John Carpenter@Troxy Theatre/31Oct2016

会場の入り口近くにはハロウィーンのパンプキン、そしてジュディス•マイヤーズの墓標が!(ナイス!)

会場の入り口近くにはハロウィーンのパンプキン、そしてジュディス•マイヤーズの墓標が!(ナイス!)

フル•バンドの偉容

フル•バンドの偉容

例のピエロ騒ぎの影響で、普段よりも早くから盛り上がった(?)感のあった今年のハロウィーン。うちの近所でも、夕方にコスプレした幼稚園児〜小学生たちが親御さんの付き添いの元、「このおうちを試してみようようか〜」と和気あいあいなノリで界隈の家々のドアをノックする姿が見受けられました。しかし売れ残ったカボチャはどうするのかなと、毎年のことながらちょっと気になった。水っぽくてデカい瓜みたいなあれはとてもじゃないが料理に使えるシロモノではないので(スープにすらならない)、家畜の飼料か何かに転用されるのか……?

という駄話はさておき:ハロウィーンにふさわしく、ジョン•カーペンターのコンサートに行って参りました。チケットを予約したのはほぼ1年前の話で、いはやは長かった! その間に本来このコンサートを企画したプロモーター=ATPが倒産する事件も起きてすわ「キャンセルか?」とビビらされたり(結果的に他のプロモーターが企画を譲り受け、無事開催と相成りました)もしたけど、楽しみに待った甲斐のある、ホラーでありつつハートウォーミングでユーモラスな後味の残る、実にジョン•カーペンターらしい愉快なイベントになりました〜★

「Halloween」、「The Fog」、「Escape From New York」、「The Thing」といったいまや「古典」とされる作品の数々で、アメリカのホラー/SF/スリラー映画の黄金期=70〜80年代を形作ったひとりであるジョン•カーペンター。こうしたジャンル映画の常で低予算なプロダクション、かつスタジオ•システムとは一定の距離を置きつつ自主制作育ちの作家主義を基本姿勢に映画を撮ってきた御仁だが、その「お金がない=プロの作曲家を雇えない」という制約の副産物とも言える自身が作曲•演奏•制作したシンセとDIY精神たっぷりな映画音楽もまた、いまやサントラ好きたちの間では「古典」のひとつと看做されている。

そんな下地とミレニアルな80年代ノスタルジー(ジョン•カーペンターだけではなくスピルバーグやリドリー•スコットもルネッサンスしてますし。先だって本ブログで取り上げたドラマ「Stranger Things」然り)が相まって、ジョン•カーペンターが自作サントラではなくオリジナルの「架空のテーマ曲」を集めた初のソロ作「Lost Themes」をSacred Bonesから発表したのは昨年のこと。好評を得て続編=「Lost ThemesⅡ」やリミックス集もリリースされたが、それを契機に今年で齢67のジョン•カーペンターが初のツアーに乗り出した。映画も音楽も好きな人間にとって、これはやっぱり見逃せないっす。

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アメリカやイギリス各地もある程度消化したところで、このロンドン公演はどんぴしゃにハロウィーンの当日。前座は無し:開演時間も通常よりちょい早めなのは、御大の年齢も作用しているのかな? 会場は久々にTroxyで、自分はフレイミング•リップスを観に行って以来になる。かつては映画館だったというアール•デコの内装も雰囲気がいいし、キャパはたぶん3000強。この日はソールド•アウトという立派な興行ぶりで、翌日ももう1公演設けられていた。

二階席だったのだが、会場に到着した頃には既にシートの9割が埋まっている。しかもこの会場、二階席の前面=見晴らしのいいバルコニー席はVIPチケットを買ったお客に割り当てられているのだった。クソー! しょうがないので後方の手すりに寄りかかっての立ち見と相成ったわけだが、映像もがっつり交えたステージングだったので、ある意味後ろで観るのも全景がばっちり楽しめて良かったかもしれない。

開演前の暇つぶしに場内を眺めていると、8割近くが中年の男性客だ。70年代から始まるジョン•カーペンターのキャリアを考えれば当たり前の話とはいえ、見事に子供(小中学生、高校生系)が欠如。これはあくまで二階席=座って観たいオヤジオバハン客が好むゾーンの話なので、一階=スタンディング•エリアには若人ももっといたのだと思う。しかし自分の周囲の大半はジャンル映画ファンなようで、よく見るとおのおのカーペンター映画のTシャツ着用(もちろんほとんどは黒)で地味にオタクに「自己表現」していて、マーチャン売り場で買ったポスターやアイテムを見せ合って盛り上がっている。なんかこう……「通常のコンサート」というよりも、コミコンに足を踏み入れた感覚が。

この日は開演前にジョン•カーペンター自らが審査する「ハロウィーンのコスプレ•コンテスト」も行われていたそうだが、そういう飾りっけのあるお客は少数派。映画マニアは音楽ファンよりも自閉気味なのかしら? と言いつつ、何人か袖をカットオフしたGジャン=80年代ファッションを着てイキがっている輩を見かけた時は、「カート•ラッセルみたいに鍛えた身体じゃないお前らに、それを着る資格はない!」と、沈黙の威嚇ビーム視線を浴びせずにいられなかったですけど。

予定時間をちょいと越えて8:30、いよいよ開幕。いきなりズゥゥゥ〜〜〜•ズズズ•ズ•ズー!と「Escape From New York」のあの黙示録めいたダークなテーマが流れ出し、観客もたちどころに熱狂&ガッツ•ポーズ。「開戦」を思わせる見事にイカしたオープニングっす。バンドは総勢6名で、キーボードを前にしたジョン•カーペンターを中心に、サブのキーボード、ギター2名、ベース、ドラムのフル•バンド構成。ステージの背景はスクリーンになっていて、演奏中の楽曲に合わせてその映画の名場面や有名なシーンが流れる仕組み。パナフレックス•カメラを正面から見据えたようなスクリーンのデザインの粋さも含め、このコンサートが「映画」仕立てなのが分かる。

<ファンの間でも恐らく1、2位の人気であろう「Escape From New York」のテーマ•ソング>

続く初期の名作=「Assault on Precinct 13」の荒々しいノリでマニアを泣かせたところで、アルバム「Lost Themes」からの楽曲で軟着陸。ジョン•カーペンターはこれらオリジナル•アルバムの楽曲を「聴き手の頭の中に浮かぶ映画のサントラ」として作ったそうだけど――自分にはゴブリンっぽく聞こえてしまうのは愛嬌でしょうか?

ステージにドライ•アイスの煙がもわ〜んと流れ始めたところで、待ってました! 「The Fog」のメイン•テーマ(スクリーンに映される元妻のエイドリアン•バーボーの艶姿に喝采が寄せられたのもナイス!)。こういうベタでミエミエな演出はもちろん、演奏中もどうも手持ち無沙汰(?)なのか慣れない風情で音に合わせてノっているジョン•カーペンターの「年金世代」なのにホラーの王者っぽさを醸そうとするノリも、むしろ一種の人徳/チャームとして愛でたくなってしまう。行き過ぎた消費社会を風刺したカルト名作「They Live」のブルース調でこってりしたテーマ曲(彼の作品では異色)と「OBEY」のアイコニックなロゴで盛り上げたところで、メンバー紹介。ソロ作のコラボレーターであるギターのダニエル•デイヴィス(キンクスのデイヴ•デイヴィスの息子で、ジョン•カーペンターは名付け親だそう)とキーボードの実子コディ•カーペンターにはひときわ熱い拍手が寄せられた。

そこから先も、巨匠モリコーネに敬意を表して彼の担当した(でも実にカーペンターっぽい)「The Thing」のスコア、80年代らしい派手さとハード•ロック色の濃い「Big Trouble in Little China」等、クラシックの連打。合間に挟まれるソロ作からのオリジナル曲はプログレ〜メタル•インストが主調で驚きに欠ける=ややダレもしたのだが、冗長になったりソロがエンエンと続くなんてことはなく4、5分程度ですっきり終わるのは、やはりジョン•カーペンターが自らのエゴを満足させるというよりも主題曲(映像のサポート)という機能を起点に職人的に音楽を作ってきた人だから、かもしれない。

シンセ3台を駆使した荘厳さが素晴らしかった(待ってました!)「Halloween」が鳴ったところで、本編のシメは意外や「In The Mouth of Madness」。公開当時はケナされ、ジョン•カーペンター本人もあまり快く思っていないこのラヴクラフト調オカルト、しかしカルト評価は近年上がっているというし、80年代のダリオ•アルジェント(「Phenomena」でのアイアン•メイデン等)のノリがだぶるダイナミックなハード•ロックをバンドも全開の演奏で熱演、ぶっちぎってくれた。

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アンコールは、スクリーンに登場したアリス•クーパーのカメオ出演場面だけで歓声が湧いた「Prince of Darkness」。おどろおどろしい雰囲気にとっぷり浸ったところで、オリジナル曲では息子コディがキーボードの独奏で見事にリードする様を父が見守る泣かせる場面も。ジョン•カーペンター作品はプロデューサーはもちろん撮影スタッフやキャストのリピート登板(妻他の家族も関わってきた)が多いことでも知られるが、信頼するコアなメンバーと一緒にファンタジーやスリルを作り出す=いわば「ファミリー•スタイル」を重視することで、「ジョン•カーペンターの映画」という独特な味わいとブランドが生まれ、守られたきたのだな〜と感じずにいられなかった。

「皆さん、今夜は来てくれてありがとう。でも、帰りの車の運転にはくれぐれも気をつけて!」――アメリカとは違ってロンドンのライヴに車で来る人は滅多にいないので、すかさす観客からは「ジョーン、俺たち車は使わないよー」と冗談ヤジが飛んで笑いましたが――とのお茶目な目配せをキューに、最後は「Christine」。イントロのリフこそ可愛らしかったものの、メカに宿る怨霊というストーリーの映画だけにエレクトリック&(文字通り)インダストリアルなスコアは強力にビルドアップしていき、スクリーンを彩るクリスティーンの不条理な勇姿=不良連中を追い回し惨殺していく映像と共に見事なカタルシスをもたらしてくれた。演奏が終わり、スクリーンに「The End」の字幕が映るのも最高だったです〜。

ライヴ終了後客演が灯り、ステージ前面にバンドと手をつないで並び、深々とお辞儀をするジョン•カーペンターにスタンディング•オヴェイションが惜しみなく注がれた。自分も心からの「ありがとう」を送った。

名監督と名音楽家のタッグは枚挙にいとまが無いし、サイレント映画にオリジナルなスコアをつける、映画上映と生演奏を組み合わせる、オーケストラが人気サントラを再演する等々、映画と音楽のドッキングは様々な試みを生んでいる。しかしジョン•カーペンターは、ヴィジョンとサウンドの双方を自分自身で具現化してきた稀な「マスター」。その自力本願な姿勢とエンターテインメントへの愛情は、彼をクラシックなアメリカのクリエイターのひとりにしている。

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Mariko Sakamoto について

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