お知らせ: My Bloody Valentine


みなさまお元気でしょうか。そうだと祈っています。

全然更新してなくてすみません。と言いつつ、今回のポストは業務連絡です。

今月末に「エレキング」さんがマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン別冊特集号を出すのですが、そちらでちょっとお手伝いさせていただきました。 詳細はこちらを参照くださいませ。

90年代再考ももちろんですが、第二特集は今熱い若手バンドなので、どんな内容になるのか私も楽しみです。もしも気になりましたら、店頭他でチェックしてください~。

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お知らせ:Black Country, New Road


というわけで今回のポストは業務連絡です。

新世代バンドが続々登場し活況を呈していますが、中でもうるさ型の音楽好きをうならせまくっている話題のUK発7人組がブラック・カントリー、ニュー・ロード。

彼らに取材する機会に恵まれました! ローリングストーン・ジャパンさんのウェブにアップされております。ご興味のある方はこちらのリンクより閲覧してみてくださいませー

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日々の雑感:地味な年明け(っていうか2月)


3回目COVIDロックダウン中のイギリス、外出先はこれからしばらくスーパーだけ。寝て起きて食べて寝てと同じことの繰り返しで、やや時間感覚が狂った年末~年始でした。

 ともあれ無事なのは何よりありがたいし、ここ数か月で入手した結構な量のDVDと本、今のうちになるべく消化しようと思ってます。入手したと言っても、道端で拾ってきた。以前も当ブログに書いたと思いますが、イギリス人は色んな不要品を家の前によく「Take free(持ってって)」と出す。衣類、靴、小型家具、子供のおもちゃ、食器、鍋釜、電気製品etc。大抵はお古や中古品ながら、まだ充分使えるものも混じっている。

この手のアイテムで最近ぐっとDVDとブルーレイが増えたのは、皆さんストリーミング・サーヴィスを利用していてその手のメディアが不要になったからなんでしょう。つうか、もう光学メディア・ドライヴ付属のラップトップはこっちじゃ新品では売ってない。とはいえ当方はまだDVDを観れるし、誰かさんのごみから色々享受しております。もちろん、観たい映像作品/読みたい書籍にはめったに出くわしませんし、新刊等々はまず無理。ですが、音楽はもちろん映画もドラマも本もこれだけ次々に多くの作品が発表される昨今なので、見落としていたものはいくらでもある。なんで、少しくらい前のヒット作や話題作を後追いするのも別にいいのかなと。

今回のポストは、昨年の自分のカルチャー・ライフの覚書みたいな内容になります。新しい音楽でエキサイトしたものは、ありがたいことに『ロッキング・オン』や『エレ・キング』であれこれと書かせていただいたので、省きます(そちらで触れたもの以外=旧作だと、よく聴いたのはブライアン・イーノ、プラッド、ニルス・フラーム、サリフ・ケイタ、ビン・アンド・ルースあたり)。なので主に映画やドラマの話です。このポスト、書き始めたのは年始だったんですがズルズルと遅れて全然タイムリーではないです&新旧ごったまぜなので、「2020年のベスト」みたいな内容ではありませんので気軽に読み流してくださいまし。

●映画

 映画は、ロックダウンで映画館が閉鎖される前に2月に観たのが『The Lighthouse』で、夏季に一時的に映画館が再開して唯一9月に観たのが『Tenet』でした。めちゃ貧相。長い『Tenet』はマスク被って観続けるのがなかなか困難でしたが、観客もまばらだったので自然に安全距離は保てていました。

『Parasite』も映画館で観たかったんですけど、チケット安めの二番館に降りてくるまで時間がかかって見逃し、結局友人経由のストリーミングを待った次第です。ごめんねポンジュノ。でも、イギリスではまったく知られていなかった(というか、なぜか英公開されなかった)『Snowpiercer』を自宅上映してイギリス人の友人たちに布教したから、許してください。勝手な言い草ですけど。

 『The Lighthouse』は最果ての海辺の灯台守=ウィレム・デフォーとロバート・パティンソンの文字通り身体を張った演技合戦はもちろん、アルカイックなセリフといい特殊カメラ&画面サイズを用いてのモノクロ画面のダゲレオタイプを思わせる質感(これは映画館で観て正解でした)といい冬の海の荒涼たる自然美といい、強く印象に残る作品だった。「男ふたりが主人公の実存的なサイコスリラー? そんなの古いし退屈だ~」という批判ももちろんあるでしょうが、少なくともお話も絵も、あまりお目にかからないユニークな類いのものであるのは確か。その勇気は買いたいし、「灯台に閉じ込められ、変化のない生活の中で徐々に頭がおかしくなっていく人たち」という設定は、妙にロックダウン下の心情にもマッチ。

 監督のロバート・エガースは前作『The Witch』が非常によかったので期待してたんだけど、裏切られなかった。その意味では、A24のモダン・ホラーでは知名度の高いであろうアリ・アスターの逆です。筆者の目には、アスターの映画は70年代ホラーのリミックスを通じての自己セラピーと映る=マスカキ度が高いので、映像のセンスは買うけども、あまりエンジョイしてはいない。『Hereditary』は『ローズマリーの赤ちゃん』+『エクソシスト』+『オーメン』=自らに内在する病みに対する恐れだし、北欧版『ウィッカーマン』(に、ちょこっと『ホステル』)な『Midsommar』は女性への不信・恐怖があらわ。ホラーやSF映画はそれらが作られた時代の社会や時代精神に対する寓話的コメンタリー/風刺/写し鏡であることが多いけれど、アスター映画は結局は彼自身のノイローゼと問題とに終始しているように思う。

ゆえにナルシスティックだし、センスレスに残酷なところも気になる(ショック度が高いのは認めますけど)。というか、彼のホラー映画はある意味アンチ・ホラー映画なので、それが自分のような年寄りのホラー好きには向かないだけかもしれません。

同じA24なら、ヨルゴス・ランティモスがハネケ度を増した『The Killing of a Sacred Deer』 の方がもっと怖かったし、家族や恋愛関係に対する男性的ノイローゼという意味ではチャーリー・カウフマンの『I’m Thinking of Ending Things』の方が症例の描き方/見せ方としては面白い。もっとも、エガース映画はこれまでのところ19世紀しか舞台にしていないので、その意味では現代にマジカルなホラーやオカルトを作り出すアスターの方が頑張ってる? いや、それはジョーダン・ピールが『Get Out』でちゃんとやってるし……『ウィッカーマン』なら、ベン・ウィートリーの『Kill List』があるし……。

話がずれてしまいましたが、『The Lighthouse』がお気に召した方は、新藤兼人の『鬼婆』、 ロイ・ボールティングの『Thunder Rock』(これも灯台が舞台です)、マーク・ジェンキンの『Bait』をお勧めします。ジェンキン作品は英南西部のコーンウォールが舞台で、基本的には「都会VS田舎」のシンプルなお話なんですが、2019年作品にも関わらずモノクロで特殊な撮影&フィルム処理を敢行していて、映画的にも前衛や記録映画、ネオリアリズモ、ヌーヴェルヴァーグといった50~60年代話法を臆面なく使っていて、その衝撃は特筆もの。テクニックが単なるギミックではなく、ちゃんと話とシンクロしてる映画っていいですよね。それは、サフディー兄弟の『Uncut Gems』にも言えるなと思った。

『Parasite』と『Tenet』に関して言えば、どっちも好きな監督なのでなるべくリアルタイムで観る努力をしたんですが、うーん、いずれも、彼らの作品のベストではないなと思いました。それでも、「映画」の醍醐味はきっちり味わえる昔気質の王道な映画であり、その意味ではどっちも評価しています。

『Parasite』は話そのものがトンデモでめちゃ面白かったし、ヒッチコック的な正確に計算された作りはアルモドヴァルのそれを強く思わせるものがある。カメラワーク、プロダクション・デザイン等々のテクニックや映画的な表現は見事としかいいようがないし、ひとつの集大成なのは間違いない。でもやっぱ、ハートに響き、重く残るという意味では、『殺人の追憶』や『母なる証明』の方がデカかったなあと。 

『Tenet』は、ノーランのオブセッションである時間&記憶が正面から扱われていてリキが入ってるだけに、やはり1回観ただけでは大まかにしか理解できないほど筋もキャラも込み入ってます(ベインばりにモゴモゴ過ぎなセリフと「劇場鑑賞前提」というユニークな音量バランスも、やっぱちょっときついっす)。なんで、途中から「小難しいロジックや複雑な筋を理解しようとせず、画面のスペクタクルに身をゆだねよう」と割り切って観ました。つーか、ノーラン映画は大抵そうなんですけども。ともあれ「どうやって撮影したんだ?」と感嘆するしかない斬新なアクション場面のセットピースやランドスケープ群はどれも視覚的カタルシスだったし、非常に複雑な設計のもとに撮影され編集された構築ぶりはやはり一級です。

でも、そのぶん落差があってギクシャクしっぱなしだったのが、役者の演技やキャラの造形。日本では吹き替えなのかもしれないけど、ケネス・ブラナのロシア人悪役演技&せりふ回しは……あまりにもステレオタイプで、「嘘でしょこれ?ギャグ?」と笑いが止まらなかった。『Knives Out』のダニエル・クレイグの米南部訛りの突拍子もなさに匹敵する、オーバーな大根演技。ユーモアがあまり得意じゃないノーランのジョークなのか?もしかしてどんでん返しがあるの?と深読みしたほどだったんだけど、最後までマジな役だったので、ジョークではないみたいです。

しかもブラナと、エリザベス・デベッキの演じる妻キャットとの間にスクリーン上のケミストリーが一切出てないのもいかがなものかと。このキャットというキャラそのものも微妙で、まあノーラン映画では、主人公の妻や恋人や恋愛対象が死ぬ/不在というプロットは多く、それは『インターステラー』で少し解消したとはいえ、基本的にノーランは理想化されない生身の女性を描くのが苦手っぽい。キャットのキャラもそれに漏れず、とても美しく、気高く、強いんですけど、シンボリックな表層はともかく、彼女の内面は感じられない。

リアリスティックであっても結局はファンタジー映画だから大目に見るし、『Tenet』でもっとも大事な人間関係はジョン・デイヴィッド・ワシントン演じる「主人公」とロバート・パティンソン演じるニールとのブロ/バディな友情なので仕方ないか。だた、もう一つ気になったのが、大器エリザベス・デベッキを筆者が初めて観たのは、故ジョン・ル・カレ原作の4年前のBBC産ドラマ『The Night Manager』でして。このドラマで彼女が演じたのは、悪辣な兵器商の富豪のお抱え妻で、でも、本当は子供と幸せに暮らすのだけが夢……というアンタッチャブルな麗人役で、彼女を救うために主役は危険に飛び込んでいくわけです。なんで、「えっ、また同じ役すか?」とデジャヴったのは自分だけではないと思う。

とはいえノーラン映画はリピート鑑賞が向いている&その甲斐はあるので、『Tenet』も観返したい。彼の作品でいちばん繰り返し観てきたの[m1] 『プレステージ』と『インセプション』ですが、それに匹敵するかしら? あ、この2作に共通するのはロバート・パティンソンでもありますね。実はまだ『トワイライト』も『ハリポタ』も観たことがないくらい、この人には疎かったんですが、クローネンバーグの『コズモポリス』で初めて観て感心したので、それ以来なるべくチェックするようにしてます。顔が好きとか、そういうミーハーなアピールは全然感じませんが、ヘンな磁力出てるのでナイス。しかし『バットマン』はどうなんだろうな。

以下は、去年観て印象に残った、わりかし新しめの映画のあれこれ。

―『Leave No Trace』(Debra Granik)『ウィンターズ・ボーン』のデブラ・グラニック、8年ぶりの劇場向けフィクション。ずっと観たくて、やっと観たんですが、またも泣きましたー。彼女は寡作ですが、アメリカの現代のアウトサイダーたちの生態やコミュニティを静かに、でも共感と共に見つめ自然に描きつつ、その中で生じる大人と子供のトランスフォーメイションをドラマにできる人。欧州映画ほどアーティではなく、でもメインストリーム寄りなインディなアメリカ映画市場では地味過ぎるので微妙な立ち位置ですが、じっくり、これからも作り続けてほしい監督さんです。

 ちなみに、この映画はキャストも自分的にはやばい。偏愛俳優のひとりである演技派ベン・フォスター(この人の映画は、彼を観るだけでも価値あり)が父親役で、屈折したキャラを細やかに演じてるんですけども、それと見事にハーモナイズしているのが彼の娘役=主役のトーマシン・マッケンジー。彼女は『Jojo Rabbit』でもよかったけど、あの映画では映画そのものの破綻を回収する、ある意味損な役回りだったので、本作でその繊細な演技力を十二分に味わってください。筆者がジェニファー・ローレンスに出会ったのは『ウィンターズ~』だったけど、グラニックは若い女優の発掘に長けてますね。ついでに、この映画のサントラは元ティンダースティックスのメンバーが手掛けていますが、それ以上に素晴らしいのが、かのマイケル・ハーリーがカメオ的に出演し、本当に沁みる生演奏を披露しているところ。これだけでも、グラニックを信じられるなと。

―『The Vast of Night』 (Andrew Patterson)

 知人の勧めで観た=前知識なしの、しかもこの監督の長編処女作なんですけど、ダークホース的に面白かったです! 強くお勧めします。

1950年代のアメリカを舞台にするSFで、長回しを多用したリアルタイムな進行とテクニカルな滑らかさは圧巻で冒頭から引き込まれるし、ラジオDJと電話台の交換手が主人公という限定された設定は、逆に目に見えない存在(声、音や電波)相手の恐れやスリルを増幅していて、低予算のハンデをがっつりカバーしていて感心した。ジョン・カーペンターの『ザ・フォッグ』とか、クリント・イーストウッドの『恐怖のメロディ』を考えたし、かつこの映画を観た前後にはOPNの最新作だとか、オウテカ取材での海賊ラジオの話とかもあって、ラジオがらみで『アメリカン・グラフィティ』を観返したりもしてた。この映画はある意味、リンチの『ツイン・ピークス:ザ・リターン』のとあるエピソードと『アメグラ』の出会いとも言えるので、そこも自分的にはたまたまジャストだったかも。この監督さんは、次回も非常に楽しみです。

そういや、ラジオと言えば、60年代イギリスの海賊ラジオをモデルにした『パイレーツ・ラジオ(The Boat That Rocked)』という映画もDVDを拾ったので観ましたが………これはあらゆる意味でヒドい映画でした(笑)! 名優フィリップ・シーモア・ホフマンも、「給料仕事」と割り切って流しているとしか思えない! 筆者はリチャード・カーティスは常に微妙なんだけど(『Blackadder』とかはいいんですが)、これでもう、彼の監督作は回避するに越したことはないなと納得です。さよならリチャード。

―『In Fabric』(Peter Strickland)

 ストリックランドは独自な道を歩んでいていいなー、と改めて納得しました。お話はスポイラーになるので書きませんが、М・Aジェイムズの怪奇譚のモダナイズ、といったヒントのみ残しておきます。絵といい音楽といい質感といい、完全にこの人のフィルターで奇妙に歪んでます(サントラはキャヴァ―ン・オブ・アンタイマターが担当、イェーイ!)。なんでまったく「万人向け」ではないのですが、オカルトとジャッロをミックスした奇妙な後味は格別&別世界で、好きな人はめっちゃハマるでしょう。バリー・アダムソンも脇役で出演してて、もともと映画好きな彼がもっとスクリーンに進出してくれたらいいなと思いました。

―『The Personal History of David Copperfield』(Armando Iannucci)

 イアヌッチは、実はスターリン映画をまだ観てません、すみません。これはディケンズもので、イギリスのことをまだまだ知らない身ゆえ、長い本を読むよりも手っ取り早いかなーと思い、観ました(シェイクスピア、ディケンズ、オースティンは、有名キャラや筋書きがいまだに色んな場面で引用される古典なので、ニュアンスを知っていると文脈をつかみやすいです)。

原作を読んでないのであーだこーだ言えませんし、これまでの映画化作品との比較もできませんが、カラーブラインドなデヴ・パテルのキャスティングは大正解。要は、役者自身がキャラのスピリットを体現できれば、映画やドラマは成り立つってことだと思う。

キャスティングは主役以外も抜群で、ティルダ・スウィントン、ピーター・キャパルディといった味だしでエキセントリックな役者たちが随所に利かせるスパイス、ベン・ウィショーの久々の怪演もナイスですが、個人的に嬉しかったのはシットコム『This Country』も実によかった、デイジー・メイ・クーパーの起用でした。彼女はコミカルな間合いの取り方が上手いので、今後も活躍を祈ります。

―『Dragged Across Concrete』(S Craig Zahler)

 ザラー映画は、トマホークにやられて以来ずっと観てますが、ジャンル映画の作法をガンガン用いる、B級な割り切りぶりがナイスだ。後にしつこく残らず、観ている間に「うわー、ギャー!」とか無責任に盛り上がれるという意味では、ジョン・ウィック級。プロットとキャストがややマンネリになってるので、次の作品ではもっとびっくりさせてくれることを希望しつつ。

 過去映画回顧も。ロックダウン中の暇に飽かせて観たのはDVDボックスセットで、映画ではヒッチコック・ボックスと、アキ・カウリスマキのボックスでした。

筆者の入手したヒッチのボックスの2箱はユニバーサル系のカラー作品が多い内容で、『レベッカ』や『断崖』といった作品は入っていないのですが、数ある代表作でも『裏窓』、『サイコ』、『めまい』といった有名どころはほぼ観れるし、大好きな『疑惑の影』も収まっている。特にこのボックスで印象に残ったのは、これで初めて観た『逃走迷路』と『間違えられた男』、それに発見の多かった『ロープ』、『マーニー』あたり。ヒッチコックの技法やモチーフは色んな作品で手を変え品を変えリピートされるので、こうやってある程度まとめて観ると、その変遷と進化がわかりやすい。まだ観たことのない作品もたくさんあるので、もっと掘ってみたいです。

リピートと言えば、カウリスマキもそういう作家。つーか、基本的なヴィジョンの揺るがない監督なので、これがいわゆる「作家主義」ってことなんでしょう。昔から好きな監督で主だった作品はほぼ観てきましたが、このボックスセットは上映会他ではないとなかなか観れない初期作品や短編やドキュも収録してあり、テレビ映画『罪と罰』からもっかの最新作『希望のかなた』 に至る34年/長編約16本の軌跡をほぼ一望できます(でも権利関係の問題なんでしょう、イギリスが舞台の唯一の作品『コントラクト・キラー』は入ってなくて残念!涙)。セリフの少ない彼の映画はそのぶんアクションやちょっとした身振り~役者の表情、構図や色彩設計、小道具や衣装、音楽他に至る絵と音の要素が本当に多弁で、多くは貧しい庶民が主人公の地味でシンプルな悲喜劇を詩情豊かにアンプリファイし彩っていく。ちょっとした交響楽ですね。つーか、室内楽とロックンロールの中間?

『真夜中の虹』はカウリスマキ・スタイルの最初の結晶で久々に観てもやはりほぼ完ぺきだし、「ワーキング・クラス三部作」を軸とする90年代作品はいずれも秀逸。『ラヴィ・ド・ボエーム』は公開当時に観た際は「暗い」とややノれなかったんだけど、見返したらスゴかった(大泣き)。『浮き雲』からの「フィンランド三部作」になるともはや川の流れのごとく作りがスムーズで、マエストロの域である。そうやって過去作から観ていくと、兄弟作品と言える『ル・アーヴル』と『希望のかなた』の秀逸な2作は彼の長年培ってきた作家性・信条・チームの集大成であると同時に見事なヴァリエーションであり、一見同じようなことをやっているように思えて、確実に進化しているのがよくわかる。ニッチな監督なので資金繰りとか大変なんだろうけど、あともう少し撮って欲しいなあ……

●ドラマ

 今年のドラマで、オリジナル新作でダントツだったのは『Raised By Wolves』。リドリー・スコットが制作総指揮はもちろん最初の2話で監督も担当して、スケールの大きいストーリーといい映像の見事さといい、大御所が乗り出したのも納得の野心的な内容。宗教やAI/アンドロイドといったテーマは、(特に)『プロメテウス』以降のスコットSFが好きな方は絶対に興味湧くと思うので、日本でも観れたらぜひ。ちなみにこのユニークな世界観を生み出した原案・脚本家アーロン・グジコウスキはドゥニ・ヴィルヌーヴの出世作『プリズナーズ』を書いた人。ヴィルヌーヴは『DUNE』が待たれますが、アート性のあるブロックバスターを撮れる人という意味で、クリストファー・ノーランの背後に迫りつつある。

 春先のロックダウン開始前に2度ほど友人宅に滞在していた際に、ネットフリックスが入ってる家だったので話題作はあれこれ観ましたが、なんだかんだ言って一番観たかったのは『Better Call Saul』の続きで、観れないままだった2シーズンをほぼ一気に消化。いやー、やっぱりめっちゃ面白いわ~~。

観てきた方にしか通じない話かもなので耳障りな興奮かもしれませんが、負け犬ジミーと彼のソウルメイト:キムの反撃がメインの推進力だったこの作品、その反撃の主要因が消えるシーズン3以降はどうなるのか?ストーリー曲線が中だるみしないか?と心配でもあった。ところがどっこい、ガス復活で別のストーリーが平行して膨らんでいき、当然マイク話も増加。トラブル要素も新たに出現して、それらの解決を知りたいがために中毒のように観まくってしまった。

『BB』もそうですが、資本主義社会のメカニズムを様々な労働や経営――弁護士業、駐車場のチケット切り、ファストフード店、ドラッグ・ディーラー、学生映画製作チームetc――を通じて描き出す『BCS』は、マネーのもたらす自由を求めて自主起業する人たちと、ヴェンチャーに生じる障害を乗り越えるべく犯罪に手を染めたり裏世界に繋がることで、結局心と体の双方を束縛されダウンワード・スパイラルてしまう様を丁寧に追うドラマでもある。そのじわじわ迫るスリルと怖さを、このままのペースでじっくり描いて欲しいシリーズです。でも、いつも思うんだけど、個人的に大好きなキャラのキムとナチョが『BB』に登場しないのを思うにつけ、このふたりの名キャラの行く末はいかに?と、ちょっと悲しくもなる……。あと2シーズンで完結の予定ですが、どう決着がつくのかしら???

資本主義社会アメリカのメカニズム&システム&ゲームを描くドラマと言えば、『The Wire』です。ロックダウン期にまたも5シリーズの全話をボックスで観返してしまいました!(たぶんコンプしたのは4回目!中毒かもしれません) 

観始めると最後まで通して観ずにいられない、それくらい細かいキャラたちの進展と、大局にあるドラマとしてのヴィジョンの進行の双方がかみ合ったシリーズです。末端キャラですら、「このでかい流れの物語の中で、彼らはどうなるの?」とケアしたくなる脚本も、キャスティングも、すべて申し分なし――というくらい筆者はワイアー信者なので、うざったく思われるでしょうからここらで止めておきます。でも、何度観ても、シーズン4は素晴らしくて、全体の中のピークだと思う。かつ、今回はBLМの動きが頭にもあったので、シリーズ放映開始から数えれば20年近く前にキャストの6割強が黒人というドラマをアメリカで作った英断はすごかったなと、改めて。

褒め話だけでもつまらんので、ちょっとだけ、自分的にボツだったドラマも書きます。ポテンシャルはあって地力も高く、それなりに面白かったとはいえ、最後まで観て「えー?」と思わされた残念作品。

ひとつは、アレックス・ガーランドの『DEVS』。『エクス・マキナ』はいい意味での俗っぽさと映画ゆえのそこそこコンパクトな尺に救われていたけど、テレビ・シリーズの長尺はまだ無理なのではないかと。もっとも、ガーランドがここで描くAI理論や自由意志、サイエンスへの興味・関心は非常に高度なものなのだろうし、アカデミックな人たちは「刺激的な作品」と評してもいる。なんかすごそうだけど、けむに巻かれたと感じる自分の頭が悪いだけのことです。

ただ、とにかくびっくりして呆れるくらい、共感できる/ケアしたくなるキャラがひとりも出てこないドラマなんですよー。そこが自分にはのめりこめなかった大きな理由だと思う。もしかしたら意図的なディレクションなのかもしれないけど、クリシェだけの机上のキャラ(というかアバター)ばかりで、予定調和なセリフがよくないのはもちろん演技も学芸会レベル。

政治スリラー的な面もプロットに絡んでくるんですが、これまた漫画ばりにミエミエで展開が読みやすい。何が核にあるドラマかというのは最初から観る者の目の前に提示されているんだけど、そのシンプルな核を複数話に伸ばすために風呂敷があっちこっち広がってしまっている印象。そのせいで薄いキャラも更に薄くなり感情移入しにくい上に、結末も「結局、言いたかったのはそれだけだったんですかぁ~?」とどっちらけてしまった。とはいえ、シリコン・ヴァリーなワンマン経営者のテック企業のモラル意識や仕事環境の描写は、そのエリート非人間的かつカルトな世界観に入り込むすべのない自分には興味深く、その面は野次馬的に面白かった。

もうひとつは、スティーヴン・キング原作のミニ・シリーズ『The Outsider』。製作はHBOだしプロデュースとメインの脚本家はかのリチャード・プライス。キャストもベン・メンデルソーン、ジェイソン・べイトマン、シンシア・エリヴォ等ふるっているし、パディ・コンシディーンも出てて、これはかなりのボーナス点です。原作は読んでないので、このドラマ化がどれくらいキング原作に忠実か否かは判断できません、悪しからず。

スモール・タウンで起きる陰惨な事件……という出だしはちょっと『DARK』っぽくもあるけど、謎が謎を呼ぶストーリーは現実や科学の域を超え、ショッキングかつスリリングに、時系列も崩しつつ野心的に、超自然に向かっていく。その方向性自体はキング作品だから「そりゃそうだろ」と許容できるんだけど、作劇・脚本・演技がいずれもリアル志向で質が高いので、最終的にはリアリティを帳消しにする筋書きに収束せざるを得ないわけで、そこはとてももったいなく感じた。ある意味、キャラに感情移入できるようにきちんと作られているドラマなぶん、荒唐無稽なストーリーに納得しそこねる。『DEVS』の逆、と言ってもいい。

特に、シンシア・エリヴォ演じる私立探偵ホリー・ギブニーは現代のホームズみたいなキャラで、とても複雑かつ魅力的で並みいる芸達者たちを飲むカリスマがあって、彼女だけで普通の犯罪ものを観たい、と思ってしまったくらい。いやほんと、彼女をピンでのオリジナル・ドラマ、お願いします!

 というわけで、つらつらと書かせていただきました。過去半年くらいで読んだ本は、『Raw Material』(Alan Sillitoe)、『The Ragged Trousered Philanthropists』(Robert Tressell)、『Why I’m No Longer Talking To White People About Race』(Reni Eddo-Lodge)、『The Midwich Cuckoos』『The Crysalids』(John Wyndham)、『In Milton Lumky Territory』(Philip K Dick)、『The Nothing Man』(Jim Thompson)あたりです。

 ロバート・トレッセルの本は、ジョージ・オーウェルにも影響したとされる英社会主義本の古典のひとつで、友人に前々から勧められていた……ものの、厚い本なので億劫で、手が出なかった~。が、その同じ友人が、少し前に出た、この本のグラフィック・ノヴェル版を貸してくれたのでやっとこ読めた次第です。主な筋はプロレタリアなメインの登場人物たちが社会主義に目覚めていく過程を追うというもので、やや説明的ではあるけれども、それはこの本そのものが労働者たちの啓もうを目的としていたからゆえだろう。

翻案なのではしょられた部分も多々あるそうですが、絵の補助もあると、漫画好きな日本人には分かりやすく伝わりやすくてありがたい(こんな風に19世紀末~20世紀初頭を描いた古い本の翻訳だと、室内の光景や建物の様式、キャラの着ている服、街並み等々の小道具は、言葉で説明されるよりも、目で消化する方が早い)。

 で、そのお返しとして、くだんの友人に貸したのがアラン・シリトーの自伝的エッセー『Raw Material』。シリトーは、『土曜の夜と日曜の朝』、『長距離ランナーの孤独』といった映画の原作者として知っていたけど、実際に本を読んだのはこれが初めて。でも、非常にタフで複雑な生まれ育ちな人であったことと、その時代的&社会背景は少し理解できた。それ以上に、彼の親類に関する記述で長い章の割かれた第一次大戦のくだりの描写は悲惨で極北で、映画『1917』も顔負け。平民は、今も昔もexpendable(消耗品)だ。

 レニー・エドー=ロッジのベストセラー本は、実は、これまた道端で拾った。ちゃんと買うべきなんでしょうが……すんません。ともあれ、非常に大胆な本の題名も含め、読んでみたかったのでトライしました。

ぶっちゃけ、すごく勉強になったし自分の無知を痛感。本としてのスタイルもジャーナリスティックなそれなので、難解な思想論等々よりも、彼女の目から見た/経験してきた、イギリスにおける人種&女性差別の諸相が検証され報告されている。冷静に綴られているけど、逆にそのぶん、内面化され表に見えにくくなっている差別を腑分けする筆致には、秘めた怒りが感じられます。イギリスにおけるブラック・エクスペリエンスというのは、アメリカのそれとはややニュアンスが違う上にグラデーションも多様なので、興味があり、その違いを知りたい方は読んで損はないです。

 そういえば、去年は久しぶりにDVDで『AKIRA』を観て、そのノスタルジーの流れでギブソンの『クローム襲撃』をこれまた久々に読み返した。彼はカフカやブラッドベリ、フラン・オブライエン、バラードのように短編の達人でしたね。

そんなSF流れで、英国人ファンタジー作家ジョン・ウィンダムも読んでみた。HGウェルズほど有名ではないでしょうが、彼の代表作が、『光る眼』として映画化された『The Midwich Cuckoos』。この本もサスペンスフルで『怪奇大作戦』めいた謎とあいまって面白かったんですが、驚かされたのは『The Crysalids』でした。組織的な差別によって成立している共同体というモチーフは妙に現在にマッチするし、本の執筆された当時を背景にその普通な日常に生じた裂け目という、いわば外からの侵略型SFな設定ではなく未来を舞台にしていて、冒険パートも含まれるので映画的な筋運びが楽しめる。しかも大テーマが……詳しくは書きませんが、『ガンダム』が好きな人にはピンとくるはず。おかげでジョン・ウィンダムへの興味が湧いてます。次はぜひ、これまた異色作とされている『Trouble with Lichen』にトライしたいと思う。

 PKディックのこの本はしかし、逆に彼の小説では変わり種である実生活もの。死後に出版されようやく日の目を見た本だそうで、本格SFではなく、1960年代アメリカが舞台の一種の心理小説と言えます。ノワールっぽくもあり、何が起きるか知りたくてページを繰る指が止まらないという意味ではパルプっぽいんだけど、「これ」といったジャンルに入れることのできない奇妙なストーリーな上にキャラ造形もこちらの予想をことごとく外してくる。描写が細かくリアリティに富んでいる割に不条理な場面や筋が入り込んできて、つい引き込まれるわけです。特に主人公の心理の錯綜ぶり、題名になっている「領域」の呪縛からの逃避ぶりにはカフカを思い起こす堂々巡り感があって、そこも面白い。代表作は大体読んだつもりだけど、ディックはまだまだ奥が深そうだ。

 ディック本を読んでもうひとり思い出し、手に取ったのがジム・トンプソン。「パルプ界のドストエフスキー」の異名をとる彼ですが、90年代は比較的入手しやすかったものの今はそんなに頻繁に店頭で見かけない(アメリカでは話は別かもしれません。あ、もちろん、数年前に映画化された『The Killer Inside Me』は、そのあおりで再版されてます)。ミソジニー批判を受ける、一種タブーな作家でもあるので、この時代の風潮にはふさわしくないんでしょう。

なのでチャリティ・ショップの書棚や古本屋では常に目を光らせてる作家のひとりですが、その甲斐あって、慈善店で安く見つけたのが『The Nothing Man』。彼の作品の中では未読なもののひとつでして、積読なままになってたのをやっと読んだところ、いやー、やっぱ個性的だし、一人称小説の面白さを堪能。このストーリーは、映画化されていないのが不思議なくらいです。ある意味、題名がすべてを語ってる本なので、今に翻案することも可能だと思う。

トンプソン本の主人公や筋や設定は本質的に似通ってる(=同じテーマのヴァリエーション)とはいえ、特殊な男心理にはやはり驚かされる。つーか、その残酷さと非情さとが、退屈な日常とすんなり同居してる心象は「え? ええっ?」の連続で自分の理解を超えてます。なので、興味深くて、読んでしまうという仕組み。トンプソン本にはまだまだ読んでいない本があるので、これまた、今後の課題が増えました。

そんな感じの、マイ・カルチャー記でした。最後まで読んでくださり、ありがとうございます!感謝感謝。さーて、Netflixの『LUPIN』を観なくちゃ……。


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日々の雑感:レベル4より愛をこめて


前回のポストで「コロナ波がぶり返してレストランやパブが閉鎖になり、クリスマス・パーティはどうなるんでしょうか」なんて旨のことを書きましたが、そんなことを考えてた数日後にロンドン(およびイギリス南部圏)は「Tier 4」というものに指定されまして。これでクリスマスはキャンセルです。

 Tierっつうのは階層という意味で、日本的に分かりやすく言えばレベルということ。英政府は秋頃からこのタームを使い出していて、その時点では3段階構成で1がそこそこノーマルに近い危険度低(青)、2が危険度中(黄)、3になると危険度高(赤)という仕組み。レベル3だと、飲食業はテイクアウトのみになります。ロンドンは19日土曜までこのレベル3だったんですが、土曜午後4時の記者会見でレベル4に引き上げられることがあわただしく発表され、その晩=午前0時(日曜)からいきなりレベル4入り。文字通り、一夜明けたら(っつうか8時間後)には状況一変でした。

 それくらい感染者数が急増し病院がパンク寸前状態とのことでやむを得ない緊急処置であり、新たなウイルス変種が猛威を振るっているらしい。実際、筆者の知人も陽性と判断されたばかり。40代の人なので「重度の風邪程度の症状で自宅隔離謹慎中」で済んでいるけど、知人サークルでコロナに感染した人は3月以来これで2人目なので、ちょっとビビってます。日本でもこの状況は盛んに報道されてるんでしょうかね、日本の知人や姉から「大丈夫かい?」のメールを相次いでいただきました。心遣いに感謝! 皆さんもどうぞ、基本的な用心は怠らないでくださいまし。

 ただでさえ冬期は寒さの影響等々で持病や健康を害する人が多く免疫も落ちがちで、ウィルスが変化したから仕方ないとは思ってますが、冬期の感染増加の危険性は夏からさんざん指摘されていたし、3段階システムは医学者/科学者からも「甘い」と批判を受けていた。ロンドン人の多くは過去3、4ヶ月の経験を踏まえ「いずれまたロックダウンだろう」と薄々悟っていたととはいえ、このレベル4はさすがに皮相だなぁと感じずにいられなかった。クリスマス直前に、「全土的にロックダウン」という実質の重いアナウンスをして人々を落胆させ、怒らせないための回避策として急遽ひねり出されたのがこの「新たな」レベル4だ、というのはミエミエだと思うので。現在の英政府は前言撤回が非常に多いゆえに「Uターン政府」というありがたくないあだ名を頂戴してます。しかし、「クリスマスを帳消しにするのは非人間的なので断じてやらない」と言ってた3日後にこうなっちゃって、国内はもちろん、イギリスからの各種輸送や渡航者が色んな国からブロック状態になって国外的にも混乱が起きているのは、これまでの一連の右往左往な政府対応の中でももっとも「WTF?」じゃないかと。

 筆者はこのレベル3の規制を勘違いしていて(っつうか、ややこし過ぎるよー)、「生活に必須な食品・薬品等々を扱う業者以外=レコード屋や本屋は閉まってる」とばかり思い込んでいたのですが、実は営業可能だったのに気づいたばかりだった。なんで土曜の朝、好きなレコード屋に欲しいアイテムの在庫確認の電話をしたところ「売り切れだけど、再入荷するかもしれないから月曜にまた電話してくれる?」との返事。久々にレコ屋に行けそうだと喜んでいたんですが、その午後にあえなく希望が消えた次第。

 通販って手もあるんですけど、イギリスは郵送/宅配があまり信用できないので逆にストレスがたまり、利用には消極的。この状況で書留郵便物も受取手のサインなし配達がOKらしく、家の外に配達物を置いて去るケースもたまにあります。垣根に隠すといった具合に気は遣ってくれてますが、配達に気づくのに時間がかかり、あやうく雨に濡れる間際でレコードを救出したこともあった。ケン・ローチの『Sorry We Missed You』を観て以来、彼らに文句は言わないようにしているんですけども、ついグチが出ました:すんません。それにまあ、レコ屋や本屋はやっぱり店内をうろついて色んな出会いをできるのが楽しいし……と感じる、自分はやっぱり古い人間です。

 そう書きつつ、クリスマスそのものには実を言うとあまり縁がないので、いつも通り静かに地味に過ごすとします。今年は、パーティも帰省もなしで家族友人とも気ままに会えない寂しい人が他にも多いのかぁと思うと、切ないですが。ただ、過去1、2週の間に「こっちの人はたくましいなー」と感じた光景にも出くわしました。家の近所に公園というかゆるい丘陵/フィールドがあるんですが、パブが閉まっているなら屋外で……ということでしょう、いくつか設置されたベンチに晩に集まり、外飲みしている連中がまだいる(!)。

 もちろん夏は多かったです。芝生にラグを広げるピクニック族、簡易バーベキューをやる連中、近所のピザ屋でテイクアウトしたピザ&ビールにかぶりつく若者、小型スピーカーで音楽を流し夕涼みする者etcが、ソーシャル・ディスタンスを守りつつ、ドッグ・ウォーカーたちと共存してました。しかしもう冬だってば! 今月のロンドンは雨が多く、そのぶんやや気温はマイルドとはいえ、風の強い丘の上のベンチで、霧雨が降ってても暗がりに集まり飲む、その根性は立派としか言えない。というか、フェスとかでもみんな雨には強いから、イギリス人にはあまり苦にならないのかもしれません。

 更にハードコアだったのは、おそらく東欧系のお兄ちゃんたち(暗くて顔は見えなかったけど、漏れ聞こえた会話はたぶん東欧系言語だった)が、フィールドに残された樹の切り株をテーブル替わりに、缶ビールか何かで、しかも立ち飲みして盛り上がっていた光景。雨は降ってなかったけど、草むらはまだぐしょぐしょで泥でぬかるんでたし、立ちんぼじゃ冷えるだろう――なんだけど、楽しそうだったのは確かで、通りすがりについ頬がゆるみました。大雨じゃなかったら、クリスマス・デイにも、このフィールドにはミニミニ・パーティがそこここで起きているかもしれません。

 おーっと、忘れちゃいけない業務連絡をひとつ:もうすぐ発売されるエレ・キングの年末号に、ちょこっと参加させていただいております。興味が湧かれた方は、よろしければ店頭他でお手に取ってみてくださいまし。↓↓↓

ele-king vol.26 | ele-king (ele-king.・net)

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師走です


本当に久々の投稿になります。

もっと前にも投稿しようと思ってたんですが、色々と状況がありまして。

中でも一番大きかったのが、使ってるラップトップの寿命がきたこと。OS が時代遅れで、色んな最新ツールが使えなくなってきて、ウェブのブラウザから何から作業がやりにくい~。何よりも、このWordpress の管理者ページから投稿できなくなっちゃいました。

ラップトップを買い替えまして、最初のポストがこれです。とはいえ、この先代のラップトップも、10年近く使ってバッテリこそ瀕死状態ですが、電源つなげておけば使えるのでギリギリまで使い倒そうかと思っています。

ちなみに、それに合わせてWordも久々に今のを入れました。微妙に使い勝手が違う上にUK式キーボードの違いもあったり、タッチパッドの動きが逆だったり(先代はマックだったんだけど、PC に戻したんで軽く違和感あり)、自分には不要そうな新機能や謎の機能にまごまごしてますが、まあ、やってくうちに慣れるでしょう。

写真は昨日撮影。ロンドンは実質ロックダウンに逆戻りで、カフェやレストランはテイクアウトのみ。2021年まで会えませんと書かれると、なんか気が重くなるな~。みんなクリスマス・パーティなんかはどうするんでしょうか。地味な師走です。





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日々の雑感:秋です


すっかりご無沙汰していました……という書き出しを、毎回やっているような気もしますが。

ともあれ今年の夏は色々ありました。コロナの様々な余波影響はもちろんですが、プライヴェートで大きな波風を体験。状況はもう落ち着きましたが、あんな思いはもう二度としたくないっす。

あと、気象が不安定な夏でした。大雨かと思えば熱波が到来したり、エリアによっては最高37℃を越えました。ロンドンは大雨洪水の被害は免れたとはいえ、7月の熱波はすごかった。「日本の酷暑に較べりゃそんなの屁でもない!」と叱られそうですけど、基本的に住居にエアコンがない国なんで(セントラルヒーティングは備え付けされてますが)逃げ場がなくなるんですよねー。扇風機が飛ぶように売れたそうです。

ともあれ、そんなことを思っているうちに、気候はすっかり秋めいてます。涼しい。小学生クラスの学童も新学期/新学年スタートで、元気に通学する姿を見かけます。近所の公園を歩いていると、ドングリの雨が降ってきたり。これは比喩ではなくて、文字通り、ドングリの樹から実が落っこちてくる。リスや鳥が枝を揺するんで、樹の下に立ってると実が次々に落ちてきます。頭に当たると、ちょっと痛い。

そんなわけで、この夏の雑感というか、以下に絵日記的にあれこれ。おヒマな方のみ読み進めてくださいまし。

コロナのロックダウンで様々な「おうちホビー」が人気復活しましたが、DIYショップと同じくらいイギリスで人気の高かったのが園芸。ガーデンセンターがなかなか再開しなかったので、みんなブーたれてました。かくいう自分も、トレンドに弱いので(笑)、ちょっと園芸にチャレンジしてみました。その成果はぶっちゃけ50/50で、自分は庭師にはなれないな、と悟りました。でも、誰にでも育てられそうな植物(サボテン系)ですら枯らしてしまう自称「Green Death Fingers」な人間としては、地味に水をかけているうちに植物が育ってくれるのを眺めるのは嬉しかったです。

プチ自慢のラヴェンダーと向日葵の勇姿でございます。下手くそガーデナーでも、花を咲かせてくれてありがとう!

食べ物の話に変わりますが:ここしばらく悲しいのが、納豆不足。歩いて行ける圏内にオリエンタル/中華系の食材ショップは何軒かあります。でも、その中で納豆(冷凍)を販売しているのはニュー・クロスの1軒だけ。豆腐は今やすっかり浸透し(ヴィーガン・ブームの煽りも大きい)、枝豆やカレールー(イギリスではなぜか「カツカレー」と呼ばれている)、うどん、蕎麦、冷凍餃子や海苔、味噌etcもスーパーで買えるようになりましたが、やはり納豆はさすがのイギリス人にも敷居が高いようでまず売ってません。まあ、あの臭さは、慣れない限り無理だと思いますが。

たまに納豆を食べるのは小さな喜びだったんですが、たぶんコロナの影響でしょう、納豆を買えたくだんのお店が店じまいしてしまいました。ガーン! 食べられなくなると、余計食べたくなるのが人間の悲しい性。納豆を家で作ることも可能らしいけど、そこまでやる根性はないっす。んなわけで、近隣のオリエンタル食材店をすべて改めてしらみつぶしにチェックし直す納豆捜索を決行しましたが、やはり売ってない。意を決して遠出をして、大型店や日本系のショップまで行かないとダメみたいです。その捜索時に、デプトフォードのオリエンタル店で見つけたのが以下のアイテム。

イギリスでおなじみの即席袋ラーメン:Deameこと出前一丁、なんと棒ラーメン・ヴァージョンです。初めて見かけました。「こんなのあったのか!」と軽い衝撃を受けました。

というか、その横には日本各地の「ご当地ラーメン」(?)が並んでいるではないか。東京ってゆず醤油? 京都が味噌とんこつ?? なんか、いまひとつ味とエリアの繫がりがピンとこなかったんですが、これはきっと現在の日本のラーメン文化の進化を自分が知らないだけのことでしょう。しかし、棒ラーメンと言えば自分はマルタイが大好きなので、結局これらの棒ラーメンは写真だけ撮って買わずに終わりました。とりあえず、納豆捜索を続けます。

ロックダウン中に犬を飼い始めた人が増えた……というニュースを読んだけど、ほんと、気のせいではなくパピーをよく見かけるようになった。うちの近所は公園他の緑地が多いので以前からペット犬は多い方だけど、絶対に犬口が増えてます。

熱波が襲った時期に、近所に出現したワンちゃん用のお水。イギリス人はほんとペットが好き。

そして、うちの近所にはスティーリー・ダンもいます。

窓辺の塗り絵がドナルド&ウォルターだと気づいた時は、ちょっと嬉しくなって「Reelin’ In The Years」をハミングしました。これはたぶん、「大人用ロック塗り絵」か何かの1ページなんでしょう。しかし、すごく上手に特徴をとらえた絵なんだけど、なぜか背景がヤシの樹=カリフォルニアっぽいのは残念。ニューヨークのバンドですよね、ダンは。摩天楼プリーズ。

最後は、雑草かなと思って引っこ抜いたら、実はじゃがいもが庭の隅に育っていたので驚きました。冗談半分で種芋を埋めたことはあったんだけど、埋めたところとは全然違う場所に育っていたのは謎。

親指サイズの小さなおいもで、食べれるようなシロモノではないですが、じゃがいもの生命力にはちょっと感動。放っておいても育つみたいだし、花や葉も悪くないので、試しにまたいつか埋めてみようかと思います。

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RIP: Emitt Rhodes


ここのところ訃報ばかりですみません。しかし、これまた悲しい……俗に「ひとりビートルズ」とも称されるシンガー・ソングライターたちの中でも隠れ人気の高いエミット・ローズが亡くなったそうです。セルフ・タイトルのソロ・デビュー作は、グッド・メロディを愛する方なら絶対に好きになる1枚。合掌。

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RIP: Ennio Morricone


巨匠エンニオ・モリコーネが91歳で亡くなったそうです。
最後まで充実した、天寿をまっとうした方だったのかな、と。

素晴らしい音楽をありがとう。真のマエストロに感謝です。

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しょうもないぼやき


気温は低めながら、好天続きでロンドンも日中はいい感じです。ロックダウンも緩和されまして、その勢いに乗って(?)今日は公園にたくさん人が出てました。テレワークで自宅から仕事の人も多いし、これを機に、親子が遊べる光景はいいものです。

なんて書きつつ、このポストはたぶん、ツイッターで済む程度のしょうもないぼやきです。意味ないので、時間を無駄にしたくない方はここで読むのはストップください。

コロナの影響は大から小まであれこでですが、そのひとつにスーパーの商品の値段の上下というのもあると思う。安かったパスタが高騰したり、高級品(牛肉、メロンetc)が少しお安くなったり。消費者の動向も、異常なんでしょうね。
そのあおりのひとつに、カップラーメン値段があった。日本では定番商品なので、たぶん差はないと思いますが、イギリスでは日清カップヌードルは、基本的に「日本人や東洋系しか買わない」ニッチなアイテム。日系や中国系の食品店まで行けば、日本製とさして差のない香港製をフツーに買える人気商品ですが、イギリス発のスーパーでは、まだ「エスニック食材」のコーナーにしょんぼり並んでます。

とはいえ、時代の変化もあって、袋ラーメンやカップラーメンも、徐々に進出・躍進。マギーやインドミーを始めとする即席ラーメンは、学生や貧乏人の非難食です。そこに、日本勢も混じっている。イギリスの庶民派スーパー(モリソンズ、アズダ、テスコ)はずいぶん前から出前一丁を売ってきたんですが(値段は一袋50〜55ペンス)、中流御用達のスーパーであるセンズベリーも少し前にこのマーケットを開拓するようになった。

そこで見かけたのが、本稿に添えた写真の、ナゾのカップヌードル。バッタもんではなくて、ちゃんとしたライセンス品です。しかしパッケージが派手で笑えるし、味も、筆者が目撃した限り、①枝豆入り②海鮮③すき焼きビーフ④照り焼きチキン⑤豚骨で、②と⑤以外は、あんまりピンとこない――と書きつつ、自分もずいぶん日本でカップヌードル買ってないから、こういう味が実は人気なのかもしれませんけど。

なので興味はそそられたものの、中華系食品店で買う値段の2倍の額で売られているので、どうにも手が伸びない。スナック程度の食べ物なので、他でリーズナブルに買えるものに、わざわざ2倍もお金は出したくない。ゆえに、棚で見かけても、「高いから買わないよー」と邪険にしてきたんですが、コロナの影響か(?)スーパーも売れ筋商品以外の珍品の安売りに踏み切り、やっと自分にも納得できる額で販売しているのに出くわした。せっかくだから、試しに買ってみました。

選んだのは、カップヌードルの中でも、元祖と同じくらい好きな海鮮味。パッケージは気取ってますが、食べる仕組みは世界共通。蓋をめくると、おなじみの乾燥麺&粉末スープの姿が見えます。湧かしたお湯を入れて3分待てば、おやつのできあがり。さてさて〜!と、食べてみたところ――

味が違う。

軽いショック。つうか、日本のそれと味が違うだけではなく、積極的に……不味い。

具材が日本のそれとは若干違うのは、別に気になりません(包装のイラストにイカが描かれてるけど、イカ、ほぼゼロ)。ただ、スープの調合、全然違う。フェイクではあるけど、シーフード「っぽい」味を楽しませてくれるのが大事なのに、妙な雑味が混ざってて、海感皆無。イギリス人は魚臭さが苦手なので、その配慮かもしれませんね。かつ、スープに余分なとろみがついていて、重いのも気になる。イギリスには、人気が高く定着しているポットヌードルなる商品(カップヌードルの真似)がありますが、ややどろっとしたこのスープの食感はそっちに近い。

市場開拓のためにイギリス人の舌向けに味を変えたのか、はたまたイギリスやEUでは認可されていない化学調味料を使っているため、直売のオリジナルは売れないのか? 理由は分かりません。でも、この華やかなパッケージの中身の正体は、日本人の知っているそれではありません。「日本でナンバー・ワン」の謳い文句が、妙に虚しく映る。というか、このアイテムがなかなか売れずに安売り化したのはコロナ云々ではなく、イギリス人ですら「美味しくない」と思ったからではないか、と妙に納得した。

というわけで、しょうもないぼやきでした。渡航が再開した暁に、イギリスに旅行に来る方もいらっしゃるかもしれません。ふとこの商品を店頭で見かけて、日本の味が恋しくてつい買いたくなるかもしれませんが、そういう方はあらかじめトランクに持参した方が無難だと思います。

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RIP: Adam Schlesinger


思いっきり、落ち込まずにいられない訃報です。たくさんの素敵な曲と笑顔の思い出をありがとう、ありがとう、ありがとう。

皆さんも、どうか無事にお過ごしください。

<“Troubled Times”は、カウント10:42から>

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