしい曲だわね〜」「いたよねこいつら!」ってノリで、おヒマな方は以下のロートル•コメにお付き合いください。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

● Teenage Fanclub

<「アンセム」ってことなら、もっとパンチの効いた「The Cabbage」や「Sparky’s Dream」の方がいいのかな?しかしこの曲のエモーショナルな隆起とメロディ&コーラスの完成度は、自分にとってはフォーエヴァー号泣もの★なリアル•アンセミック。この曲が収録された「Grand Prix」は95年発表=ブリットポップたけなわ期のアルバムになる(しかもクリエイション発売)。たとえばザ•スーパーナチュラルズがランク•インしていることからも、スコットランドが除外されているわけではないはず(「イングリッシュ•ポップ」ではなく「ブリット」だしね)。しかしこのリストから彼らが完全にオミットされているのはたぶん、一時的なブームや概念にとらわれないバンドだからでしょう>

●Primal Scream

<スコッツ&クリエイションついでに、プライマル•スクリーム。やはり「Screamadelica」でインディ•ダンス•ブームを引っ張ったという認識の方が大きいのか、これまた完全シカト。でも、ぶっちゃけこの曲でみんな踊るわけでしょ?「Give Out〜」は(サザン•ロックとはいえ)もろにストーンズ経由で、ブリットポップの「60〜70年代英ロックへのオマージュ」という面はクリアしている。多くのアクトがアセクシャルなブリットポップにとって、この丸出しロケンローはセクシー過ぎるのかな。ともあれ、アルバムとしては続く「Vanishing Point」の方が遥かに意義あり>

●Pulp

<オアシス、ブラーと並んでこのリストに2曲ランク•インしたのはパルプだけ=この3組が「イギリスにおけるブリットポップ三羽烏」ということになるのだろう。「Common People」も「Disco 2000」も文句無しの名曲ですが、もっとパルプ!という意味を込めて追加ノミネート。「Lipgross」のテンションと鮮やかなサビのコントラスト、「Do You Remember〜」は「Disco 2000」の前身とも言えるセンチメントとビルドアップに涙っす>

●World of Twist

<シェフィールドついでに、パルプ×オアシスとでも言いたいこのバンド。時期的には1991年=インディ•ダンスに括られるバンドですが、ルックスやひねったセンスはむしろブリットポップとかぶってます。この曲は後にビーディ•アイがカヴァーに取り上げたことでもお馴染みかと>

●The Real People

<1991年のついでに、リヴァプールのこのバンド(ザ•ラーズはよく知られていると思うのでスルーさせていただきます)。オアシスのデモ•テープ作りに協力したことでも知られる彼ら、これまたプロト•ブリットポップと言えそう>

●Super Furry Animals

<彼らもまた、TFCあるいはプライマルのように「ブリットポップ」のイメージや浮かれ騒ぎに与しない〜むしろそこから距離を置く、という潜在的にアンチなスタンスゆえに投票がためらわれたアクトだろう(繰り返しになるけど、リストにはマニックスにカタトニア、60フィート•ドールズも入ってるので「ウェールズ除外」なわけではない)。しかし今のご時勢にどんぴしゃな「The Man Don’t Give A F**k」、ボウイ型のアンセム「Demons」等、候補はいくらでもあると思うんですが……びっくりです>

●Mansun

<逆にいい意味で驚かされたのが、14位=マンサンの「Wide Open Space」。絶品名曲なので当然っちゃ当然ですが、ブラーやオアシスの鋳型にはまらず「異端児」扱いされてた連中なので思わずガッツ•ポーズです。ファーストもいいけど「Six」も!ということで。リリースは1998年=「ポスト•ブリットポップ」とも称される作品ながら、今のイギリスの若いバンドになかなか見出せない壮大さ•野心•ポップネスの力強い融合は、シーンにまだ自由な風が吹いていた頃の遺産のひとつかな?と>

●The Charlatans

<マンチェ•イメージが強いゆえにブリットポップと看做されていない=ボーダーラインなアクトみたいですな。しかし元モッズ•バンドあがりのメンバーも含む彼らはブリットポップのエソスにマッチしているし、セイント•エティエンヌとティムのコラボもポップそのもの。むしろ「ローゼズ•マンチェからオアシス•マンチェにスムーズに移行することのできた数少ないサヴァイヴァー」でしょう>

●The Chemical Brothers

<シャーラタンズのついでにケミカル。先述したように、ブリットポップの(非常に大雑把なのは承知で書きますが)イメージとしてビートルズを原点とする「4人(ないしは5人)のちょっとルックスのいい白人青年がギターをじゃかじゃか弾いてる」というのがあるわけだけど、ポーティスヘッドやトリッキーといったブリストル勢も盛り上がってました&これもれっきとしたアンセムと言えるんじゃないでしょうか?>

●Black Grape

<マンチェついでにもう一発、ハッピー•マンデーズ同窓生によるこのバンド。イメージには合わないでしょうが、当時はオアシス好きもブラー好きもラリパッパでこの曲で一緒に歌い踊っていました>

●Kula Shaker

<マンデーズで思い出したこの曲。クーラ•シェイカーもほぼ同期生ながら、①セレブの息子であるクリスピアンへのやっかみ②当時の彼のナイーヴな発言等、ネガな印象はいまだ尾を引いている模様。②についてはプレスの罠にまんまと落っこちた面もあるし、同様のスキャンダルで叩かれたブライアン•フェリーやボウイは「時効」になってるのを思うにつけ、ちょっと同情>

●Reef

<クーラが出て来たところで、ブリット•グルーヴ•ロック篇ということでこの人達も。フリーやストーンズを偲ばせる70年代テイスト/サーファーな長髪/お腹の底から歌い上げるギャリー君の歌唱と、ブリットポップのイメージにはそぐわない。でもプリティ•ボーイズがのしたこの時期に逆に男臭さを求める層にアピールしたのか(?)、人気はありました>

おまけにこれも。

<ミニディスクの耐久性、ここまで良くないんですけど……>

●The Boo Radleys

<アンセムというお題に合わせて、このエピックな名曲。時期としては1992年発表だし、「この時期のブーはブリットポップよりシューゲイズだろ!」と石を投げつけられると思います……でも、この曲ではなくて一聴陽気な「Wake Up」(もちろんポップ•ソングとしては優れた曲です)がチョイスされたところに、ブリットポップにまつわるイケイケなイメージっていまだに強いんだなぁ……と。にしてもこのビデオ、基本的にルックス地味なメンバーに任せておれん!とばかりに社長:アラン•マッギーがしゃしゃり出ることで一層の地味感を増しているのが笑えます>

●Babybird

<ルックスが「ヤング」でも「プリティ」でもない、でもアンセムというタームには外れてないのがこの曲。ものすごく乱暴に言えば、(初期)コールドプレイやジェームス•ブラントなんかは基本的にはこの音楽曲線に含まれるのではないかと>

●Thurman

<ここからは、色んな意味での「ブームの余波」を感じさせるアクトをいくつか。波に乗って登場した(=レコード会社に担ぎ出された)バンドは色々いますが、サーマンはブラーやパルプの「いいとこ取り」によって最大公約数的なブリットポップを鳴らしたクチと言えそう>

●Smaller

<極めつけはやっぱりこの人達?>

●Mantaray

<モッズィ―なトリオとしてならしたマンタレイ。「Promises」、「Know Where To Find You」といった後期曲の方が好みですが、埋め込みできないのでこのトラックで我慢の子〜>

●Orange Deluxe

<マンタレイと同じレーベル所属、更に強引にトリオねたにまで寄り切りまして……三人組ファイヴ•サーティの中核だったメンバーの結成したオレンジ•デラックス。才能ある人達なんですけど、どうも波に乗り切れずにアルバム2作で終わってしまいました(涙)>

ついでにこの曲。ご存知「Don’t Look back in Anger」のB面。

上記2曲の「ちょい似」は既に指摘されてますが、大元は結局のところどっちもこれですかね〜??

<リトル•スティーヴィーの(数ある)名曲のひとつ>

●Nilon Bombers

<これまた隠れジェムなバンド。この泣かせアンセムを収録したアルバム「Bird」は、なんとキム•フォウリーのプロデュース!>

●Honeycrack

<音楽的に「純正ブリットポップ」を離れてきたところで、まずは当時のアメリカン•サウンドともリンクしていた感のあるハニークラック。元ワイルドハーツのメンバーを中心とするバンドゆえ「ロック寄り」=ポップではないイメージがあるみたいですが、元気いっぱいなサウンドはアッシュのファンにはアピールするはず>

●Tiger

<これまた、ちょっと妙なクセのあるバンドでしたねー。ある意味音楽以上に、ヴォーカルのお兄ちゃんの髪型(マレット)にビビらされました>

●Placebo

<多国籍バンドゆえに「ブリットポップ」の概念に当てはまらないバンドなのかな。ともあれブリットポップが再燃させたジェンダー•ベンディング(=男の子?女の子?)を体現しつつ、アメリカのネオ•ゴス味を持ち込んだのは立派>

●Edwyn Collins

<あーだこーだと書いてきましたが、ビデオの羅列でお疲れなことでしょう……ということで本ポストのシメに向かいま〜す。ご存知:元オレンジ•ジュースの名匠エドウィン•コリンズのこの粋で痺れまくり!な名曲は「ブリットポップ」の公式概念からは外れるのかもしれません。が、いまだにイギリスにおける「レトロ」の代名詞的存在=キッチュ•イメージのひとつであるジョセフ•ヘンリー•リンチのイラストをあしらったご機嫌なジャケットも含め、90年代半ばのブリテン島が――エドウィンが、とは言いませんが――居心地のいい過去を振り返っていたのを感じさせます。ちなみに、JHリンチと並んで当時のカムデン•ロックやポートベロー•マーケットでのしていたのがウラジミール•トレチンコフの複製画。っていうか、今でも「レトロ」な雰囲気を醸したいショップだのカフェだのパブでは、彼らのイメージは再利用されてるんでしょうな>

●Cornershop

<以前もどこかで書いたかもしれないけど、自分が最初にロンドンに暮らした時期(=1997〜98年)、もっとも足しげく=オブセッシヴにライヴを観に行ったUKバンドはコーナーショップとハイ•ラマズ(それ以外は、大体アメリカ勢のライヴに費やされていました)。バンド名に込められた皮肉といい、かつてモリッシーを批判したことがある彼らも「ブリットポップ」という限定的なタームにはまったく興味がなかったと思う。しかしパンジャビ〜シーク系であるティンダー•シンはもちろん、インド本土、バングラデシュ、パキスタン、スリランカからの移民を含む「ブリティッシュ•エイジアン」は独自のカルチャーを生み出しており(アフリカやジャマイカからの移民も同様だ)、それらも含めての「モダンなブリティッシュ•ポップ」と考えればこの名曲もノミネートされていいんじゃないだろうか>

●The Mike Flowers Pops

<最後はこちら。もちろんジョークから生まれたノベルティ•ソングですが、レトロなラウンジ•ポップ調のアレンジは当時の若者達が「ブリティッシュ•クール」のアイコンと目したスパイもの=「007シリーズ」やマイケル•ケイン主演作(「Alfie」、「The Ipcress File」、「The Italian Job」他)といった映画/テレビ作品と、それらと切っても切れない縁にある音楽――ここでは特にジョン•バリーやバート•バカラックがリファレンスでしょう――への愛情を思い出させます>

広告

Mariko Sakamoto について

Hi.My name is Mariko.Welcome to my blog,thanks for reading.坂本麻里子と言います。ブログを読んでくれてありがとう。
カテゴリー: beat of my own drum, music タグ: パーマリンク