My Favourites–2015 Edition

ヴァレンタインも通過!というわけで、今更〜も今更〜で今更〜な:「2015年のお気に入り」ポストでございます。ほんとは先月の今頃アップするつもりで、リストをまとめて張り切って書いていたところ、うっかり他の資料記事をコピペしたところでファイルを保存しそこねて、気づいた時には肝心の文章が消えていた……雨上がりでしっとりと濡れていた路上が、目を離しているうちに陽に照らされてカラリと乾いてしまったのを見てガクゼン、みたいな。

リカバリすればいいじゃん?ってだけの話なんでしょうけど、まったくもってPC音痴なので途方に暮れるのみ=一気に気分がドーンと落ちてしまったわけです。もう、書いたことをいちいち思い出せないよ〜〜!って具合に真っ白。他にも色々とダウンになる要素が起きていて。

んなわけで、すっかりやさぐれて「I don’t give a s**t!!!」モードに突入してしばらく放置していたんですが、「恐るべし、我がエゴ」とでも言うのか(笑)。自分なりの「趣味全開」なリストを残しておきたい、との欲が若芽のように生えてきてチクチクと神経に触るのを解消すべく、ポストします。

その意味でも、今回のリストはパーソナルな覚書=2015年を思い出すためのマイよすが、というのに近いかも? いやまあ、そもそも個人的なフェイヴァリットなのでそれでいいのか……。なので記述は短いですが、読んでくださった方のどこかにヒットする面があって、興味に惹かれてビデオ他のリンクをクリックしてみて、聴いたら気に入った!というケースがひとつでもあれば幸いです。今年もみなさんに素敵な音楽との出会いがありますように。最後に教訓:文書の保存はこまめに!

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●Favourite albums

自分にとっての「2015年」だった2枚。もうちょっとかっこよく「3枚」にまとめたかった……んだけど、この2作に匹敵する深いコネクション/愛情を感じた作品はどうにも他に浮かばないので、無理はしないことにします。

Jim O’rourke/Simple Songs(Drag City)

ジム•オルークの実に久しぶりの「歌もの」アルバム。それだけでも自分にとっては歓喜なんだけど、ニコラス•ローグ三部作の頃ともルース•ファーともまた異なる、重厚かつ華麗なフォーク/プログレ•ポップには脱帽。アレンジ能力の高さは言うまでもないけれど、ギターのトーンからシンバルの冴えに鍵盤の響き等々、プロダクションの奥行きも素晴らしい。今どきなかなか作られない、クラシックな「アルバム」だと思う。

Rachel Grimes/The Clearing(Temporary Residence Ltd)

惜しまれつつも解散した元レイチェルズのメンバー、レイチェル•グライムスのソロ作。モダン•クラシカル音楽という分類になるのだろうけれど、ドライで理知的な頭脳ゲーム型コンポジションに陥ることなく、マジェスティックかつ情感に満ちたピアノ•プレイでエモーショナルな音空間を生み出している。胸打たれる音楽。

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Baroness/Purple(Abraxan Hymns)

スラッジ系のメタル•バンド、なんとデイヴ•フリッドマンと組んでのTarbox録音作が登場。ゴリゴリです。マストドンとボリスと対バンしてくれないかな。

Beach House/Depression Cherry&Thank Your Lucky Stars(Sub Pop)

驚きの2作連続リリースになったけれど、いずれのアルバムも彼ららしいたおやかなメロディとナイーヴな美で貫かれている。近年の若手バンドの中でも、一発で「彼らの音世界」に引き込む磁力がある人たち。

Blank Realm/Illegals In Heaven(Bedroom Suck)

ネオアコ好きさんいらっしゃ〜い!というわけで、オーストラリア:ブリスベン出身のバンド……というだけでゴー•ビトウィーンズが思い浮かんでしまうような方に。これまでのアルバムは自分としてはどこか決め手に欠けていたんだけど、本作は気持ちよく吹っ切れている。

Chastity Belt/Time To Go Home(Hardly Art)

「女性アクト/バンド」が何かと話題になった観のある2015年だったけど、もっとも自分に引っかかったのはこのアルバム(コートニー•バーネットのアルバムは、「今後に期待」としか思えなかった。〝Kim’s Caravan〟は良い曲ですが)。バンド名も抜群だし、ポスト•パンクを素っ気なく歌うやせ我慢型のヴォーカルも、女の子のリアリティを感じる。

Dan Mangan + Blacksmith/Club Meds(Arts & Crafts)

90年代後半のイギリスにはこういうバンドがいたっけ……という一種の懐かしさもあって引き込まれた作品ながら、とても丁寧に作り込まれていて質の高さに驚かされたアルバム。たぶん今で言う「ファッショナブルな音楽」じゃないんだろうけど、こういう作品が育まれるのはカナダの良いところ。

Dave Rawlings Machine/Nashville Obsolete(Acony)

「ギリアン•ウェルチの相方」という認識がどうしても大きくなりがちなデイヴ•ローリングスだったけど、DRMとしての本セカンドの見事な出来を聴いて、両者が平等なのを改めて認識(ごめん)。テイラー•スウィフトの成功以来カントリーが実はまたブームになっているアメリカだけど、オールド•スクールを継ぐこういう人たちの存在も忘れたくない。

Eleventh Dream Day/Works For Tomorrow(Thrill Jockey)

喜ばしい「再会」がいくつもあった2015年だったけど(まあ、この再結成/再始動サイクルはえんえんと続くのでしょうが……)、この作品もそんなひとつ。ガチンコにロック•バンドで、衰え無し。

Father John Misty/I Love You,Honeybear(Sub Pop)

「きっと自分の好きなタイプだろう」と思いつつ(フリート•フォクシーズの繫がりもあるし)、なぜかハマれずにいた……というわけで、なんか宿題みたいで後回しにしていたこのアーティストですが、やっと良さをゲットできました〜ということで。バーバンク/ランディ•ニューマン/カリフォルニア•サウンドの見事な再解釈のひとつ。

Floating Points/Elaenia(Pluto)

以前の12インチの方が出来は良いのだけど、アルバム1枚で聴かせる広がりを掴んだのは成長の証しだと思う。ニュー•エイジ味が混じるのも、他アクトと一線を画する個性になっていて好み。

Fuzz/FuzzⅡ(In The Red)

一枚で終わりのプロジェクトだとばかり思っていたところ、フォロー作が登場! さすがタイちゃんですね。ベトベトなガレージ/グラム•ロックですが、時に猛烈に大音量で聴きたくなる作品。

Girl Band/Holding Hands With Jamie(Rough Trade)

スリーフォード•モッズやファット•ホワイト•ファミリーといった不穏分子が密かに花粉をまき散らしている中、アイルランドから頼もしい援軍が登場。彼らの音楽的な根っこは00年代のイギリスにあったマス•ロック〜ノイズ•ロックのシーンじゃないかと思うけど、やけっぱちぶりが他とは違う。バンドとしては不安定そうなのが気がかりだけど、この先にコマを進めてほしい人たち。

Holly Herndon/Platform(4AD)

ローレル•へイロー、グルーパー、ジュリア•ホルター、ジェニー•フヴァル……といった具合に女性ソロ•アクトの豊かな実りが続くエレクトロ〜実験〜アヴァン音楽界に加わった秀逸な作品。ADD気味な好奇心に流されることなく、澄んだ目線でぴっちり作られた1枚として評価したい。知人の目撃談によればライヴもユニークだそうなので(「ハワード•ジョーンズ」がヒント:これだけで意味が分かったら、あなたはかなりの年齢!)、チャンスがあったらぜひ。

Jam City/Dream a Garden(Night Slugs)

日本の知人から教えられた、ロンドン発のアクト。っていうか、ロンドンに住んでるのに、逆に教えられてしまって恥ずかしいです〜(笑)。ともあれ:ディストピアンな都市光景の表層を引っ掻いて、その下に眠るロマンとの繫がりを探っているのが感じられて好き。デレク•ジャーマンの世界にリンクしてくれたらいいな、と。

Low/Ones And Sixes(Sub Pop)

「いつもそこにいる」とロウを侮るなかれ:再び、キてるなぁ!と思わせる充実の1枚。静かにパワフル。

Nap Eyes/Whine of The Mystic(Paradise of Bachelors)

カナダ発のバンド。愛すべきアクトを輩出しているレーベル:パラダイス•オブ•バチェラーズからのリリースなので間違いはないだろう……と思ってはいたけど、ヴェルヴェッツ/ジョナサン/フィーリーズの空間性を思わせるギター•サウンドとヘタレぶりに一発で琴線が陥落。いま一番、ライヴで観てみたい人たちです。

Joanna Newsom/Divers(Drag City)

ジョアンナ、唯一無二の存在であることをまたしても証明してくれました。本作が「心底好き放題やった」の結果なのか、あるいはまだちょっと「期待されるジョアンナ」に応じた部分も含まれているのか?は、次のアルバムまで待ちでしょう。でも、トリップさせられる1枚。

Matana Roberts/COIN COIN Chapter Three:River Run Thee(Constellation)

ソロ=彼女のプレイと歌とにフォーカスしたことで、逆にカジュアルな聴き手にも入りやすい作品になっていると思う。このマルチ•タレントなアーティストの続ける大きなプロジェクト「COIN COIN」の入門編として、ぜひ。

Sleaford Mods/Key Markets(Harbinger Sound)

マイク+ラップトップでイギリスの通津浦々から不満•怒り•焦燥の毒を吸い込み、ブラック•ユーモアたっぷりな音の煙として吐き出すSM行軍はまだ続く。コケにされ無視されるサイレント•マジョリティの声が息づく、グラフィティのような音楽。にしても、この人たちがいつかザ•ストリーツのようにコンセプチュアルなアルバムに挑む日は来るのだろうか。それをやって欲しい気もするし、一方でそれをやったら彼ららしさが薄まるか、という気もする。 

Sleater-Kinney/No Cities To Love(Sub Pop)

先にも書いたように「まさか」の復活はいくつもあったけど、このバンドの始動とこの作品の登場はもっとも心が躍らされたもののひとつ。自分にとっての彼女たちの最高傑作「The Woods」――この時期のライヴも、本当に最高だった――に続いて活動を停止したという意味で、「素晴らしい伝説」のまま留まるというのもちろんアリだった。だが、本作からほとばしる情熱とエネルギーのピュアネスは、彼女たちの中で音楽が/スリーター•キニーがライフラインとして継続していたことを告げている。一回り大きくなって帰ってきたな――シニシズムは一切なしで、「お帰りなさい!」と両腕を広げて迎えられるレアな再始動。

Stara Rzeka/Zamknęły się oczy ziemi(Instant Classic)

ポーランド出身のソロ•アーティスト、Jakub ‘Kuba’ Ziołekを中心とするユニット(Stara Rzekaというのはポーランド語で「Old River」の意味らしい)の最新作。インプロ集団や他のバンドのメンバーとしても活動してきたというだけあってスタイルは多彩ながら、本作を聴くとこのアクトが(シックス•オーガンズ•オブ•アドミッタンスあたりに通じる)音楽のパーソナル=コズミックなコネクションを探究する求道者であるのを感じる。

Sufjan Stevens/Carrie & Lowell(Asthmatic Kitty)

サウンド/アイデアの拡大傾向が続いていた彼が、ストイックなアコースティック調に回帰したアルバム。バンジョーと声だけで「音楽」になってしまう稀な才覚の持ち主だけに非常に美しい作品になっているのは当然ながら、歌詞のエモーショナルな深みが聴くたび沁みる奥行きをもたらしている。

Suuns and Jerusalem In My Heart/S.T.(Secretly Canadian)

カナダ:モントリオール発のロック•バンドである前者と、エレクトロニック•アーティストである後者(ソロ)のコラボ作品。クラウス•シュルツに通じるシンセの瀑布とミニマルなビートを基調にしながら、コンポジションごとにオーガニックなドラマを生み出している。良好な顔合わせ。

Tame Impala/Currents(Modular)

ベッドルームのひとりサイケ•トリッパーが、デルフォニックスとジャン•ミシェル•ジャールの待ち受ける銀河のディスコに見事にワープした1枚。素晴らしくセンスのいいレコードおたくポッパーという意味で、フェニックスを激しく追撃している観すら。

Teeth of The Sea/Highly Deadly Black Tarantula(Rocket Recordings)

ロンドンを拠点に、10年近いキャリアを誇るサイケデリック•バンド。かねてから抱いていた「どシリアス過ぎ」という印象(このアルバムのタイトルも大仰だよなぁ)は変わらないが、クラウト•ロック、ポスト•パンク、インダストリアル、アンビエント等々本作に詰まったアイデア/ワイドな影響と、それらをひとつにまとめる力量にはやはりうならされる。

Titus Andronicus/The Most Lamentable Tragedy(Merge)

アメリカにおけるアンダードッグ達のアンセムと言える、ブルーカラー•パンク(ハスカー•ドゥ、ザ•リプレイスメンツ、ザ•ホールド•ステディ他)の優れた後継者。心の病いとの闘いをコンセプト•アルバムに昇華させる主犯:パトリック•スティックルズのガッツには泣かされるし、こういうバンドがいるから、自分はまだロックを聴き続けているのだとも思う。

Unknown Mortal Orchestra/Multi-Love(Jagjaguwar)

セカンドから本サードで持ち直してくれて嬉しい!ニュージーランド発のピュア•ポッパー。どこまでも自然体のこういう美メロを書ける人はなかなかいない。

Kurt Vile/B’lieve I’m Going Down…(Matador)

レコーディングは様々なスタジオで行われたそうだけど、そう聞こえない統一感があるのはこの人の歌の力&ギターの味の強さゆえだろう。R&B調でも、ちゃんとカート•ヴァイル味になっている。過去数作を深化させた本作はもはや名人の域で、次の一手がどうなるのかが興味深い。

Ryley Walker/Primrose Green(Dead Oceans)

「His Band and The Street Choir」がつい脳裏に浮かんでしまうジャケットに、「昔のカルト•シンガー•ソングライターの再発レコード?」と一瞬勘違いしたほどだったこの作品。60年代末〜70年代初頭のゴージャスなフォーク系ロックが好きな方には無条件でアピールする1枚だろう(でも、ソングライティングはもうちょっと磨いて腕を上げてほしいです)。

Kamasi Washington/The Epic(Brainfeeder)

真顔で自作を「エピック」と称する大胆さには驚くが、現LAのジャズ〜フュージョン界に満ちるエネルギーとポジティヴなヴァイヴでうねるこの大作を聴けば、確かなパワーに裏打ちされた彼らの誇りの高さに脱帽するしかない。

Wilco/Star Wars(dBpm)

ロック•アウトするウィルコと、噛み締めたくなる歌を鳴らすウィルコ、その双方をぎゅっと凝縮させた1枚。ぱっと聴き渋い「玄人な1枚」ながら、聴くほど良さが増してくる本作は長い付き合いになりそう。彼ら自身がエンジョイしながら作ったであろうことが伝わってくるのも抜群。

●Live

Annette Peacock solo @Cafe Oto, 20Nov/2015

ここのところ、ほんとライヴに行っていなくて(っていうか行けない)ダメ子なんですが、「まさか観れるとは!」なこの人のショウだけは逃せなかったっす。グランド•ピアノ一台だけを伴ったシンプルな弾き語りスタイルのパフォーマンスながら、フォーク/ジャズをベースとする楽曲は実に緻密かつ複雑で、「えっ、コードがこう展開するの?」と驚かされること多々。しかし技巧を技巧と感じさせない優雅な演奏ぶりは実にさりげなく、ランディ•ニューマンやローラ•ニーロ、ケイト•ブッシュといった一級アクトと同じところにいるアーティストだなと感じずにいられなかった。写真撮影厳禁だったので残念ながらイメージはお見せできませんが、柳のようにか細い体躯にロシア風の大きな毛皮帽姿でオーディエンスをねめつけ、「いちいち曲が終わるたびに拍手しなくたっていいのよ」と言い放つ姿は、アーバンとフェラルが絶妙に混合していてえらくセクシーだった。女王様。

●TV

Better Call Saul(AMC)

去年のマイ•ベストはこれ。純粋な新シリーズではなくご存知:人気作「Breaking Bad」のスピンオフ•ドラマなんだけど、実は「BB」は主役2名(およびそのファミリー)よりも脇役の方が好きだったりする自分には、その中でもぴか一名キャラだったソウル•グッドマン&マイク•エルマントラウト(ガスも好きだけど、今のところ登場してません)が活躍する本作の登場には快哉を叫ぶしかなかった。憎めない悪徳弁護士:ソウル•グッドマン(実は本名はジミー•マッギル)はいかにして誕生したか?のバックストーリーを明かしていく、いわゆる「プリクエルもの」なんだけど、犯罪もしっかり絡みつつ、ストーリーの主眼に据わっているのはアメリカ司法システムの諸相および負け犬ジミーと兄チャックとの複雑な関係で、双方が絡まりながら様々なプロットの進展する脚本はリピート鑑賞に耐える抜群な出来。スパイナル•タップでおなじみ:マイケル•マッキーンのキャスティング&演技も素晴らしいですねー。ユーモアとダークさ(ハードボイルド小説〜フィルム•ノワールの影響強し)のブレンドぶりも辛口で大人向けだし、テレビ•ドラマではなかなか観れない大胆な映像センスといい的確なテンポといい、制作者側が「BB」で学んだ智慧やノウハウを見事に活かしているのには溜飲が下がった。ほんと、毎週次エピソードが待ち遠しくて仕方なかったもんね。その分逆に、もうじきスタートするシーズン2がこのクオリティを維持できるか?は心配でもあるんだけど、「BB」を観ていなくても楽しめる(まあ、観ていたら観ていたで、様々な隠しヒントやジョークが分かって面白いんですけどね)=単なる人気便乗スピンオフではなく、独立した優れたドラマを作るのは可能ってこと。

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Detectorists: Series 2&Christmas Special(BBC4)

「The Office」他でおなじみの俳優、マッケンジー•クルックが脚本•監督•主演を務めるイギリスらしさたっぷりのテンダーな珠玉コメディ。地味な局発ながらなにげに口コミでスリーパー•ヒットになっていて、こうしてシリーズ2およびクリスマス特番が生まれたのは嬉しい限り。アンサンブル•キャストの良さを軸とする魅力を大事にしながら、本シリーズで好評さに甘えて悪のりすることなく淡々とした味わいを更に深める方向にコマを進めたマッケンジー•クルックの才覚、評価したい。

Game of Thrones: Season 5(HBO)

このシリーズのイギリスにおける前哨プロモぶりは過去最高だった印象で、セレブ他が普通に口走るレベルにまで到達(イギリスでは有料のケーブル局放映なので、最初から観ているほどのファンの数はそんなに多くなかったはず)。そのぶんレヴュー•批評批判•詮索の度合いもエスカレートすることになっていて、いやはや「人気シリーズはつらいよ」ですな。とはいえこのシリーズ、キモを掴んだ制作サイドの余裕すら感じたいうか:各エピソードの当たり/外れ、「これはいただけない」キャラ&不発のサイド•プロット(サンド•スネイクス、君たちはしょうもなかったなぁ)や先に進まないストーリー等々はもちろん混じるとはいえ、肝心なポイントになるストーリーやキャラの動きは周到に積み重ねられているので、そのぶん「ここぞ!」というクライマックスな各ポイントでのエモーショナルなペイバックが大きい。なんで、細かい不服は忘れちゃうわけです。その押し引き/メリハリの付け具合がマスターフルな域に達したシリーズ5だったけど、うーん、全体のお話としては……ますます暗くなっています。原作を追い越してしまったのでシーズン6は未知の領域に入っていくわけだけど、救いはあるのか〜〜〜?

Jonathan Strange and Mr.Norrell(BBC1)

近年のファンタジー小説の中でも高い評価を得た、スザンナ•クラーク作のベストセラー小説のドラマ化――と言いつつ、映画化の話も出たことがあったくらいの人気本(ポスト「ハリー•ポッター」現象でしょうか?)が存在していたことすら知らなかった。が、原作を知らない分まったく先入観なしで観たのが良かったというか、マジックが存在する架空の19世紀イングランドというストーリーの中にすっぽり入り込めてしまった(逆に、原作のファンには不満もあるのかもしれないけど)。何よりの決め手は、このドラマに興味を抱いたきっかけ=大好きな俳優エディー•マーサン(ノレル氏役)と、もうひとりの主役:ジョナサン•ストレンジを演じたバーティー•カーヴェルの演技だろう。どちらの俳優もダークさとユーモアを見事に使い分けていて、この作品の奇妙な世界――ブロンテ姉妹とジェーン•オースティンに魔法や妖精界が混じった、一種のメタ•フィクションでもある――をリードしてくれる。脇を固めるエンゾ•シレンティやマーク•ウォレン他もジャストな配役だし、ひとくちに「ファンタジー」と言っても今風にダークかつヴァイオレントでもあって、大人が楽しめる良質な内容だった。

Marvel’s Daredevil(Netflix)

「もう、スーパーヒーロー/マーヴェルものはキリがないし……」とギヴアップ気味なんですけど、話題のNetflix発ということもあって試しに観たところ、予想外にハマってしまった(見始めて止まらなくなり、全エピソード一気鑑賞したはず)。コミック原作なのでお話そのものは新しくもなんともないんだけど、「自警型ヒーローと、二重生活を送る彼の抱く様々な葛藤」という定番ストーリーを王道に描いていて、逆に新鮮だった。ドンパチや超能力、秘密兵器よりもマーシャル•アーツ映画系のオールドスクールなアクションも好感が持てたし、主演チャーリー•コックスの押さえた演技(この人、若い頃のモリッシーに似てるなあ)と、ヒーローとおなじくらい大事なメイン悪役を張ったヴィンセント•ドノフリオの怪演もナイス。あくまでジャンクフードTVですが、これくらいのレベルをネット会社が作っちゃうんだから大ネットワークもうかうかしてられませんな。

Orphan Black: Season 3(Space)

快調に飛ばしている「Orphan Black」、第三弾ともなると息切れするか……と思いきや、このシリーズもかっ飛ばしてくれてます。もはやストーリーのオリジンそのものは、色んな陰謀や思惑•背景話が混じっていて混沌=辻褄が合わなくなってる気もするけど(笑)関係なし:各クローンの活躍ぶりが楽しめればそれでいいのだ!という。このシリーズで、生存しているクローンの数が更に増えたのもすごい。がんばれタチアナー!

River(BBC1)

単発ミニ•シリーズ•ドラマ。一見刑事もの……で、とある事件の謎解きのプロットが全体を引っ張っていく構成ながら、エピソードを重ねるごとに作品の主題がまったく別のところにあるのに気づかされ、最後にはエモーショナルな大団円を迎える、奇妙なチャームと味わい深さに満ちた人間ドラマ。いやぶっちゃけ、第一話は作劇的な野心がややハナについて「これ以上観ないでおこうか」とすら思ったんだけど、見続けて正解でした(このまったく逆だったのが、ベン•ウィショー主演の話題作「London Spy」。回を重ねるごとに悲惨なほど面白くなくなっていったドラマだったな〜)。ステラン•スカルスガルドをテレビの主演に引っ張って来ただけでもすごい話だと思うが、共演もニコラ•ウォーカー、アディール•アクター、エディー•マーサン、レスリー•マンヴィル他芸達者揃い。

Bron|Broen/The Bridge: Series 3 (SVT1/DR1)

帰ってきたサガ•ノレン……というわけで、三度目の「The Bridge」が到着。前シリーズはいずれも面白かったので、果たして今回もあのレベルに達することができるか?というのは大きな課題だったと思うけど――またしても秀逸な出来でした。「Forbrydelsen/The Killing」の第1シリーズはひとつのピークだったけど、シリーズ3作として見渡した時のトータルなパワーは「The Bridge」の方が上だなと認識した次第(今のところ、本シリーズはこれで終了ということになっている)。まだ日本では放映されていないかもしれないので詳述は避けますが、今回はサガの内面にかなり突っ込んだストーリーになっていて、肝心の事件そのものよりも人間ドラマが見どころ、という側面が更に強まっている(とはいえミステリー面もおろそかではなく、第一話から「ええっ!」なひねりの連続&伏線も随所に隠されているディテールのこだわりは見事)。トゥーレ•リントハート、ニコラス•ブローらデンマーク俳優勢の演技の良さは、特筆もの。

The Jinx: The Life and Deaths of Robert Durst(HBO)

一昨年アメリカで話題になったポッドキャスト「Serial」(実際に起きた事件を制作者側が洗い直していく、「トゥルークライム」もの)をやっと聴いたのは去年だったけど、同番組をお勧めしてくれた知人に「これもハマるよ!」と教えられたのがこのドキュドラマ。実在の不動産王:ロバート•ダーストを巡る未解決事件の数々の真相を、インタヴュー/アーカイヴ映像/再現映像を交えて追う……という内容なんだけど、監督のアンドリュー•ジャレッキーにとっては実はこの題材は2度目のチャレンジだったりする(2010年に、この話にインスパイアされたサスペンス映画「All Good Things」をライアン•ゴズリング主演で発表済み)。なのでストーリーの大まかな筋は前もって知っていたとはいえ、この「The Jinx」はロバート•ダースト本人がインタヴューに応じ、1982年以降、彼の周囲で起きた失踪/殺人事件(うち一件では起訴されもした)に対する無実を主張するのがキモ。最終話がオン•エアされた時期にあっと驚く顛末を迎えたんだけど(スポイラーになるので詳述は避けますが、さんざん報道されたので興味のある方は調べてみてください)、ロバート•ダーストの実に奇妙な人生/キャラというエニグマそのもの――不適切な形容かもしれないけど、ヘンなカリスマがある――はもちろんのこと、ドキュメンタリー制作者が対象に近づき過ぎることで作品そのものの客観性が危うくなる、そのもろさが透けてくるスリルが興味深かった(その意味で、ジャレッキーが自らのダメさを明かしていているのは潔いと思う)。「事実は小説よりも奇なり」ということで、「Serial」(現在第2シリーズも進行中)や本作のヒット以降トゥルークライムものはますます増えていきそう。

The Last Panthers(Sky Atlantic)

昨今のイギリス制作のドラマにしては珍しい、ユーロ•サスペンス•ドラマという意味で注目させられた本作(メインの舞台はロンドン、マルセイユ、ボスニア)。しかもメイン•キャストはサマンサ•モートン、ジョン•ハートにタハール•ラヒム……という豪華さで、スタイリッシュな映像も含めて演技合戦も非常に見応えがありました。話の始まりは強盗事件なんだけど、そこから徐々に欧州をまたぐ犯罪ネットワークの複雑な構図と、その構造に絡めとられ翻弄される人々のドラマが浮かび上がる(1989年にチャンネル4が発表した「Traffik」という名ドラマにも通じるテーマです)。残念なことに、柱になるストーリーが3本というのはいささか多すぎた:ボスニア紛争や戦後の混乱を背景に権力を増したセルビアの犯罪組織と政界との癒着〜キャラ達の描写は厚みがあったし興味深かったものの、マルセイユを舞台とするストーリーが尻切れとんぼになってしまったり、バランスが悪かったのはもったいない。が、それはおそらく、①6話ではまとまりきらないストーリーであることと、②このドラマの真の主役はセルビア人のミランであるものの、しかしまだ無名に近い俳優(ミランを演じたゴラン•ボグダンは、自分にとっても「発見」でした。マスクも演技も抜群♥♥きっとスターになる人だと思う)を新作ドラマの看板に持って来るわけにはいかなかった……という事情もあったじゃないかと思う。クオリティは高いので、続編が制作されないかなぁ〜。ちなみに、このドラマは主題歌にボウイの「Blackstar」がいちはやく使われたことでも話題になったんだけど、クラークの担当した劇中のオリジナル•スコアも秀逸で印象に残った(このドラマはWARP FILMS制作)。このサントラがやっと!公式にリリースされるのは嬉しい限り。

True Detective: Season 2(HBO)

前シリーズですっかり魅せられた「True Detective」、待望の第2弾。しかしフタを開ければ、大勢からブーイング&バックラッシュの嵐という結果になりました(涙)。「TD」人気を煽ったのはネット族のフィーヴァーが大きかったわけだけど、彼らは熱しやすい分冷めやすくもあるのだなあ〜。が、筆者はこのシリーズも好きだったりする。いや、確かにツッコミどころは多いんですよ:ヴィンス•ヴォーンがやっぱ役不足だったなあとか(シリーズ終盤で持ちかえした根性はさすがと思ったけど、「遅きに逸した」感は否めない→可哀想)、女性キャラ造型が相変わらず薄いなあとか、エルロイとリンチ味に挑んだ野心は買うけど、あそこまでぶっ飛べていなくてペキンパーになってしまい、逆に中途半端だなあとか。ただ、本作のプロットの穴だの立ち消えになったキャラというのは他のドラマでもいくらでも指摘できるレベルのものだし、あそこまで批判しなくてもいいだろう。っていうか、批判する手合いの多くというのは、前シリーズのキャラ(マコノヒー&ハレルソンの名タッグ)とフラッシュバック+尋問場面というユニークなスタイルを恋しがっていて、それらを廃してオーソドックスな刑事ドラマの手法を取り入れた「TD2」を受け入れられなかった、という印象すら受けた。でも、「TD」はもともと「シリーズごとに独立した物語」として創案されているわけで、「マコノヒーのカメオが出るかも?」等の期待を抱く方が、そもそも勘違いだと思う。逆に見どころを言わせてもらえば:①コリン•ファレル。この人のニュアンス〜ピッチ•コントロールの完璧さは全編通じて見事で、たとえ相手役(ヴィンス•ヴォーン、レイチェル•マカダムス等)が音程の狂った演技をしても、持ち直すだけの懐の深さがあった。②ランドスケープ撮影の美しさ。これは「TD1」でも強力なアピールだったけど、今回の舞台はルイジアナではなく煤けた工業地帯から風光明媚な海岸エリアまで網羅するカリフォルニアで、地理フェチにはたまらないはず――メイン•キャラと背景がストロングであれば、成り立つわけです。と書きつつ、このシーズン2の不評/こき下ろしぶりにダメージを受けて、作者ニック•ピツォラットとHBOが尻込みしてしまいそうなのは悲しい。HBOは、たぶんまだ「もう一本やらせてみよう」っていう気概のありそうな企業なんだけど、ピツォラット本人が外野の声や批判に左右されてしまうタイプの人っぽいので(本シリーズにしても、「期待に応えよう」と「自分のやりたいことをやる」の双方に左右されてしまい、混濁した面は大きい)、これで挫けてしまうのかも……

Wolf Hall(BBC2)

16世紀イングランドを舞台にした歴史小説(原作:ヒラリー•マンテル)の映像化で、自然光を多用した撮影や重厚なムードが「実際はこんな感じだったんだろうな」と思わせる、スロー•クッキングならぬ、スロー•ドラマの良さが味わえる作品。数多くの妻をめとったことで有名なヘンリー8世の宮廷を主軸に、しかし主人公はヘンリー8世の側近として寵を受けた政治家トマス•クロムウェルという構成で、(現在にも通じる)政治策謀や権力をめぐる駆け引きの緻密なあやとりを縦糸に、「人間」クロムウェルが浮かんで来る仕組み。クロムウェル役のマーク•ライランスは舞台メインの役者なのでお目にかかったのは初だったんだけど、演技力にはうならされた(スピルバーグが「Bridge of Spies」に起用したのも納得)。この時期の英国史には疎いので、原作/ドラマがどこまで正確なのかは分からない。が、歴史の中のややマイナーなキャラを使い、こうして面白いドラマを織り成したのは勝利だろう。

●Films(アルファベット順)

A Girl Walks Home Alone at Night

ありそうでなかった「ヌーヴェル•ヴァーグ•ミーツ•ヴァンパイア」が、見事に成功。猫の演技が抜群。

Inherent Vice

カリフォルニアのヘンな時期(60年代後半〜70年代)を疑似体験できてナイス。

Mad Max:Fury Road

マンガの映像化という意味で、非常に楽しめました。

The Lobster

ギリシャ人監督ヨルゴス•アンティモスの初の英語作品。アイデアそのものの面白さと、話法のバランスが秀逸。

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Mariko Sakamoto について

Hi.My name is Mariko.Welcome to my blog,thanks for reading.坂本麻里子と言います。ブログを読んでくれてありがとう。
カテゴリー: film, music, TV タグ: , パーマリンク

My Favourites–2015 Edition への4件のフィードバック

  1. フジキ より:

    坂本さん

    いつもブログ楽しみにしています。
    普段邦楽は聞かないのですか?好きな邦楽バンドを教えて欲しいです。。

    • Mariko Sakamoto より:

      フジキさま:コメントどうもありがとうございます。お恥ずかしい話、邦楽はほとんど聴いていないです。単純に、①怠惰な人間だから②邦楽状況に詳しくないので、一体どこから手をつけていいのやらサッパリ分からないから:がその主な理由です。それにまあ、ロンドンにいると疎くなる一方でもありまして。かなり、損してるんだとは思いますが。そん体たらくなので、古い話で恐縮ですが:日本のバンドで好きなのは、ルースターズとサニーデイ•サーヴィス。この2組は、今もアルバム持ってます。それでは、お元気で。

      • フジキ より:

        坂本さん
        返信ありがとうございます。
        私もルースターズ、サニーデイ大好きです。(ルースターズは1st~3rdまでしか持ってませんが…)

        洋楽・邦楽問わずめっきり新譜のCD 買わなくなって、レコードショップにも行かなくなりましたが、また何かの解説でお見かけできることを楽しみにCD 買います。
        ブログの更新も楽しみにしています。

      • Mariko Sakamoto より:

        フジキさま:再コメント、ありがとうございます。お互い音楽の趣味に通じるところがあるようですね。ともあれ応援いただき感謝です。ブログの更新が滞りがちで我ながら困ったものですが、書きたいことがない限り、なかなかやる気にならない性分なのもので。ともあれ、「良いな」と思えるような音楽との出会いがフジキさんにも近々訪れますように。お元気で。

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