TV round up: Stranger Things

テレビ話、今回はちょっと前に発表され、プチ•フィーヴァーを巻き起こした話題のドラマ:「Stranger Things」の感想を。「Orange Is The New Black」、「Unbreakable Kimmy Schmidt」、「BoJack Horseman」といった人気作を次々に発表しているNetflixの勢いや恐るべし〜というところですね。

<最後の「加入ください」メッセージがうざいですが、予告編>

とはいえ:イギリスでは有料のケーブル局やネット•ベースのドラマは地上波局番組の普及力にはまだ及ばないからか、メディアの扱いはBBCやITV発作品に較べてマイナーだと思う。アメリカ産という面もあるのだろうけど、ケーブルやネット会社は実験性の強い=メインストリーム局ではなかなか青信号が出なさそうなニッチ企画を突く傾向が根本にあるので、自然若者世代&マニアックな/先物買いの好きなファンが主客になる、という構図もあるのだろう。HBOやNetflixがスタンダード化するまでには、まだ遠い。

ゆえに放映•公開前から「すごい!」と騒ぐより、むしろある程度のリアクションを観察した上で「こんな面白い作品もあるでよ〜(あなたもノってみませんか?)」と紹介する、が基本姿勢にあった…と思っていたところ、「Stranger Things」はイギリスでもメディアの前煽りが割としっかりしていて、「おや〜、状況はどんどん変化しているのか?」と思わされた次第。

ところがその要因はずばり:ウィノナ•ライダーの出演にあったのだと思う。英ドラマが海外に売り込まれる時も同様だと思うけど、やっぱりとっかかりのいい映画スターのネーム•ヴァリューというのは認知しやすい売り文句/看板になるわけで(例:マギー•スミス、トム•ヒドルストンetc)。80〜90年代のカルチャー•アイコンのひとりだった彼女が登板というのは、①映画スターがテレビ/ネット•ドラマに進出するトレンドの深化はもちろん、②映画キャリアの面では低空飛行気味な彼女がどう活きるか?という興味も掻き立てられる。

②に関しては、これはちょっと皮相で残酷な見方なのかもしれない。ある意味、メルトダウン後のブリトニー•スピアーズの動向に抱く野次馬な好奇心に近いかな?とも思う。でも、「Black Swan」や「Star Trek」でのカメオに近い短い登場シーンを見つけて喜んでいる熱心なファンでもない限り、ふと「最近、ウィノナってどうしてるのかなー?」と怪訝に思う人はぶっちゃけいたはず。その潜在的なニーズに応え、彼女のカムバックを見守ろうじゃないですか…というトピカルな副菜を添えたことで、映画好きをも巻き込む広がりのあるバズを生み出していたんじゃないかと思う。

というわけで発表前の番宣ネタは「なんとウィノナが出演!」にフォーカスしていて、配布されたスチルも彼女メインの写真がほとんど。他のキャストはスルーされていた、と言ってもいい。それを見た際のヘソ曲がりな自分の第一リアクションは「へー、彼女も遂にテレビにねぇ」という程度で、逆にあまりそそられなかった。クレア•デーンズやキルステン•ダンスト、マギー•ジレンホールももうやってるしなあ〜という感じの鈍いノリで、ロクに前煽り記事も読まず、ドラマそのものの内容を確認する気も起きなかった。

そんなこんなしているうちに、知人宅で行われたビール•パーティ(:主催者カップルの片割れが地ビールのミニ醸造所で働いていて、売れ残った/賞味期限が近づいていて市販できないビールをみんなで飲み明かそう!という実にナイスな会合)に参加した際に、「最近観て良かった映画•ドラマは?」という酒の席っぽい会話に。ほぼ満場一致で「Gomorra」で知られるマッテオ•ガローネ監督初の英語作品「Tale of Tales」(これはマジに良いですよ!)が上がったので喜んでいたところ、そのうちひとりが「そういえば『Stranger Things』は観た? 面白いわよー」と勧め始めた。

<おまけで、「Tale of Tales」のトレイラー。日本題は「五日物語 ー3つの王国と3人の女」らしいので、公開あるいはDVD化されるようです〜>

自分「ウィノナの出てる、あれ?」、彼女「そうそう。でも全体的にノスタルジックで良くできてる。子供たちが可愛いし」と話も盛り上がったので(かつ、彼女とは『「Robocop」大好き』という面で趣味が合うので)、いっちょ観てみるか〜と腰を上げたところ…あえなくハマってしまった(笑)。Netflixの全話一挙投下スタイルにふさわしく、8話を完徹でビンジ•ウォッチしてしまいましたとさ〜。

もっとも、ここで「ハマった」と言うのは、ストーリーのオリジナリティや緻密さ、キャラクターの新鮮さ•ユニークさといった深いレベルでの感動ではない。むしろ、開き直った引用•オマージュ•訳知り顔の目配せにニヤニヤしながら、元ネタをあれこれ指摘して楽しむ、という「頭のレベルで」ハマった、というのが近いと思う。言い換えれば、クレヴァーなカヴァー•ヴァージョンや変奏、あるいはサンプリングがてんこ盛りな再構築ポップを聴いて、「わー、こんな技があったのか!」「ヤられた」と驚き、喜ぶ体験でしょうか。

なーんて書いてしまうと、「えー、引用ネタとかを知らないと面白くないドラマぁ?」と誤解されてしまうかもしれないので念のために付記しておくと:それはまったくないのでご安心ください。オタッキーに見始めればそれはそれでパズルを解くような楽しさもあるものの、主眼になるドラマとしての流れやストーリー、人間関係〜キャラの相関、演技やプロダクションのクオリティはおおむね及第で見応え充分。SFやスリラー/サスペンスが好きな人なら、まず楽しめる内容だと思う(この作品は1983年が舞台で一種の「ノスタルジーもの」ながら、その頃を知る術すらない知り合いの中学生も観始めてすっかりハマっていますし)。

というわけで、この作品についてのもろもろの思い、個人的な見どころを書いていこうと思います。ネタバレは極力避けますが、作品のスタイルがSFミステリである以上、書いていくうちにどこかしら謎をスポイルしてしまう可能性もあるかと。ので、「概要だけで充分、詳しく知りたくはない」、「観る前に予備知識や先入観を混ぜたくない」という方のために、一応発しておきます。以下のライン以降の文章は、「侵入用心」の上で。

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さて。「Stranger Things」の舞台になるのは、1983年:アメリカのインディアナ州の架空のスモール•タウン=「平穏」を絵に描いたようなホーキンス。ドラマの発端は明かしませんが、ストーリーの主推進力になっているのは12歳の少年:ウィル•バイヤーズのミステリアスな失踪事件で、彼を死にものぐるいで探し続ける母:ジョイス役を演じるのがウィノナ•ライダーになる。ジョイスには高校生の息子もいる設定で、ウィノナがこういう役を演じる年代になったかぁ〜と思うと、つい感慨が湧いてしまう。しかも、ミニ•スーパーで働きながらトレイラー•ハウスの一歩手前、というボロ家でワンダー•ブレッドを主食に暮らすバツイチのシングル•マザーというグラマラスの「グ」の字もない役柄で、メイクも最低限/髪もぼさぼさ、衣装も全8話を通じてほぼ同じ…というくらい、質素に徹している。

「元が美人だから、みじめな役をやっても大丈夫なんだよね」という「ごもっとも」な意見もある。確かに、どんなに小汚くしていても「健気なお嬢様」っぽさは残っているなと思った。生活苦の上に子供が消えるというショックのせいでメンタル面で不安定になり、周囲から「ヤバい」と敬遠され孤立していく女性…という切羽詰まった感は出ているものの、たとえば「Frozen River」でのメリッサ•レオや「Winter’s Bone」でのジェニファー•ローレンスほどのガッツ〜生命力を感じないのは、やや物足りなくもあった。

それでも、自らのステレオタイプを打ち破ろうという、彼女の俳優としての意欲と努力は大いに買うべきだろう。それに、実際に「Stranger Things」を観ると、ウィノナの出演シーンはそれほど多くなかったりする。スチルだけ観た時点では「彼女が出ずっぱりなのかな?」という印象を抱いたものだけれど、いざフタを開ければ――ドラマのエモーショナルな「錨」としての重みは大きいものの――母ジョイスの物語曲線は全体の一部であり、むしろ自分にはそれ以外の様々なキャラの織り成すハーモニーやドラマそのもののコンセプトの方が面白かった。

そう考えると、ウィノナはいい意味での客寄せパンダであり、まかり間違えば面白いカルト作という評価で終わりかねなかったこのドラマへの注目度•アクセス率を上げるための割り切った「仕掛け」でもあったのだろう。それが「なんだー、期待を裏切られたな」という失意に転じることなく、むしろ「意外で面白い」とポジに評価したくなったのは、制作者側の勝利だと思う。それくらい、いったん観始めれば引き込まれる要素が色々と詰まっている。

何より秀逸だったのが、子役たち。消えた親友ウィルの捜索に乗り出すマイク•ダスティン•ルーカスの「The Goonies」風なガキんちょ3人組+どこからともなく現れた謎だらけの少女エルの4人こそ、実はこのドラマの主役だろう。彼らを軸に、マイクの姉ナンシーとウィルの兄ジョナサンが形成する高校生ドラマ、次々に起きる怪事件を追う(過去の悲劇を引きずりながら生きている)警察主任ジム•ホッパーの姿と、いくつかのスレッドが絡まってお話は展開。

そのスレッドの中でも大きな鍵を握っているのが、マシュー•モディーン演じる不気味な科学者だったりする。ウィノナ出演がもっとも大きな話題になっているけど、いや〜、若い頃にモディーン•マニアだった身としては、このキャスティングは泣けましたね(その意味では、「The Blacklist」のジェームズ•スペイダー、「Homeland」のマーティン•ドノヴァンを観て浮かんだ涙の量をしのぐかも?)。

<思いっきり懐かしいところで、「Vision Quest」のマシュー•モディーン。しかしこの予告編、ナレーションや場面選びのノリがコメディ狙いでびっくり。もうちょいシリアスなノリの青春映画なんですけどね>

子役は全員演技が達者で息の合い方も見事とはいえ、思春期にさしかかりつつあるオタクな少年たち(=「Dungeons and Dragons」のマニアで、学校では科学クラブのメンバーというファンタジー&SFっ子=ナード)を色んな意味で翻弄し、男子の友情に波紋を投げかけるエル役にミリー•ボビー•ブラウンが抜擢されたのは抜群だった。このスペイン生まれのイギリス人役者は、以前観たBBC America/BBC Twoの共同制作「Intruders(侵入者)」というドラマ(「The Blair Witch Project」の共同監督であるエドゥアルド•サンチェスも数話を担当)で、いちばん印象に残ったので記憶していた。

<「Intruders」より。短いシーンでもミリーちゃんの存在感はばっちりっす>

「Intruders」は、ストーリーの引き金になるプロットは興味深い――「あなたのよく知っているはずの人々=恋人や配偶者、子供が、ある日突然よそよそしく変化してあなたを退けるようになったらどうしますか?」という不安――ものの、徐々に無茶苦茶なオカルト•ホラー系サスペンスに転じていって、「わざわざテレビ•ドラマ化するよりも、この程度のアイデアなら映画一発で済ませればいいのに」と感じずにいられなかった。しかも、主演のジョン•シムとミラ•ソルヴィノ(英米のファンを同時に惹き付けるための配役?)演じるカップルの間に全然ケミストリーがなくてねー(笑)、当然だけど。基本にあるのはラヴ•ストーリーの崩壊という悲劇なはずなのに、観てても白けてしまう……。

でも、そんな風にイライラさせられる中途半端なドラマでも、観る側を惹き付ける「力点」はあった。まずひとつは、生まれ変わり=不死のからくりを司る秘密結社/魔術ソサエティに雇われた暗殺者役を演じたジェームズ•フレイン。この人はアメリカのテレビを活躍のメインな場にしているイギリス人俳優なんだけど、アクの強い顔立ち(好きです)も含め、画面に出てきただけで「あ、彼が演じるならこの役は裏がある」と思わせるキャラクター•アクターで、ここでもやっぱり磁力の強い演技で楽しませてくれた。

それと同じくらいにパワフルだったのが、9歳の女の子:マディソンを演じたミリー•ボビー•ブラウン。彼女が演じたのは「殺人鬼の魂に肉体を乗っ取られてしまう(=侵入されてしまう)」という役柄なんだけど、あどけない子供の表情と狡猾な犯罪者のダーティさを臨機応変に演じ分ける力量は見応えがあった。いわゆる「普通に可愛い/綺麗な女の子」の筋とはちょっとズレた、クロエ•モレッツやヘイリー•スタインフェルド系=男の子や動物、植物ともリンクする、不思議な生命感のある少女、とでもいうか。印象的。

そんな彼女の不思議な魅力――少女のある「時期」にしか存在しない、恐らく一定の年齢に達すると消えてしまうサムシング――をばっちり捉えてくれたのは、個人的には「Stranger Things」のポイントの高さのひとつだった。なにせこのエルちゃんはボウズ頭で、一見「男の子?」と見間違えられるキャラ。途中で変装もするとはいえ、剃髪から連想される色んなシンボル(=病気の子供)やアイコン(=ジャンヌ•ダルクからフュリオーサに至る戦う女性)を背負いながら、弱さ/強さが入り混じる内面を見事に演じていた。脚本の面でガッカリさせられる面は皆無ではないとはいえ、言葉よりも表情や動作、目で多くを語る彼女の存在感には吸い寄せられっぱなしだった。

脱線しましたが、本筋に戻りまして:というわけで、スモール•タウンを舞台に失踪•殺人事件•説明のつかない超常現象が起き、救出&真相解明に向けてキャラたちが様々なドラマを織り成していく――んだけど、その謎そのものは、割とすぐに「きっとこういう経緯で引き起こされたんだな」と観る側には察しがつくように作られている。なのでエンエンとミステリーを隠して「何? 何これ?」とドキドキさせるというより、むしろ観る側は知っている情報を共有していない登場人物たちが危険に飛び込んでいく様に「それやっちゃダメ〜!」とハラハラさせられるスタイル。

そのサスペンスフルな作りも含めて、「Stranger Things」は80年代ホラー/ファンタジー/SF映画の「型」を数多く踏襲している。というか、このドラマ自体が丸ごとそうしたジャンル•ムーヴィへのオマージュになってもいる、と言う方が近いかもしれない。

真っ先に気づくのは、スティーヴン•キングへの目配せだろう。この番組のタイトルのロゴを見た瞬間、キング作品ペイパーバックの表紙のノリを思い浮かべた人は多いはず。こういう凝り方は、セガのロゴをもじった「Mr.Robot」(こちらにはクリスチャン•スレイターが出演していて、「Stranger Things」でのウィノナと同じようなポジションを担当しているっけ。ううーん、「Heathers」!)のタイトルが秀逸だな〜と思っていたけど、「Stranger Things」も負けてない。このフォントとジョン•カーペンター型のシンセがうめくテーマ音楽を耳にしただけで、気分が一気に「あの頃」にトばされる仕組みだ。上手い。

ちなみにこのTVサントラは、イギリスではポーティスヘッドのジェフ•バロウが主宰するInvada Recordsからリリースされます。凝りまくったパッケージ(イラストのジャケも実にそれっぽい)も見物っすね。映画「Drive」サントラ盤あたりからこうしたニッチなOSTリリースの数々に力を入れてるジェフだけど、そろそろポーティスヘッドも新作出してくれないかなー。

スティーヴン•キングおよび彼の作品の映画版は、このドラマのストーリーにも多くのインスピレーションを与えていると思う。ざっと思い浮かぶところだけでも、「Carrie」、「Stand By Me(原作は『The Body』)」、「Firestarter」あたりはキャラやプロットのアイデアのベースになっているんじゃないかな〜。そのスティーヴン•キングとジョン•カーペンターが組んだ「Christine」は、そういや1983年公開だったりしますね。

<「Christine」予告編。この作品は、前作「The Thing」が予想を下回る興収&(今と違って公開時は)評価が低かったため、ジョン•カーペンターが「ヒットを」と割り切って作ったとか。にしても「The Thing」の不振の遠因とされるのが、同年公開の「E.T.」と「Blade Runner」のヒットのせいで相対的に評価が下がったから…という説には、「SF映画にとってはすごい時期だった」と思わずにいられません>

もうひとつ大きいのは、スティーヴン•スピルバーグ。自転車で町中を自在に駆け回り、大人顔負けの勇気と知恵を発揮する子供たちの姿も含めて「E.T.」は大きいし、「Close Encounters of the Third Kind」を連想させられるプロットもいくつか。更に強引に付け加えれば、高校ドラマのパートや「スポーツ系VS文系(いじめっ子といじめられっ子)」の図式、ポップ•ミュージックの挿入の仕方(ザ•スミス、ザ•クラッシュ、ジョイ•ディヴィジョン他)はジョン•ヒューズ映画のバリエーションとも映る。ふたりのスティーヴン(キング&スピルバーグ)とふたりのジョン(カーペンター&ヒューズ)が、「Stranger Things」の主成分になっているわけですね。

こうした大きな「旗印」以外にも、「ここはこの映画の引用だ」、「このネーミングはこの作品にちなんでいる」等々の指摘は山ほどあるのだろう。それは、ファンタジーやホラー専門の方にお任せします(個人的に感じた影響としては、青春映画の傑作「Breaking Away」、「Twin Peaks」、ギレルモ•デル•トロなノリ、「Under The Skin」あたりが浮かんだのは嬉しかった。そこまでやるならもう一声、「AKIRA」も混ぜてほしかったけど…。あと、「Evil Dead」他、ホラー映画のポスターがカメオ的に出て来るのもナイス♥)。しかし何より、80年代アメリカン•ポップ•カルチャーの今も愛される/ノスタルジーを掻き立てるとある側面のエッセンス(美味しいところ、と言ってもいい)やクリシェを抜き出しメガ•ミックスすることで、エンターテインニングなドラマを作ってしまったのは発想として面白いな、と。

そうしたオマージュ•リミックス型ドラマの先例という意味では、コーエン兄弟の「Fargo」をベースにコーエン兄弟映画のクセや彼らの好きな入れ子を踏襲した「Fargo」があるだろう。また、ストレートなスピルバーグ味へのオマージュという意味ではJ.J.エイブラムスの映画「Super 8」も思い浮かぶし、今年で言えばジェフ•ニコルズの最新作「Midnight Special」も、「かつてのファンタジー映画」の香りに満ち満ちていたっけ(ちなみにこの映画では、キルステン•ダンストが母親役)。

とはいえ「Stranger Things」はもうちょっとターゲットが広く、「80年代的なるもの」の最大公約数をスマートに提示した「ベスト•オブ」とでもいうべき印象がある。あとやっぱり、この時期をインスピレーションに用いるのが美味しいのは、「ファミリー」、あるいは「地元の共同体」という、舞台が現代だったらちょっと無理のありそうな結びつきがまだ残っていた時代、という要素もあるかもしれない。いや、もちろん80年代だって核家族問題だとか、子供や女性を狙う猟奇事件はいくらでもあったんでしょう。けど、「Stranger Things」を観ていると、大人は実に大人らしく、子供は実に子供らしく(もちろん生意気だったり言いつけを破ったり、随所で反抗はするんだけど)振る舞っている。

見知らぬ子供が困っていたらとりあえず食べ物を与えて助けてあげ、児童保護局に通報する。教師と生徒が相互をリスペクトしている。息子や娘が警察沙汰に巻き込まれても、「I love you」と抱きしめて、無実を信じて支えてあげる――その信頼の図のオーソドックスさは、もしかしたら「クサい!」と笑われるものかもしれない。けど、色んな意味でシンプルだった時代への懐かしさもあいまって、ちょっと泣けたです。かつ、このドラマでは母親のカンや保護本能がウィノナ演じるジョイス以外のキャラにもさりげなく示唆されていて、ジョイスと共にゆるい「疑似家族」を形成する(すごくいい人)捜査主任ジム•ホッパーを除き、あまり役に立たない/ネガな父親像が登場する本ドラマに現代的なスパイスを添えていたな、と思う。

というわけで、色々な見方で楽しめてエンジョイした「Stranger Things」だったんですが――スマッシュ•ヒットを受けて、早くも来年投下予定のシーズン2がアナウンスされています(そういやスティーヴン•キング「It」の映画版も来年公開で、ホラー好きの間で話題になってますね。こちらにも、「Stranger Things」でマイク役を達者にこなしていたフィン•ウォルフハード君が出演している模様)。まあ、「完結」ではなくオープンなエンディングだったんで、「これにて終了」でも、あるいは「続投も可能」でも対応できるような作りだったんだろうな、とは思う。また、この第1弾で掘り下げきれなかったコンスピラシーや設定、キャラをもっと観たい!という声も大きいのだろう。なにせ、ドラマのきっかけになる重要キャラのはずのウィル君は、失踪してしまったために登場場面は主に回想シーン、と活躍が少なかったりするし。ローラ•パーマーかよ…。

が、自分個人としては、この作品の「80年代リミックス」というコンセプトは1回観れば充分かな〜、という感想。まだまだ引用•パロディするネタはあるんだろうし、制作者側も更に凝るのは間違いない。ただ、前知識なしに「不意をつかれた」的な面白さやおおっぴらなクリシェ使いを観るのが喜びでもあったこの作品、大ネタは既に使い果たしているので、過去の「型」のリサイクルというトリックだけを引きずられても、あんま面白くないんじゃないか〜?と。そんな自分の要らぬお世話意見/屁理屈が否定されることを祈っていますが――次シーズンを云々する前に、まずはこの楽しめる作品、機会があったらぜひ体験くださいまし。

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Mariko Sakamoto について

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