日々の雑感:その2


ずいぶん長いことご無沙汰していましたが、取り組んでいたプロジェクトが一段落しましたー!ということで、ほったらかしにしてあった事柄をぽつぽつポストしていこうかと。

その前にひとつだけ:アリーサ・フランクリンに心からの追悼を。自分が(イギリス人のソウル再解釈を機に)60〜70年代のソウル音楽をかじり始めたのは80年代半ば〜90年代始めだったと思うけど、モータウンやアトランティックの「レーベル大全」的なCDコンピには助けられた&勉強になった。中でもアリーサ・フランクリンはスクリッティ・ポリッティの〝Wood Beez〟やユーリズミックスとのデュエットでガキの自分でも記憶にあったのでアクセスしやすかったし、アーシーさと洗練を兼ね備えた彼女の声と音楽は現在も続く自分のアメリカ南部への興味の原点だったのかなぁと思う。そんなわけで、かっこ良過ぎなこの曲を。

今日のポストは、もう4ヶ月くらい前(!)になりますが、そこそこ近所(と言っても自転車で30分くらいかかりますが)に中古レコード屋がオープンしたので行ってきた際の話。

<この立て看板は建物の裏手にありました。半地下の店舗なので正面からは見えにくいです>

ロンドンおよびイギリス全体でレコード店の数は縮小傾向にあるものの、品数やジャンルを絞ったインディのブティック系レコード・ショップ(カフェも併設されていたり、ライフスタイル度が高い)はちょこちょこ開店している。そのメッカはいまだに東ロンドンながら、南もペッカム圏を中心に少しずつ増えているのは嬉しい、が、この日行ったシガレット・レコーズというお店(この店名は、いまひとつピンときませんが:笑)はヒップでもなんでもないベッケナムというエリアの、しかも公園の中にあるベッケナム・パレスという歴史的な建物に入っている。

パレスと言っても本当の「宮殿」ではなくて、かつての金持ち/貴族が暮らした邸宅。この公園の地所の一部も含め現在は地元自治体に活用され、建物もコミュニティ・センターやイヴェント(工芸フェア他)の場になっている。このレコ屋は、その地下に(おそらく一定期間中)店舗を構えている次第。

中古アナログ全般の品揃え(でも強いのはディスコ〜クラブ系)で、サクサクできるちゃんとラックに入ったものから、レコード棚に詰まっていてスパインしか見れなくて難儀なもの、クレートや段ボール箱に入ったまま床に置かれていてしゃがまないとチェックできない腰が痛くなるもの(トホホ)まで在庫数はかなりのもの。最新のホットなレコードは売っていないけど、隠れた名曲とかマニアックな音楽には出会えるお店だと思います。

<壁に飾られた7インチ。この向かって左手に大きな棚があって、チェックするのが大変で半分までで挫折しました>

ちなみにこのお店はレーベルもやっていて、かつ元々はディスコグス通販から始まって発展したらしく、ネット発→でもショップを出したい、という夢を遂に実現させたってことなんでしょうね。そういうフィジカル/コミュニティとしてのレコード店へのあこがれ&愛着みたいなものは、やや雑然としてはいるものの試聴用ターンテーブルもしっかり2台用意されたフレンドリーな店内のムードからも感じられたし、DJワークショップのフライヤー等、ハブ的な存在も目指している。オールドスクールでありつつ、そこに生じがちなエリート主義や「クレート・ディガーの巣窟」めいた暗さは低い、というか。

もちろんマニアックな手合いやヒップな若者も店内にはいたけれど、建物の上階がコミュニティ・センターで周囲は公園だけに、レコード店で滅多に見ない家族連れが顔を出すのはナイスだった。小中学生の娘や息子を連れたお父さんがノーザン・ソウルの7インチをがさごそやってたり、中年カップルが懐かしそうに青春時代のサントラを眺めていたり。彼らは実際には買わないのかもしれないけど、とかくアーティ&ヒップな繁華街や観光地に集中しがちなレコード屋ではあまり見ないフツーで「郊外」な光景に和みました。

がんばってほしいです。(ピクニックも兼ねて?)夏が終わる前に、もう1度行こうと思ってます。

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Beat of My Own Drum: 126.Richard Swift


暑いです。そんな中に、すっと悲しい訃報の冷気が流れてきました。USインディ•ロック界でユニークなポップスを作ってきたシンガー•ソングライター、リチャード•スウィフトが亡くなったそうです

ザ•シンズのツアー•メンバーとして活躍、またフォクシジェンの名作「We Are The 21st…」他プロデュース業もおこなってきた彼ですが、今ならファーザー•ジョン•ミスティ、さかのぼれば(ちょっとだけ)エリオット•スミスにも通じる彼のメロディックなセンスが好きでした。合掌。

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お知らせ:紙エレキング Vol.22


お久しぶりです。日本も暑いそうですが、ロンドンも先週末から夏々しいです。それでも気温28℃くらいなんで、「甘い!」と怒られそうですが。

細野晴臣、ジルベルト•ジルと久々にライヴが連続したので、その模様もぼちぼち書ければいいなと思ってます。しかし色々と煮詰まっているタイミングなので、たぶんすぐに手が回りません。ダメなオレ。

ともあれ主題=今回は業務報告です:紙版エレキングの最新号が出ますが、こちらでチョビッと原稿を書かせていただいています。OPN総力特集はもちろん、アヴァン•ポップ編ではステレオラブ再検証byレティシアといった貴重なインタヴューもあるし、アフロフューチャリズム特集もパワフルです。ごわごわと固くきしむ綿のように迫って来るものとして、「トレンディなキーワード」が次から次へと飛び交う昨今、というのもあると思うんですが、それを読み解く/自分なりに解釈し消化するための手がかりがたくさん含まれている号だと思います。書店他で見かけたら、手に取ってみていただければ幸いです。

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Steve Reich’s Different Trains@QEH,10April/2018


お色直しされたQEH。

「Differenet Trains」演奏中の模様。

今回は久々にライヴ体験記。っていうか、もう1ヶ月以上も前の話ですが。

このコンサートは、スティーヴ•ライヒの弦楽カルテット向け作品「Differenet Trains」の初演から30周年を祝う企画イヴェントだった。クロノス•カルテットの盤でご存知の方も多いかもしれないこの作品、2年前にリヴァプールの駅で上演されたことがあり、そちらには行けなかったのでとても楽しみにしていた。

いそいそとサウスバンク•センターに向かったが、このコンサートは同施設の1つであるクィーン•エリザベス•ホール(1967年オープン)改装後のこけら落としイヴェントのひとつでもあった。外観の60年代コンクリ建築っぽさこそ変わっていないとはいえ、内部はバーのレイアウト他も変わって以前よりも通気が良い雰囲気になった印象。肝心のオーディトリアムも床•座席等がリニューアルされグレード•アップしていたし、音響も言うまでもなく素晴らしかった。

演目は、まずはザ•ナショナルのブライスのコンポジションから。ロンドン•コンテンポラリー•オーケストラのカルテットによる演奏は、アルペジオで急襲するドラマチックかつダークなトーンだ。そちらがクラシック音楽的な曲だったとしたら、続く2曲目はアトーナルな不協和音から始まり、弦のベンディング、ドローンがよく効いた現代音楽調でまた別の味わいだ。ヴァイオリンの響きも美しかったが、やはりアーサー•ラッセルを想起させるチェロのふくよかな不穏さが心地よい。

続いて、ミカ•リーヴァイのコンポジション「You Belong To Me」。映画サントラでめきめき躍進中の彼女だけれど、この曲の繊細さとイメージの豊かさは期待に違わぬ素晴らしいものだった。ダンス音楽他にも腕を伸ばしているし、今後も目が離せない才能だ。

続いてブライスのソロで「Electric Counterpoint」。アルバム版「Different Trains」のB面では、パット•メセニーが演奏したギターとテープによるコンポジションだ。寄せては返すミニマルなリフの点描、アジア風パッセージ、ハイライフ風……と徐々に変化していく様にはやはり酔わされます。

いよいよ、メインの「Differenet Trains」。カットアップされループされた人々の声が浮かんでは消える中、弦楽カルテットは張り詰めた演奏を展開していく。その人声の抑揚や響きを、ヴァイオリン他が細かくなぞってハモらせる場面には軽く痺れました。このパフォーマンスはビル•モリソンという映像作家による短編映画付きで、ヨーロッパからアメリカにかけて、列車や駅、線路を捉えた第二次大戦期の記録フィルムを用いた映像がシンクロ上映される内容だった。アイデアそのものは納得……とはいえ、音楽だけでも充分にイマジネーションが刺激されたし、作品の背景•文脈を「説明」するタイプの映像だっただけに、音楽がサントラになってしまった気がした。かつ、ナチス収容所のショッキングな映像が混じるシークエンスは、どうしてもそちらに目が行ってしまうこともあり、音楽に集中するために後半は目をつぶって聴きました。既に存在する映画にオリジナルのスコアやサントラを作る、というのは多いけれど、その逆は案外難しいのかもしれない。ともあれ、カルテットの一糸乱れぬ力演も含め、ライヒ音楽の魅力と、彼が若手に与えている影響を味わえた、良いコンサートでした。

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Beat of My Own Drum: 125.Frightened Rabbit


スコットさん……。ご冥福をお祈りします。

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Beat of My Own Drum: 124.Sunnyday Service


イギリスはまあ、年が明けると本格的に寒くなるのが普通なんですが、今年の2〜3月は寒暖のギャップがひどかったな〜、という印象。ああ、やっと気温がマイルドになってきたわい…と安心していたら、急にシベリア方面から寒気団が襲ってきたり(笑)。

驚いたことに、今年はものすごく久しぶりに(小中学生時代以来?)しもやけにかかったりもしました。なんで一時的に、手でやる作業が何かときつかった。何本か指の関節の皮膚が割れてしまったんで、さっと手を伸ばして何か掴むとか、ペンを握るとか、日常的な動作がやりにくくなるもんなんですね〜、あれは。指環のせいで血行の流れが悪いのも良くなかったのか、指がソーセージみたいに腫れて紫色になった時はマジびびりました。

しかしまあ、いきなり雪まで降った先週を終えて、しもやけも治って、確実に春は到来中。花粉もかすかに飛んでいるので全面ハッピーではないとはいえ、外に出かけたくなる日和も増えてきてます。こういう気分的に解放された状況だと、自然に頭に浮かんで来て口ずさむのは日本語の歌。それは自分が歌謡曲世代の人間だからなのかもしれませんが、音と言葉(一語一語)が密接につながっている日本型な音楽は、きっかけがあると芋づる式に全コーラス思い出すんですよね。「もうすぐはるですねえこいをしてみませんか」とか、「しゅわくのほりでーさまーびーち」とか。

そんなわけで、今日はこの時節に外を歩いていると浮かぶサニーデイの「恋におちたら」。ボ•ボーン、ボ•ボーン…のベースのイントロからギターのストローク、そして穏やかなヴァースからサビのエモいコーラスまで、絶妙です。

この曲をすぱっと思い浮かべたのは、『東京』のジャケットの桜のせいかもしれない。春のイメージに喚起された条件反射みたいなもんですね。桜を見ると、子供の頃に親がくれた鮮やかなコバルトブルーとピンクの千代紙とか、花札の桜を思い出すように。

でも、自分はずっと『愛と笑いの夜』派だったんで――あくまで「比較的に言えば」という意味で、『東京』も好きなんですが――「恋におちたら」とか「あじさい」を始めとする文学調な穏やかさも、やっとすんなり受け入れられるようになったのかも。

このバンドで本当に心からガツンときたのは「ここで逢いましょう」を聴いた時だったんで、『愛と笑い〜』に前後する時期(=『東京』、『サニーデイ•サービス』に至る3枚)は、もろもろひっくるめて好きです。「白い恋人」、「サマー•ソルジャー」他の名曲をこの時期連発していただけでもすごいけど。

こういうことを書いていると、「ノスタルジーやろ」と、つい自分突っ込みも出て来る。ごめんなさい、現在のサニーデイの音楽はちゃんとフォローしていませんし。回顧は不健康になる場合もあるので、なるべく回避しようとしています――が、今回はまあ、桜の花の美しさにちょっと酔わされた、ということで。暑さにまかせふたりは旅に出た――という感じで、少しだけ酔って、ちょっとだけバカになってみることで、気恥ずかしい愛情表明をしても許される、それくらいいい音楽でしょう、これは。

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Beat of My Own Drum :123.Yung Wu


またまたレコード•ストア•デイの時期が迫ってまいりましたが、個人的になんとも嬉しいRSD2018再発作品がこちら、ユン•ウー唯一のアルバム「Shore Leave」です。4月20日リリース。

セカンド期のザ•フィーリーズのサイド•プロジェクトとして知られているユン•ウーは、パーカッションのデイヴ•ウェッカーマンのソロをフィーリーズの他メンバーがバックアップしているスタイル。アルバムはこの1987年リリースの1作きりですが、ウェッカーマンの弱虫ヴォーカル(パーカス奏者としてははっちゃけなのに、歌うときのギャップがたまらない)とリリカルなのにパリッと乾いたフィーリーズ流ジャングリー•ポップは絶妙なマッチング。ストーンズの「Child of the Moon」とか、カヴァーのセンスも抜群です。

この作品は中古屋でたま〜に見かけるものの、基本的に長らく廃盤状態でした。嬉しいですね! というわけでこの機会に、80年代好きな方はぜひお試しくださいまし。

ついでにおまけ:ジョナサン•デミのご機嫌なヤッピー•コメディ映画「Something Wild」に、同窓会パーティを盛り上げるカヴァー•バンド:ザ・ウィリーズ役で出演したザ•フィーリーズの姿がこちら。モンキーズの「I’m A Beleiver」のトルネードなカヴァーもいいですが、ボウイの「Fame」のしょぼくてヘタれたカヴァーぶり&ヴォーカル担当のウェッカーマンの黄Tシャツがズキュン!なこのクリップを。しかしボウイもデミももういないのかと思うと、ちょっと切ない。

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