Live Reports(ごそっとまとめて写真集)

気がつけば外は秋〜〜というわけで、すっかり放ったらかしになっていたここしばらくのギグ•レヴューをまとめてみようかと。ライヴの話ってのはタイミングが重要なわけで、いったんポストのタイミングを逃すとズルズル堆積していってしまうもの。そのくせ頑固なロバのように「しっかり書きたい」という思いだけは強く、「いつか、いつか」となかなかLet Goできない悪い性格も災いし、ブログに手をつけられないままになっていた。やれやれ。しかも最近はあまりギグに行っていないので(涙)、アクティヴなライヴ評を書くのに必要な勢い/グルーヴからもやや逸れているかもしれない。寂しい話っす。

ともあれ夏も完全に終わったところで、ここ数ヶ月のライヴ•ネタをまとめて。写真メインの寸評でさくっといきたいと思います。

①Mark Eitzel(May27@Aces and Eights)

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このギグは、元アメリカン•ミュージック•クラブのマーク•アイツェルがスペイン公演を前にウォームアップ的に行った非常にアット•ホームなショウだった。会場はタフネル•パークにあるパブ(初めて行った)の地下で、ここは割と最近ギグをブッキングし始めた模様。たぶんお客もマックス100人程度のキャパのハコで、ライヴそのものもほとんど告知なし。友人のアイツェル好きが情報をほじくってきてくれなければ、完全に見逃していたライヴである。しかしイギリスにおけるAMC人気はさすがに根強いというのか、コアなファン達がみっしり集まった熱くていいショウだった。

狭い会場(パフォーマンス•スペースも8畳間くらいだろう)なのでアコースティック•ソロかと思いきや、フル•バンドだったのにはびっくり。気心知れたバンド•メイトとファンとのリラックス&インティメイトなライヴだったのだが、エレキを弾きながら(→あまり上手くないのがまたナイス)たちまち汗だくになっていくマークは「どこまでも世界との違和感に苦しまずにいられない人」というのか、シャイさと緊張があいまって熱唱に突入してしまうところは泣ける。とんでもなく美しい曲の数々とヴォーカルに恵まれていても、解消できない悲しみがあるのだなーー全身から振り絞るように彼が歌うとその辛さは一層胸にしみるし、それでも歌わずにいられない姿はあまりに人間的で、時に正視するのが辛くなるほど。しかしだからこそこの人のパフォーマンスには観るたび浄化されるのかもしれない。

これくらいエモーション剥き出しなシンガーはなかなかいません

これくらいエモーション剥き出しなシンガーはなかなかいません

AMCの「Blue And Grey Shirt」、レナード•コーエンの「I’m Your Man」の照れくさそうなカヴァーも良かったが、ラストは名曲「Patriot’s Heart」で大泣き。外に出たら雨で、空もマークに泣かされたみたいだった。

②Demdike Stare/Laurel Halo(19June@St John/Hackney Church)

会場内。ホラー映画のセットではありません

会場内。ホラー映画のセットではありません

最新作も素晴らしかったエレクトロの妖女ローレル•へイローとデムダイクの二本立て!しかも教会で!ということで楽しみにしていたギグ。ローレル•へイローは完全なラップトップ演奏だったが、エイフェックス•ツインばりに緻密でアブストラクトな美に満ちた音のレイヤーを構築しつつ後半はダビーな低音がブリブリに効いたダイナミックな音場を形成。この時期のイギリスはもっとも日照時間が長く、残念ながらまだ明るさの残る場内はムードには欠けた……とはいえ2階席からだとステンド•グラスの前の円形エリアの中央でプレイする彼女は魔法陣に囲まれているようにも見え(笑)、そこから広がるコズミックなサウンドとは実はマッチしていた。

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暗くてごめん:ローレルちゃんの織り成す音のペンタグラム

暗くてごめん:ローレルちゃんの織り成す音のペンタグラム

トリのデムダイクが登場する頃にはすっかり夜になり、ゴシック建築な教会の石造りでひんやりした空気が足下に迫って来る。そのやや薄気味悪い(教会なんで、周りも墓所です)雰囲気の中、眼を凝らさないと何も見えないくらい暗いステージ後方いっぱいにドーン!と映像が流れ始め、ライヴ開始。この人達の古い映画他をコラージュしたサイケデリックなヴィジュアルは毎回秀逸なんだけど、今回も女体オージーだの炎だの目玉だの、ハマー•ホラーとB級トリップ映画が混じったような映像の数々と日本古謡を思わせるドラム•ビート、うねるベース、耳元でガラスが割れるような(思わず椅子から飛び上がる)鋭利なノイズ……といった具合にダーク&異教性たっぷり。

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デムダイク:恐過ぎや!

デムダイク:恐過ぎや!

そんな音楽を今も礼拝に使われている教会でプレイするってのも、ある意味すごいな。個人的なクライマックスは、ソウル•バス唯一の監督作「Phase Ⅳ」(蟻の名演も含め、観て損はないカルト映画です)の抜群にサイケな名シークエンスとシンクロしたカオティックな音の洪水に包まれた時。めちゃ気持ちよかった。
追伸:ちなみにこのセント•ジョン教会、雰囲気も演目も素晴らしい……んだけどライヴの際は会場外に置かれたポータブルの簡易トイレしかないので、お酒を飲むのは避けた方が無難かと。

③Neil Young/The National(12July@Hyde Park)

「イギリスの夏」。ちなみに画面右に写ってるのが「金持ち向けバルコニー席」です

「イギリスの夏」。ちなみに画面右に写ってるのが「金持ち向けバルコニー席」です

ハイド•パークでは夏を通してコンサートや家族向けイベントが数多く企画されるが、このニール•ヤング公演はそのひとつである「British Summer Time」シリーズの一環。ニール単独公演ではなく別ステージをいくつか含むミニ•フェス形式で、ザ•ナショナルもいわば前座である。ニール•ヤングは2009年にも同じハイド•パークで観たことがあるのだが、今回は(恐らく最後と言われている)クレイジー•ホースとのショウ。行きたいなー、でもチケット代高過ぎだし無理だわー……と思っていたところ、知人から「チケット買ったから行け!」との連絡が。

――日本でももしかしたらちょっと話題になったかもしれないけど、この「British Summer Time」シリーズのチケット、その一部が2.50ポンドで流出する不祥事が起きた。これはフェスの協賛/スポンサーといった関連会社向けにキープされた「内輪チケット」(いわゆる「お得意さんへのギフト」ってやつでしょうか?)枠が部外に漏れ、Twitterやフェイスブックを通じてその購入用リンクがたちまち広がってしまったからだったりする(笑)。この思わぬバーゲンの恩恵を活用し、知人はブラック•サバスとニール•ヤングをすかさずゲット。メールをもらった自分も「ついでにアーケード•ファイアも!」とトライしてみたのだが、さすがにし主催者側もこの失態に気づき、午後にはリンクが使えなくなっていた。んー、残念……と欲張るとキリがないが、ありがたいことにこの「限りなくタダに近い額で発券されてしまったチケット」も有効と認められ、思わぬ夏のプレゼントにありつけることができた次第。

でまあ、実はこのフェスは去年もストーンズで体験済みだったんだけど、今回は観たいアクトが他にもいたのでうだるような暑さの中早めにサイト入りしてみた。そこで暇つぶしも含めて歩き回ってみて改めて感じたのが、バークレイズという英大手銀行が冠スポンサーのフェスだけあって、ものすご〜く企業色の強いイベントだなあと(笑)。特にすごかったのが現在英銀行が押し進めている「コンタクトレス•カード」の宣伝で、どこを向いても「コンタクトレスに切り替えませんか?」「コンタクトレスで楽々お支払い!」が眼につく。今どきのフェスで企業スポンサーがつかないものを探すのは不可能に近いし、ウブに「こんなのフェスじゃない」とか言うつもりカケラもないが、ここまでマネーづくしなのは味気ない。

それでも「場内で一銭も使わない」と心に決めていたので(ドリンクもチョイスが無い上にバカバカしいほど高いので、この日は完全に水だけで過ごした。食料持ち込み禁止イベントなんだけど、ポケット他でスナック類は余裕でスマグルできる)、ライヴに専念!と思っていたのだが、楽しみにしていた屋内ステージでのフォスフォレッセントはなんと開演20分前から入場規制。がーん。でも、ドアから見える場内にはまだ充分隙間が見えるんですけど???というわけで行列させられたお客もブーたれまくり。我慢の子でやっと中に入れた頃には最後の曲で、美しいペダル•スティールの調べが逆に切なかった。万規模のお客が集うコンサートで、第二ステージに当たるシアターがあんなに小さいのは愚行としか言いようがない。雨除けの意味も含めての建物なんだろうけど、少なくともセカンドは野外ステージにすべきだろう。

もう一組、「ここで観ておこう」だったのがイーサン•ジョンズ。キングス•オブ•レオンやライアン•アダムスのプロデュースで知られる人だが、実はソロ•アーティストとして音楽もやっている。更に小さな第三ステージの出演だったので相当早い時間から並び、無事入場。ステージにはブラック•クロウズやトム•ペティばりに絨毯が敷かれていて「やはり」という感じだったし、ドラム/ラップ•スティール/ベースから成るバンドの面々もめちゃ上手い(特にベース•プレイヤーは若そうなのに凄腕)。イーサン本人もエレキ弾きまくりだったが、いかんせん楽曲そのものはベーシックなサザン•ロック〜ディラン系のフォーク•ブルースで、演奏には痺れるもののメロディや歌で楽しむ……にはちと敷居が高かった。それでも、フィナーレはサイケデリックなジャムに上り詰めて行ってかっこ良かった。

イーサン•ジョンズ(中央)。高そうなグレッチ、音色は抜群でした

イーサン•ジョンズ(中央)。高そうなグレッチ、音色は抜群でした

やっとトリ前!ということでザ•ナショナルを目指してメイン•ステージへ。森をイメージした舞台デザインは完全に去年からの使い回しでちょっと笑ってしまったが、ミキシング卓のあたりに一段高くバルコニーが設けられているのは異様。ここはいわゆるVIPチケットを持ったお客さんの専用エリアだそうです。うーん、またもマネーか。

曲目こそフェス向けに最新作からのトラック&有名曲に凝縮されていたものの、彼らのセットはイントロやヴィジュアル他も含め去年観た時とほぼ同じ(マットさんが太っていたのは、ロードで飲み過ぎでいるからでしょうか?)。演奏は抜かり無しの見事なもので、ギター•ソロの冴えやロックな曲での爆発力など、いい意味で肩の力が抜けてきたパフォーマンスだった。しかしニール•ヤング目当ての高齢客達はまったく彼らに興味が無さそうで(笑)、若者しか盛り上がっていない状況を目の当たりにするのはなかなかに痛い現実だった。まだ先は長いぞー、がんばれザ•ナショナル。

ザ•ナショナル。まだ明る過ぎて、ヴィジュアルが完全に威力を発揮できなかったのは可哀想

ザ•ナショナル。まだ明る過ぎて、ヴィジュアルが完全に威力を発揮できなかったのは可哀想

ニール•ヤング&ザ•クレイジー•ホースの馬のイラスト幕が登場、やっとサイト全体に活気が広がる。のっけからごりごりにハードなギターが炸裂し、ちょっと触れただけで火傷しそうな勢い。ステージ中央に集まり、額を付き合わせるようにしてグツグツと音を煮えたぎらせていくニールとクレイジー•ホース、いまだとんでもないパワー•ハウスである。生木を裂くようなテンション高いインタラクションとインプロで引っ張るフリー•フォールなジャムと合唱系の盛り上げ有名曲(「After The Gold Rush」や「Only Love Can Break Your Heart」が前半で登場したのにはびっくり)を交互にサンドイッチしていく構成のセットは、集中しにくくて自分にはやや難があった。しかし中盤のアコギ篇:ディランの「Blowin’ In The Wind」のカヴァーと「Heart Of Gold」を経て、再び「グランジの父」の面目躍如な「Barstool Blues」のメガトン級なギターから始まった後半は、純金な名曲「Cinnamon Girl」、そして全員大合唱の「Rockin’ In The Free World」をこれでもか、これでもかと引っ張るスタミナへと続いていった(あのすさまじいベース音は、もしかしたらブラック•サバス公演よりデカかったのではないだろうか?)。

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ニール爺と暴れ馬の疾走

ニール爺と暴れ馬の疾走

とはいえこの晩もっともパッショネイトなニールを聴けたのは環境問題を扱う新曲「Who’s Gonna Stand Up?」で、比較的シンプルな曲だけにお客もすぐ一緒にリフを口ずさみ始めていた。今後新たなニール•アンセムとして愛されるのは間違いないだろう。アンコールは15分近い怒濤の「Down By The River」。スケジュール的にはあともう1曲やれたはずだが(「Cortez The Killer」はやってほしかった)、あの曲の狂おしいコーラスと情感は心にある種のダメージを残す類いのものなので、その重みをずっぽりと引きずりながらとぼとぼ家路に着くのがベストである。5年前のフィナーレはポール•マッカートニーが飛び入りしての笑顔に満ちた「A Day In The Life」だったが、今回のニールはヘヴィで暗かった。それだけ、時代も闇を増しているということか。

④The Sadies(22Oct@The Borderline)

トラヴィス&ダラス•グッド兄弟のアイコニックな「共弾き」の勇姿

トラヴィス&ダラス•グッド兄弟のアイコニックな「共弾き」の勇姿

昨年リリースの最新作「Internal Sounds」を引っさげ、久々にイギリスに来てくれましたよ:セイディーズ。前回から2年ぶりになるけど、今回もまた観終わって同行者達と「すご過ぎるっ!」「上手過ぎるっ!」「最高!」「また観たい!」……とまあ、小学生並みにシンプルな感嘆符を興奮してヨダレを垂らす犬のようにバウバウ交わし合うしかない=それくらい頭がぶっとばされて空っぽになる/言葉なんてもーどうでもいいよ!と思わされるほどカッコ良くて心底痺れる、まったく期待を裏切られないぶっちぎりのライヴでした。

とはいえ:前回=ブライトンで観た時はお客のノリも抜群だったんだけど、今回はロンドンなだけにみんな大人しい。控えめ。セイディーズの音をただ腕組んで突っ立って眺めるなんて、自分には正気の沙汰と思えないっす(=ええ、余計なお世話です)。この晩は選曲もカントリー寄りだったのでワイルドでロケンローなノリは少々後退していたとはいえ、クラブ側の終演時間が10:30とタイトで、普通だったら2時間近くぶっ通し〜アンコールもマラソン型というこのバンドの(飲めば飲むほど盛り上がる)真価は、自意識が薄く楽しみ方をよく知っている人々の多い地方で観る方が満喫できるかもしれない。

ライヴではアニマルと化すトラヴィス兄。今回は茶のカントリー•スーツ

ライヴではアニマルと化すトラヴィス兄。今回は茶のカントリー•スーツ

カスタマイズされたギターも超味出しなダラス。普通の人にはあり得ない、コーン•ポタージュ色のスーツを着こなしてしまってます

カスタマイズされたギターも超味出しなダラス。普通の人にはあり得ない、コーン•ポタージュ色のスーツを着こなしてしまってます

ダラス&トラヴィスの超絶ギターが散らし合う火花(トラヴィスのフィドルも随所で爆発してました)と興が乗るとエスカレートしていくスラッシュ•メタルも真っ青なテンポとに、しかし難なくついていくリズム隊のふたりも改めて素晴らしいなと。そして今回もお楽しみ!な「Nuggets」篇ことガレージ•パンクのカヴァーでは、ポール•リヴィア&ザ•レイダーズのグレイトなポップ「Him Or Me」、ハマり過ぎで泣くしかなかったラヴの永遠の名曲「House Is Not A Motel」、そして渋いぜっ!ザ•サード•バードーの隠れ名曲「I’m Five Years Ahead Of My Time」でシメという憎い展開だった。前回のアンコールはメドレー式でどサイケだったし、この人達が知らない60年代ガレージ/サイケ曲は存在しないのかも? たとえばカードに何枚も好きな曲を書いて、ダラスにランダムに引いてもらっても即座にプレイしてくれそうな気がする。そういうロック男性は、自分にとっては理想としか言いようがない。これからもその貴重な男前のよさを保っていってほしいバンドです。

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Mariko Sakamoto について

Hi.My name is Mariko.Welcome to my blog,thanks for reading.坂本麻里子と言います。ブログを読んでくれてありがとう。
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Live Reports(ごそっとまとめて写真集) への2件のフィードバック

  1. 酒井 洋 より:

    本当に精力的な活動にいつも感激しています。麻里子さんもこのまま突進し続けてニールヤングみたくなってくださいね。

    • Mariko Sakamoto より:

      酒井 洋さま:コメントありがとうございます。ニール•ヤングはほんと、アーカイヴから新しいデジタル•プレイヤー、そして新作とすごい活動ぶりだと思います。
      私も爪の垢を煎じて飲ませてもらいたいところですが、あのエネルギー&パッションは自分の上の世代にしかあり得ない離れ業かな〜とも思います。ともあれリスペクト!のライヴでした。

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