Beat of My Own Drum: 40.Rye Wax/Lula Cortes&Ze Ramalho/Marcos Valle

ライ•ワックス店内ディスプレイ

ライ•ワックス店内ディスプレイ

レコード•ショップが閉店した……という切ないニュースは、エンタメ小売り業が不振なこの時節柄よく耳にする。が、逆に新たにレコード店がオープンします、という情報もちょこちょこ目にするこの頃。中でも興味津々だったのがペッカムで屋号を上げたRye Waxで、やっとプロパーに開店したところで様子を見に行ってまいりました。

このショップは基本的にダンス•ミュージック〜R&B他の盤を中心とする品揃えで、マイ得意分野とはちょっとズレている。それでも行ってみたかったのは、何よりも立地が自分の住んでいるエリアに近く、自転車で行ける距離にあるから。南ロンドンというのはなぜかこれまでレコード屋や自分のアンテナに合うヴェニューが(他のエリアに較べて)少ない方だったんだけど、その状況がここ2、3年で変化してきたのは体感してきた。東ロンドンと南ロンドンとを繋ぐ電車サービスが開通したのを機にロンドンの若いボヘミアン層やヒップスター達が南下し始め、新たなカルチャーを根付かせ始めたっていうか。

「マニアックなレコード•ショップ兼カフェ」なんていう、まあ実に趣味的で気取ったコンセプトのお店がペッカムみたいなエリアにオープンすること自体、その変化の象徴のひとつじゃないかと思う。もっとも、ペッカムはここしばらくで急速に変化してきていて、ナイスなデリだの小じゃれたカフェ、パブ、アート•スペース他が次々に登場している。理由はぶっちゃけ「他のエリアに較べて家賃が低め&工場跡といったリサイクル可能な〝持て余し空間〟が比較的残っているから」だろう。10年くらい前のベスナル•グリーンやドールストン(今やその波はストラットフォード近郊まで伸びてます)の雰囲気を思い出す。自分が東ロンドンを離れてサウスに移ったのは、そのヒップスター文化にハイジャックされたのに音を上げて……という要素もあったんだけど、彼らの進攻は止まらないようです。嬉しいような、悲しいような。

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敷地内にはバー/カフェ•エリアがあり、今後DJイベントやパフォーマンスも行う予定だとか。

敷地内にはバー/カフェ•エリアがあり、今後DJイベントやパフォーマンスも行う予定だとか。

ともあれ:ショップはペッカム•ライ駅を出てすぐのところに建っている古い倉庫跡:Bussey Buildingの中にある。この建物はCLFというアート•カフェ集団の拠点でもあって、これまでにもここではクラブ•ナイトや映画上映他、様々なイベントが行われてきた。狭い路地を抜けて敷地内に入るんだけど、ショップのあるビルの向かいのユニットはゴスペル•チャーチの集会所として使われていて、日曜だったこともあり、ものすごい音量で歌い上げる信者達の歌声が路地にまで溢れていた。こういうのは、多種多様なカルチャーが混在するロンドンらしい。

スピーク•イージーの入り口を思わせる(笑)地下へのドアを抜けると、わーお。ナイスなカフェ/ショップ空間が広がっているではないか。なんでもここは第二次大戦中に防空壕として作られた場所らしく、低い天井と剥き出しのレンガなインダストリアルなムードはいかにもそれっぽい。開店時間から間もなくしてだったのでまだカフェ/バーはオープンしていなかったけど、ラウンジや椅子がちりばめられたエリアはライヴにもばっちり対応してくれそう。

肝心の品揃えは、①「3ポンド均一」の中古箱②マニア向けに厳選された新譜を柱にする二本立て。CDも申し訳程度に置かれているが、販売されているアイテムの9割は「Wax」を歌うだけあってインディのアナログである(と言っても、知人に「Rye waxに行って来た」と話したところ「ロウソク屋?」と聞かれて笑っちゃいましたが)。3ポンド箱はかなり雑多で、大半はチャリティ•ショップ系のダンス/クラブ12インチが占めている。クレート•ディガーとしての情熱&根気に欠けるので半分ほど漁ったところでギブアップしてしまったが、まだオープンして間もないショップだけに今後もうちょっとアイテムも増えていくことだろう。店の片隅には(恐らく試験的に)中古コミックやDVDも並べられていて、ノリとしてはソーホーあるいは西ロンドンの専門店(Sound of The Universe、Phonica、Honest John’s)の方向性に、「寄り合いの空間」としてのCafe OtoやかつてのBardens Bourdoirのカジュアルさが混ざった感じ。

売りの新譜は基本的に壁にディスプレイされていたが、カウンターにも「レゲエ」「ワールド•ミュージック」他ジャンルごとのクレートが数個置かれていて、インディ/ノイズ/前衛系のボックスはかな〜り渋くアングラなセレクションでびっくり。先にも書いたようにクラブ系がメインのお店とはいえ、いずれ軌道に乗ったらレフトフィールドなヴァイナルももうちょっと充実してくれたら嬉しい話っす。黙々と試聴するお客にあれこれ対応するショップのスタッフもナイス&パッションがあっていい感じだったし、それだけでも「来て良かった」な気分になった。レコード屋に行くのは好きでも、店員がむっつりしていて愛想に欠けるとか、ちょっとしたファクターが「あんまり行きたくない店」に繫がってしまうもの。その意味では、ライ•ワックスはナイスなスポットに成長していくポテンシャルを秘めていると思う。

……って、「何を偉そうに、お前はレコード店検査官か?」と自分突っ込みしたくもなるポストになりましたが、クレート•ディガーの方がロンドンに行かれる機会があり、ペッカムに足を伸ばすようなことがあったらぜひチェックしてみてほしいお店です。中古のセレクションはまだ雑多な印象ですが、中古アナログ界のルールは「捨てる神あれば拾う神あり」ですしね。ちなみに、今回の同行者の購入アイテムは Lula Côrtes e Zé Ramalho(ルーラ•コルテスとゼ•ロマーリョ)によるブラジリアン•サイケ•フォークのカルト作「Paêbirú」(1975)のデラックス再発でした。


なんでもめちゃレアな作品で、オリジナル盤はまずお目にかからないんだそう(出くわしたとしても、バカ高くて手が出ないらしい)。このMr.Bongoによる再発盤もおそらく数量限定生産=見つけたら買うに限る!ということで、長らくこの作品を追っていたという同行者にとってはちょっとした「運命の出会い」になったわけです。自分が買ったわけじゃないけど、こういうシチュエーションに立ち会うのは同じ音楽好きとして楽しいものです。

このアルバムはディープ&スピリチュアル&コンセプチュアルなサイケ•ロックでしたが、たまたま最近ツェッペリンの「In Through The Outdoor」を聴いていて「Fool In The Rain」は妙な曲だよなぁ……なんて考えていたりとか、軽くブラジルづいたので家に戻ってマルコス•ヴァーリ。〝ハッ•ハッ•ハッ!〟でおなじみなこの曲、リフもグルーヴも抜群。いつ聴いても心がリフトアップされるというか、ハッピーになれます。

ちなみにもうじき新作アルバムをリリースするタヒチ80も、最近この名曲をカヴァーしています。ブラジルで開催されたワールド•カップへのトリビュートでもあるのでしょうな。てらいのない軽いアレンジといい、相変わらずの遊び心が素敵だなと思います。

そういえば、日本でもHMVが中古/新品アナログを中心にした新店舗を渋谷にオープンさせたばかりだそうですね。どんな感じなのかなー?と好奇心が募りますが、どうしても少数派になりがちなヴァイナル志向を後押してくれるようなモダン•ショップが新たにオープンするのはナイスな話だと思います。がんばれ。

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Mariko Sakamoto について

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