RIP: Emitt Rhodes


ここのところ訃報ばかりですみません。しかし、これまた悲しい……俗に「ひとりビートルズ」とも称されるシンガー・ソングライターたちの中でも隠れ人気の高いエミット・ローズが亡くなったそうです。セルフ・タイトルのソロ・デビュー作は、グッド・メロディを愛する方なら絶対に好きになる1枚。合掌。

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RIP: Ennio Morricone


巨匠エンニオ・モリコーネが91歳で亡くなったそうです。
最後まで充実した、天寿をまっとうした方だったのかな、と。

素晴らしい音楽をありがとう。真のマエストロに感謝です。

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しょうもないぼやき


気温は低めながら、好天続きでロンドンも日中はいい感じです。ロックダウンも緩和されまして、その勢いに乗って(?)今日は公園にたくさん人が出てました。テレワークで自宅から仕事の人も多いし、これを機に、親子が遊べる光景はいいものです。

なんて書きつつ、このポストはたぶん、ツイッターで済む程度のしょうもないぼやきです。意味ないので、時間を無駄にしたくない方はここで読むのはストップください。

コロナの影響は大から小まであれこでですが、そのひとつにスーパーの商品の値段の上下というのもあると思う。安かったパスタが高騰したり、高級品(牛肉、メロンetc)が少しお安くなったり。消費者の動向も、異常なんでしょうね。
そのあおりのひとつに、カップラーメン値段があった。日本では定番商品なので、たぶん差はないと思いますが、イギリスでは日清カップヌードルは、基本的に「日本人や東洋系しか買わない」ニッチなアイテム。日系や中国系の食品店まで行けば、日本製とさして差のない香港製をフツーに買える人気商品ですが、イギリス発のスーパーでは、まだ「エスニック食材」のコーナーにしょんぼり並んでます。

とはいえ、時代の変化もあって、袋ラーメンやカップラーメンも、徐々に進出・躍進。マギーやインドミーを始めとする即席ラーメンは、学生や貧乏人の非難食です。そこに、日本勢も混じっている。イギリスの庶民派スーパー(モリソンズ、アズダ、テスコ)はずいぶん前から出前一丁を売ってきたんですが(値段は一袋50〜55ペンス)、中流御用達のスーパーであるセンズベリーも少し前にこのマーケットを開拓するようになった。

そこで見かけたのが、本稿に添えた写真の、ナゾのカップヌードル。バッタもんではなくて、ちゃんとしたライセンス品です。しかしパッケージが派手で笑えるし、味も、筆者が目撃した限り、①枝豆入り②海鮮③すき焼きビーフ④照り焼きチキン⑤豚骨で、②と⑤以外は、あんまりピンとこない――と書きつつ、自分もずいぶん日本でカップヌードル買ってないから、こういう味が実は人気なのかもしれませんけど。

なので興味はそそられたものの、中華系食品店で買う値段の2倍の額で売られているので、どうにも手が伸びない。スナック程度の食べ物なので、他でリーズナブルに買えるものに、わざわざ2倍もお金は出したくない。ゆえに、棚で見かけても、「高いから買わないよー」と邪険にしてきたんですが、コロナの影響か(?)スーパーも売れ筋商品以外の珍品の安売りに踏み切り、やっと自分にも納得できる額で販売しているのに出くわした。せっかくだから、試しに買ってみました。

選んだのは、カップヌードルの中でも、元祖と同じくらい好きな海鮮味。パッケージは気取ってますが、食べる仕組みは世界共通。蓋をめくると、おなじみの乾燥麺&粉末スープの姿が見えます。湧かしたお湯を入れて3分待てば、おやつのできあがり。さてさて〜!と、食べてみたところ――

味が違う。

軽いショック。つうか、日本のそれと味が違うだけではなく、積極的に……不味い。

具材が日本のそれとは若干違うのは、別に気になりません(包装のイラストにイカが描かれてるけど、イカ、ほぼゼロ)。ただ、スープの調合、全然違う。フェイクではあるけど、シーフード「っぽい」味を楽しませてくれるのが大事なのに、妙な雑味が混ざってて、海感皆無。イギリス人は魚臭さが苦手なので、その配慮かもしれませんね。かつ、スープに余分なとろみがついていて、重いのも気になる。イギリスには、人気が高く定着しているポットヌードルなる商品(カップヌードルの真似)がありますが、ややどろっとしたこのスープの食感はそっちに近い。

市場開拓のためにイギリス人の舌向けに味を変えたのか、はたまたイギリスやEUでは認可されていない化学調味料を使っているため、直売のオリジナルは売れないのか? 理由は分かりません。でも、この華やかなパッケージの中身の正体は、日本人の知っているそれではありません。「日本でナンバー・ワン」の謳い文句が、妙に虚しく映る。というか、このアイテムがなかなか売れずに安売り化したのはコロナ云々ではなく、イギリス人ですら「美味しくない」と思ったからではないか、と妙に納得した。

というわけで、しょうもないぼやきでした。渡航が再開した暁に、イギリスに旅行に来る方もいらっしゃるかもしれません。ふとこの商品を店頭で見かけて、日本の味が恋しくてつい買いたくなるかもしれませんが、そういう方はあらかじめトランクに持参した方が無難だと思います。

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RIP: Adam Schlesinger


思いっきり、落ち込まずにいられない訃報です。たくさんの素敵な曲と笑顔の思い出をありがとう、ありがとう、ありがとう。

皆さんも、どうか無事にお過ごしください。

<“Troubled Times”は、カウント10:42から>

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TV Round Up: Succession


年が明けてずいぶん経ちましたが、ポストが途絶えておりました。てなわけで、久しぶりにここしばらく観たテレビ・ドラマや映画について心のおもむくまま書いていこうかと。第一弾は米HBO産の話題作『Succession』(日本題は『キング・オブ・メディア』)。2018年に開幕、昨年秋にシーズン2を完走したコメディ・ドラマになります。

<このメイン・テーマも素晴らしい>

おそらく『Game Of Thrones』のヒットで日本でも認知度が高まったであろう有料ケーブル局の老舗HBOは高品質な番組作りで定評がある。近年のいわゆる「テレビ黄金時代」にはネットフリックス等ストリーミング勢も貢献しているとはいえ、「映画並みのクオリティで(90分〜2時間の一般的な劇場映画の尺に縛られない)長いストーリーを数シーズンで描く」というメディアとしてのテレビ全体のレベル向上/意識変化にHBOの影響は甚大だ。筆者がハマったのは『The Wire』からだったが、この傑作は少なくとも3回は全5シーズン通して観た。観るたび発見があり、感動させられる。

<『The Wire』は、筆者にとってはベストTVシリーズです>

「テレビ名作トップ○○」等の海外リスト/ランキングでほぼ毎回1位に選ばれる『The Sopranos』は「HBOスタイル」を確立し広めた古典だし、『Deadwood』、『Boardwalk Empire』、『Treme』といった評価の高い力作の数々に最近では『Chernobyl』も加わっている(『Chernobyl』は残念ながらまだ観れていませんが)。『Sex and The City』、『GoT』といったカルチャー現象になるヒットを生み出しつつ、『Girls』、『True Detective』他新たなトレンドを起こすエッジのある作品も。そのチャレンジの気風――ネットワーク局ではリスクが大きいのでなかなか賭けに出れない面もあるのでしょうが――と子供騙しな二番煎じに安易に乗じないインテリジェンスは、新たな才能の発掘に繫がっている。

役者で言えば、『The Wire』はイドリス・エルバ、マイケル・ケネス・ウィリアムスら優れたアクターのキャリア・ブレイクをもたらしたし、『Black Panther』他でもっかスター街道邁進中のマイケル・B・ジョーダンも子供時代に『The Wire』組の窯の飯を食べたクチ。『GoT』がUK&アイルランドおよびヨーロッパの逸材や若手の起用で新風を送り込んだのも記憶に新しいし、ラジオ・コメディをテレビ化した『Flight Of The Conchords』でニュージーランドのクリエイターに脚光を当て、同シリーズの数本で監督を担当したタイカ・ワイティティにアメリカ仕事のきっかけを与えたのもHBOだ。

<FOCは、サブ・ポップからアルバムも出しました>

アメリカのエンタメ制作会社でありながら、ドメスティックに限らずグローバルに才能に網を張る――ゆえにファンはもちろん同業者たちも一目置くユニークなステイタスを誇っているのだろう。たとえば『John Wick』シリーズはイアン・マクシェイン(『Deadwood』)、ランス・レディック&クラーク・ピータース(『The Wire』)、アルフィー・アレン(『GoT』)と、HBO好きはついにやっとしちゃうキャスティングでしたしね。

日本と同様にイギリスもHBOの恩恵をダイレクトに受けてきたわけではなく、かつては地上波局やBBCが単発でシリーズ買いし放映したカルトな「輸入テレビ」だった。いくら言語が同じでも、やっぱりイギリスも国産番組の人気の方が高いし定着している市場なので。しかしその状況はSky AtlanticがHBO作品の英放映権を獲得したことで変化し、『GoT』のヒットおよびテレビ界全体の活気&相乗効果で新たな視聴者層を開拓。00年代に較べ、「HBO」のロゴはイギリスのお茶の間にもうちょっと浸透したんじゃないかと思う。

それだけに、『GoT』のグラン・フィナーレが近づくにつれて「次の一手は?」の思いも迫ってきた。ここまで読めばお気づきでしょうが、自分はHBOびいき。なので、そのレガシーを守って欲しいというシンパシーが強い。『GoT』ブレイク以降も『Westworld』といった秀作を送り出しているとはいえ、ぶっちゃけ「『GoT』に代わる新たなフラッグシップ番組」はまだ生まれていないと思う。クオリティを維持するにはマネーが必要だし、一度つかんだグレー・ゾーン顧客の滞空時間およびブランド認識はHBOも手放したくないだろう。かといってネットフリックスのようにオリジナルだけではなく映画や海外ドラマにも手を広げる「数打ちゃ当たる」式もやらなさそうだし、ストリームTV時代への推移に沿ってアップル、ディズニーも参入し状況は群雄割拠(HBOもHBO MAXなるストリーミング・サーヴィスをやってます)を。この変化はHBOにどう作用するのか……?とやや心配だった。しかし、それは杞憂でした。『Succession』(=相続者、世継ぎ)はその名の通り、『GoT』の後に残された空白感を埋めてくれる作品です。

――と書きつつ、はっきり断っておくと:『Succession』は架空の世界を舞台にした歴史ファンタジーではありません。そういう意味での「次なる『GoT』」ではないので、誤解なきよう。二匹目のドジョウ的な作品には『Britannia』や『The Witcher』があるし、アマゾンも『Lord Of The Rings』&『The Hobbit』の前史ドラマを企画している。ので、魔法使いとか中世剣劇ジャンルがお好きな方はそちらをどうぞ。付け加えると、『Succession』がグローバルなファンを誇るヒット人気作になることもまずないと思う。シーズン1の視聴率は上々とは言えなかったそうだし、通常の民放局だったら1シーズンで打ち切りになっていてもおかしくない。

『Succession』は現代の(主に)ニューヨークを舞台に展開する相続争いのドラマだ。果たして鉄の王座に座る世継ぎは誰か?というのが、究極的には『GoT』のお話の骨幹にあったわけです。で、そこからコスチュームだの騎士だのドラゴンだの伝説の妖怪だのを取り去り、いちばん面白い人間関係(=ラニスター家やスターク家のそれ)の複雑な愛憎を凝縮したのが『Succession』、というか。アクションのセットピースやスペクタクルの面ももちろん『GoT』の魅力でしたが、そちらはしょせんおかず。CGIてんこもりなハイライトに達するまでの土壌であるご飯とお味噌汁の基本がちゃんとしてないと、カタルシスは生まれない。

やっとこさ本題に移りますが、『Succession』が描くのは、テレビ&新聞を軸にテーマパークやリゾート業にも多角化し、イギリス、日本他世界各地に拠点を置く巨大メディア複合企業であるウェイスター・ロイコ社と、そのレガシーと富とを成り上がりで築き上げた長老社長ローガン・ロイ、そしてローガンの寵愛を受ける跡継ぎは誰かを巡り彼の4人の子供たちが繰り広げるドラマの内幕だ。マジに血の流れる殺し合いこそ出て来ないけど、舌戦や策謀戦術、交渉や駆け引き、いびりにいじめ、懐の探り合いにはったり、キャラクターの微妙な忠誠のズレ/ブレや敵味方間双方の裏切りetcは赤裸々かつ随時変化していくので、目が離せない。情報伝達に伝書カラスを使い、徒歩&馬でえっちらおっちら移動して実は数エピソードで物語が1、2ヶ月しか進んでいなかったりした『GoT』とは違い、ネットに携帯、ヘリコプターや私有ジェットでぶいぶい動き回るのが当たり前な現代リッチが主役の『Succession』はばっちりコネクトしている。ので話が速く、そのぶん大小様々なスクランブル状況も次々訪れる。「次のエピソードでは何が起こる?」と毎回スリリングな中毒になるタイプの作品で、シーズン1はほぼぶっ通しで観てしまいました。

主役であるロイ一族は、FOXネットワークを牛耳り、イギリスでも『The Sun』と『The Times』紙を抱えるニュース・インターナショナル社のヘッドである富豪ルパート・マードックとその子供たちをモデルにしている……と解釈されることが多いが、作者ジェシー・アームストロングによればマードック一族に限らず、アメリカに意外と多い家族経営のメディア会社(CBSのレッドストーン家他)のコンポジットだとのこと。それを踏まえれば、選挙で選ばれたわけでもない娘や義理の息子をネポティズム(身内びいき)で政府の要職に就かせているどっかの大統領もローガンにだぶるし、現代の金持ちの中に残っている昔ながらの封建的な「家父長制」は大きなテーマだと思う。

ロイ一族の子供たちは、みんな一癖も二癖もあって興味深い。またも『GoT』を引き合いに出して非常に大まかに言えば、ラニスター家のティリオンに当たるのは会社経営から距離を置いて道楽を追求している長男コナー・ロイと実務を任されている秀才次男ケンドールあたり。政界ともコネがあり野望満々で「世継ぎはあたし!」と確信している策士な三女シボーン(シヴ)はサーセイ、家族に振り回されながらも個人的なチャームで色々な局面を乗り切るジェイミーに当たるのは自他共に認める「おバカ」な四男ローマンというところ。父ローガン・ロイの健康が悪化し、巨大企業を継ぐのは誰か?という緊急事態が浮上したことでシーズン1では色んな状況や思惑がドミノ倒し状に連鎖していき、その影響は子供たちはもちろん彼らのパートナーや親類、会社の側近スタッフ、株主やライバル会社etcにも及んでいく。

そのすったもんだに揺られ、ロイ一族やスタッフのトンデモ失態、驕り他が招く間抜けさ、企業としての悪辣さが容赦なく暴かれていく。しかもメイン・キャストのほとんどは出世とマネーと保身しか考えていないエゴの塊ばかりなので、共感したり自己投影できるキャラクターが実に少ない。ドラマ、特にアメリカでこれをやるのは勇気がいるだろう。そこがシーズン1の不振に繫がったのか?とも思うが、手加減なしの描写ゆえに『Succession』は素晴らしくダークで時にグロテスクなコメディであり、「1パーセント」のリッチたちの空虚さを笑い呆れる風刺作にもなっている。

と同時に、話の大枠だけ眺めればこれは『リア王』でもある。なので、ローガン・ロイを演じるのがスコットランド出身のシェイクスピア俳優であるブライアン・コックスなのは非常に効いている。もっと有名な演技派は他にも色々いるけど、イアン・マッケレンやアンソニー・ホプキンスほど演技が大仰ではなくジョナサン・プライスや故ジョン・ハートほど線が細くもなく、若いスタッフや役者たちがインタラクトしやすそうなユ―モラスさ/カジュアルさも備えているのがモダンだ。憎めないおじいちゃんな表情と、怒らせるとめっちゃ怖い冷血ボスの怪物的な顔をクールに使い分けて人々を操るローガンの複雑なキャラを見事に造型していてまさに当たり役。

<ブライアン・コックス版のレクター博士、好きなんですよねー>

彼を軸とするアンサンブル・キャストも秀逸だ。4人の子供たちの中でもっともきつい試練を次々に味わう次男ケンドール役をストイックかつニューロティックに演じるジェレミー・ストロングを筆頭に、個性的なマスクと自然なカリスマ&知性で兄弟を蹴散らすシヴ役のサラ・スヌーク(彼女は『Predestination』がすごく良くてイーサン・ホークを食うほどだったので、再会できてめっちゃ嬉しい!)、軽薄でありつつ時にずばっと真理をつく道化ローマンを生き生き演じているキエラン・カルキンと達者ぞろい。この3人に較べ場面が少なめのエキセントリックな長男=コナー役に、『フェリスはある朝突然に』のお人好し君=キャメロンとして永遠に愛されるアラン・ラックを引っ張り出したのも絶妙だ。

<サラ・スヌーク出演の異色SF『Predestination』>

<フェリス役のマシュー・ブロデリックの方がアイドル人気高かったけど、キャラとしてはキャメロンの方が「いい奴」っすよね>

アラン・ラックは滅多に映画やテレビでお目にかからない役者で、それは彼が舞台をメインに活躍しているからだ。イコール、『Succession』は舞台経験=場の空気を読んで反応し即興をこなせる役者を重用しているということで(シーズン2にはゲストとしてホリー・ハンターが出演したけど、いわゆる「ハリウッドの今美味しいスターやセレブ」とはほぼ縁のない作品です)、ゆえに一般的なドラマとは違う独特なリズムやムードを生み出せているのだと思う。

たしかに室内/会話劇が主調のドラマだし、主要キャラをひとつの場に結集させる「誕生日」だの「会社の命運を賭けた会議/ミーティング」だの「結婚式」だの「祝賀パーティ」の設定デバイスはほぼ毎回使われる。しかし、それが舞台劇の映画化やドラマ化にありがちな窮屈さ――その窮屈さが逆にいい、というケースもあります――にならないのは、要所でロケ撮影にお金をしっかりかけつつ、主に手持ちカメラ撮影の主観的なスタイルをとっているからだろう。

カメラが不必要に動いて見ていて乗り物酔いするほどではないし、ドキュメンタリーとまではいかないのでご安心を。ただ、たとえばひとつの室内の場面でも、台詞を喋っているメインの役者だけではなく、時に彼らの背景や視界の脇っちょで生じるちょっとした動きやリアクションもカメラは細かく追い拾っている。主にずっこけギャグを担当するシヴの夫トム(マシュー・マクファディーン)とグレッグ(ニコラス・ブラウン)のペアは特に、回を重ねるたびにその阿吽の呼吸が合ってきてナイスです。ともあれ、フレームを固定しないことでよりナチュラルで多孔的、その場に居合わせてドラマを眺めているような感覚が生まれる。4人以上のキャストが集まる場面は、おそらく入念にリハーサルし、たとえ画面に映り込まなかったとしても誰もがそのシーンに応じて中心になる役者の周りで演技をし、インタラクションを生んでいるんじゃないかと思う。その意味でも、舞台経験がありインプロの上手い役者が活きている。

手持ちカメラのコメディには『Curb Your Enthusiasm』や『The Office』と名作が色々あるけど、激辛なユーモアとテンポの良さという意味で、これはやはり英産政治サタイアの傑作『The Thick Of It』が直系だろう――というのは当然の話で、『Succession』の作者ジェシー・アームストロングはダメ男2名が主人公の人気シットコム『Peep Show』を経て、『The Thick Of It』とその映画版『In The Loop』(これはHBOフィルム作)および『Veep』、映画『Four Lions』等に参加し、アーマンド・イアヌッチやクリス・モリスといった風刺作家と仕事してきたライター。00年代を通じて彼の磨いてきたノウハウやスキル・経験が凝縮されているわけです。

<歩く毒舌ターミネーター、マルコム・タッカーがアメリカに乗り込む!>

しかもウィル・フェレルと共同で『Succession』をプロデュースしているのは映画監督としてもおなじみのアダム・マッケイ。彼はここのところ『The Big Short』、『Vice』と実話や実在の人物に基づいて金融界や政界の腐敗をブラックなサタイアとして描いてきた痛快な才人だけど、ここでメディアもその標的に入っている。BBCのような国営メディアが存在せず、名門『ワシントン・ポスト』紙をジェフ・ベゾスが買収してしまう国アメリカでは、中立なはずのメディアでもバイアスがかかってるのを覚悟しないと。この面は、シヴがバーニー・サンダース的な上院議員の選挙陣営に参謀として加わることで生じる駆け引きや、リベラルな「良心」の象徴的メディア企業――ロイ一族とは対照的に、こちらは家母長がヘッドの一族が仕切る会社――の買収工作(シーズン2)といったエピソードでえぐられてます。

「実在のモデルはこれか?」とRedditが論じたがりそうなキャラや逸話が次々出て来る作品だし、右派メディア、#MeToo、ウィッスルブローワー等々に触れるところも実にカレントで、そこもくすぐられる。たとえば、偶然とはいえ:ロイ一族の抱える悩みのタネのひとつが、彼らのやってるリゾート業の一環である客船ビジネスの醜聞っていうのは……ドラマ内での問題は長年にわたるスタッフ処遇のヒドさやハラスメントに関する糾弾とはいえ、妙にタイムリーな気が。偶然と言えば、「世継ぎ」がいつも話題になる家族経営会社のひとつと言える英王室もハリー&メガンが独立して大騒ぎになったばかりで、『Succession』のお家騒動がややだぶりました。

そう考えると、『Succession』も『GoT』と同様に、突き詰めればソープ・オペラ的な「家族ドラマ」ということ。このタームだけで退く人もいるかもしれないけど、人間の視点が描くドラマは、たとえSFアクションでも、前衛作品でも、どこかしらに家族(もしくは疑似家族)は含まれるもの。そもそも、親がいなければ、生まれていないんだし。その避けようのない絆の描き方は千差万別だし、どれを観るのもOK!なんですが、モダンな親子のストーリーとして『Succession』は非常に面白くてお薦め。

その根元には、金持ちの家に生まれ育ち物質面では贅沢三昧だったものの不在な親から愛情を充分に得られなかったために、いい大人になっても父や母からの「よしよし」や「お前がいちばん可愛い」を求めてしまう/あるいはそれに反発する子の悲劇、そして「私は何もかも家族のためにやってきた。子供が愛しいからだ」のひと言で子供たちを黙らせ服従させ、チェスのコマのようにビジネスに利用する、愛情ともエゴとも言える親の哀れな不器用さがある。ちょっとでもいいから親と遊び甘えたい子供と、「小遣いたくさんやるからあっちに行け」と子供を追い払い仕事に没頭する親とのすれ違い、と言いますか。コメディとして大いに笑えるんだけど、そのぶん、巧みに織り込まれる人間の悲しさ・苦みが鋭く胸に刺さりもする。

先にも書いたように、ロイ一族は(ローガンの兄を除き)、誰も彼もが金にまかせて好き放題やっている欲得ずくなナルシシストであり、倫理のカケラもないひどい連中だ。好きになるのは難しい。ただ、そんなしょうもない彼らの中にもヒューマンな面や感情のインテリアがあることを否定しない多層的な作りは、『Succession』を非常に大人なドラマにしていると思う。それは、モラルなきギャング/マフィア一家を通じてアメリカン・ドリームとファミリーを描いた『The Sopranos』にも通じる味だ。

シーズン1の視聴率低迷にも関わらずHBOは辛抱強くシーズン2を受注し、ここでカルトなバズに火がついた。エミーやゴールデン・グローブで最優秀脚本や男優賞他を獲得し、その追い風でシーズン3も制作が決定している。「次のシーズンはいつ?」と心から楽しみにできるレアなドラマが生まれたことに、イェーイ!と小躍りしてます。

このドラマには可能性がたくさんあって、たとえば「ローガン・ロイはなぜこういう難儀な人間になってしまったのか」と彼の若き日を探るのにエピソードを丸ごと費やすこともできると思う。でも、なるべくそういう脇道に逸れずに、リアルタイムでロイ家のアップダウンを描くことにフォーカスしていって欲しい。というのも、『Succession』の中でも何度か触れられるように、ロイ一族の作り上げた「紙と電波をコアにするビジネス・モデル」=伝統的なメディア帝国は、インターネットやテック、SNSの前で旧態化しつつあるいわば恐竜の存在。今すぐになくなるわけではないけれど、背後に新波が迫っているのは間違いない。

億万長者のひしめくシリコン・ヴァレーにもいずれ「世継ぎ」話が出て来るんだろうけど、ザッカーバーグやドーシーだのはまだダイナスティとしては若い。ここらへんの世代は、アメリカン・ドリームのモダンな体現者という意味では未来のドラマの糧であって、今ではない。ので、それはフィンチャーの『Social Network』やダニー・ボイルの『Steve Jobs』を観ながら時機到来を待つのがいいのかもしれません。

最後のぼやき余談:『Succession』のシーズン1DVDを買うのは、簡単なようでいて意外に大変でびっくりした。昨年末のクリスマス商戦期にショップに買いに行ったら5、6軒回ったどこも売り切れで、残っていたのはブルーレイ版のみ。2月の再入荷でやっと買えたけど、それも店内に残ってた唯一のDVD版だった。セルDVDを買うこと自体が久しぶりだったのもあるだろうが、店頭販売はブルーレイ扱いに移行していることを実感しました。
ほとんどの場合は1回観て終わりの映画やドラマの場合、いちいちDVDで買うよりもストリームで済ませる方が早いし、マニアは高画質や特典満載のブルーレイをソフトとして選ぶ、という図式らしい。ただ、ストリームも今後どんどんコンテンツ会社が増えることで権利が分割し、Aというドラマを観たければこのストリーム・サーヴィスに加入、Bというドラマを観たければあのストリームと契約、という具合にややこしくなりそう。筆者のように面白くて繰り返し観れる作品だけつまみ食いして、少し時間が経ってからでもいいのでDVDボックスでまとめて観たい手合いには、これはうざいんですよねー。かといってアマゾンは利用したくないし、あーあ、面倒。

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RIP: Andrew Weatherall


またも悲しいお知らせです。DJ/プロデューサー/リミキサーである、ザ・ガヴァナー(親方)ことアンドリュー・ウェザオールが逝ってしまいました。若過ぎるよ!!! 合掌。

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お知らせ:ニック・ケイヴの…


…来日が決定、ということならめでたいですが、そうではありません(すんません)。
業務報告で、今回はエレキングさんに、ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズのアルバム評を掲載いただいたので、そのお知らせです。
本当は、もっと前にアップしたかったんです。けど、たまにこのブログ、ログインできないことがありまして、「ありゃ、今日はダメか。じゃあ、また明日」なんて思っているうちに、うっかり忘れていました。というわけで、興味のある方は、上記リンクからジャンプくださいませー

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お知らせ: コラムを書きました


というわけで、今回は業務連絡です。エレキングさんに、イギリス音楽界とブレクジットについてあれこれ思ったことをまとめたコラムを掲載いただきました。ご興味のある方は、こちらのリンクからジャンプしてみてくださいませー

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Wilco Recommends: ウィルコのお薦め2019年のアルバム


あけましておめでとうございます。

うっかりアップし損ねていました! 12月30日にウィルコのメーリング・リストから「ウィルコのレコメン:バンドの2019年のお気に入りアルバム」のお知らせが届いていまして。これが自分の趣味にかなり近い内容だったので、以下にコピペしますね(「自分で年間ベストを作らない手抜きじゃないかー」と突っ込まれそうですが……)。

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As we wrap up another year, we’d be remiss not to share some of the band’s favorite albums from 2019. So without further ado, let’s get to the music. We’re looking forward to the next year (and decade), we’ll see ya there. – Wilco HQ

Aldous Harding Designer
Arthur Russel Iowa Dream
Ben Monder Day After Day
Beth Gibbons & The Polish National Radio Symphony Orchestra Henryk Gorecki
Bill Callahan Shepard in a Sheepskin
Bill Orcutt Odds Against Tomorrow
Black Midi Schlagenheim
Blood Incantation Hidden History of the
Human Race
Bonnie “Prince” Billy I Made a Place
Caroline Shaw Orange
Cate Le Bon Reward
Chris Lightcap SuperBigmouth
Daughter of Swords Dawnbreaker
Dyson Stringer Cloher Dyson Stringer Cloher
Earl Sweatshirt FEET OF CLAY
Emile Mosseri The Last Black Man in San Francisco (soundtrack)
FKA Twigs MAGDALENE
Flying Lotus Flamagra
Gerald Cleaver & Violet Hour
Live At Firehouse 12
Jamie Drake Everything’s Fine
Jim O’Rourke Steamroom 43
JPEGMAFIA All My Heroes Are Cornballs
Julian Lage Love Hurts
Kim Gordon No Home Record
King Princess Cheap Queen
Lana Del Rey Norman Fucking Rockwell!
Larry Grenadier The Gleaners
Mark Mulcahy The Gus
Molly Sarle Karaoke Angel
Michael Kiwanuka KIWANUKA
Neil Cowley Solitary Refinement
Purple Mountains Purple Mountains
Richard Dawson 2020
Sleater-Kinney The Center Won’t Hold
Thurston Moore Spirit Counsel
Tyler, the Creator IGOR
Weyes Blood Titanic Rising
Will Kimbrough I Like It Down Here

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RIP: Vaughan Oliver


英インディ・レーベルの老舗=4ADの、もっともアイコニックな時期のアート・ディレクターだったヴォーン・オリヴァーが62歳で亡くなったそうです
彼の手がけたジャケットの数々は、イギリスのアート/デザイン界に独自の美学をもたらしたと思います。合掌。

というわけで、追悼の意味で今回は、ヴォーンのイメージともっとも合うアクトであるコクトー・ツインズのクリップを。奇しくも、ファクトリーのデザインで知られるアナザー・アイコン=ピーター・サヴィルが、来年始めに名誉勲章を授与されるとの報道があったばかりです。

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