The National@The Roundhouse/26June2013

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最新6th「Trouble Will Find Me」のアルバム•ローンチはベルリンで派手に行われたそうだし、いわゆるリリース記念ライヴはお膝元ブルックリンにて。既に11月の英ツアーも発表されているし、こりゃしばらくロンドンには来ないのかな〜ザ•ナショナル……と思っていたところ、ワン•オフのショウ――グラストンベリーの直前というタイミングでもあり、「シークレットで出るのでは?」との噂もまことしやかに流れるほどだった――がライヴの約2週間前に告知された。
キャパ3000+のこの会場は、現在の彼らの英内人気から考えると小さい方。言うまでもなくチケットへのニーズはすさまじく、オンライン予約にトライしてみたもののまったく前のページに進まない=発売とほぼ同時に完売と相成った。仕方ないと諦めていたけど、新作取材に関わった縁もあり、思いがけず招待で観ることができました。オレってラッキーの助♪♪♪

ザ•ナショナルをこの会場で観るのは2回目だったりする。前回=2010年は「High Violet」発売後のタイミングで、iTunes Festivalの一環として。イギリスでの彼らの評価はサード「Alligator」以来着実に高まっていたとはいえ、本当の意味でのブレイクは「HV」へのロングランな評価が引き金だった。ゆえに2010年の時点でのショウはキャパ最大限とまではいかず、スタンディング•エリアの後方には若干の空きも。もちろん懸賞イベント(チケットは抽選制)&ライヴ•ウェブキャストも組み込まれたこのフェスの特殊な性格上、消防法ギリギリ(笑)までお客を入れるわけにはいかないんだろうけども。
その3年前の記憶を事前にひもといていただけに、この晩のお客の詰まり具合には軽く圧倒された。今回は2階席だったので会場全体が見渡しやすかったってのもあるだろうけど、いやー、眼下のスタンディングは隙間なくびっちりである。やっと夏が本格化した最初の日でもあり、昼間の暑さがまだ残る場内。基本的に汗っかきなので、そのパーソナル•スペースもヘチマもない光景は見ているだけでも体感温度が上昇するようだった。

ともあれ新作リリース後初の英ライヴであり、オープニングはどうなるか?と思いつつ開演時間を待っていると、ステージ後方のスクリーンにバンドの姿が映し出される。これが楽屋からの生中継映像で、がやがやとしゃべりながら出番のキューと共にバンドが通路を抜ける姿をカメラが追い、そのままステージに現れた実物=メンバーにリンクしていく。以前フー•ファイターズのライヴでも体験したことのある趣向だけど、一般客にはアクセス不可能な舞台裏の光景をチラ見せるというこのアイデア、アイス•ブレーカーとしては有効。とりわけザ•ナショナルのようにパブリック•イメージ(基本は腕時計+スーツ姿の人達ですしね)が真っ当でユーモアとあまり縁のない――ゼロではないんだけど、ひねったユーモアなので伝わりにくい――不器用なバンドにとっては、こういうちょっと変則な第一投はありだろう。
満場の喝采の波を縫うようにして、最新作の1曲目「I Should Live In Salt」が静かに縫い取られていく。チラつくロウソクにカメラがじっくり近づいていくようなスロー•バーンな出だし、このバンドの魅力である細やかなアレンジとテンション/リリースに焦って飛びつかないビルド•アップぶりは美しい。
肝心のギター•サウンドが曇っていて、音源=「TWFM」のクリスタル•クリアな域に達していないのだけが残念だった……とはいえ、PAの些細な問題は続くアップビートな2曲を煙幕に(?)解消。華やかなライティング(他のビッグなバンドに較べればノーマルなレベルだけど、このバンドのショウでこんなに派手なライティングを見たのは自分にとっては初です)でショウ•アップされた「Don’t Swallow The Cap」、そしてこの晩最初の合唱になだれこんだ「Bloodbuzz Ohio」。ザ•ナショナルの奏でるムーディなアンニュイ曲は時に分かりやす過ぎて近親憎悪に近い感情(「言われなくても分かってるよ!」っていう、身勝手な思いですけども)が湧くので、ブライアンのダイナミックなビートがモノを言うこの手のワイドな曲の方が自分にはベターである。

そこから「Secret Meeting」のリリカル、かつバンド一体となってのパワフルかつ密度の濃い演奏に向かう展開は「Alligator」好きとしては歓喜だったが、最新作からの曲(「Sea Of Love」、「Demons」)はやはり全般的に盛り上がりに欠ける。ザ•ナショナルの基本原則として「聴きこむうちに良さがしみる」というのがあるわけで、リリースからまだ日が浅いゆえの反応の鈍さというのもあったかもしれない。でも、「Sea Of Love」みたいに同作の中では比較的インスタントなアンセムはもっと盛り上がっていいのでは??
しかし序盤を本格着火させたのは「Conversation 16」で、キーボード&ホーンのサポート2名がモノを言う厚みのあるサウンド、ミドルのコーラス•パートの迫力、手拍子を煽る双子、国歌を思わせるソロなど、ここぞとばかりにネオ•アンセム•バンドの面目躍如。イギリス人のツボはやっぱここ=ロマンと広がりとの融合らしくて、大合唱の輪が広がった。
ジョイ•ディヴィジョンばりのベース•ラインとノイズの重なりが見事だった「Squalor Victoria」を取って返したのは、繊細なアコギで縁取った「I Need My Girl」。しかし続く「This Is The Last Time」に較べると奥行きに乏しく、やっぱりこのバンドはまだエレキの方が映えるかな――というよりも、むしろこのショウ全体を包んでいた「スケール•アップすべし」という見えない命題が、アコースティック曲よりもアンプでブーストされたロック曲にハマる、ということかもしれない。
マイク•スタンドを蹴倒すほどのマットの熱唱が素晴らしい……のに、お客のノリが悪くて悲しかった名曲「Able」。とはいえ場内のコンディションは暑さと密集度と熱気で相当に息苦しかったので、オーディエンスの反応が鈍くなっても仕方ないかも。が、再び自分の琴線とイギリス人の琴線の違いを感じさせたのが次の「Apartment Story」で、こちらは大合唱&男性客達の背中が泣いているのが伝わって来た。こういうミッド•テンポの、メロディックな動きには比較的欠ける(平たく言えば地味な)曲を丁寧に盛り上げるバンドの力量はもちろんだが、受け手の成熟ぶりも大したものと感じずにいられなかった。

遠景写真ばっかですんません:ほのぼの!なアンコール時の図

遠景写真ばっかですんません:ほのぼの!なアンコール時の図

ここから先のバンド側とオーディエンス側との共感は見事で、「ご当地ソング」こと「England」で自然に生まれた手拍子を受けひざまずいて歌い上げたマットのパッション、ライヴ•アクトとしてのタイトさを雄弁に物語った緻密かつワイルドな「Graceless」、語りに近いヴォーカル×ミニマルなバッキングから壮大なインストへビルドアップした「About Today」のポスト•ロック性など、ザ•ナショナルの音楽的振れ幅と消化ぶりを堪能。文字通り会場全体の手拍子が迎えた本編ラスト曲「Fake Empire」のエモーショナルな一体感は、ステージ中央で向かい合い、ギターを頭上に掲げコーダをプレイするデスナー兄弟のグロリアスかつシンメトリカルな絵に収束していった。
アンコールは子守唄を思わせる「Heavenfaced」から穏やかにスタート。最新作でより表現力を増したマットのヴォーカルが光る曲であり、同時にこのバンドのDNAにU2が流れているのを改めて実感する。モトリック•ビートがご機嫌&新作の中でもマイ•ハイライトのひとつ「Humiliation」は、昨年のATPでもプレイしていただけあるというか、氷上の滑走を思わせるギター•ソロも含めライヴ•ヴァージョンとしてよく練れている。
しかし、やはりこの瞬間を待ってました!な万感の思いがイントロで爆発したのが必殺曲「Mr .November」(=この曲をやってもらわないと、ザ•ナショナルのライヴを観た気になれん:ガオー!)。フロアはまだみっちり詰まっているし、さすがに今夜はステージを降りないのかなと思いきや、ライヴ後半からボトルからがぶ飲みしていたのが功を奏し(?)、やってくれましたマットさん(笑)。
バンドが全開でぶっ飛ばす中、時にマイクのコードすら見えなくなるほどお客にもみくちゃにされつつ、それでもなんとか「愛すべき酔っぱらいおじさん」はフロア後方に到達(ドアを抜けて通路にまで出たらしい)。お客が多過ぎて2010年時のライヴのように会場全体を走るのは無理だったようだが、センターを突っ切る形で彼がステージ上に復活するや「ようやった!」の大喝采が巻き起こったのは言うまでもない。

自分的にはハイなままここでフィニッシュしてくれても満足だったが、余韻に浸る間もなくメドレー的に「Terrible Love」。最後の最後はメンバー全員がステージ前方に集まり、アンプラグド=アコギとトランペットのみでマイクすら使わずア•カペラに近いフォーク調の「Vanderlyle Crybaby Geeks」という、あまりにスウィートなシメだった。

「TWFM」にスポットを当てるべく同作からは10曲、そして主な代表曲•人気曲をすべて網羅したことで、本編の1時間半だけで18曲、アンコールは5曲というヴォリュームたっぷりなセットだった。その詰め込みぶりは、テンポを上げた演奏に慌ただしさが残った数曲を始め、ショウの流れ全体に若干マイナスに影響していたとは思う。しかし古株ファンだけではなくグレー•ゾーンな客層もかなり増えた現時点の彼らにとって、約2時間の中で可能な限り多くの楽曲をプレイする=幅広いニーズに対応できるオールラウンドなセットを、という正攻法はある程度必然の指向なのだろう。
そのある意味朴訥とすら言える誠実さ――たとえばもっと敷居の高いショウをやるだけの才覚と力量はいくらでも備えた人達なのだが――は、またこのショウに興味深い場面をいくつか生んでいた。

先にも書いたように、ドラマティックなライティングや曲ごとに変化するスクリーン映像など、以前のショウ(と言ってもフェス他で観ただけで、純粋な単独公演はこれが初体験ですが)に較べて今回は明らかに大会場向け、あるいは野外で映えそうなヴィジュアルの仕掛けが増えた。既に英米ではフェスでヘッドラインをこなした経験もあり、来る11月のロンドン2公演の会場はキャパ5000レベル。その意味でこの晩のショウにはどこか試運転的な匂いが付きまとってもいたし、「ライヴ•アクトとしてのステップ•アップ」という命題をバンド側が受けて立とうとする心意気は伺えた。
ではその心意気は望む成果に結びついていたか?と言えば、この日の彼らには安全圏から踏み出したかと思えばまた足を引っ込め……というおっかなびっくりな表情がまだ混じっていた。たとえば最新作収録の「Pink Rabbits」はマットが大のお気に入りにあげていて、聴かせどころのひとつである美曲。にも関わらずオーディエンスに向かって歌いかけるのではなく、マイク•スタンドに寄りかかりながらじりじり後退(!)していく消極的なパフォーマンスは、曲の磁力を衰えさせるようでどうにももどかしく映った。
身の丈を越えたジェスチャーや見せ物性ではなく、知性と音楽への造詣=実質だけで勝負するところがザ•ナショナルの素晴らしさではある。けれどこの晩のショウ•アップ志向に対し、それを前面に出て乗りこなすというよりも(基本的にカリスマには欠ける)彼らは、時にその煙幕の後ろに沈んでしまうことがあった。

パーソナリティに寄りかかるのではなく奏者に徹する方がある意味楽でもあるんだろうし、慣れない晴れ着を着せられてギクシャクする子供のような姿は逆に大いにラヴリーでもある。しかしオーディエンスの増加に比例してニュアンスは(得てして)失われていくものだし、その拡大に伴うジレンマ=必要な成長痛を今後ザ•ナショナルがどう克服していくのか?――「Mr. November」の文字通り観客と接するダイレクトなコミュニケーションのトリックは、物理的に限界がある――は、面白そうだなと思っている次第。
好きなバンドだし、別に意地悪く/からかい半分な視線から「面白そうだ」と言っているわけではない。ただ、彼らのように今どき珍しい地道&実直な苦労人アクトが次なるステージに向かう=Transitionalな場面に立ち会えるのはレアなわけで、その分岐点をどう乗り越え、バンドにとっての新たな糧にしていってくれるかを見守るのは楽しみだったりするわけです。

ちなみにこの晩のショウを観ていて、なぜか何度か頭に過ったのがエルボーの存在。サウンドはまったく異なる両者だけれど、音楽性もIQも高いのにバンドのイメージが地味渋で、ゆえに一般に認知されるまで時間がかかった……という意味ではわりかし立ち位置は似ている(ヴォーカルがヒゲでむさい酔っぱらい系というのも、なにげに共通点)。しかし自分が最後に観たエルボーのショウはO2アリーナで、そこでの彼らは本質や長所を一切損なうことなく、しかし見事にビッグ•スケールなショウを達成していた。
それはまあ、エルボーのシンガー=ガイ•ガーヴィが放つ英北部人としての親しみやすいチャーム&大胆さに寄るところも大きかったんだろうし、泣きの名アンセム「One Day Like This」という巨大な切り札の存在も大きかったとは思う。しかし、基本的に判官びいきなイギリス人が本当の意味でこの手のバンドを「愛する」のは、彼らが人間くささと弱さを露呈した時だったりする。音楽だけでそれを伝えようとするのはもちろん正しいわけだけど、そろそろザ•ナショナルも心を裸にするタイミングなのかな?と。 
とはいえ今やすっかりニューヨーク人のスマートな性格/感性がしみた彼ら、裸で接するのはいちばん困難なことでもあるだろう。というわけで、音楽的には申し分のない、みごとに脂ののった演奏で楽しんだライヴだったけど、バンドとしての「これから」をどうするのか?という意味で、過渡期の貴重な瞬間を観させてもらった気がしている。

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Mariko Sakamoto について

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