The Ex:7Aug2016@DIY Space For London

粗悪な写真ですみません。背が低いのでミキシング卓の横にあった机に立って観るしかなかったのだ…

粗悪な写真ですみません。背が低いのでミキシング卓の横にあった机に立って観るしかなかったのだ…

実〜〜に久しぶりにライヴ話を。アクトはオランダの誇るベテランなアナーコ•パンク•バンド:ジ•エックスです。

このバンドはもう2、3回観てきたけれど、ライヴが素晴らしいので何回観ても飽きない。それは、「パンク」という一般的な概念/ジャンルの括りを越えてジャズにワールド•ミュージックetc、様々なコラボに果敢にチャレンジし続けている彼ら――そこにマイク•ワットの柔軟さをだぶらせるのも可能だろう――が、1979年の結成以来(ラインナップも変わりつつ)拡張•変容を重ねる「現在進行形」のバンドだからではないかと思う。

この日のライヴは、近年スタートした若手フェスの中でも成長株として評判が高いオックスフォード州開催のブティック•フェス:Supernormalに出演した翌日の、いわば「おまけのロンドン公演」。自分にとってもうひとつ魅力的だったのは、会場の側面でもあった。今からほぼ1年前にオープンして以来、少しずつギグのブッキングを増やしていて気になっていたDIY Space for Londonというワークショップ的空間で、ここをやっとこ初体験できました。なにせ自分の住まいからなら自転車で行ける距離なのだ〜。

会場入り口近くに貼ってあった本コミュニティ•スペースを説明した掲示

会場入り口近くに貼ってあった本コミュニティ•スペースを説明した掲示

観たいライヴであれば、もちろんアクセスが不便で面倒でも我慢して馳せ参じます。とはいえ、この気楽さはお尻の重い老体には実に嬉しい。東ロンドン:ドールストンに住んでいた頃は徒歩の距離に色んなヴェニューがあって楽ちんだったんだけど、今住んでいる南ロンドンには残念ながらインティメイトなロック系のハコは決して多くない。こういう風に終電時間等々を気にせず楽しめるカジュアルさは久々の体験でリフレッシングでもあり、かつ、この日は夕方/夜の2回公演だったので午後4時開演のマチネ•ショウをチョイスできた。おかげで小中学生な子供を持つ同行者たちは娘や息子連れで「親子ライヴ」を楽しめたし、とあるカップル客は生後2、3ヶ月の赤ちゃん(もちろんヘッドフォン着用でガードされていました。全然泣かないニコニコ•ベイビーで、親御さんも安心してライヴを楽しんでいた)&乳母車持参で観に来ていた。

こういうファミリー客の光景はロック世代の高齢化に伴いフェス等では増えているとはいえ、ライヴ•ハウスではなかなか観れないものだろう。以前、Kレコーズのキャルヴィン•ジョンソンに取材した際にそのまま同日の彼のライヴも観させてもらったのだが、あれは地元の公民館を使っての「オール•エイジズ•ショウ」(保護者同伴であれば18歳未満の子供も観に来れる)だったのを、ふと思い出した。学校主宰の「軽音楽クラブ発表会」みたいなのももちろん大事だけど、子供世代がプロのショウをじっくり楽しめる機会があるってのはいい話ではないだろうか。そもそも、今のキッズがロック•ミュージックに触れる接点そのものが日常的に少ない状況なんだし。

このDIY Space for Londonは、普段はアーティストや活動家のコミューン型拠点&ヴォランティアが運営するイベント空間として機能している。なのでギグのチケットを予約する際、いちおう「クラブ会員登録」を求められる。手数料は2、3ポンド。立地もなかなか変わっていて、南ロンドンの一角:デプトフォードの外れの公団群を越えたところにある、工業地帯の倉庫群のひとつをスタジオ/ヴェニュー空間に改装している。少し前に東ロンドン:ハックニー郊外にあるBloc.でライヴを観たけど、あそこも同様のインダストリア〜〜ル!なエリア(=周囲には倉庫、工場、高速道路以外な〜んもない)にあるクラブだった。ロンドンの中心ゾーンは家賃が高く、インディ/アンダーグラウンド系音楽のヴェニュー運営は難しくなっている。ゆえに会場は郊外へ、郊外へと拡散しているようだ。ソーホーからのライヴ会場やレコ屋の撤退はもちろんのこと、東ロンドンですらファブリックの閉鎖、カウンター•カルチャーの匂いたっぷりなPassing Cloudsも苦戦と、ナイト•ライフや社交の場が締め出される傾向は感じる。んなわけで、こうした僻地エリアにもいずれ再開発の波が迫ってくるのだろうけど、その数年の隙を縫って、クリエイティヴな空間を造営している人々はいるわけです。

この日のライヴのフライヤーも含め、様々な告知。他に「バンド•メンバー求む」「フラットをシェアしませんか」などの張り紙もあり。ネットの情報流通力が今は基本だろうけど、ここは草の根なコミュニケーションの場になってもいるようです。

この日のライヴのフライヤーも含め、様々な告知。他に「バンド•メンバー求む」「フラットをシェアしませんか」などの張り紙もあり。ネットの情報流通力が今は基本だろうけど、ここは草の根なコミュニケーションの場になってもいるようです。

子供も大人も自転車のプチ集団で、会場に到着。同行者は「ちょっと胡散臭いエリアだな、盗難が怖い」と通りに駐輪するのをためらっていたが、会場内には(当然のごとく)駐輪ラックが提供されていて、ひと安心。驚いたのは、入り口近くに小さなレコード店:Tome Recordsが入っていたこと。アナログ•オンリーの品揃えはパンクを中心とするDIYなインディ•ヴァイナル群に中古のロック、前衛、ジャズ、ワールド•ミュージック、ヒップホップ等、西新宿のマンションの一室型レコード店を思わせる規模の店内をぎっしり埋めている。マニア向けなショップではあるけれど、そもそもこのDIY Space自体が特化した空間であり、一見客や買い物客、観光マネーを呼び寄せる要素はゼロに等しい。だったら、これくらいポリシーのある/専門性の高いショップを目指す方がむしろ正解だと思う。

開演まで時間があったので、会場のロビー•エリアの一角にあるラウンジのソファでひと休み。設置された本棚の寄付と思しき様々な本に混じり、かなりの数のMaximum Rock ’n Rollのバックナンバーがあったのでパラパラ閲覧。ソファの上には充電中のiPhoneだのスタッフのトート•バッグやジャケットが置きっぱなしになっていて、暢気というか不用心というか、なんというか(笑)。しかしこれだけオープンだと、逆に「盗もう」という気が失せるのかもしれない。

ラウンジの向かいにはバー•カウンターがあり、安い缶/壜ビール/クラフト•ビールを中心にしたメニューが並ぶ。フードはスナック(クリスプスetc)程度だったが、カップラーメンも販売していたのは変わっている。「許可の都合により酒類販売は午後6時から」とのことで、酒なしのライヴが苦手なイギリス人客の多くは時間を持て余していて、ちょっと可哀想だった(とはいえ開演が押したので、結局みんなお酒にありつけていましたが)。

壁を隔てた会場エリアを探検。ライヴだけではなく多目的イベントに使われる200人くらいは入りそうな手頃なサイズで、ステージが低いのもコミュニティ•スペースっぽい。ラウンジ•エリアにあるコミュナルなベンチ群にふと目をやると、ジ•エックスの面々がライヴ前の腹ごしらえをしていた。しかも、スーパーマーケットかどこかで買ってきたと思しき、「レンジでチン」と温める式の簡易レトルト料理。周辺は倉庫&ちょっと歩いても人家しかない=外食が難しそうなエリアなので仕方ないとはいえ、彼らのように(おそらく)手弁当でツアーを組んでいるインディのアクトは贅沢はできないのだろう。とはいえテーブルにはしっかり赤ワインのボトルがあり、「やっぱヨーロッパのバンドだなあ〜」と、妙なところで納得したり。

ソロのサキソフォン奏者の前座――インプロのフリー•ジャズ調&多彩な音色を楽しめて悪くなかったが、ストローを吹いて立てるようなゴボゴボ音は、小学校で習わされたリコーダーやピアニカ演奏(楽器演奏が下手なので毎回苦労させられた)と、楽器の管内にたまった唾液(今考えると、結構不衛生)のプチ•トラウマを思い起こさせて、あまり嬉しくなかった。

しばしのセット•チェンジとなり、知人連とビール/タバコ休憩(彼らの子供たちは、持ち込みのスナック菓子をむしゃむしゃ)。前座の段階では場内は5割程度しか埋まっていなかったが、真打ち:ジ•エックスの登場時にはばっちりフル•ハウス。スタンディングなので子供たちは①がんばって前に陣取る②後方で肩車:のふたつの選択肢になるので、我々一行は②をチョイス。とはいえ車椅子客向けのランプがあり、そこに混じって観ている子供もいました。

しょっぱなからガチンコな演奏で、飛ばしまくる。このバンドはメロディックな「歌」よりも、むしろグルーヴ/サウンドの一体感溢れる演奏で聴かせ、ぐいぐいノせるタイプ。その意味で、楽器編成はロック•バンドとはいえ、受け取る印象は民族音楽やお祭り音楽にむしろ近かったりする。なので、たとえ彼らのディスコグラフィに精通していなくても(自分もそうです)、ライヴ•ミュージック=その場で展開する音の動きとメンバー間の以心伝心がもたらす醍醐味には感電するはず。

中年のおっさん&おばさんがパッショネイトに演奏しているだけで、ヴィジュアル面の派手さはゼロ。ノイジーというほどではないにせよ、1曲の中に長めなインストが混じりもする。なので「集中力に欠けると言われる今の子供には退屈かなぁ」とやや不安で、演奏中も「大丈夫?」とたまに声をかけて様子を見たり、柄にもなく保護者チックに振る舞っていた。しかし12〜15歳のキッズも身体を揺らしながら楽しんでいて、終演後に感想を聴いたところ「かっこよかった!」「面白かった!」とのこと。涙。

また、音楽は好きだけどジ•エックスのことはまったく知らず、「近所だし、家族連れで行けるからトライするか」ということで足を運んだ大人の知人連も、2分台の秒速パンクではなく押し/引きを見計らいつつじっくりビルド•アップしていく楽曲の構成やアラブ〜バルカン風からジャズ、レゲエまで様々なエレメントを混ぜ込んだ音楽性を楽しんで踊りまくっていて、汗と笑顔を浮かべていた。ナイス。

即興やジャズは「その場、その時、その空気」が非常に大事な音楽だけど、ジ•エックスもまた、そういう古風なミュージシャン集団なんだと思う。もちろん、録音された音源や流布したイメージを忠実に再現する/なぞるタイプの「ライヴ」をけなすつもりはないんですよ。それはそれで支払ったお金=代価に見合う「エンターテインメント」なわけで、すっきりした収支を求める人々のニーズは当然であって、そこは否定しませんし。また、ジ•エックスのレコーディング作品を「悪い」と言うつもりもない。

けれど、この人たちの真価やエネルギーを味わいたければ――やはりライヴで体験するのがベストじゃないだろうか。名手スティーヴ•アルビニも彼らのレコーディングを手がけてきたけれど、それでもやっぱり、演奏する側のコンディションの違いはもちろん、個々人の主観的な経験やライヴで心に焼き付いた「絵」というのは、録音音源を聴き返すのとは別物なんです。

何が正解で何が間違いか、という話ではない。ただ、ジ•エックスは「1回観ればそれでOK、消化•理解できる」という連中ではなく、3ヶ月後に観ても、3年後に観ても、発見や驚きがあってワクワクさせられる――そういう風に、変化し続けている人たち。なので、このライヴに一緒に来てくれた、目下のところ「Finding Dory」や「Dr. Who」、「Deadpool」に夢中な小•中学生たちが大人になったいつの日にか、「子供の頃に観たっけ」という思い出をきっかけにジ•エックスと再会しそこで新たな感動を掴んでくれたら最高だなー、と思う。

広告

Mariko Sakamoto について

Hi.My name is Mariko.Welcome to my blog,thanks for reading.坂本麻里子と言います。ブログを読んでくれてありがとう。
カテゴリー: music タグ: パーマリンク