Beat of My Own Drum:31. The Rolling Stones

ここしばらくの「寝る前に読む(→読んでるうちにウトウトと眠りに就いてしまう)」本だった、「A Journey Through America With The Rolling Stones」(ロバート•グリーンフィールド著)をやっと読破しました。もともとの出版は1974年というこの本、内容は72年に2ヶ月に亘って行われたストーンズのUSツアーの内幕を追うというルポルタージュ的なもの。たまたま古本屋でペーパーバックを見かけて、「いっっちょ暇つぶしに……」と気まぐれで買ったような本なんだけど、読み始めたら面白くてなかなか手放せなくなった。トロントから始まり、ニューヨークで終わったこのツアーは大好きなストーンズ作のひとつ:「Exile on Main St.」発売前後に行われたものであり、かつオルタモントの悲劇以来のストーンズ初の北米上陸!ということで熱い視線を集めたイベントでもあったそうだ。

<同ツアーより、「Midnight Rambler」のパフォーマンス>

その話題性/危険性/(当時「世界最高のロック•バンド」だったストーンズの放つ)グラマラスな空気と、「反逆」のシンボルとされたストーンズを迎え撃つ形になった、いまだ学生運動や人種闘争といった社会的な摩擦とヒッピー•ドリームの残滓が混じり合っていたアメリカとの間に生まれる奇妙なテンションとどこかニヒルな雰囲気とを、このトラヴェローグ的な本は鮮やかに脳裏に浮かび上がらせてくれる。

たとえば「この日のシカゴ公演のセット•リストは?」、「カヴァーした曲は何か」とか「この時期のキースが使っていたギターは何?」といったデータ的な観点から言えば、決して役に立つ本ではない。しかし、写真家ロバート•フランク(本の中にも何度も登場するが、途中でキース&ミックと共に逮捕&投獄される憂き目にも遭っている)が製作したこのツアーを追ったいわくつきのシネマ•ヴェリテ映画「Cocksucker Blues」のように、この本はロックンロール•ライフスタイルの栄光あるいは面白可笑しい逸話(ホテルにあぶれてメンバーがヒュー•へフナーのプレイボーイ•マンションに投宿するくだり等、無茶苦茶)やハイだけではなく、ロウな部分――単調な移動とホテル暮らしの連続、警備他のツアー運営上のトラブル、募る退屈や人間関係のプレッシャー、ライヴの興奮を維持するために機能するドラッグ&酒&セックスetc――にも忌憚なく光を当てていて、「実はツアー生活ってあんまり楽しくなさそう……」との感慨が浮かぶ。

<ドキュメンタリー、コンサート•フィルム他これまで何度も映画の素材になってきたストーンズですが、中でもバンド側がスキャンダラスな内容を懸念して上映権をコントロールしているためにもっとも観るのが難しい1本とされる「Cocksucker Blues」のクリップ。キース、疲れ果ててます>

ストーンズ本体=各メンバーの観察も鋭くて興味深かったけど、それと同じくらいにページを割かれているのがバンドの周辺=ツアマネ他の内部スタッフ、クルー、プロモーター(ビル•グレアム他)、サポート•ミュージシャン、レーベル関係者(マーシャル•チェス他)、取り巻き(トルーマン•カポーティも含む記者や写真家達、ドラッグ屋)、追っかけファン&グルーピー達の描写で、ストーンズが訪れたアメリカ各地のそれぞれに異なる土地柄や情景も含めて、この本をただの「バンド礼賛本」とは異なる多角的なエッジのあるものにしている。

何より我ながら驚いたのが、この本を読んでミック•ジャガーへの見方がちょっと変わったこと。ストーンズに関しては、昔からブライアン•ジョーンズ/キース•リチャーズ/チャーリー•ワッツにしかシンパシーが抱けない。すごいフロント•マンだとは認めるけど、計算高さやお金へのがめつさという「ビジネスマン」の印象が先行しがちでどうも評価にバイアスがかかりがちなのです。で、この本でも「個性バラバラのメンバー」を統率して行脚に引っぱり、ストーンズというブランド(会社)を維持すべく暗躍する姿は描写されているんだけど、そうした音楽外=ビジネスやメディアへの対処を器用にこなす際のミックを「台風の目」的な存在として、また「仮面を取っ替え引っ替えしながら対応」とする描写を読んで、「あー、この人もボウイみたいに『本心を決して外に出さないタイプ』なんだな」と納得がいった次第。別に「見直した」とは言わないけど、なんで長らく自分がミックに魅力を感じなかったのか?がはっきりしたことで――本心を見せてくれない人というのは、どうも苦手です――「ソシオパスの一種」とレッテルを貼ってミックを箱詰めにできた気がする。すっきりして良かった〜という、あくまで個人的な満足感ですけど。

もうひとつ面白かったのが、この本が書かれた頃は時代的には「ロック•バンドが10年以上も現役で活動を続けているのは奇跡」とされていて、ロックンロール•ビジネスがいまだに先行きの保証がない存在〜おぼつかない産業として捉えられている点。そのストーンズが50周年を祝った後の今の視点から考えれば、嘘のような話だ。しかし著者のロバート•グリーンフィールドがシャープなのは、70年代ロック産業のギャンブル的な側面にも触れつつ、同時にトップに立ったストーンズがいったん味わい、手放したがらなくなったセレブリティと富とライフスタイルとを維持するには、彼らはこれからもレコードを作り続け、ツアーし続けるしかないだろう、と結論しているところ。その通りになってるわけですね。

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ストーンズついでってことで、今読んでいるのは「ストーンズを発掘した男」こと元マネージャー:アンドリュー•ルーグ•オールダムの自伝「Stoned」。ALOはマルコム•マクラーレン、あるいはアラン•マッギーの前身的存在でもあり、「俺様はいかにしてグレイトなバンドを育て、世に出したか」みたいな自慢話&法螺の羅列めいたエゴ丸出しストーリーになるのかな〜と読む前から辟易しそうだったんだけど、蓋を開ければ本そのもののスタイルがインタヴュー集=ALOをメインに彼の友人恋人、仕事仲間、業界関係者の証言をちりばめるオーラル•ヒストリー形式で、「オレひとり」本ではないので救われている。

この本から浮かび上がるのはまずもってALOの人生遍歴(家庭環境、どんな子供時代だったか、学生時代のキャラ)ではある。とはいえ、戦後のエンタメ景気にどっぷり浸かり、12歳くらい(!)からロンドンの映画館やコーヒー•バーに足しげく通い、テレビや広告業界、マリー•クワントのショップといったファッション界に紛れ込んでいったこの「厚顔な若き成り上がり」を通じて、エルヴィスをきっかけに起爆した50年代末の英ロックンロール•ブームとそれに伴いジャズからロックへ推移していったロンドンの音楽シーンやショウビズ界の変遷〜悪名高いマネージャー達(ドン•アーデン=シャロン•オズボーンのお父ちゃん他)の台頭、ファッション/音楽を媒介にユース•カルチャーがいかに「スウィンギング•ロンドン」へと繫がり、モッズ•ブーム(このシーンにはボウイやマーク•ボランといったその後のスター達も混じっていた)、そしてビートルズとストーンズに発展していったか……という点が浮かび上がる興味深い社会記録にもなっている。がんばって読み進めようと思います。

<ALOの設立したイミディエイト•レーベルの作品から、クリス•ファーロウの名唱>

<しかしイミディエイトと言えばやっぱり看板はザ•スモール•フェイセズ。これはヒット•シングル「Itchycoo Park」B面として発表された曲ですが、隠れたジェムだと思っています。スティーヴ•マリオットはこの時期のシンガー達の中でももっとも好きな人のひとりなのだ>

<スモール•フェイセズでもう一発:名作「Ogdens’ Nut Gone Flake」収録のこの曲。ロニー•レインのリード•ヴォーカルもいいですが、スティーヴ•マリオットのパッション炸裂な演奏が抜群!ちなみにこの出演番組はBBCで1968〜1969年にかけて製作•放送された音楽テレビ番組「Colour Me Pop!」で、放映リストを見ると観たいラインナップがたくさん並んでるものの、一部の演奏を除き収録映像のほとんどは破棄されてしまった模様。むー、残念です>

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Mariko Sakamoto について

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