Beat of My Own Drum: 58.Game Theory

今ちょうど「パンクからオルタナへ」をテーマにした本(「Babylon’s Burning: From Punk to Grunge」)を読んでいるところ。こうしたアーティストやバンド単位のバイオではなくジャンルあるいはシーン検証型のオーラル•ヒストリー本の良いところは、「こんなバンドがいたのか」、「このシングル/アルバムは聴いてみなくちゃ」みたいに気持ちが盛り上がるところですね。読みながら紙片にメモった名前がデスクに山積みです。Spotify他で気軽に試聴できる(そのSpotifyにしても、マイナーなインディ•アクト作品etcはカタログに入ってなかったりするけど)今の時代は、実にありがたし。

「Babylon’s Burning」は著者クリントン•へイリンの「From The Velvets To The Voidoids: The Birth of American Punk」の姉妹編〜続編に当たるような内容で、いちばん力が入ってるのは英パンクとポスト•パンクおよび米プロト•パンクとの双方向な交配の時期の描写。ジャンルごとにもっと焦点を絞った名著は他に存在するものの、この本は「パンクからグランジへ」と銘打ってるだけに、かなり幅広くバンドやシーンを俯瞰している。ニューヨーク、ロンドン、クリーヴランド、マンチェスターに限らず、たとえばオーストラリア(ラジオ•バードマン、ザ•セインツ)や北アイルランド(スティッフ•リトル•フィンガーズ、ジ•アンダートーンズ他)も含めているのはちょいと新鮮だった。

一方で、途中からものすごく駆け足な「シーン検証」になっている観も否めない。トータルで600ページ強の本なんだけど、500ページ近くが70年代に割かれているため、残りでどこまで80年代(アメリカの西海岸パンク〜ハードコア、カレッジ•ロック)からグランジにまで繋げるのかなあ〜?と疑問にも思う。著者さんの音楽的な好みや価値基準、そしてこの本のためのインタヴューに応じた/応じなかったミュージシャンという制約もあるんだろうけど、ディスコードやシカゴの動向のフォローが手薄だったり、ページ数の都合でバランスが悪くなってくるのだ。

しかしその80年代アメリカ西海岸のあたりでちょっと出て来るペイズリー•アンダーグラウンド〜カウパンクのくだりを読んでいて、ふと無性に聴きたくなったのがスコット•ミラーの歌声だった。

<この人の歌声のありそうで実は他に無いデリケートな美しさ、たまらないです。スコット•ミラーが敬愛したアレックス•チルトン(ビッグ•スターは何度もカヴァーしているくらい)と、エリオット•スミスのほぼ中間に位置する声と言えるかも?>

スコット•ミラーは惜しくも2013年に他界してしまったシンガー/ソングライターなんだけど、最初のバンド=Alternate Learningは元ドリーム•シンジケートのスティーヴ•ウィンと縁が深く、後にザ•スリー•オクロックのマイケル•ケルシオも彼のバンドに一時的に在籍していた。しかし彼のカルトなキャリアが花開き始めたのは次に始めたバンド:ゲーム•セオリー、そして晩年まで名義を使うことになったザ•ラウド•ファミリーから。一部で「パワーポップ」と称され、ミッチ•イースターとの絡みもあって彼の作品群は自分のアンテナに引っかかったわけだけど、一口にパワーポップとは言い切れない凝った音楽性やニュー•ウェイヴ色、コンセプチュアルで時にエニグマティックなソングライティング(アルバム•タイトルとかも、文学ネタを下敷きにしたひねったものが多い)にしても、逆に自分にとってスコット•ミラーへの興味/軽度のオブセッションが募る結果になった。

とはいえ:当時はゲーム•セオリーやラウド•ファミリーに関する評文やインタヴュー等々を目にする機会が非常に少なく(輸入雑誌をがんばって買うしかなかったけど、それにしてもインディ•ポップを扱ってたインディなジンや「CMJ」とか「Magnet」くらいでしかちゃんとレヴューされてなかった気がする)、イコール音楽に頼るしかなく、それで余計に想像が掻き立てられたってのもあったかもしれない。むしろ今の方が、彼らに関する文献やインタヴューがネットのあちこちにアーカイヴされていることだろう。初期作品も長いこと廃盤状態で、このまま忘れられてしまうのかな…と思っていたけど、アメリカで去年からゲーム•セオリーの再発プロジェクトが始まったと知った時はちょっと涙モンだった。

<今年30周年記念としてDX再発された「Real Nighttime」の予告編ビデオ>

このビデオで紹介されている「Real Nighttime」は、おそらくゲーム•セオリーの作品の中ではもっともストレートでアクセスしやすい内容じゃないかと。このぶんだと恐らく来年は続く(これまた良い)作品=「The Big Shot Chronicle」が再発されるのかな?ぜひ、トッド•ラングレンのこの↓カヴァーをボーナス•トラックで収録してもらいたいところです(これがきっかけで「Something/Anything」にハマったクチなので)。

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Mariko Sakamoto について

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Beat of My Own Drum: 58.Game Theory への2件のフィードバック

  1. 匿名 より:

    麻里子さん。こんばんは。日本はお盆休みに突入間近です。
    スコット・ミラーさん。初めて聴きました。優しい男性ボーカルがこのところ日本でも増えた気がします。
    ゲーム・セオリーも知らなかったですが、聴いてみたいなと思いました。
    昨日学生の頃の友人達と飲みました。30年近く前の話をしながら良い気分になりました。
    音楽の良いところはいつでもタイムスリップできるところでしょうか。
    そして聴いたことのない曲をこうして紹介していただくことも、また、自分の知識が増えたようでうれしいことです。

    • Mariko Sakamoto より:

      匿名さま:こんにちは。コメントありがとうございます。日本はお盆で、さぞや暑いことかと思います。ロンドンは既に夜気に秋の気配が混じっていて、今年は前半(6/7月)が暑かったせいでしょうか、夏さんは急ぎ足気味です。ブー!
      ゲーム•セオリー&ラウド•ファミリーは、たぶん一枚も国内盤化されなかった記憶があるので、日本でほとんど知られていなくても当然だと思います。とはいえ、ポストにも書いたようにネットのおかげで振り返りやすくなったので、気が向いたらトライしてみてくださいませ。
      学生時代のお友達との再会、いい話ですね。私も、大昔に務めていた会社の同僚に少し前に再会しまして(このブログを頼りにコンタクトをとってくれました!感謝)、彼女のまったく変わらないエネルギーに触れられてすごく楽しかったです。むむ?! もしかしたら、ここ最近のBOMODネタが懐古なのも、当時の記憶がぶり返したからかもしれません……とはいえ、「音楽の良いところはいつでもタイムスリップできるところでしょうか」のコメントは私も大いに納得です。タイムスリップしてばかりいるのも、良くないとは思いますが(笑)。では、お元気で。

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