Beat of My Own Drum: 66.Scritti Politti

わたわたしているうちにずいぶん時間が経っていました…が、まだ続いている80年代イギリスのクレヴァーなポップ懐古篇、今回はスクリッティ•ポリッティについて。

ポスト•パンク&インディ•シーンの雄――としての彼らの前歴は、当時はまったく知らなかった。ぼんやりしていて怠惰なガキだったこともあり、基本的にメディアで騒がれてその存在に注目する、というのが音楽に接する通常ルート(今もまあ、それはあんまり変わっていない)。なので彼らの代表作とされる「Cupid&Psyche 85」が 初めての出会いだったんだけど、おぼろげな記憶を再生してみても、なんかこう、当時の日本の音楽雑誌他での前盛り上がりが熱かったのは印象に残っている。それだけグリーン•ガートサイドには日本で以前からファンがいて、リスペクトされていたようだ。

スクリッティ•ポリッティは78年にシングル「Skank Bloc Bologna」デビューしたアート•ロック/ポスト•パンク•グループ。自主レコーディング&手作りのスリーヴ(そのファースト•シングル「Skank〜」は、DIYを盛り上げるべくジャケにレコードの制作費用/経費が印刷されていたことでも有名。エイフェックス•ツインだけではないのだ)にマルクス主義への傾倒、スクワット暮らし等々、パンクのイデオロギーを貫く硬派バンドだった。

<初期の代表的作品のひとつ。聴きやすい曲ではないけど、そもそもそれがポイントではない>

彼らはやがて当時の英インディ界の震源地のひとつ:ラフ•トレードと契約。1982年に発表されたファースト•アルバム「Songs To Remember」ではR&Bやソウル〜レゲエに大胆に接近し、ポスト•パンクの一翼にあった「アンチ•ポップ/アンチ•ミュージック」なイデオロギーからの逸脱が図られている。

<「Songs To Remember」発表の前に先行リリースされたシングル曲。ラヴァーズ•ロックなのにサイケという他にはない味は、発表当時から高く評価されていたそうです。キーボードでロバート•ワイアットが参加!(涙)>

<同じく「Songs〜」より。「Cupid〜」を聴いた後でさかのぼって聴いた作品とはいえ、トータルなアルバムとしては実はこちらの方が好きだったりします。捨て曲無しの名盤かと>

しかしラフ•トレードとの連携は「Songs〜」1枚で終了。グリーンはこの時期のポップ系なインディ•アクト(オレンジ•ジュース、デペッシュ•モード等)の多くが抱えていたとされる不満、すなわち「インディの流通網の限界」=「インディのゲットーから抜け出せなくなる不安」を感じていたらしい。英国内における非メジャーな流通システムはまだよちよち歩きで、アルバムがヒットしても1万枚単位…というレベルだった80年代冒頭の状況において、アメリカや海外にも手を伸ばしたい野心的なアクトが、流通/プロモのノウハウを確立したメジャーに応じていったのも理解できる。

というわけでスクリッティ•ポリッティはヴァージンと契約。グリーンはバンド人員をリストラしてニューヨークに移り、アトランティック•レコーズのベテラン•プロデューサーだったアリフ•マーディンをプロデュースに迎え、「Cupid&Psyche 85」におけるスクリッティ•ポリッティのインターナショナル化を押し進めていくことになる。

<まずは、グリーンの本格的な「ポップ•パーソンへの転身」を切って落としたこのシングル。音質も画質もあんまり良くないんですけど、なぜかパジャマ•パーティ状態のメンバー?フェンシング?養蜂家?ブラック•パワー?アリーサ•フランクリン?「♪だってベイビー、バーウー」??と、シュールなイメージや意味不明な言葉の乱打がなんとも魅力的だったのが記憶に残っている、このPV版のクリップを。「(歌詞をシナリオにした)物語」を映像化したビデオとはまた違って、好きです>

<このビデオは当時観た記憶がないんですが、YouTubeで発見してかなり感動。化繊のトラックスーツにハイトップのスニーカーっていう、オールドスクール風で固めたグリーン…なのに、結果的に彼のアンドロジナスなルックスのせいで、「Starman」のボウイを80年代にアップデートしたように見えるのがなんとも泣ける。かつ、ニューヨークのディスコ/クラブ/ブロック•パーティなノリをイギリスのどこかの倉庫で再現しようとしたごとき、ステージを囲むブレイク•ダンサー他のがんばりもナイス!!>

<というわけで、比較のためにこの1972年の「Top of The Pops」出演時の映像。この映像は色んなミュージシャンが「ボウイに打たれた」原体験としてよく引き合いに出すんですけど、それもうなずけるくらい、今観てもフォトジェニックでパワフル&ボウイの役者としての才覚を感じます。ミック•ロンソンとの仲の良い雰囲気が、また最高>

<こちらはスクリッティのちょいと前(83年)に、実際にニューヨークで撮影されたニュー•オーダーのビデオ。基本のストーリーとしては「Saturday Night Fever」のバリエーションなんですが、当時人気のあったディスコ/クラブ=Fun Houseが舞台になっていて、ローカルな素人ダンサー達のダンス•オフ(ダンス試合)が垣間みれるのはご機嫌。すごく強引な見方でしょうが、マンチェスターからはるばるニューヨークに来たニュー•オーダーの面々には、この光景はノーザン•ソウルでハッスルするキッズ達とさほど差がなく映ったのでは? ちなみに、ビデオの冒頭から登場するヒゲ&長髪の御仁は似てるけどリック•ルービン…ではなくて、この曲のプロデュースやリミックスで活躍したアーサー•ベイカーです>

興が乗ってきたので、ついでに(たぶん)イギリスに流れ込んできて、ニュー•オーダーやスクリッティ•ポリッティをニューヨークへ引き寄せた音楽ってこんなものだったのでは?な音源を。

<チューンンンッ!彼らは突き詰めればジャクソン5の流れにあるんだろうけど、めいっぱいな自己表現ぶりが最高。彼らはThe Kitchenでもパフォーマンスをしたことがあったようで、この時期のニューヨークのアングラな柔軟性を感じます>

<かわいくも生意気な魅力が炸裂!のロクサーヌ•シャンテのジャムも、どーぞ>

ビデオのコピペの連続ですっかり話が逸れました。

「Cupid&Psyche 85」を聴いた時というのは、なんつーか、曇っていた空に明るい光が差し込んできたごとき清々しさ&クリアさがあって、新鮮きわまりなかった。それはたぶん、この時期にザ•スミスやロイド•コール&ザ•コモーションズの「Rattlesnakes」、プリンスの「Purple Rain」等々…比較的湿度が高くパーソナルでエモーショナルな音楽を愛聴する傾向を強めつつあった自分自身にとって、スクリッティ•ポリッティのいい意味で職人で隙のないポップ仕事を聴いて酔うのは例外=「たま〜に自分に許せる快楽」だったからじゃないか?と。

そういや「Hypnotize」シングルのジャケ写真にはホワイト•チョコレートが写されていたけれど、カカオの脂肪分だけで作られたホワイト•チョコはビター•チョコにはあるとされる効用(抗酸化物質)といったエクスキューズは効かない=身体に悪い嗜好物だったりする。でも、そういうSweet Nothingなポップを、たまに食べる贅沢があってもいいと思う。

<スクリッティ•ポリッティの「良き甘さ」を強く感じるのがこの曲。情感っていう意味では「The Word Girl」も捨て難いん名曲ですけども。グリーン•ガートサイドの「ダイアナ妃ヘア」にはつい笑ってしまうが、自分の中では彼こそプリンス•オブ•ウェールズがふさわしい。出て来るモデルの女の子達も、みんな超キュートだ>

「Cupid&Psyche 85」の成功に続いた1988年の「Provision」はマイルス•デイヴィス、マーカス•ミラーといった豪華ゲストを迎えての意欲作だったものの、スムーズなポップ過ぎて「ハッ」とさせられるスパークは減った。商業的に前作のレベルに至らなかったこともあり、彼らはしばしスポットライトから身を引く。4thアルバム「Anomie and Bonhomie」が登場したのは10余年後のことだった。グリーンは現在もマイ•ペースな活動を続けていて嬉しい限りだし、つい最近も先だってブライアン•イーノが行ったJohn Peelレクチャーを観に来ていた(同じ列の席には、他にジャーヴィス•コッカー、ドン•レッツの姿が見受けられた)。

最後に追記しておきますと:80年代中期のスクリッティ•ポリッティでドラムをプレイしていたフレッド•メイハーは、ルー•リード•バンドで活躍したことでも知られるプレイヤー。後にルー名盤のひとつ=「New York」をルーと共同プロデュースしたのも彼だ。

<1983年の「お里帰り」コンサートを収めた「A Night With Lou Reed」より。ここでバックを担当しているロバート•クワイン、フェルナンド•ソーンダース、フレッド•メイハーは、ルー•リードのファンの間でも人気の高いラインナップ>

<アルバム「New Yorkより>

フレッド•メイハーの名前を再び目にしたのは「New York」から2年後=マシュー•スウィートの名盤「Girlfriend」の共同プロデュースのクレジット表記で、だった。コラボ•アルバムを制作した仲でもある盟友ロバート•クワインのリード•ギターも絶品!!なタイトル•トラックがこちら。

<アニメ好きでつとに知られたマシュー•スウィート、このプロモは「コブラ」との共演>

<同作きっての名曲のひとつ。ラムちゃんで話題になったこのビデオですが、バンドを演じているのはヴェルヴェット•クラッシュのリック&ポール、そして元テレヴィジョンのリチャード•ロイド(号泣)です>

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Mariko Sakamoto について

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