Beat of My Own Drum:29. Sleaford Mods

「Broken Britain」とも称される今のイギリスを知りたいならこれでしょう!ということで、今日は最新作「Divide and Exit」が話題を集めている、現在ノッティンガムを活動拠点とするエレクトロ•ラップ•デュオ=スリーフォード•モッズをピックします。

ジェイソン•ウィリアムソン(歌詞/ラップ)とアンドリュー•ファーン(シンセ/エレクトロ他)から成るこのユニット、実は活動歴は7年近いとか。まあアルバム•ジャケットを見ただけでも、ジェイソンがかなり年季入ってるのは即バレですよね。ちなみに、たぶん44歳近いこのラッパー/シンガーのモットーは「I used to be in bands, fuckin hated it」(以前いくつかバンドでやってたけど、クソ最悪だった)で、ブリットポップ他のバンド•ブームに乗って色々やったものの不発→ロンドンを離れてよりDIYな音楽活動に手を広げた……という経歴の持ち主だ。

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bandcampSoundcloudにも既にかなりの数の楽曲(っていうか、ほとんどの音源はまだ試聴できます)がアップされているし、また宅録感覚のチープなシンセ•サウンド&サンプリング•ベースのプロダクションからも伺えるように、とても今風なインディペンデント•アクトである彼ら。しかし昨年からレーベルと契約を交わしたことでメディア露出他のバックアップも受けることになり、初期音源を集めたコンピ等もリリースされ、にわかにバズが盛り上がってきている。

んなわけで自分も友人から「きっと気に入るから!」と大プッシュされて聴いてみたんだけど――いやー、伏せ字/四文字言葉の連打と的を射た社会観察の数々、爆笑の連続ですわ。「ラップ•デュオ」とは書いたものの、この人達のパフォーマンスはバッキング•トラック&ポエトリー•リーディングというのにむしろ近い。スーサイドまで引き合いに出される初期音源のトラックはミニマル•ヒップホップやダークなエレクトロニカの影響(たとえばウータン•クランやDJシャドウ〜クリス•モリスの「Blue Jam」)も感じるけれど、近作ではザ•フォール系のささくれたポスト•パンク•サウンド&ベース•サウンドにも接近。プロダクション•ヴァリューもへったくれもない、安々ぶりです。

そのある意味しょぼくて猥雑なバッキングがあるからこそ、ジェイソンの歌詞およびわめきに近いヴォーカル•パフォーマンスが映える。さっきも書いたように「S**t」「C**t」「F**k」といった罵り言葉がふんだんにちりばめられたこの人の詩は、ぱっと聴き「酒場の隅っこで誰かれ構わずブツブツ文句を垂れてるオヤジ/酔っぱらいの悪口雑言」だろう。しかしイギリスの現保守政権から社会格差、様々なスキャンダル、ポーズばっかのロック•スター(オアシスにザ•キルズと、標的はワイドです)、リベラルでPCなライフスタイルに首まで浸かった昨今の中流階級&インテリゲンチャ、ファッション業界、人々をリアリティから隔離するソーシャル•メディア……等々、容赦なく手当たり次第に拡散しながら「モダン•ライフ」のラビッシュを標的に威嚇といちゃもんのツバを吐きかける姿勢には、普段も文句ばっか垂れてる自分のマインドにはぴったりだったりする。

しかし苛立ちに満ちた罵り声と目を剥く汚水めいた描写の煙幕を掻き分けていくと、ジェイソンの歌詞がシャープな社会観察および風刺のセンス〜それらを包み込むシュールなイメージ喚起に満ちているのが分かる。既に多くの識者が指摘しているけれど、ジョン•クーパー•クラーク、マーク•E•スミス、ハーフ•マン•ハーフ•ビスケットといったポスト•パンクの牙&ブラックなユーモアを隠した知性と、マイク•スキナーが初期ストリーツでやっていたストーリー•テリング×宅録センシビリティをミックスしたとも言うべきスリーフォード•モッズの音楽は、今のイギリスからしか出てこないものだろう。

バンド名の由来は、かつてジェイソン•ウィリアムソンがザ•ジャムにハマっていた元モッズだから、というもの(なるほどだから髪型は今もモッズィーなわけですが、結果として、ちょっと見マンデーズのベズの弟っぽくなってるのが皮肉か……)。本人は意識していないようだけど、この人のローカル•アクセント丸出しな声のトーンそのものはポール•ウェラーにちょい似で、かつジョン•ライドンの嘲りが10%くらい混じっているのもミソだろう。

言葉の面白さがベースのユニットゆえに、日本ではイマイチ受け入れられないアクトだろうとは承知している。しかし本稿の冒頭にも書いたように、「今のイギリス」というナイトメアを深く知りたいのなら、ジェイク•バグよりもこれでしょう。逆に言えば鮮度がモノをいうアクトってことだけど、サウンド面での個性を発揮し始めている「Divide and Exit」は今後の展開への期待を煽る。唯一、Dan le Sac Vs Scroobius Pipみたいなノベルティ•アクト扱いされる危険性がある……ってのは心配ですが、ジェイソンは既に業界のハイプやバブルに揉まれたことのあるベテランなので、大丈夫でしょう。何よりそのジェイソンが、サッチャーが生まれたグランサム出身だってのがケッサクだと思う。

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Mariko Sakamoto について

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